猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

眺めのいい部屋

2017-08-30 23:55:31 | 日記
1986年のイギリス映画「眺めのいい部屋」。

1907年。イギリスの良家の令嬢ルーシー(ヘレナ・ボナム・カーター)は、年配の独
身のいとこシャーロット(マギー・スミス)を付き添い人として、イタリアのフィレ
ンツェへとやってきた。イギリスからの観光客で賑わうペンションで、案内された
部屋が、期待していたアルノ河に面した眺めの良い部屋ではなかったことに不満を
持ったシャーロットは苦情を言うが、それを聞いていた宿泊客のエマソン(デンホル
ム・エリオット)は、息子のジョージ(ジュリアン・サンズ)と共に泊まっている眺め
のいい部屋と交換してもいいと申し出る。イギリスの階級制度の常識から外れるエ
マソンの言動に、1度は辞退したシャーロットだが、偶然同宿していたルーシーの
地元教区のビーブ牧師(サイモン・カロウ)に促され、結局は申し出を受けることに
する。翌朝、1人で街に出て観光していたルーシーはエマソンと行動を共にする。
だが、広場の喧嘩で刺された男が血だらけになっている場面に出くわしたルーシー
は気絶し、ジョージから介抱され、2人はお互いを意識し始める。後日、他の宿泊
客たちとピクニックに出かけたルーシーは、ジョージと2人きりになった麦畑でキ
スを交わした。2人の仲に気づいたシャーロットは、予定を繰り上げルーシーをイ
ギリスに連れ帰る。

もっとシリアスな話なのかと思っていたら、違った。ロマンチック・ラブストーリ
ーというところか。イギリスからフィレンツェに旅行に来た良家の令嬢ルーシーと、
付き添い人の年配のいとこシャーロット。シャーロットはルーシーの保護者のよう
な存在だ。だが部屋がアルノ河に面した眺めのいい部屋ではなかったことから物語
は始まる。労働者階級のエマソン親子が自分たちの眺めのいい部屋と交換してもい
いと申し出るのだ。困惑したシャーロットだったが、結局申し出を受ける。まだ若
いルーシーの無邪気さが印象的。彼女はエマソン親子に対して偏見などないのだ。
やがてルーシーとエマソンの息子ジョージは惹かれ合う。それを知ったシャーロッ
トは急いでルーシーをイギリスに連れ帰ってしまうのだ。
イギリスの級制度のシビアさを改めて感じた。「林檎の木」という小説(私がとても
好きな小説)でもそういうエピソードが出てくるが。そして帰国した後ルーシーは、
教養の高いシシル(ダニエル・デイ・ルイス)という青年と婚約する。だがエマソン
親子と再会してしまう。シシルとジョージの間で揺れ動くルーシー。というより自
分の気持ちに気づいていないのだ。
ジョージとビーブ牧師とルーシーの弟フレディ(ルパート・グレイヴス)の3人が全
裸で水浴びをするシーンは印象的。とにかく映像が美しい。最初のフィレンツェの
街並みも素敵だし、イギリスの田園風景も、女性たちが着ているドレスや家の中の
調度品も美しい。目の保養になる、女性向けの映画だなと思った。きっちりとした
シャーロットは、昔のイギリスにはああいう人いそう、と思わせるし、若いヘレナ・
ボナム・カーターやルパート・グレイヴスがかわいかった。




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ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦

2017-08-25 22:42:53 | 日記
チェコ・イギリス・フランス合作映画「ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺
作戦」を観にいった。

1941年冬、ナチス統治下のチェコ。イギリス政府とチェコスロバキア亡命政府の
指令を受け、2人の軍人、ヨゼフ・ガブチーク(キリアン・マーフィ)とヤン・クビ
シュ(ジェイミー・ドーナン)がパラシュートでプラハに潜入した。彼らの目的は、
ナチス親衛隊大将ラインハルト・ハイドリヒの暗殺、コードネーム「エンスラポ
イド(類人猿)作戦」だった。国内に潜むレジスタンスの案内で、ヨゼフとヤンは
隠れ家に向かう。滞在先となるモラヴェツ家の夫人(アレナ・ミフロヴァー)と息
子のアタ(ビル・ミルナー)はレジスタンスの一員だった。夫は何も気づいていな
いが、家政婦のマリー(シャルロット・ルボン)は事情を知っているらしい。ヨゼ
フとヤンは愛する祖国の未来と平和のために、無謀ともとれる作戦に臨む。

実際の事件に基づいた戦争サスペンス映画である。ハイドリヒ暗殺事件は第二次
世界大戦中、最も凄惨な史実の1つと言われているらしいのだが、こんなことがあ
ったなんて知らなかった。ラインハルト・ハイドリヒはチェコを統治していたナ
チスの大将だが、あまりに残忍なために「金髪の野獣」「プラハの死刑執行人」
などとチェコ国民に言われ恐れられた。そのハイドリヒが、レジスタンスの若者
たちによって暗殺された。作戦は成功したに見えたが、想像を絶するようなナチ
スの報復が待ち受けていた。
リアルな緊迫感と迫力に満ちていて、とてもおもしろかった。ヨゼフとヤンの隠
れ家になったモラヴェツ家、善良な家族だが、妻と息子がレジスタンスで夫は何
も知らないなんてことあるのだろうか。そういう時代だったのだろうが、ちょっ
と驚いた。ヤンが木で小さな人形を彫っていて、作戦決行の前にそれをモラヴェ
ツ夫人に手渡し、夫人がポケットに入れるシーンがあって、私は何の意味がある
のかわからなかったのだが、あんな残酷な展開が待っていようとは…ショックだ
った。
終盤のクライマックスの教会での戦闘シーンは長く、本当に観ていて辛かった。
映画はかなり事実に忠実に作られているらしく、ヨゼフとヤンも実在の人物であ
る。ハイドリヒ暗殺後のチェコの被害や犠牲を考えると、暗殺は正しかったのか、
考えさせられる。それでも彼らは戦いたかった。ヨゼフの「俺はチェコ人だ」と
いうセリフが印象に残る。ナチス・ドイツの、そして戦争の恐ろしさを改めて思
い知らされる映画だった。




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雨にゆれる女

2017-08-22 02:15:32 | 日記
2016年の日本映画「雨にゆれる女」。

則夫(青木崇高)は飯田健次という別人に成りすまし、勤務先の工場と自宅を往復
するだけの孤独な生活を送っていた。自分のことを何も話さず、極力人との関わ
りを避けようとする健次は職場では変人扱いされていた。ある日同僚の下田(岡山
天音)が家にやってきて、惚れた女が男から逃げたいと言うので匿って欲しいと頼
む。健次は断るが、最後には渋々引き受ける。工場に警察がやってきて、工場で
盗みを働いた下田が捕まったと伝えられる。理美というその若い女(大野いと)も
自分のことは話さず、正体は謎に包まれていた。ある夜、過呼吸を起こした理美
を健次が介抱し、2人の距離が縮まる。

心に秘密を抱えた孤独な男女の物語。タイトルにあるように、雨のシーンが印象
的である。則夫は10数年前ある犯罪を犯し、名前を変えてひっそりと暮らしてい
る。理美は犯罪ではないものの、自分の言動がある女性を不幸にしたことに罪悪
感を抱いている。2人とも罪悪感を持って生きてきたのだ。そしてこの2人は出会
うべきではなかった。愛し合ってはいけなかった。悲しい映画である。
下田によって健次の家に匿われた理美。しかし下田が逮捕され、2人は少しずつ
ではあるが打ち解けていく。やがて釈放された下田が理美を迎えにくるが、理美
と健次の親密な様子を見て激怒し、理美は下田を拒絶する。愛し合うようになっ
た2人だが、それぞれが胸に抱えている秘密と罪悪感は、あまりにも大きなもの
だった。そして真相がわかった時悲劇が起きる。
最初の方で、幼い姉弟が自動販売機の前でジュースを買おうかどうしようか迷っ
ているシーンがある。姉弟のやっぱりやめよう、という会話を聞いて、健次が小
銭を入れてやって「買え」と言うのだが、これは重要なシーンである。健次はそ
んな親切な男ではない。それなのに何故その姉弟のことを気にかけたのか。それ
は後にわかる健次の秘密につながっているのだ。
愚かだった過去の2人。だがそれは今更どうしようもないことだ。よく思うけれ
ど、日本のマイナーな映画ってどうしてこんなに暗いのだろう。暗くて、救いが
ない。「ケンとカズ」や「蟻が空を飛ぶ日」なんかも本当に暗かった。まあ、暗
い映画好きなんだけど。




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キリングゲーム

2017-08-19 15:53:53 | 日記
2013年のアメリカ映画「キリングゲーム」。

元アメリカ軍人のベンジャミン(ロバート・デ・ニーロ)は、退役してから家族とも
疎遠になり、人里離れた山小屋で独居生活を静かに営んでいた。そこにセルビア人
の元兵士コヴァチ(ジョン・トラボルタ)が現れ、2人は意気投合し楽しい夜を過ご
す。翌日2人はハンティングに出かける。しかし、旧ユーゴスラビアのボスニア紛
争時にベンジャミンが行った作戦の生き残りであるコヴァチは、壮絶な"人間狩り"
をベンジャミンに対して容赦なく仕掛けてくる。戦争の記憶を封印したいベンジャ
ミンと、未だ戦争を終わりにしていないコヴァチは、それぞれの思いを胸に、命
をかけた戦いを繰り広げる。

ジョン・トラボルタとロバート・デ・ニーロという珍しい顔合わせのサスペンス・
アクション映画。家族とも疎遠になり、山小屋で1人で暮らす元アメリカ軍人のベ
ンジャミン。車が故障し困っていたところに、セルビア人の元兵士コヴァチが現
れ、修理してやる。雨が降ってきたので、ベンジャミンはコヴァチを夕食に誘う。
だがコヴァチは旅行者を装って現れたが、それは偶然ではなかった。普段他人と
接することのないベンジャミンだったが、コヴァチとは気が合い、楽しい時間を
過ごした。2人は翌日ハンティングに行く約束をする。
翌朝ハンティングに出かけるが、ベンジャミンはコヴァチが自分の命を狙ってい
ることに気づく。コヴァチの目的はベンジャミンを殺すことで、次々と罠を仕掛
ける。元軍人のベンジャミンもそれに応酬し、2人の戦いが始まる。優勢、劣勢は
交互にといった感じで、とてもハラハラする。残酷なシーンも多いが、とにかく
「痛い」映画だ。戦争とはこんなにも人の心を狂わせるのかと改めて思う。ナチ
ス親衛隊のメンバーが元は普通の人だったりするように、ベンジャミンもまた普
通の人だったのだろう。その彼がボスニア紛争時に行った残虐行為をコヴァチは
未だに許せていない、忘れていないのだ。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争について私は理解するのが難しい。私がバカなの
か、日本人にはピンと来ないのか。第二次世界大戦以降ヨーロッパでの最悪の紛
争になったと言われているが、何故そこまで被害が広がったのか。犠牲者の数を
見ると本当にゾッとする。人間とは何と愚かな存在なのか。ラストは私の予想と
は違っていたが、なかなかおもしろかった。




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ギャルソン!

2017-08-17 16:25:25 | 日記
1983年のフランス映画「ギャルソン!」。
パリのとあるブラッスリー。そこでチーフ・ウエイターとして働くギャルソンのアレ
ックス(イヴ・モンタン)は、海辺のリゾート地に子供たちのための遊園地を作るのを
将来の目標として、日夜励んでいる、バツイチの中年男だ。彼の勤めるブラッスリー
はとてもはやっていて、手際よく給仕をしなければならないが、アレックスの優雅な
動きは評判だ。彼には資金作りの頼りでもあるグロリア(ロージー・ヴァルト)という
金持ちのミセスのパトロンがいる。アレックスの心をつなぎとめようとグロリアの方
は必死だが、彼の方は逃げ腰だ。アレックスは同僚のギャルソン、ジルベール(ジャ
ック・ヴィルレ)をアパートに泊めてあげている。妻との離婚話が進んでいるためだ。
ある日アレックスは、昔の知り合いのクレール(ニコール・ガルシア)とバッタリ再会
する。恋心が湧き上がるアレックス。人妻であるクレールは夫とはうまくいっておら
ず離婚するつもりだと言う。2人は付き合いだすが、彼女は今はアフリカに行ってい
る恋人を愛していると打ち明け、アレックスはショックを受ける。

イヴ・モンタン主演のおしゃれでほろ苦いドラマ。この映画を観るとフランス人って
こんなに同時に何人もの人を好きだったり付き合ったりしているのだろうか、と思う。
主人公のアレックスはバツイチ独身とはいえ、年上の人妻と付き合い、若い恋人とも
付き合い(彼女も別の男と結婚すると言って去っていくし)、更に再会した昔の知り合
いとも付き合い出す。かといって女たらしという感じではなく、それぞれに対して真
剣のようで、若い恋人から振られた時はそれなりにショックを受けていた。この恋人
もアレックスと他の男と二股かけてたわけだし。クレールにしたって既婚者でありな
がら真剣に愛している恋人がおり(仕事でアフリカに行っているが)、アレックスとも
付き合い始めるし。皆が二股、三股している。よくそんなに何人もの人に愛情を持つ
ことができるなーと、ある意味感心する。
極めつけはアレックスの同僚のジルベールだ。彼は妻子がいながら他の女性とも家庭
を持ち(もちろん子供もいる)、その女性にいいかげん妻ときちんと離婚してこい、そ
れまで家には入れないと言われて追い出されたのだ。妻の所へ戻る気はなく、アレッ
クスのアパートに居候させてもらっている。何と言うのか、恋愛に対してすごくパワ
フルだ。フランス人皆が皆こうじゃないのだろうけど。もつれまくってる感じ。私に
はそんな気力はない(笑)
ブラッスリーという言葉を知らなかったので調べてみたが、レストラン>ブラッスリ
ー>カフェ、といった感じの位置づけだが、曖昧らしい。アレックスの働くブラッス
リーはとても忙しく、チーフ・シェフがいつも怒鳴っている。特にジルベールはよく
ミスをするので怒られている。アレックスとジルベールは親友だが、アレックスのち
ょっとした態度で誤解され、ジルベールに君は冷たいと言われてしまったりする。
ラストはちょっとアレックスがかわいそう。でも嬉しいことも起きるし、こういう悲
喜こもごもを描いた映画、好きだなあ。なんと言ってもイヴ・モンタンがかっこいい。
コート姿もいいが、ギャルソン姿が最高にかっこいいのだ。とても好きなタイプの映
画だった。




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