スタジオに着くと真っ先に
迎えてくれる巨大な紙製のタルト。
オープン一年記念にみんなで作った。
以来7年間、見守ってくれている。
いつものように身支度を整え
キッチンへ入ってゆくムスメ。
大学二回生になるにあたり
環境さまざま整えるべく
レッスンを今日で卒業する。
最初にムスメが参加したときの
レシピ、マロンケーキ。
はがきサイズのレシピを
入会したときにいただいた
ポケットファイルに毎回おさめていた。
クリスマスにはおもいおもいの
デコレーションをあしらって作る
スペシャルバージョン。
先生の撮ってくださる写真に
彼女らの興奮や誇らしさが
溢れている。
卒業製作?は
シャルロットフレーズ
ビスキュイにふんわりイチゴミルクの
ババロアズ、ジュレ仕上げ。
先生が地区センターの貸しキッチンから
自前のスタジオに拠点を移されて
器具道具もすべてプロ仕様という
恵まれた環境のなかで
さぞやめきめき腕をあげたであろう、、、
先生のデモを真剣に見てるはずなのに
どうしてあんなふうにへんてこりんな
手の組み方になってるんだろう。。。
さて、実戦開始
おいおいそれじゃメレンゲ弱いよ
粉入れたらそんなぐるぐるしなくていいよ
あ、絞り袋の口金セットゆるいよ
あーもうエプロンがジュレに浸かってるよ。。。
いちいち気になり、そわそわして、
あ、この感覚懐かしい、とおもう。
小学生時代、毎回、車で送迎してて
キッチンのすみから、まったくおなじように、
いらいらはらはらしながら
眺めてたんだった。
変わらないんだな、私
じゃなかった、
変わらないなあ、ムスメ!
どうにかこうにか、仕上げて
昔とおなじように
先生に完成写真を撮っていただく。
やっぱり、昔とおなじように
すこし頬の上気した
誇らしそうな笑顔。
ついでにいえば、顔の造作も
ほとんど変わんないな。
学校でつまんないことがあっても
受験でつらくても寝不足でしんどくても
レッスンに行きさえすればいつも
おいしいお菓子と
長いつきあいで気のおけない友達と
優しく厳しい尊敬する先生が
待っててくれる。
その存在がどれだけムスメの
養いになっていることか。
そして、今ムスメは
スタッフとして関わる小さな後輩たちに
毎回、最初に手を洗ってね、
名札つけてね、って言ってたのが
ある日言われなくても
ちゃんとできるようになるんだよ。
作りながら、モノを移動するのも
ちゃんと先の動き考えて
やれるようになるんだよ。
成長するって、すごいねえ。
という眼差しを向けている。
おまえもな。(笑)
そして恩師は、私が今日携えていった
入会してからのアーカイブをめくりながら
過去は振り返らないんだ!!
と笑いつつ
ねえ今度こんなことしようと
思うんだけどー、と
新企画案について楽しげに語る。
語るそばで新高校生の生徒に
春からバイトにおいでよ、と
声をかける。
私のささやかなノスタルジー、、、
いや、でも、
だからこそムスメもわたしも
愛してやまない先生なのである(笑)
ケーキ習いたいの、という発言は
今思い出しても、まったく唐突だった。
なんの手がかりもないまま、
ネット検索を繰り返してやっと
こどもに教えてくれる教室を
探し当てた。
だけど、ときどき思うのは、
ムスメは偶然に、先生に出会えたんじゃなくて
自分の力で、引き寄せたんじゃないかな、ということだ。
なぜなら、必要だったから。
稀に、そういうことをやらかすムスメなのだ。
レッスンに定期的に通うことは
なくなったが
ムスメには100を越えるレシピと
11年の経験値と
よい素材を見極める眼と
バイトでつけた購買力がある(笑)
だれかのために、おいしいお菓子を
作りたいとおもえば
いつだってなんだって作れるのだ。
そんなしあわせ、
そうそうないのだよ?(笑)