さて、先生を送り出した息子は、あれほど登校をしぶって
いたのが嘘のように、
「おかあさん、12時半に行くんだったら、何時に
お昼ごはんを食べたらいいかな~」
と言い出しました。
「そうだねえ。12時半に学校に着くようにしようと思ったら
何時何分におうちを出発したらいいと思う?」
「えーと、12時20分」
「じゃあ、11時45分くらいにお昼にしようか」
「うん」
お昼ごはんを食べて、制服に着替えると、息子は
「さあ、合唱コンクールだ」
と自らに気合を入れるように言いました。
「やっぱりお母さんも行くの?それとも1人で行く?」
「お母さんも一緒に行く」
入学式の翌日から、「ぼくは1人で学校に行ける」と宣言して
普段は決して私と一緒に登校しようとはしない息子が
私に一緒に行ってほしがるというには、それだけ息子の
気持ちが弱っていることの証拠のように思えました。
学校に着くと、K先生は校門のところで待っていてくれました。
「よう頑張って来てくれたな。先生嬉しいわ」
「はい」
「合唱できそう?」
「できます。頑張ります」
障級の教室に入って、もはや吹っ切れた表情になった息子のところに
交流級の女子が3人、「Mくーん、一緒に練習しよ!」と
迎えに来てくれて、息子は教室に向かいました。
私は少し時間をつぶしてから、合唱コンクールの会場である
体育館に向かいました。
息子はもう交流学級の中に入って着席しているようでした。
合唱は1年生から始まります。まず学年合唱、それからクラスごとの
合唱。まだ、小学生くささを残したあどけない1年生、
学年閉鎖の影響もあって、あまりまとまらない印象です。
次は2年生。やはり学年閉鎖のため練習が足りなかったのか、
1年生よりはうまいけれど、合唱としてはもう1つまとまっていない感じ。
いよいよ3年生の学年合唱の出番になりました。
ステージに上がった息子の顔を見ると、なんとマスクをしたまま
(インフル対策のため、着席中はつけることになっていた)。
でも、まっすぐ立って堂々と前を向いた姿からは
もう弱気な態度が消えていました。
次に1クラスごとの合唱、息子のクラスは最後から2つ目。
誰かが指示してくれたのか、今度はちゃんとマスクもはずしています。
もともと35名の小規模クラスに欠席者もいて、なんとも
小ぢんまりとした集団でしたが、合唱が始まると、
会場がしーんと静まりかえりました。
「春に」という曲自体がすごくいいのですが、それを別にしても、
なんともいえず柔らかで温かなものが胸にあふれるような
ハーモニーでした。息子もとてもいい顔をして歌っています。
自信をなくした息子をわざわざ迎えに来てくれた女の子たち、
それを冷やかしたりからかうこともなく、あたりまえのように
ちょっと変わった仲間として扱ってくれる男の子たち、
そしてそれを裏からしっかり支えてくれる交流担の先生、
息子がいつも味わっているのであろう、温かな陽だまりのようなクラスの
雰囲気が伝わってきて
不覚にも目に涙がにじんでしまいました。
3年生のクラス合唱は厳しい練習の成果か、さすが最高学年と思えるほど
それぞれにとても美しく、わが子の成長を感じてか、周りでも目頭を押さえる
親御さんの姿がちらほらありました。
結局、最優秀賞は3年生の別のクラスが勝ち取り、
息子のクラスは全体では2位の成績でした。
交流級のみんなに混じって後片付けまでをこなして
「文化祭、がんばった~。合唱も大きな声で歌えた~」と
言いながら帰宅した息子の顔は、今朝とはまるで別人のように
晴れ晴れとした自信に満ちた笑顔になっていました。
「もう頑張れない」と座り込んだときに、沢山の人に支えられ
助けられて、もう一度勇気を振り絞って壁を乗り越えたことで
息子の得た達成感はとても大きなものだったのでしょう。
心が折れかかったときに、やみくもに背中を押すのではなく、
まるでやわらかく包み込むかのように、私の元から抱き取るかのように
そっと息子の背にあてられる、やさしい温かな手の持ち主が
私以外にも息子の周りには沢山いることをあらためて感じ、
この学校に入学させて本当によかったと思ったのでした。
いたのが嘘のように、
「おかあさん、12時半に行くんだったら、何時に
お昼ごはんを食べたらいいかな~」
と言い出しました。
「そうだねえ。12時半に学校に着くようにしようと思ったら
何時何分におうちを出発したらいいと思う?」
「えーと、12時20分」
「じゃあ、11時45分くらいにお昼にしようか」
「うん」
お昼ごはんを食べて、制服に着替えると、息子は
「さあ、合唱コンクールだ」
と自らに気合を入れるように言いました。
「やっぱりお母さんも行くの?それとも1人で行く?」
「お母さんも一緒に行く」
入学式の翌日から、「ぼくは1人で学校に行ける」と宣言して
普段は決して私と一緒に登校しようとはしない息子が
私に一緒に行ってほしがるというには、それだけ息子の
気持ちが弱っていることの証拠のように思えました。
学校に着くと、K先生は校門のところで待っていてくれました。
「よう頑張って来てくれたな。先生嬉しいわ」
「はい」
「合唱できそう?」
「できます。頑張ります」
障級の教室に入って、もはや吹っ切れた表情になった息子のところに
交流級の女子が3人、「Mくーん、一緒に練習しよ!」と
迎えに来てくれて、息子は教室に向かいました。
私は少し時間をつぶしてから、合唱コンクールの会場である
体育館に向かいました。
息子はもう交流学級の中に入って着席しているようでした。
合唱は1年生から始まります。まず学年合唱、それからクラスごとの
合唱。まだ、小学生くささを残したあどけない1年生、
学年閉鎖の影響もあって、あまりまとまらない印象です。
次は2年生。やはり学年閉鎖のため練習が足りなかったのか、
1年生よりはうまいけれど、合唱としてはもう1つまとまっていない感じ。
いよいよ3年生の学年合唱の出番になりました。
ステージに上がった息子の顔を見ると、なんとマスクをしたまま
(インフル対策のため、着席中はつけることになっていた)。
でも、まっすぐ立って堂々と前を向いた姿からは
もう弱気な態度が消えていました。
次に1クラスごとの合唱、息子のクラスは最後から2つ目。
誰かが指示してくれたのか、今度はちゃんとマスクもはずしています。
もともと35名の小規模クラスに欠席者もいて、なんとも
小ぢんまりとした集団でしたが、合唱が始まると、
会場がしーんと静まりかえりました。
「春に」という曲自体がすごくいいのですが、それを別にしても、
なんともいえず柔らかで温かなものが胸にあふれるような
ハーモニーでした。息子もとてもいい顔をして歌っています。
自信をなくした息子をわざわざ迎えに来てくれた女の子たち、
それを冷やかしたりからかうこともなく、あたりまえのように
ちょっと変わった仲間として扱ってくれる男の子たち、
そしてそれを裏からしっかり支えてくれる交流担の先生、
息子がいつも味わっているのであろう、温かな陽だまりのようなクラスの
雰囲気が伝わってきて
不覚にも目に涙がにじんでしまいました。
3年生のクラス合唱は厳しい練習の成果か、さすが最高学年と思えるほど
それぞれにとても美しく、わが子の成長を感じてか、周りでも目頭を押さえる
親御さんの姿がちらほらありました。
結局、最優秀賞は3年生の別のクラスが勝ち取り、
息子のクラスは全体では2位の成績でした。
交流級のみんなに混じって後片付けまでをこなして
「文化祭、がんばった~。合唱も大きな声で歌えた~」と
言いながら帰宅した息子の顔は、今朝とはまるで別人のように
晴れ晴れとした自信に満ちた笑顔になっていました。
「もう頑張れない」と座り込んだときに、沢山の人に支えられ
助けられて、もう一度勇気を振り絞って壁を乗り越えたことで
息子の得た達成感はとても大きなものだったのでしょう。
心が折れかかったときに、やみくもに背中を押すのではなく、
まるでやわらかく包み込むかのように、私の元から抱き取るかのように
そっと息子の背にあてられる、やさしい温かな手の持ち主が
私以外にも息子の周りには沢山いることをあらためて感じ、
この学校に入学させて本当によかったと思ったのでした。