ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

スペインかぜ:原因遺伝子特定 新型インフル治療薬に道=東京大学、ウィスコンシン大学

2008年12月30日 | 創薬
 1918年に流行し全世界で約4000万人が死亡したとされる「スペインかぜ」のウイルスが強毒性になった原因遺伝子を、東京大と米ウィスコンシン大が特定した。発生が予想される新型インフルエンザの治療薬開発に役立つという。米国科学アカデミー紀要(電子版)で発表した。

 スペインかぜはインフルエンザの一種。毎年流行するインフルエンザウイルスは鼻やのどで増えるが、スペインかぜウイルスは肺で増え、死者の多くがウイルス性肺炎だった。

 米ウィスコンシン大の渡辺登喜子研究員らは、インフルエンザウイルスの遺伝子が八つのRNA(リボ核酸)を持つことに着目し、人工的に合成できる技術を利用した。スペインかぜウイルスと、通常のインフルエンザウイルスの八つのRNAの組み合わせを変えて10種類のウイルスを作成。増殖の違いを実験動物のフェレットで比べた。

 ほとんどのウイルスは鼻でしか効率的に増えなかった。これに対し、ウイルスを自己複製させる「RNAポリメラーゼ」と呼ばれる酵素などを作る四つのRNAがスペインかぜのものを使ったウイルスは、完全なスペインかぜウイルスと同じように、フェレットの気管と肺でも増殖し強毒性を持っていた。

 研究チームの河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)は「四つのRNAはインフルエンザウイルスに共通する。これらのRNAが作るたんぱく質の働きを抑える薬を開発することが、新型インフルエンザ対策に重要だ」と話している。【関東晋慈】

[毎日新聞 2008年12月30日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081231k0000m040026000c.html

ひざ半月板:再生に道…関節の幹細胞を移植、ラットで成功=東京医科歯科大学

2008年12月28日 | 再生医療
 ひざの半月板損傷を、関節部分から採取した間葉系幹細胞を移植して治すことに、東京医科歯科大などの研究チームがラットで成功した。米科学誌「ステムセルズ」に発表する。

 半月板はひざの内部にあり、大腿(だいたい)骨とすねの骨の間でクッションの役割を担う軟骨組織。けがや加齢で半月板を損傷した場合、半月板を切除する治療が一般的だが、関節症などを起こしやすい。

 チームは半月板を再生させるため、骨や軟骨になる性質がある間葉系幹細胞を使った。同細胞は骨髄から取るのが一般的だが、関節の滑膜という組織から採取した。

 半月板を損傷させた14匹のラットの患部に幹細胞を移植すると、約12週間で半月板と同じ性質の軟骨になった。小林英司・自治医科大教授(移植・再生医学)らが開発した、細胞を遺伝子改変によって光らせる技術で調べたところ、半月板が再生し関節を保護する様子が確認できた。

 また、半月板が再生した後の間葉系幹細胞は過剰に増殖する心配がないことも分かった。人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を使う再生医療では、目的の組織ができた後も増殖が止まらず、腫瘍(しゅよう)になったり他の臓器に移動して奇形を生む恐れがあり、課題となっている。関矢一郎・東京医科歯科大准教授(軟骨再生学)は「滑膜からの幹細胞は採取しやすく取り扱いも簡単だ。数年以内にヒトでの臨床応用を始めたい」と話す。【永山悦子】

[毎日新聞 2008年12月28日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081228k0000m040096000c.html

有酸素運動で食欲抑制ホルモン増、効率的ダイエットに期待=英ラフバラ大学

2008年12月28日 | 生活習慣病
 ジョギングや水泳などの有酸素運動は、短距離走や重量挙げなどの無酸素運動に比べ、胃から分泌される食欲刺激ホルモン「グレリン」を減らすのは同じだが、腸管から分泌される食欲抑制ホルモン「ペプチドYY」をより増やすことが分かった。英ラフバラ大の研究チームが28日までに実験結果を米生理学会の専門誌電子版に発表した。

 有酸素運動は空腹感を一時的に抑える効果が高いことが知られるが、そのメカニズムの解明につながる成果。無酸素運動には筋肉を増やしてエネルギー消費を高める効果があり、研究が進めば、体重をコントロールするのにより効率的な運動法の開発が期待される。(2008/12/28-19:56)

[時事ドットコム 2008年12月28日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2008122800136

うまみ:昆布、かつおだしの相乗効果…仕組み解明=米国

2008年12月26日 | 食品・栄養
 昆布だしに含まれるうまみ成分のグルタミン酸とかつおだしに含まれるイノシン酸を合わせると、うまみが増す「相乗効果」が起きる仕組みを、米国の研究グループが分子レベルで解明した。「米科学アカデミー紀要」に掲載された。

 人の舌の細胞表面には、味を感じる「味覚受容体」と呼ばれるたんぱく質があり、これまで、うまみ、苦み、甘みを感じる受容体が見つかっている。

 研究グループは、グルタミン酸とイノシン酸が「T1R1」という受容体に作用すると推測。この受容体は二枚貝のような葉を閉じて虫を補える食虫植物の「ハエトリグサ」に形が似ており、受容体のどの部分に結合するかを、人やラットで調べた。

 グループは、グルタミン酸は「ハエトリグサ」が開く際のちょうつがいの部分に、イノシン酸は先端の開閉部にそれぞれ結合することを突き止めた。イノシン酸が結合すると、閉じた構造になり、グルタミン酸が安定して中にとどまるため、うまみを増強させると結論づけた。

 味覚を研究している三浦裕仁・鹿児島大准教授は「受容体に働くうまみ増強物質を探せば、おいしさを増す調味料が開発できるだろう。また、甘みや塩味をより強く感じさせる物質を見つければ、食事の塩分や糖分を減らすことも可能だ」と話している。

 味覚には「甘み」「苦み」「酸味」「塩味」「うまみ」の5つの基本味がある。うまみ成分のグルタミン酸、イノシン酸、しいたけのグアニル酸はいずれも日本人が発見したため、うまみという言葉は「umami」として国際的に使われている。【下桐実雅子】

[毎日新聞 2008年12月26日]
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081226k0000e040036000c.html

骨再生促す補てん材開発 骨移植の代替期待=東北大学

2008年12月24日 | 再生医療
 東北大大学院歯学研究科の鈴木治教授=顎口腔(がくこうくう)機能創建学=と医学系研究科の井樋栄二教授(整形外科学)らの研究グループは、従来より高い骨再生促進効果のある骨補てん材を開発した。骨の腫瘍(しゅよう)摘出による欠損を補うなど、骨移植が必要な患者に適用が期待されるという。

 開発した人工合成の骨補てん材は低結晶性のリン酸オクタカルシウム(OCP)。従来のOCPの組成割合をわずかに調整して実現した。

 グループはラットの頸(けい)骨に開けた直径3ミリの穴に、直径300―500ミクロンの粒状の低結晶性OCPと従来のOCPを埋め込み、骨組織が再生する様子を観察。8週間後を比較すると、低結晶性OCPの場合、従来のOCPに比べて平均1.69倍、新しい骨組織が形成されていた。

 骨再生には、自分の骨を移植する方法が最も優れている。ただ、量が限られ、健康な部分を傷付けてしまう恐れがあることから、人工材料の開発が進められている。

 骨補てん材としては、骨の主成分であるヒドロキシアパタイトを模した人工合成材料などが使われている。OCPはまだ実用化されていない。

 鈴木教授は「今回の実験で、低結晶性OCPは骨をよく形成することが判明した。今後は人への応用に向けて研究を重ねたい」と話している。
 研究結果は英科学誌の電子版に掲載された。

[河北新報 2008年12月24日]
http://www.kahoku.co.jp/news/2008/12/20081224t15021.htm

ワサビが脳細胞の再生促進=名古屋市立大学

2008年12月18日 | 食品・栄養
 ワサビの辛み成分が脳の神経細胞の再生を促し、記憶力や学習能力を改善させる。こんな効果を名古屋市立大大学院医学研究科の岡嶋研二教授と原田直明准教授が、マウスを使った実験で突き止めた。人の認知症予防につながると期待される。

 岡嶋教授らはこれまで、人の胃や腸の知覚神経がトウガラシの辛みや熱さ、痛みの刺激を受けると、全身の細胞の増殖を促進するタンパク質「インスリン様成長因子-1(IGF-1)」が多く作られ、認知機能が改善されることを解明していた。

 今回は、ワサビでも同じメカニズムが働くかどうかを調べた。

 実験は、ワサビの辛み成分「6MSからし油」をマウスのえさに混ぜ、4週間食べさせた。記憶や学習機能にかかわる脳の海馬でIGF-1の濃度を調べたところ、濃度が2-2・5倍に増加。増殖した海馬の細胞数も、通常の2-3倍に増えていた。

 水を張ったプールでマウスを泳がせて浅瀬を見つけるまでの時間を比べ、ワサビを与えたマウスは初日の80秒が、5日目で30秒に短縮。

 与えていないマウスは5日目でも60秒かかり、浅瀬の場所を覚える能力の向上が見られた。

 一度に大量のワサビを食べると体調を崩すこともあるが、岡嶋教授は「計算では、人間も1日にワサビ12・5グラム(刺し身に添える時の5人分)を食べれば、同程度の効果が出るはず。脳だけでなく全身で細胞の再生が促進され、認知症予防以外にも、血管拡張や骨密度強化など多彩な効能がある」と話している。

[中日新聞 2008年12月18日]
http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008121802000062.html

血液検査でがんなど診断 早期発見に期待=北海道大学、塩野義製薬ら

2008年12月16日 | 糖鎖
 北海道大は16日、塩野義製薬(大阪市)と共同研究で肺がんや膵臓がん、リウマチの早期発見につながる可能性がある物質を特定したと発表した。血液検査により、がんなどを早期発見できるようになるという。

 これは糖質が鎖のように結合して細胞表面から突き出した「糖鎖」と呼ばれるもので、がんなどの診断や経過観察に役立つと期待されている。

 北大は血液に含まれる糖鎖を解析する機器で、健康な人とがん患者などの糖鎖の量の差を解析。肺がんと膵臓がんでは、それぞれ特定の糖鎖が患者の方が健康な人より少なくなり、リウマチでは逆に、別の糖鎖が患者の方が健康な人より多くなることを突き止めた。

 一滴以下の血液での解析が可能で、肺がんでは約90%、膵臓がんでは約93%、リウマチでは約96%の確度で区別できるとのデータが得られたという。

 北大の西村紳一郎教授は「実用化されれば早期発見が極めて困難だった肺がんや膵臓がんを、健康診断で発見できるようになる」と話している。

[共同通信47NEWS 2008年12月16日]
http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008121601000826.html

断食繰り返すと長生き? 線虫で解明=京都大学

2008年12月15日 | 生きもの色々
一時的に栄養を与えない“断食状態”を繰り返すと線虫の寿命が延びるメカニズムを、京都大の西田栄介教授らのチームが遺伝子レベルで解明し、15日付の英科学誌ネイチャーに発表した。

 Rhebというタンパク質がインスリンに似た物質を活性化して代謝を変化させ、寿命を制御していた。線虫だけでなく、ラットなど哺乳類も食事を制限すると老化が遅れるが、詳しい仕組みは謎。西田教授は「人の寿命が決まる仕組みや動物の冬眠などにも、同じタンパク質が関係しているかもしれない」と話している。

 線虫は土壌などにすむ体長約1ミリの線形動物。遺伝子解析が進んでいるため生命科学研究のモデル生物として利用されている。

 チームは、線虫が食べる大腸菌を2日間隔で与えると、毎日食べる線虫と比べ、平均寿命が20日から30日に延びるのを確認した。詳しく調べると、Rhebが働いて老化抑制や代謝調節にかかわる複数の遺伝子のスイッチを入れていた。

[共同通信47NEWS 2008年12月15日]
http://www.47news.jp/CN/200812/CN2008121501000393.html

京都大学/研究成果 (2008年12月15日)
「断続的飢餓による寿命延長の鍵を握る遺伝子を発見」
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/081215_1.htm

夢を映像化!?脳内画像を脳活動から再現=国際電気通信基礎技術研究所(ATR)ら

2008年12月11日 | 心のしくみ
 人が目で見て認識している視覚情報を、脳活動を調べることで読み取り、コンピューターで画像として再現することに国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府)などの研究チームが初めて成功した。まだ単純な図形や文字で成功した段階だが、将来は夢を映画のように再現できる可能性もあるという。11日付の米科学誌「ニューロン」に発表した。

 物を見たときの視覚情報は、大脳の後ろにある視覚野という領域で処理される。研究チームは被験者に白黒の画像を見せ、視覚野の血流の変化を磁気共鳴画像装置(MRI)で計測。脳の活動パターンから効率よく画像を解読するプログラムを開発した。

 実験で使った画像は小さなマス目を縦横10個ずつ並べたもので、四角形や十字、アルファベットなど11種類。被験者が画像を見てから4秒後に、ほぼ原画に近い画像をコンピューターで再現できた。また、見ているままの状態を動画で再生することにも成功。再現精度は個人差があるが、カラー化も原理的には可能という。

 夢を見ているときや、頭の中で映像をイメージしているときも、視覚野は活動すると考えられている。ATR脳情報研究所の神谷之康室長は「夢を読み取って画像化することも、荒唐無稽(むけい)なことではない。医療での患者の心理状態の把握、新たな芸術や情報伝達の手段などに応用できるかもしれない」と話している。

 人が見ているものを脳活動から解読する試みでは、「縦じまか横じまか」といった単純な判別は可能だったが、見ているもの自体を画像として読み取ることはできなかった。

[msn産経ニュース 2008年12月11日]
http://sankei.jp.msn.com/science/science/081211/scn0812110201000-n1.htm


ATR(株式会社国際電気通信基礎技術研究所)プレスリリース(2008年12月11日)

脳から知覚映像を読み出す
~ヒトの脳活動パターンから見ている画像の再構成に成功~
-ニューロン誌12月11日号掲載予定(表紙デザインに採用)-
http://www.atr.co.jp/html/topics/press_081211_j.html

緑色蛍光たんぱく質、生命解明の研究で広く活用(読売新聞コラム)

2008年12月09日 | 可視化技術
 スウェーデン・ストックホルムで10日、ノーベル化学賞の授賞式に臨む米・ボストン大名誉教授下村脩さん(80)が発見した緑色蛍光たんぱく質は、生命解明の研究で幅広く活用されている。

 愛知県岡崎市にある自然科学研究機構基礎生物学、生理学両研究所では、約50ある研究室のほとんどで蛍光たんぱく質が使われている。1990年代半ばから、細胞や遺伝子に組み込んで動物のがん細胞識別に活用されるなど、身近な存在だけに、受賞を知った時には「なぜ、今頃ノーベル賞なの」と驚く研究者も多かったという。

生理学研究所の小泉周(あまね)准教授(36)は「蛍光たんぱく質は、様々な色を遺伝子に組み込むことができるようになった。将来は動物実験で神経細胞をそれぞれ色分けし、その働きを調べたい」と話している。


[読売新聞 2008年12月09日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081209-OYT1T00832.htm

蛍光物質:生きたがんだけ光らせる=東京大学、米国立衛生研究所ら

2008年12月08日 | 可視化技術
  生きたがん細胞だけを光らせる蛍光物質を、日米の研究チームが開発した。1ミリ以下の小さながんを見つけられるうえ、がん細胞が死ぬと光が消えるため、治療効果を確認しながら手術や内視鏡治療ができるという。7日付の英科学誌ネイチャー・メディシン電子版に発表した。

 開発したのは、浦野泰照・東京大准教授(薬学)、小林久隆・米国立衛生研究所主任研究員ら。生きた細胞内では「リソソーム」という小器官が弱酸性、死んだ細胞では中性になることに着目。乳がん細胞に結びつきやすく、酸性のときだけ光る物質を開発した。

 また、マウスの肺に乳がんが転移したという条件を再現したうえで蛍光物質を注射すると、1ミリ以下の肺がんが検出され内視鏡で切除することに成功した。さらに、がんを殺すエタノールをかけたところ、約30分後に光が弱まり、がん細胞の死を確認した。米国で臨床試験の準備に入ったという。

 PET(陽電子放射断層撮影)など現在の画像検査では、1センチ以下のがんを見つけることや、抗がん剤の投与後の効果をすぐに確認することは難しい。浦野准教授は「他の種類のがんに結びつく蛍光物質を開発することも可能だ。小さながんを見過ごさず切除できるので、誰もが名医になれるだろう」と話す。【西川拓】

[毎日新聞 2008年12月08日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20081208k0000e040012000c.html

「海馬」切除後、脳研究に協力 米男性「H・M」氏死去

2008年12月06日 | 心のしくみ
 【ワシントン=勝田敏彦】脳の一部を切除する実験的治療を受けて新たな記憶ができなくなったあと、脳機能の研究に積極的に協力し、学習や記憶の仕組みの解明に多大な貢献をした米国の男性患者が82歳で亡くなった。ニューヨーク・タイムズなど米主要メディアが5日、報じた。

 この男性はヘンリー・モレゾンさん。米コネティカット州の老人ホームで2日、呼吸不全のため亡くなった。研究論文などではプライバシー保護のために「H・M」という名前で呼ばれ、脳研究分野では世界的に知られていた。

 モレゾンさんは9歳のときに自転車とぶつかって頭を強く打ち、原因不明のけいれん発作に悩まされるようになった。18年後の1953年、脳の「海馬」などを切除する手術を受けたあと、昔のことは鮮明に覚えているのに、新たな記憶がほとんどできなくなる「超記憶喪失」になった。

 その後認知科学や脳科学の研究に進んで協力。当時はほとんどわかっていなかった脳機能の解明に貢献した。現在、海馬は学習や記憶で重要な役割を担っていることがわかっている。

[朝日新聞 2008年12月06日]
http://www.asahi.com/science/update/1206/TKY200812060232.html

変異メダカから疾患遺伝子発見、細胞表面の繊毛動かず=東京大学、フライブルグ大学(ドイツ)

2008年12月04日 | 遺伝子
 心臓や肝臓の位置が左右逆転したり、気管支炎を起こしたりする遺伝疾患「カルタゲナー症候群」の原因遺伝子を、突然変異のメダカから発見したと、東京大やドイツ・フライブルク大などの研究チームが4日付の英科学誌ネイチャーに発表した。この遺伝子の異常のため、細胞の表面に生えている繊毛(せんもう)が動かなくなっていることが分かった。研究成果は繊毛や鞭毛(べんもう)の形成過程の解明に役立つと期待される。(2008/12/04-06:03)

[時事ドットコム 2008年12月04日]
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_date1&k=2008120400052

細胞膜直すタンパク質を解明=京都大学ら

2008年12月01日 | 遺伝子組替マウス
 穴が開いた細胞膜を修復するときに働くタンパク質を、京都大薬学研究科の竹島浩教授ら日米の研究グループが突き止めた。タンパク質の異常が筋ジストロフィーの原因の一つである可能性があるという。英科学誌「ネイチャー・セル・バイオロジー」で1日に発表する。

 竹島教授らが見つけた細胞膜近傍のタンパク質MG53の機能を調べた。MG53は、心臓や筋肉の絶えず動いて傷つきやすい細胞で作られている。

 MG53を作れないマウスは、成長とともに細胞が壊れ筋細胞が貧弱になり、筋ジストロフィーと同じ症状を示した。MG53が作れない細胞は細胞膜に穴を開けても穴はふさがれないが、外からMG53を入れると修復できるようになった。

 MG53は、細胞膜と同じ成分のリン脂質でできた小胞と結びついており、細胞膜に開いた穴に集まり、リン脂質が穴をふさぐように働いていた。

 筋ジストロフィーはさまざまな遺伝子の異常によって引き起こされるが、症例の半数近くは原因遺伝子が分かっていない。MG53の異常も原因である可能性があり、日米で確認を進める。

 竹島教授は「MG53が働くようにする筋ジストロフィー治療も期待できる。潰瘍(かいよう)や炎症も細胞の損傷が関係しており、MG53やMG53に似た他のタンパク質の役割を調べたい」と話している。

[京都新聞 2008年12月01日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008120100026&genre=G1&area=K00

早期実用化へ競争より協力 iPS細胞発表1年、京都大学・山中教授

2008年12月01日 | 再生医療
 京都大iPS細胞研究センター所長の山中伸弥教授が1日、ヒトiPS(人工多能性幹)細胞樹立の発表から1年を迎え、京都市左京区の京大時計台記念館で記者会見した。多忙を極めた1年間を振り返りつつ、「目標は一日でも早い実用化」とし、競争ではなく海外の研究機関と協力し、より多くの研究成果を発信することに強い意欲を見せた。

 山中教授は1年の成果として、全国のiPS細胞の研究拠点や企業との連携など「オールジャパン」の体制づくり、iPS細胞の基本特許の国内成立、iPS細胞研究センターによる特許出願体制の整備、より安全なiPS細胞の樹立の4点を挙げた。

 今後1年間の目標として、国内だけでなく海外の研究機関とも積極的に協力することを掲げた。

 iPS細胞研究で独自の成果を挙げているカナダ・トロント大と10月に、特定の患者の細胞から作製したiPS細胞についての情報交換を内容とした協定を締結し、米ハーバード大の研究者とも来年1月に非公開で会合を持つ予定で、「一日も早い実用化という共通の願いの下、研究データを交換し、場合によっては共同研究もしたい」と抱負を述べた。

 かつて臨床医として患者を診てきた経験から「論文を出すことも大切だが、患者が治ることの方がうれしい」と強調。治療の難しい病気の女児の親から「iPS細胞研究の報道があって初めて、娘に『10年たったら治るかもしれない』と本当に(自信を持って)伝えることができた」という感謝と励ましを受けたことを打ち明け、感極まって涙ぐむ場面もあった。

[京都新聞 2008年12月01日]
http://www.kyoto-np.co.jp/article.php?mid=P2008120100175&genre=G1&area=K00