猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ディアスキン 鹿革の殺人鬼

2020-02-27 22:08:17 | 日記
2019年のフランス映画「ディアスキン 鹿革の殺人鬼」を観にいった。

憧れの鹿革ジャケットを手に入れたジョルジュ(ジャン・デュジャルダン)。フリ
ンジのついたカウボーイ風のジャケットは完璧で、それを着た自分は非の打ち所
がないほど美しい。その異常なまでの鹿革への愛情は、やがて自分以外でジャケ
ットを着る者への憎悪へと変わっていく。ビデオカメラを片手に街へ繰り出した
ジョルジュは、"死のジャケット狩り"を開始する。

異常なほど鹿革のジャケットに魅せられた男の物語。ジョルジュは夢にまで見た
鹿革のジャケットを手に入れる。早速ジャケットを着てバーで飲んでいると、客
の女に職業を尋ねられる。ジョルジュはとっさに「映画を作っている」と言って
しまう。するとバーのウエイトレスのドゥニース(アデル・エネル)が興味を示し
てくる。彼女はいずれ映画の編集の仕事をしたいと思っていたのだ。ジョルジュ
が本当に映画製作の仕事をしていると思ったドゥニースは、ジョルジュに仕事の
ことを色々と聞いてきた。
一方ジョルジュはジャケットを愛するあまり、ホテルの部屋でジャケットと会話
をするようになる。そして帽子、靴、ズボン、手袋と鹿革のアイテムが増えてい
き、それらを身につけた自分を見ては悦に入っていた。やがてその執着は、自分
の他にジャケットを着ている者への憎悪になっていく。ジョルジュは街でジャケ
ットを着ている人を見ると殺害し、被害者が着ていたジャケットを脱がすという
行為に出てしまうようになる。そしてその殺人シーンをビデオカメラで撮影し、
ドゥニースに見せる。ドゥニースは「モキュメンタリーだわ」と言って喜び、編
集をさせて欲しいと申し出る。
もう意味不明で理不尽で異常な映画である。自分以外にジャケットを着る者は許
さないと言っても、鹿革だけでなく他のジャケットにもそれは向けられるのだ。
ジョルジュは相当イカレている。でも殺人は極端だとしてもこういう人っている
のかもしれない、と思った。そしてそれを映画にしてしまうところがさすがフラ
ンス映画。これはサスペンスなのか、サスペンス・コメディなのか。
街にあんなに死体が転がっているのに警察が動かないところとか、ジョルジュを
じっと見つめる少年は何だったのかとか、わからないところはあるけれど結構お
もしろかった。変態のおじさんの異常な映画である。




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ブリッツ

2020-02-22 22:01:18 | 日記
2011年のイギリス映画「ブリッツ」。

ロンドン市警の荒くれ刑事トム・ブラント(ジェイソン・ステイサム)は、常に
犯罪者を徹底的に打ちのめしてきた。そんなある日、ロンドンで警官ばかりを
狙う連続殺人事件が発生。タブロイド紙の記者ダンロップ(デヴィッド・モリ
ッシー)が「ブリッツ」と名乗る犯人、バリー・ワイス(エイダン・ギレン)か
ら連絡を受ける。ブリッツはダンロップに記事を書かせることで予告殺人を行
い、警察を挑発する。ブラントは新任警部ポーター・ナッシュ(パディ・コン
シダイン)と共に犯人を追う。

ジェイソン・ステイサム主演のクライムサスペンス映画。犯罪者に対しては容
赦せず、どんな手を使ってでも逮捕してきた刑事ブラント。マスコミからはそ
の捜査手法をやりすぎだと言われている。ある日警官が殺され、その後も警官
殺しは続く。ロンドン市警は捜査本部を立ち上げ、警部ナッシュを迎える。ブ
ラントとナッシュは共に捜査することになるが、ある日犯人バリー・ワイスが
捕まる。ところがワイスは証拠不十分で釈放されてしまう。
ジェイソン・ステイサムの映画の割にはアクションは控え目。むしろ、ほぼな
い。でもハードボイルドなサスペンスものといった感じでなかなかおもしろか
った。サイコ・サスペンスと言ってもいいかもしれない。ナッシュがゲイとい
う設定もユニークで良かった。ブラントはワイスについて婦警と共に調べるが、
微罪だがすごい数の逮捕歴があり、殺された警官たちは皆ワイスを逮捕したこ
とがあるということがわかり、次に狙われるのは誰なのかがわかってしまう。
ブラントとナッシュは再びワイスの逮捕へ向かう。
ワイスの恐るべき執念深さ。そんなことで復讐なんてするだろうか。自分が悪
いのに。サイコパスの考えることはわからない。黒人の婦警と彼女が面倒を見
ていた少年のエピソードがうまく挟まっていて良かった。バランスがいいとい
うか。ラストのブラントのダンロップに対する仕返しも笑えた。ロンドン市警
はちょっとお粗末な感じもしたが、荒くれ刑事と紳士的なゲイの警部というコ
ンビが意外に良くて、私は結構楽しめた。全体的に古い感じのする映画だが、
イギリス映画っぽさが好きである。


だんだん眠たくなるノエル。

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青の稲妻

2020-02-18 21:53:38 | 日記
2002年の中国・日本・韓国・フランス合作映画「青の稲妻」。

2001年の山西省大同(ダートン)市。19歳のビンビン(チャオ・ウェイウェイ)は
仕事を失う。彼には恋人のユェンユェン(チョウ・チンフォン)がいたが、彼女は
北京市の大学を受験すると言い出す。ビンビンは北京市へ行くために兵役検査を
受けるが、肝炎を患っていることが判明し、不合格となる。ビンビンはウー(ワ
ン・ホンウェイ)から金を借りて、ユェンユェンに携帯電話を買い与える。ビン
ビンの親友であるシャオジィ(ウー・チョン)は、アルコール飲料のキャンペーン
・ガールであるチャオチャオ(チャン・タオ)と出会う。チャオチャオはチャオサ
ン(リー・チュウビン)というギャングと交際しているが、シャオジィはチャオチ
ャオに惹かれていく。

ジャ・ジャンクー監督の青春映画。大同という寂れた街を舞台にしている。失業
したばかりのビンビンだが、恋人は北京市の大学へ行くつもりだと言い出す。そ
れならば自分も北京へ行こうと兵役検査を受けるも、肝炎であることがわかって
不合格になってしまう。何もかもうまくいかないビンビン。ビンビンの親友のシ
ャオジィはアルコール飲料のキャンペーン・ガールのチャオチャオに恋をするが、
彼女にはギャングのチャオサンという恋人がいた。
19歳という年齢の青年2人の焦燥感というものが伝わってくる。街も何だかガラ
が悪くて、こんなところには住みたくないなあと思ってしまう。シャオジィが好
きになるチャオチャオはキャンペーン・ガールにしては少し年を取った感じがし
て、衣装や髪形が無理している感がある。シャオジィは彼女のどこが良かったの
かな。割と美人ではあるけれど。彼女もギャングの恋人と別れたいのか別れたく
ないのかがよくわからない。
少し退屈な感じのする映画だった。特に何も起きず、淡々と日常が流れていくか
らだろう。いや実際は色んなことが起きているのだが、ワンシーンワンシーンが
長いのだ。シャオジィがバイクを走らせている場面や、バスの中のチャオチャオ
とチャオサンの場面など、いつまで続くのだろうと思ってしまった。
WHOへの加盟、北京オリンピック開催決定など経済発展の波に沸く中国で、取
り残されていく大同市。その閉塞感というものはよく描写されていたと思う。退
屈さはあったが割と好きなタイプの映画だった。ジャ・ジャンクー監督作品は「
罪の手ざわり」がすごくおもしろかったなあ。あれはとても見応えのある映画だ
った。




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ロードキラー

2020-02-13 21:12:12 | 日記
2001年のアメリカ映画「ロードキラー」。

ボストンの大学に通うルイス(ポール・ウォーカー)は、ネブラスカへの帰省のつい
でにコロラドに住む幼馴染のヴェナ(リーリー・ソビエスキー)を拾い、大陸横断ド
ライブを楽しむことを計画する。だが母から連絡が入り、釈放された兄フラー(ス
ティーヴ・ザーン)をソルトレイクシティで先にピックアップすることになった。
強引なところのあるフラーはルイスをけしかけ、無線で1人のトラッカーをからか
い出す。しかし悪戯が過ぎた頃、ラスティ・ネイルと名乗るそのトラッカーの異常
ぶりが明らかになる。やがて2人はヴェナと落ち合うが、それは恐怖のドライブの
幕開けだった。

ちょっとくだらないけど、かなり怖いサスペンス映画。くだらないと思ったのは、
とにかく兄のフラーがバカすぎて。弟のルイスに女性の声真似をさせて、無線であ
るトラック運転手をからかったこと。普通そんなことするだろうか。ルイスも最初
は嫌がっていたけど、フラーがあまりしつこいので根負けして、ノリノリになって
きてしまって。フラーは自分のことを「俺は家族の鼻つまみ者」と言っていたけど、
ほんとそう。あんな人が家族にいたら嫌だな。大体男性の声が女性の声に聞こえる
ものだろうか。
ルイスとフラーは怒ったトラックの運転手に追い回されることになるが、その途中
でヴェナを拾い、ヴェナに事情を説明する。怯えるヴェナ。トラックは本気でルイ
スたちを殺そうと追ってきているのだから怖い。スピルバーグの「激突!」と似て
いるが(運転手の顔が映らないところも)、あちらは主人公は何も悪いことをしてい
ないのに大型のタンクローリーに追い回されるのがとても怖かったが、本作は明ら
かに主人公である兄弟が悪い。そしてからかった相手もサイコパスだったというこ
とが不運だった。
ハラハラドキドキのシーンの連続で、なかなか怖かった。トラック運転手の執念深
さと言ったら。途中で犠牲になる人も出てくる。兄弟は何というバカなことをして
しまったのだろうか。ラストもお決まりの終わり方。ゾッとした。




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ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

2020-02-08 22:50:59 | 日記
2019年のアメリカ映画「ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密」を観にいった。

世界的ミステリー作家ハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)の85歳の
誕生日パーティーがニューヨーク郊外の彼の豪邸で開かれた。その翌朝、ハーランが
遺体となって発見される。匿名の人物から依頼を受けた名探偵のブノワ・ブラン(ダ
ニエル・クレイグ)は、事件の調査を進めていく。莫大な遺産を抱えるハーランの子
供たちとその家族、家政婦、専属看護師と、屋敷にいた全員が事件の容疑者となった
ことから、裕福な家族の裏側に隠された様々な事情や人間関係があぶり出されていく。

探偵もののミステリー映画。大きなお屋敷、大金持ちの被害者、屋敷にいた人たち全
員が疑わしい、名探偵登場と言えばこれはもうアガサ・クリスティーの世界である。
舞台は現代のアメリカだが。実際監督のライアン・ジョンソンはクリスティーが大好
きだそうだ。富豪の作家が自らの誕生日パーティーの翌朝遺体で発見される。警察は
自殺だと判断するが、匿名の人物の依頼を受けてやってきた探偵のブノワは、自殺に
見せかけた他殺ではないかと推測する。警察とブノワは共同捜査を始めるが、死んだ
ハーランの遺産は莫大で、家族たちは遺産の行方を気にする。
誰もが怪しく見えて、犯人の想像がつかない。ハーランの健康状態に詳しい専属看護
師マルタ(アナ・デ・アルマス)はまだ若い女性だが、ハーランは彼女をとても信頼し
ており、友達だと言っていた。彼女は嘘をつくと吐いてしまう体質で、その言動にブ
ノワは興味を寄せていた。家族たちはハーランの死を悼みながらも最も関心があるの
は遺産の行方で、お互い疑心暗鬼になって口論になったりする。一見何不自由ない家
族だが、実は複雑な関係を抱えており、それが明るみになっていくと同時にブノワに
は事件の真相が少しずつ見えてくるのである。
ミステリーの王道でとてもおもしろかった。探偵のブノワも切れ者なのかへっぽこな
のかよくわからないところがユーモラスでいい。クリストファー・プラマーの存在感
はさすが。今90歳だそうだが、堂々とした風格で、物語の中心にどっしりと腰を据え
ている。ジェイミー・リー・カーティスとドン・ジョンソンが年を取っていてびっく
りした(特にジェイミー・リー・カーティス)。私はこの2人が結構好きなのだ。
キャストの演技は皆良くて、癖のある家族の面々をうまく演じている。マルタはエク
アドル移民だが、家族たちはハーランの友達だったマルタを家族同然に思っているよ
うなことを言っているが、実は見下しているのである。彼女がどこの出身かもはっき
り覚えていない。その点もこの物語の肝になっており、現代アメリカの実情も描かれ
ていて興味深い。ラストシーンも象徴的でとても良かった。




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