まくとぅーぷ

作ったお菓子のこと、読んだ本のこと、寄り道したカフェのこと。

雪のワルツ

2012-12-13 07:06:34 | 日記
クリスマスのお楽しみ、といえば、こんなのもあった。

バレエ「くるみ割り人形」

それも、観劇するだけじゃない。
参加しちゃうんである。

こどもの頃に所属してた合唱団は
創立者の先生の40年に渡る情熱的な指導のおかげで
人数こそ少ないものの、なかなかに高評価を得ており
ときには出演依頼が来るほどだった。

そのなかに、いろいろなバレエ団が12月に公演する
くるみ割り人形の1シーン
雪のワルツの場面で歌ってほしい、というものがあった。

そもそもは、先生が懇意にしていた
超有名な東京の合唱団より
「手が回らないから手伝ってくれない?」と
言われたのがはじまりなのだけど

今年のは正真正銘、「ゆりがおかさんに」と来たオファーである。
(合唱団の名前は、ゆりがおか児童合唱団という。)

なんでこどもの頃に所属してた合唱団への
今年のオファーの話なんかをするかというと
OGとして助っ人してほしいといわれたから。

先生の指導する歌、発声はとても特殊で
だからわたしくらいの長老OGでも
9歳の現役と混じって歌ってしまえる。

ただ、声は共鳴できてもビジュアルは難しい。
それでも「今回はオケピット(舞台の手前、オーケストラが座る一段低い場所)
だから」というので、まあ、お役にたてるのなら・・・と。

ところが、先週のレッスンでまっしろいガウンを配布された。
ステージ衣装だ。
「2階客席に変更になりました。」と笑顔の役員さん。
げーーーーん・・・・

さらに驚いたことに、当日オケを指揮するマエストロが
レッスンに来るという。
相当な数、これを歌ってきたけど、そんなの前代未聞で
センパイOGと
「よっぽど不安なんでしょうかねえ」と笑っていた。

やってきた田中良和先生は、とても寛いだ雰囲気で
(あ、日曜日のパパってこんなだったよ)と、つい。
いっかい歌わせたあと、「いいですね」とおっしゃって
(これはゼッタイなのだけど、指導にいらっしゃる先生方は
第一声は必ず誉める。で、そのあとが怖い。)
「今度は、ワルツにのって、踊るように歌ってください。
がんばりすぎないで。」

ほお。そういう指示も前代未聞だ。

数回歌ったあと、マエストロはみんなを座らせて
この演目の背景について語りだした。

くるみ割り人形を書いたのは、ドイツのホフマンという作家である。
ホフマンは本も書けば作曲もする、とても才能豊かなひとで
(あとで調べたら、本職は裁判官だったそう。どんだけの才やねん。)
チャイコフスキーのいたロシアでも人気があった。

18世紀当時のロシアは、西ヨーロッパの文化に憧れがあり
時の皇帝ピョートルは、サンクトペテルブルクという街を作り
そこにバロック様式などのヨーロッパの粋を集めた建築物を並べ
国の文化をそこに集中させた。
チャイコフスキーもそのなかに暮らしていた。

一般的な「バレエ くるみ割り人形」は
ドイツの貴族のお邸で開くクリスマスパーティという設定だが
今回は、ドイツの一般的な家族が、クリスマスマーケットに
遊びにくるという設定。
キーマンのドロッセルマイヤー氏は、主人公クララのおじさんではなく
マーケットにオープンした人形劇団の団長で
クララはその劇団に迷い込み、不思議な世界へと導かれる。

で、マエストロはみんなに
「みなさんの声で、観客を夢のような世界へ連れていってほしい。
夢見心地にさせるように歌ってください。」と。

実際には、この、雪のワルツじたいは
どんなにのんびり演奏しても、たかだか7分くらいなもんである。
さらに、児童合唱が入る部分は、全部足しても2分程度。

その数分のために、わざわざ、どイナカ(?)のレッスン会場まで
休みの日に足を運んでくださり
こどもたちにこれだけの話をして、演奏方針を伝えてくださる。
プロの音楽家の精神を見せ付けられて、感激しつつ緊張した。
日曜日のパパだなんて思ってごめんなさい。

とはいえ主役である現役ちゃんたちは
「なんかむずかしい話してるー」というかんじで
横の子つっついてお喋りしたりしてる。

こいつらがこんなにえへらえへらしてんのに
本番になるとびしっと歌ってみせるさまは
控えめにいっても「詐欺」である。

まあ、、、わたしもかつてはお姉さまたちに
そう思われていたのだろうから、しかたあるまい。

来週の水曜日から3日間、オケ合わせやゲネプロを経て
土曜日からの3連休まいにち、昼または夕方の公演。

不便をかける家族に、たべるものくらいたっぷり用意しなきゃ、
なんて考えるところが、現役時代との違いだな。