猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ポーリーヌ

2013-02-27 02:10:29 | 日記
2001年のベルギー・フランス・オランダ合作映画「ポーリーヌ」。
知的障害のある66歳のポーリーヌ(ドラ・ヴァン・デル・グルーエン)は、姉マルタ(ジュリアンヌ・
デ・ブロイン)と一緒に住み、世話をしてもらっていた。他に妹のポーレット(アン・ぺーテルセン)、
セシール(ローズマリー・ベルグマンス)がいる4姉妹だ。ポーリーヌの朝は、庭の花の水やりから
始まる。ポーリーヌは花が大好きなのだ。それから朝食は食パン(みたいなもの)にチョコ・スプ
レッドを塗って食べる。それはマルタがやってくれる。
他にポーリーヌの好きなものは、妹ポーレットの店。服や雑貨の店だが、赤やピンクに彩られた
店内はポーリーヌの興味をひく。店のきれいな包装紙などをさわるので、ポーレットはマルタに
ポーリーヌを来させないように言っているのだが、ポーリーヌはすぐに出かけてしまう。
そしてオペラ歌手もしているポーレットのことも、ポーリーヌは大好きなのだ。
ある日突然マルタが死んでしまい、セシールもやってきて、ポーレットと2人でこれからの
ことを話し合う。だがマルタは遺言を残していた。2人でポーリーヌの世話をしなければ、
遺産は与えないというものだった。
ポーレットとセシールは交代でポーリーヌを自宅で面倒を見ることにする。
が、靴ひもも結べないポーリーヌの世話は、ポーレットには大変だった。オペラの公演も台無しに
され、閉口したポーレットはポーリーヌをセシールに預けた。
セシールは優しくしてくれた。花の祭典に連れて行ってくれたり、オルゴールを買ってくれたり。
だがセシールと同居しているフランス人の恋人は、都会的な2人の暮らしにポーリーヌが入って
きたことで振り回され、機嫌が悪い。その雰囲気を察知したポーリーヌは、ポーレットの家に
勝手に帰ってしまう。驚くポーレット。彼女は店をたたみ、オペラもやめ、ずっと夢見ていた海辺の
リゾートマンションに引っ越そうとしていたのだ。結局「私たちはマルタのような手厚い世話は出来
ない」と言って、ポーレットとセシールは遺産の相続を放棄し、ポーリーヌを施設に預けてしまう。


いい映画だった。とにかく映像がきれい。花の咲く庭や、ポーレットの店。ポーリーヌがお気に入り
なのがよくわかる。
この姉妹は、ポーリーヌはともかくとして皆独身だ。男性にはあまり縁がなかったのか?
町の人も、心の底ではポーリーヌをバカにしている。ポーリーヌがマルタにお使いを頼まれて
肉屋に行く場面があるが、ポーリーヌはサラミのことを「サミリ」と言い、店の人はわかっているのに
「サミリってなに?」と言って笑う。
後にポーレットが、肉屋の奥さんが普段からポーリーヌのことをバカにしているのだと知って
怒る場面があるが、ポーリーヌの世話にうんざりしながらも、大切な存在になっていっているのが
わかる、いい場面だと思う。ポーレット自身は気づいていないのだが。
ラストも完全なハッピーエンドではない。問題を残したまま終わる。
ヨーロッパ映画らしい、考えさせられる映画だった。ポーリーヌ役の人の演技がすごいと思った。
それと、マルタやポーレットの家がとてもかわいくて、ベルギーってこんなに家がかわいいの?
と思った。こじんまりしているのだが、キッチンのデザインや全体の造りがかわいいのだ。
憧れるなあ、あんな家。
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ブラッド・ワーク

2013-02-25 03:35:41 | 日記
クリント・イーストウッド監督・主演の「ブラッド・ワーク」を見た。
アメリカ映画らしいサイコ・サスペンスである。
FBI心理分析官のマッケレイブ(イーストウッド)は、いつも殺害現場に9桁の数字を書き残す
連続殺人犯を追っていた。ある時犯人らしき男を追いかけたが、心臓発作を起こして
取り逃がしてしまう。
それから2年後、マッケレイブは2カ月前に心臓移植手術を受け、FBIを退職し、クルーザーで
気ままに暮らしていた。
ある日グラシエラという女性が訪ねてきて、コンビニ強盗に射殺された自分の妹の写真を見せ、
犯人を捕まえてくれと言う。マッケレイブはもう警察官ではないと断るが、彼に移植された
心臓は妹のものだと言う。ドナーの情報は秘密にされているが、マッケレイブが心臓移植を
したという新聞記事を読み、妹が死んだ時期と照らし合わせ、そして何よりマッケレイブと
妹は非常に珍しい血液型であることがわかり、確信したのだ。
女性が殺されたために自分の命が助かったことを考え(このことが後半で重要な意味を持つことが
わかる)マッケレイブは個人的に捜査することを決める。
マッケレイブは昔の警官仲間を頼って調べていくが、まだ心臓移植から間もないので、発作との
戦いになる。主治医は捜査をやめるよう忠告する。
グラシエラの妹が殺される少し前に、ATMで男性が射殺されるという事件が起きており、防犯
カメラの映像から同一犯だと思われていた。
だがマッケレイブはその2件がただの強盗殺人ではなく、2人の被害者を狙ったものではないか、
2人には何かつながりがあるのではないか、と考えるようになった。
そして、意外な事実を掴む。

うーん、まあそこそこおもしろかった。アメリカのサイコ・サスペンスやミステリーはそんなに
ハズレは多くないと思う。それなりにおもしろい。
でもクリント・イーストウッドが監督・主演する程の映画ではないなあ、と思った。
犯人の動機もちょっと無理があるというか、そこまでやる!?という執着ぶり。
登場人物もおじさんおばさんばかり。地味というか華がないというか、せめてグラシエラ役は
若くてきれいな女優がやってたら良かったのに、と思った。
でもおもしろかった。タイトルの意味も後半にわかる。
それにしてもイーストウッドは精力的だなあ。この映画の時は70歳過ぎだったが、背が高くて
しゃんとしてて、動作がおじいさんっぽくない。さすがダーティ・ハリー。

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過去のない男

2013-02-21 02:23:05 | 日記
「タワーリング・インフェルノ」の怒りがまだ残っている。映画を見てこんなに腹が立つのは
珍しい。なんだあの母親はさっさと失神して救助してもらって、幼い子供たちは他人に
命がけで守ってもらって。しかもその人は死んだんだよ。一生ざんげしてろ(`・ω・´)

2002年のフィンランド映画「過去のない男」。
ある日夜行列車び乗って、1人の男(マルック・ペルトラ)が、ヘルシンキの町にやってくる。
ベンチで夜明けを待っていると、暴漢に襲われ、身ぐるみはがれてしまった。
重傷を負った男は記憶がなくなり、自分がどこの誰だかわからなくなってしまった。
親切な夫婦の計らいで、コンテナに住まわせてもらうようになった。
身元がわからないまま、男は静かに暮らしていた。
毎週金曜日は救世軍からスープが配給される。コンテナに住まわせてくれた夫に連れられて
救世軍のところへ行った男は、軍の女性イルマ(カティ・オウティネン)を好きになってしまう。
少しずつ親しくなるイルマと男は、やがて愛し合うようになった。
しかし、男が偶然に関わってしまった銀行強盗のことで、地元の新聞に載り、男の身元が
判明した。男には妻がいた。

ストーリーはシンプルである。ラストもほのぼの。
カウリスマキの映画について書くと、必ず「社会の片隅で生きる労働者や失業者の苦労とその
回復」が特徴だと書かなければならない。これはこの人のライフワークなんだろうな。
貧しい人々を見つめる目は暖かい。「ル・アーブルの靴磨き」でも、他の作品においても。
コンテナ住まいの夫婦はどう見ても貧しいのに、「住むところもあるし、夫に仕事もあるし、
恵まれてるのよ」と言う。
救世軍のイルマの部屋(寮かな?)は狭く、いかにも北欧風のかわいい家具があり、その暮らしは
やはり慎ましい。
1番印象に残ったのは、男がティー・バッグを持って食堂を訪れ、店主に「お湯をくれ」と言い、
店主がいいよと言うと、男はカップに持参のティー・バッグを入れ、ポットのお湯を注ぐ。
そうして出がらしの紅茶を飲む。それを見ていた店主は有り合わせのもので料理を作り、
「お代はいらないよ」と言って男に差し出すシーンだ。このシーンは感動的だ。

この「男」を演じたマルック・ペルトラという人は、日本映画の「かもめ食堂」にも顔を出して
いたが(かもめ食堂はフィンランドが舞台である。おもしろくも何ともなかったが)51歳の若さで
亡くなったそうだ。
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タワーリング・インフェルノ

2013-02-15 02:17:17 | 日記
はー懐かしい。子供の頃テレビで見たことがある「タワーリング・インフェルノ」が
BSでノーカット放送された。嬉しい。
サンフランシスコにそびえたつ138階建てのビルで、落成式が行われようとしていた。
1階から80階まではオフィス用、その上は住宅用に作られたこのビルには、既に多くの
人が住んでいた。そして135階では300人の客を招いてパーティが始まっていた。
頑丈に建設されたはずのこのビルの81階の倉庫室から、ボヤが出た。
ビルのオーナー、ダンカンの娘婿が、設計士ロバーツ(ポール・ニューマン)が指示していた
丈夫なワイヤーではなく、数段弱いワイヤーを発注し、浮いた費用を着服していたのだ。
そのため手抜き工事となり、電気系統の異常が生じたのだった。
火事を知ったロバーツはすぐに管理室と連絡を取り、パーティ会場にいるダンカンに
皆を避難させるよう言うが、ダンカンは「81階の火事が135階まで来るはずはない」と
ビルの頑丈さを過信しており、聞く耳を持たない。
火は次第に燃え上がっていった。消防車が駆けつけ、消防隊長のオハラハン(スティーブ・
マックイーン)はこのままだと大惨事になると予想し、ロバーツとともにビルの見取り図を
見ながら、計画的な消火活動を始めた。
ロバーツは自分が言っても聞いてくれないと、オハラハンにダンカンの説得を頼む。
ダンカンはようやく事態を把握したらしく、客たちの避難誘導を始め、同時に娘婿を責めた。
だが火の手が迫ってきているのを135階の客たちはよく理解できないでいた。
あちこちで爆発が起き、オハラハンはじめ消防隊員たちとロバーツの決死の救助活動が
始まった。

1974年の映画とは思えない程の迫力。あの当時こんな映画が作れていたのって、すごい。
もうハラハラドキドキ、見ていて手に汗握るというのはこういうことか、と思える映画。
138階建ての超高層ビルで火災が起きたら怖いだろうなあ。火が上階まであがってきたら、
逃げ場はない。
ヘリコプターで救助しようとするが、失敗してビルに激突したり、隣のビルとロープでつないで
1人ずつリフトで救助する場面など、見ているだけで怖かった。
ビルの住人や客や消防士が次々に命を落としていくのは辛かった。
ラストも圧巻。すごいとしか言いようがない映画だ。
そしてキャストが豪華。ポール・ニューマン、スティーブ・マックイーン、フェイ・ダナウェイ、
ウイリアム・ホールデン、ロバート・ワグナー、リチャード・チェンバレン、フレッド・アステア
など、大スターが勢揃い。それも見る価値あり。

気になったのが、女性と子供2人(10歳くらいの男の子と5歳くらいの女の子)が住む部屋を、
知人の女性がドアをドンドン叩いているところに、ロバーツらがやってきて、助けるエピソードが
あるのだが、その母親は早々に気を失っておりすぐに助け出されるが、子供たちがどこに
いるのかわからず、ロバーツが必死で探し出し、その後知人の女性を含めて4人で行動することに
なり、4人は恐ろしい大変な目に遭いながら、力を合わせてやっと助かるのだ。
が、他人の幼いこどもたちを命がけで守ったその女性は後に死んでしまうのだ。
これはひどい、この人は死なせないで欲しかった、と思った。かわいそう過ぎる。
と同時に母親に怒りを感じた。なんだあんたさっさと気絶して救助されて。他人があんたの
子供たちを命がけで助けたというのに。男の子でさえロバーツを手伝って活躍したというのに。
この母親は救助されて以降、登場しないのだ。
この話だけがしっくりこないというか、ここだけはストーリーを変えて女性を助けてやって
欲しかった、と思った。ああもうなんか今もイラッとする。

でも、パニック映画としては名作だと思う。1970年代って、パニック映画がたくさん作られた
記憶がある。B級映画も多かったと思うが、この「タワーリング・インフェルノ」や「ジョーズ」や
「エアポート’75」などはとてもおもしろかった。
「ジョーズ」なんかテレビで放送される度につい見てしまう。
でもやっぱり「タワーリング・インフェルノ」が1番すごいかも。パニックだけでなく人間模様も
細かく描かれていて。
子供の時に見たきりだが、何故かロバート・ワグナーが死ぬところは覚えていた(・∀・)
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戦場にかける橋

2013-02-10 02:02:45 | 日記
1957年のアカデミー賞受賞作、「戦場にかける橋」を見た。有名な映画なのでいつか見たいと
思っていたのだが、こんなにすごい物語だとは知らなかった。
第二次世界大戦中のタイとビルマの国境付近にある日本軍の捕虜収容所が舞台となっている。
捕虜のアメリカ人シアーズ少佐は脱走を計画し、ある日密かに脱走した。
ある日ニコルソン大佐率いるイギリス軍捕虜たちが送られてきた。
バンコクとラングーンをつなぐ橋の建設のためである。捕虜収容所の所長、斉藤大佐は、
捕虜たち総出で橋の建設に取りかかるよう命じたが、ニコルソン大佐は「将校の労役は
ジュネーブ条約に反する」と拒否した。どれだけ説得しても応じないニコルソン大佐を、
斉藤大佐は「オーブン」と呼ばれる倉へ入れた。
体を動かせる大きさもない程の木製の倉に、ニコルソン大佐は何日も入れられることになった。
途中、斉藤大佐はニコルソン大佐のもとにアメリカ人軍医を使わし、説得するよう言った。
が、ニコルソン大佐の心は動じない。「尊厳の問題だ」と言う。
将校たちが作業に加わっていないため、橋の建設は遅れていた。それを憂慮した斉藤大佐は、
兵士たちに恩赦を出すという条件を提示し、ニコルソン大佐はそれに応じた。
衰弱したニコルソン大佐はやっと倉から出され、兵士たちは歓喜に沸いた。
それからは実質ニコルソン大佐が建設作業の指揮を執り、斉藤大佐は橋の完成期日が迫って
いるためその屈辱に耐えた。
ニコルソン大佐には、士気が下がっている兵士たちに、橋の建設を通して何かをやり遂げる
喜びや誇りを取り戻して欲しいという気持ちもあり、立派に兵士たちをまとめた。
やがて橋は完成した。仕事を終えた兵士たちは大喜びをした。
しかし、脱走して軍の病院でくつろいでいたシアーズ少佐のもとに、イギリス軍少佐が訪ねてきた。
バンコクとラングーンの間に橋がかけられ、鉄道が通れば、日本軍はインドを攻めるであろうから、
橋を壊す手伝いをして欲しいと言うのだ。
1度は脱走したシアーズも、またあの地に戻ることを決意した。そして橋を爆破するために、
シアーズを含む4人の軍人が向かった。

あらすじを書くのが難しい。戦争や捕虜といったことをよく理解していないからだろう。
2時間45分の大作で、とても見応えがあった。特に前半、ニコルソン大佐が「ジュネーブ条約に
反している」という理由で、将校の労役を断固として拒み、日本軍に懲罰として倉に入れられる
場面は、本当にひどいと思った。あんなところに飲まず食わずで閉じ込められていたら、
死んでしまう。じりじりと照りつける太陽。ニコルソン大佐の苦しみを感じた。
そして橋が建設され、「この橋はアメリカ、イギリス人捕虜たちによって建設された」という文字が
彫り込まれた金属板を、釘で木に打ち付ける場面は感動的だ。
しかしその一方では、橋を爆破する計画が進められているという皮肉。捕虜たちが必死に働いて
作った橋をだ。

この映画には戦闘の場面はほとんど無く、普通の戦争映画とは少し違っているが、それでも、
戦争の悲惨さ、ニコルソン大佐が言うところの「人間の尊厳」を感じさせられた。
アカデミー賞受賞もうなずける大作である。
それと、あまりにも有名なテーマ曲。映画を見たことがない人でも、このテーマ曲はどこかで
耳にしたことがあるのではないか。
テンポが良く明るいこの曲が、物語の悲惨さを際立たせていると思う。
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