猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

峠 最後のサムライ

2022-06-27 22:08:08 | 日記
2022年の日本映画「峠 最後のサムライ」を観に行った。

慶応3年(1867年)、大政奉還。260余りに及んだ徳川幕府は終焉を迎え、
諸藩は旧幕府軍(東軍)と明治新政府軍(西軍)に二分していた。慶応4年、
鳥羽・伏見の戦いを皮切りに戊辰戦争が勃発した。越後の小藩、長岡藩
の家老・河井継之助(役所広司)は、東軍・西軍いずれにも属さない、武
装中立を目指す。戦うことが当たり前となっていた武士の時代、民の暮
らしを守るために、戦争を避けようとしたのだ。だが、和平を願って臨
んだ談判は決裂。継之助は徳川譜代の大名として義を貫き、西軍と砲火
を交えるという決断を下す。

司馬遼太郎氏の小説「峠」の映画化。越後長岡藩の家老・河井継之助は、
江戸を始めとする諸国への遊学で世界を見据えるグローバルな視野を培
い、領民のための斬新な藩政改革を次々と実行していた。やがて戊辰戦
争が起こり、日本が旧幕府軍(東軍)か明治新政府軍(西軍)かに二分する
中、戦争を回避しようと、近代兵器を備えてスイスのような武装中立を
目指した。だが、平和への願いもむなしく、長岡藩もまた戦火に吞み込
まれていく。
世界的視野とリーダーシップで坂本龍馬と並び称されていたという河井
継之助という人を、私は知らなかった。歴史ものの映画は好きなのでそ
れなりにおもしろかったのだが、なにしろこの人を知らないというのも
あって、あまり物語に入り込めなかった気がする。豪華キャストだし、
特に継之助の献身的な妻役の松たか子などの演技はとても良かったのだ
が。それと時代劇だからか画面が暗くて、俳優の顔がはっきりと見えな
い。エンドロールのキャストを見て、あの人出ていたんだ、と思った人
も何人かいる。
河井継之助のような先見の明を持った人というのはいつの時代もどこの
国にもいるものだ。これから世の中がどんどん変わっていくことをわか
っている。こういう人が国の未来を変えるのだ。たくさんの民兵たちが
鉄砲や大砲に倒れていくシーンは痛ましかった。時代が変わる時には多
くの犠牲がつきものである。継之助も志半ばにして亡くなっている(亡
くなったシーンは描かれていない)。「知られざる英雄・河井継之助」
の存在を知れたのは良かったと思っている。


ノエルがちぐらの縁をこんなに…遊んでるし

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私生活のない女

2022-06-23 22:39:26 | 日記
1984年のフランス映画「私生活のない女」。

20歳のエテル(ヴァレリー・カプリスキー)は女優志願の魅力的な女性。オー
デイションを受け続けているが、なかなか芽が出ず、生活のためにヌードモデ
ルをしている。あるオーディションの際に新人監督のリュカ・ケスリング(フ
ランシス・ユステール)に注目され、ドストエフスキーの「悪霊」を脚色した
新作のリーザ役に抜擢される。才能はあるが、エキセントリックでナルシステ
ィックなケスリングは、異常な情熱を持ってこの映画に取り組んでいる。そん
な彼に惹かれていくエテル。その後テレビのニュースで身元不明の金色のハイ
ヒールを履いた女性の死体が発見されたことが報じられた。ある理由からケス
リングに疑惑を抱いたエテルは、ホテルの調理場で働くミラン(ランベール・
ウィルソン)という男を訪ねる。彼はチェコからの亡命者で、ケスリングに匿
われていた。エテルは何度も会ううちにミランにも惹かれていく。

アンジェイ・ズラウスキー監督によるちょっと変わった恋愛映画。ズラウスキ
ーらしくこってりとしている。女優志望のエテルはオーディションを受け続け
る日々だが、役に恵まれず、ヌードモデルの仕事をして生活費を稼いでいる。
ところがある日ケスリングという新人監督の映画の主役に抜擢される。ケスリ
ングは情熱的だが傲慢で癖の強い男だった。そんなケスリングにエテルは惹か
れていく。ある朝ケスリングの部屋で目覚めたエテルは、別の部屋で女の声が
するのを耳にした。姿はわからなかったが、金色のハイヒールを履いているの
が見えた。そして戸棚にあったバッグからチェコ人女性のパスポートを見つけ
る。
その後テレビのニュースで金色のハイヒールを履いた女性の遺体が発見された
ことを知ったエテルは、ケスリングが殺したのではないかと思う。エテルはチ
ェコからの亡命者でケスリングに匿われているミランという若い男を訪ねる。
パスポートのチェコ人女性は彼の恋人であり、ケスリングとも関係の深かった
エレナという女優であることをエテルは知る。ミランはエレナのことが忘れら
れないでいた。エテルはやがてエレナの身代わりを引き受けるように愛し合う
ようになる。
冒頭からエテルの服装に驚く。ミニワンピースを着ているのだが、横に大きく
スリットが入っているだけではなく、生地もペラペラで、下着みたい。その服
で大股で闊歩していく(歩幅が広い)。あんな服装でパリの街を歩いていたらさ
ぞ目立つだろうなあと思う。しかも彼女はその服しか持っていないのかと思う
ように、いつも同じワンピースなのだ。そしてヌードモデルの仕事も変。カメ
ラマンの趣味なのか、いつもガンガン音楽をかけてエテルに激しく躍らせる。
これ何というダンス?と思うような変なダンスだ。カメラマンは1度興奮のあ
まりなのか心臓発作を起こして倒れるのだが、死んだと思ってたら生きてるし。
奇妙なシーンが多い。
そしてケスリングが映画を撮っている(彼は主演も兼ねている)シーンがとても
多い。映画を撮る時はそうなのだろうが、同じシーンを繰り返し繰り返し演じ、
エテルはケスリングに才能がないとまで言われてショックを受ける。やがてエ
テルはケスリングよりミランと一緒にいる方が多くなるが、ミランにとってエ
テルはエレナの身代わりのような存在だった。エテルはそれでもいいと彼を受
け入れる。エテルも若いからとはいえ、ケスリングに行ったりミランに行った
り優柔不断な女だなあと思った。ケスリングとミランはまるで違うタイプの魅
力があるから仕方ないのだろうか。
終盤でケスリングはエテルにエレナを殺したことを打ち明けるが、エテルがそ
れを聞いて警察に行かないのも変である。とにかく変なシーンが多く、ズラウ
スキーの映画だから仕方ないか、と思って観るしかないようだ。エテル役のヴ
ァレリー・カプリスキーはヌードシーンが多く、そんなにスタイルがいいとは
思わなかったが、若いし健康美という感じ。エテルはミランへの愛を通して、
本物の女優として目覚めていく。ラストも妙な終わり方である。ケスリングが
髪型やメイクや衣装のせいでドラキュラ伯爵に見えた。




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リトリート・アイランド

2022-06-19 22:10:22 | 日記
2011年のイギリス映画「リトリート・アイランド」。

マーティン(キリアン・マーフィー)とケイト(タンディ・ニュートン)の夫婦は、
休暇で、スコットランド西海岸沖の孤島に向かう。彼らは夫婦関係を修復する
ためにそこのコテージでしばらくの期間を過ごす予定だった。そこへケガを負
った男が漂着してくる。夫婦はコテージに運び入れて事情を聞くが、男はジャ
ック・コールマン二等兵(ジェイミー・ベル)という軍人で、ボートが難破した
のだという。ジャックによると、外の世界では死の伝染病が蔓延しており、パ
ニックに陥っているという。無線も壊れて外界との連絡もつかず、夫婦はジャ
ックの話を信じるか信じないか決断を迫られる。

割とありがちなサスペンス映画だが、おもしろかった。マーティンとケイトの
夫婦の間には亀裂が生じており、夫婦の絆を取り戻すために以前も訪れたこと
があるこの孤島のコテージを訪れていた。不仲になったきっかけはケイトが流
産したのだが、マーティンはケイトが退院するとすぐ仕事に行っており、ケイ
トにはそれが許せなかったことだった。マーティンはずっと謝り続けてきたが
ケイトの態度は変わらず、マーティンは少しうんざりしていた。そんな2人の
前にボートが難破しケガを負った軍人のジャックが現れる。
ジャックは外の世界では悪性のインフルエンザが流行しており、感染したら命
を落とすと言う。いつもは無線でコテージの家主と連絡を取っているのだが、
無線は通じなくなっており、夫婦にはジャックの言っていることが本当なのか
どうかわからない。ジャックは絶対に外に出るなと言い、木材を使って窓など
を密封し始めた。マーティンは疑心暗鬼だったがジャックを手伝う。ケイトは
ジャックが取り仕切っていることに不快感を露わにする。このジャックという
男、見るからにうさん臭いのだが、とにかく無線が使えない以上、夫婦には確
かめようがなく、閉鎖された空間での3人のやり取りがとてもスリリング。
登場人物はほぼ5人で、そのうち3人をメインに物語は進行していく。シチュエ
ーション・スリラーというのだろうか、息詰まる感じでおもしろい。ジャック
は夫婦が不仲で夫がうんざりしていることも見抜いている。命令ばかりするジ
ャックに夫婦は嫌気がさし、マーティンは思い切って浴室の窓から外に出る。
すると外で家主とその妻が死んでいるのを見つけ、愕然とする。ジャックが殺
したのではないかと思ったマーティンは、ケイトと話し合って反撃に出るが、
相手は軍人なので敵うはずもない。そのうちマーティンは血の混じった咳をし
出し、ジャックは「外に出たから感染したんだ」と言う。
時間も90分と観やすく、終盤のどんでん返しもおもしろかった。こういう真相
だったとは。登場人物が少ないサスペンスというのは言っていることが本当な
のか嘘なのかなかなかわからなくて、興味深い。それにしてもケイトの短気ぶ
りには私も観ていて不快さを感じた。私は怒りっぽい人が苦手なので、マーテ
ィンの気持ちはわからなくもない。ケイトも傷ついたのかもしれないが。キリ
アン・マーフィー目当てで観た映画だが、救われないラストも結構良かった。




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冬薔薇(ふゆそうび)

2022-06-15 22:21:07 | 日記
2022年の日本映画「冬薔薇(ふゆそうび)」を観に行った。

横須賀の港町。専門学校へもろくに行かず、不良仲間とつるみながら、友人
や女から金をせびってダラダラと中途半端に生きる渡口淳(伊藤健太郎)。埋
め立て用の土砂を船で運ぶ海運業を営む彼の両親は、時代と共に減っていく
仕事や後継者不足に頭を悩ませながらも、何とか日々をやり過ごしていた。
淳はそんな両親の仕事に興味を示すこともなく、親子の会話もほとんどない
状態だった。ある日、淳の仲間が何者かに襲われる事件が起きるが、その犯
人として浮かび上がったのは、思いもよらない人物だった。

阪本順治監督による人間ドラマ。はっきり覚えていないが、私は阪本順治監
督の作品を観るのは初めてかもしれない。痛々しくも心に残る、そんな映画
だった。服飾関係の専門学校生の淳は、学校へほとんど通わず、不良たちと
一緒になって堕落した生活を送っている。両親は海運業を営んでいるが、母
の道子(余貴美子)とはたまに口をきくものの、父の義一(小林薫)とはほとん
ど会話はなかった。ある日淳はケンカをし、脚を大怪我して入院する。2ヵ
月後に退院して帰宅すると、失業した叔父(道子の弟)が義一に雇われ、息子
(淳のいとこ)と共に横須賀に来ていることを知る。淳は「何で俺に何も教え
てくれないんだよ」とふてくされる。
淳はだらしないところがあるが、悪い人間ではない。両親を嫌っている訳で
もない。不器用な生き方しかできないのだろう、と思う。いとこは中学校の
教師を辞め、早速塾講師の職を得ていた。「教師なんて安泰じゃん。何で辞
めたの」と聞くが、いとこは答えなかった。退院後も淳は相変わらず自堕落
な生活を送っていた。ある日知り合った年上の女性に気に入られ、絶対卒業
させてあげると言われて金をもらう。でも結局学校へは行かず、遊びに使っ
てしまうのだった。そんなある日、不良のリーダー格の男の妹が、何者かに
襲われる事件が起きる。
淳には兄がいたが、子供の時に不慮の事故で亡くなっていた。その兄が両親
の跡を継ぐ予定だったのだが、兄が死んでも両親は淳に継げとは言わなかっ
た。淳は家の仕事に興味を持っている様子はなかったが、もしかしたら跡を
継いで欲しいと言われたかったのかもしれない、と思った。父の義一もまた
不器用な人間なのだ。ある日淳はお金をくれた女性に学校へ行っていないこ
とがばれ、彼女は訴えると言い出した。淳は聞いていなかったが、彼女は弁
護士だったのだ。淳は久しぶりに船に上がって、父に「訴えられた」と言っ
た。それでも父はろくに返事をしない。淳は「たまには俺に何か言ってくれ
ねえかな。死んじまえでもいいから」と言うのだった。
淳はおそらく孤独だったのだろう。兄が死んでからずっと。母は割と小言を
言ったりしているが、父は子供に嫌われるのが怖くて何も言わないのだ。父、
母、息子の繊細な関係が見事に描かれていると思った。主演の伊藤健太郎は
役にとても合っていたし、小林薫、余貴美子、石橋蓮司、真木蔵人、毎熊克
哉といった脇を固めるキャストの演技もとても良かった。若者なりの悩み、
中年や老人なりの悩みというものがよく表現されていて、いい映画だった。




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ゴールデンスランバー(韓国映画)

2022-06-11 22:23:00 | 日記
2018年の韓国映画「ゴールデンスランバー」。

人気アイドル歌手を強盗から救い出し、一躍国民的ヒーローとなった優しく
誠実な宅配ドライバーのキム・ゴヌ(カン・ドンウォン)。ある日、久しく会
っていなかった友人ムヨル(ユン・ゲサン)から突然連絡が来る。再会の喜び
も束の間、目の前で次期大統領最有力候補者が爆弾テロにより暗殺されてし
まう。動揺するゴヌに向かってムヨルは、「お前を暗殺犯に仕立てるのが組
織の狙いだ。誰も信じるな、生きろ!」と警告して自爆。大統領直属の機関
である国家情報院はゴヌを暗殺犯と断定し、メディアでも大きく取り上げら
れる。ゴヌは、訳もわからぬまま追われる身となる。

伊坂幸太郎氏の小説の映画化。日本でも2010年に映画化されているが、私
は日本版は観ていないし原作も未読。宅配ドライバーのゴヌは、配達の途中
たまたまやってきた駐車場で、人気アイドルが強盗に襲われているのを目撃
し、犯人を撃退する。その勇敢な行動で表彰され、テレビでも報道され、「
模範市民」として一躍有名になる。配達に行く先々でサインや写真を求めら
れる程の人気ぶりだ。
ある日旧友のムヨルから連絡があり、再会を喜ぶが、ムヨルは何か悩んでい
る様子。ゴヌは荷物を持って「この荷物を届けたら話を聞くから待っていて
」と言うが、大通りで次期大統領最有力候補が乗った車が爆破され、暗殺さ
れてしまう。驚くゴヌに、「お前が大統領候補を暗殺して自爆する。それが
組織の筋書きだ。その荷物は数分後に爆発する」と言う。何のことかわから
ず動揺するゴヌからムヨルは荷物を奪い、携帯電話の番号が書かれた紙を渡
す。そしてゴヌに「誰も信じるな!生きろ!」と言い残すと車を走らせ、爆
死してしまう。そしてゴヌは訳もわからないまま暗殺犯として追われるよう
になる。
サスペンス、アクション、コメディ、青春ドラマと色んな要素があって、お
もしろかった。ノンストップ逃走劇という感じでハラハラした。ゴヌは「模
範市民」から一転して暗殺犯として手配され、国民は驚く。ムヨルの葬儀に
やって来た高校の同級生たちはゴヌが殺人犯だなんて信じられない。ゴヌの
父親のところにもマスコミが押し寄せるが、父親は息子は犯人じゃないと言
ってマスコミを追い払う。善良で真面目な青年がある日突然殺人犯にされて
しまったのだ。ゴヌは逃げる途中で同級生たちや謎の男に助けられるが、や
がて事件の裏に国家権力が潜んでいることを知る。
国家情報院の殺し屋たちや警察に追われて、逃げ通している普通の青年とい
う設定はちょっと無理がある感じだが、原作がそうなのだろう。ゴヌの脚力
や運動量はすごい。ハリウッド映画に負けないくらいのアクションやテンポ
の良さで、一気に観られる。とにかくスピーディーでスリリング。下水道に
追い詰められ、「国家のためなら死んでやるさ。ところで皆さん水泳は得意
ですか?」と言うシーンは、その後の展開が迫力満点でおもしろかった。ガ
ールフレンドにまで裏切られるのは気の毒だったけど(しかも彼女強い)、ラ
ストシーンは感動的だった。


ずっと前から欲しかった本を買いました。Amazonの中古です。本より送料
の方が高いという(笑)。ドイツでベストセラーになったサイコ・ミステリー
です。私は海外ミステリー小説が大好きです

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