まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

君は今へびつかい座のそばに。

2018-06-21 23:20:54 | 日記


ケープカナベラル空軍基地には40年後の今も
探査機ボイジャーが発射された時の
焦げた地面が残っているそうだ

重低音を轟かせて
真っ白い雲を吐き出しながら
青い空に吸い込まれていく姿を
思い起こして胸がきゅんとした、と
佐治晴夫さんは柔らかな声で話す

渋谷のプラネタリウム
130人ほどの講演会はチケットを取るのに
1週間前に現地を訪れ並ばなければならない程の人気

まだ見ぬ地球以外に棲まう友に宛てた
メッセージの中に
佐治さんはバッハの音楽を加えようと提案し採用された
太陽系の家族写真を撮ったのは科学のためじゃない
詩や芸術のためなんだと言ったのは
ジェット推進研究所のストーン博士

平和のために必要なのは金でもテクノロジーでもなくて
豊かに育まれた人間の心

ボイジャーがいよいよ通信の限界距離を
突破しようとした時
居合わせた女性の研究者が
well done (よくやってくれたわ)と
涙をこぼして呟いたのだそうだ
ねえ坊や、最後にもう一度ママの方を向いて
という声に応えたボイジャーが送ってよこした画像には
ほんの小さな光の粒が
それは65億キロの彼方から写した地球の姿

宇宙が生まれ、星がキラキラ瞬きながら
あらゆる元素を合成し、超新星が爆発すると
撒き散らされた星のカケラから地球が生まれ、生命が生まれた
時間にして137億年とちょっと

人が1日に使用するカロリーが2400とすると
ワット数にして100Wを創出する計算になる
体重70キロくらいだとすると
太陽の70キロ分が作るのは0.01W
人間は実に太陽の1万倍のエネルギーを作り出しながら
生きているということになる

哺乳類の一生は「鼓動20億回分」と決まっているそうだ
心拍の速いネズミは数年で死ぬし
ゆっくりなゾウは数十年生きる
だけどゾウの物差しを使って
「ネズミは早死だから不幸である」と
決めつけるのは間違っている
ネズミとゾウが感じる一生の時間の長さは等しいはずだから

「時間が流れる、という表現は合っているでしょうか」と
佐治さんが問いかける
時代、学問、宗教、それぞれの見地で「時」の認識が様々にある
一番心に響いたのは
「過去の集積が現在である。しかし過去はどこにもなく、未来もどこにもない。
未来に影響を与えるのが現在であり、未来をどう生きるかで過去の価値が変化する。」
という話
あの時ああしてしまったから、今こんなにダメなわたし
と悔やむのか
あの時のことがあるから、今こんなに頑張れている、だからあれはよかったんだ
と捉えることができるのか
いのちが終わる時に自分で自分に「よくやったよね」と言えるかどうか

ボイジャーは今、地球から210億キロ離れた
へびつかい座の右肩のあたりにいて
現在も交信ができる状態にある
いつか誰かがメッセージを受け取ってくれるだろうか
その時まだ地球や人類は在るだろうか
もうとっくに消えて無くなってるか

「しかし、そのとき、私たちは彼らの想像力の中で
再び蘇るのです」
佐治さんのそんな想いが叶うことを
一緒に祈らずにはいられなかった

漆黒の闇、一面に煌めく星々、
佐治さんの弾くピアノ
グノーのアヴェマリア
小さく歌いながらなんだか
涙が止まらなかった

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