猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

猫は逃げた

2024-01-30 21:39:57 | 日記
2021年の日本映画「猫は逃げた」。

レディースコミック作家の町田亜子(山本奈衣瑠)は雑誌編集者の
松山俊也(井之脇海)と関係を持ち、彼女の夫で週刊誌記者の広重
(毎熊克哉)も同僚の真実子(手島実優)と浮気している。夫婦仲は
冷え切り離婚寸前の2人は、飼い猫のカンタ(オセロ)をどちらが
引き取るかでもめていた。そんな中、カンタが家に帰ってこなく
なってしまう。

離婚寸前の夫婦とそれぞれの浮気相手たちが繰り広げるラブ・コ
メディ。レディースコミックでエロティックな漫画を描いている
町田亜子と、作家志望だったが結婚を機に週刊誌記者の仕事に就
いた広重は今や離婚間近の夫婦。広重が同僚の真実子と浮気した
ことを告白したせいで、亜子は編集者の松山俊也と関係を持って
しまう。夫婦関係は冷え切っていたが、亜子から差し出された離
婚届に、広重は飼い猫カンタの親権を持ち出して決断を先延ばし
にする。そんなある日カンタが家からいなくなってしまう。
昔、イタリアの夫婦が離婚するに当たって飼い犬の親権でもめて、
裁判沙汰にまでなったという記事を新聞で読んだことがある。夫
婦にとって愛犬や愛猫は子供みたいなものであるはずだから、そ
ういうことも起きるかもしれないと思う。亜子と広重の夫婦も愛
猫カンタの親権でもめていた。いつも夕方には帰ってくるカンタ
が帰宅せず、2人は外をずっと捜し回る(猫は室内飼いをするべき
だと思う)。カンタの失踪をきっかけに、亜子と広重は出会った
頃の記憶を思い出していく。
とにかくセリフがおもしろい。亜子と俊也、広重と真実子のやり
取りにクスッとしてしまう。全体的に緩い感じの映画である。真
実子は広重との結婚を真剣に考えており、彼がなかなか離婚しな
いことにしょっちゅう不満を漏らしている。広重はカンタの親権
を持ち出してはいるが、離婚に踏み切れないのだろう。亜子は広
重の浮気を知ったので自分も浮気した、という感じで、真剣には
考えてはいない。
カンタはあることから見つかるのだが、それからの展開がおもし
ろい。亜子と広重の家のリビングにそれぞれの不倫相手と4人で
集合し、話し合いをするシーンは笑える。亜子が真実子に「泥棒
猫じゃなくて猫泥棒じゃない」と言って怒るのがいい。話し合い
の中で俊也は亜子に対して結構本気だったことを打ち明けるが、
そのシーンはちょっと切ない。こういうメンバー4人だと修羅場
になりそうなものだが、そこも緩く描かれているのがまたいい。
ラストは丸く収まるハッピーエンドなのだが、私は悲しかった。



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見知らぬ隣人

2024-01-25 21:51:19 | 日記
2022年の韓国映画「見知らぬ隣人」。

親のすねをかじりながら就職浪人を続けてきた32歳のチャヌ
(オ・ドンミン)は、5度目の警察官試験を目前に控えていた。
受験の申請期日が翌日に迫る中、彼はオンライン手続きの途中
で、残高不足のため受験費用が払えないことに気づく。チャヌ
は費用を工面しようと、友人に誘われるまま夜の街に繰り出し
たが、泥酔して翌朝目覚めるとアパートの隣の部屋にいた。そ
して隣には見覚えのない男の血塗れの死体があった。

警察官志望の男が、隣人宅に残された死体の謎に迫る密室サス
ペンス・コメディ。32歳になっても親の援助を受けながら警
察官を目指して勉強を続けるチャヌ。親からも見放される目前
で、次の試験は失敗が許されず人生崖っぷちに追い込まれてい
た。ある夜試験のオンライン手続きの途中で、残高不足のため
受験費用が払えないことに気づく。そこへ友人サンホから電話
がかかり、今皆で飲んでいるから出てこいと誘われる。受験費
用が足りなくて困っていることを話すと、サンホは貸してやる
から出てこいと言い、チャヌは夜の街に繰り出す。
チャヌは順風満帆な友人たちを前に思わず酒をあおり、酔い潰
れてしまう。翌朝、目を覚ました彼は何故か隣人の部屋にいた。
床には血塗れの死体があり、その状況から自分が容疑者となる
ことは明白だが、友人たちと酒を飲んだ後の記憶が全くない。
隣の部屋はよく男女のケンカする声が聞こえていて、うるさい
のでチャヌは大家のおばさんに相談していた。ではこれがその
男か?と考えを巡らすチャヌ。そして床には「大学の学科の優
秀賞コ・ヒョンミン」と書かれたガラスの表彰盾が落ちている
のを発見する。チャヌはヒョンミンが男をこの盾で殴って殺し
たのだろうかと推理する。
主人公のチャヌが本当にバカ。何故逃げない?何故通報しない
?これでは警察官試験に受からないはずだ、と妙に感心してし
まう。死体の頭の傷を見てトイレに駆け込んで吐くし、警察官
に向いてないと思う。そうこうしているうちにヒョンミンらし
き若い女性(チェ・ヒジン)が帰って来る。チャヌは思わずクロ
ーゼットに隠れるが、ヒョンミンは床の大量の血を拭いて、死
体を片付け始める。
チャヌは絶対警察官になってはいけないヤツだ。ヒョンミンに
見つかって、死体の片付けを手伝って欲しい、礼金をあげるか
ら、と言われる。「大学生がどうしてそんな大金を持っている
んだ」と聞くと、「ロトで当たった」と言う。その金を付き合
っているこの男が奪おうとしたので殺してしまった、と。チャ
ヌはベランダに出て「クソッ、かわいすぎる」などと悩んでい
る。ヒョンミンは確かに美人だが、チャヌのようなすっとこど
っこいは絶対警察官にならない方がいい(笑)。
警察官の試験を受けるのに、大学みたいに受験費用が必要だと
は知らなかった。日本もそうなのだろうか?チャヌは電話でサ
ンホから自らの酒癖の悪さを指摘され、口論になる。それでも
サンホは受験費用の不足分を振り込んでくれていた。サンホ、
いいやつ。まあまあおもしろかったが、この映画の教訓は「お
酒はほどほどに」である。最後の「あれ?」って何?(笑)


日向ぼっこノエル

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静かなるドン 後編

2024-01-20 21:39:09 | 日記
2023年の日本映画「静かなるドン 後編」。

関東進出を狙い、新鮮組との抗争で関西の鬼州組内部では跡目
争いが勃発。一方、新鮮組現総長・近藤静也(伊藤健太郎)は同
僚・秋野明美(筧美和子)が抗争に巻き込まれたことを悔やみ、
抗争を回避して裏社会から身を引くため、鬼州組と親子盃を交
わすことを提案する。坂本組長(寺島進)の妻・龍子(内田慈)は
その提案を受け入れず、亡き夫が信頼していた若頭・沢木(朝
井大智)を新組長にするが、龍子は悪徳幹部・汚田(宮崎吐夢)
の策略で殺される。彼女の死を新鮮組の犯行と思い込んだ沢木
は、全面戦争に打って出る。

新田たつお氏の任侠漫画の実写化の後編。新鮮組との抗争が激
化する中、鬼州組内部では次期組長の座を巡って混乱が広がっ
ていた。一方、静也は秋野とお互い思い合っているにも関わら
ず、ヤクザという立場が足かせとなり、一歩を踏み出せずにい
た。もし秋野と一緒になるとしたら、秋野は姐さんにならなけ
ればならず、もう普通の勤め人生活は送れなくなる。静也は自
分の信念とヤクザ社会の掟との間で揺れ動いていた。
そんな中で静也が出した決断は、鬼州組と親子の盃を交わし、
新鮮組を「子」とすることで、自分は総長の座から身を引くこ
とだった。当然組員たちは大反対をする。静也は1人で大阪の
鬼州組の事務所を訪問し、亡き坂本組長の妻・龍子に親子盃の
話をするが、「主人はそんなことを望んでいない」と断られる。
龍子は夫が信頼していた若頭の沢木を組長にするつもりでいた
が、汚田がそれに異を唱え、龍子を組長代理にすることを提案
する。
汚田は龍子に組長が務まるはずがないとわかっており、裏で実
権を握ろうと画策していた。そして秋野は自分のデザインが認
められ、個展を開くことになった。静也は個展を観に行くが、
そこには龍子も来ていた。秋野は静也と龍子が知り合いである
ことに驚くが、自分と静也とで龍子に東京見物をさせようと思
い立つ。このシーンがなかなかいい。秋野を中心に、静也と龍
子は束の間の堅気の時間を楽しむ。もんじゃ焼き屋で、事情を
知っている龍子が静也に「あんたも大変やな」と言うところが
良かった。
しかしこの後物語は大きく動く。汚田が部下に龍子を殺させ、
それを新鮮組の犯行に見せかけたのだ。沢木は怒り狂い、静也
が「殺したのは自分じゃない」と言っても聞かない。新鮮組組
員たちは鬼州組と戦争をしようと静也に訴えるが、静也はどう
しても首を縦には振らなかった。この辺りの静也の態度はちょ
っとイライラした。龍子があんなにひどい殺され方をしたとい
うのに…ずっと迷っているのだ。
しかし、静也を慕う運転手の鳴戸(深水元基)が妻子と共に殺害
されてしまい、とうとう静也の怒りは爆発し、単身鬼州組に乗
り込む。割とコミカルだった前編に比べ、後編はかなりシリア
スである。静也の「普段は温厚で優しいが1度キレると手がつ
けられない」というところもよく描かれていた。ラストは切な
いが、やっぱりユーモラス。新鮮組幹部の猪首(本宮泰風)がよ
く静也を「坊ちゃん」と呼んでいるのが良かった。



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静かなるドン 前編

2024-01-15 21:53:22 | 日記
2023年の日本映画「静かなるドン 前編」。

関東最大の暴力団・新鮮組総長の一人息子でありながら、ヤクザを
嫌い堅気としてデザイン会社で働く近藤静也(伊藤健太郎)。ある日、
父が殺害され次期総長を巡って内部抗争が激化し、一般社会にも影
響を及ぼす事態となる。やむなく総長の座を引き受けた静也は、新
時代のヤクザを目指して街の清掃や悪徳業者の摘発などに励む。一
方、関東進出をもくろむ関西最大の暴力団・鬼州組内部では新鮮組
を巡って対立が深まり、暴走した幹部たちが静也の同僚の秋野明美
(筧美和子)を拉致し、新鮮組との抗争へと発展する。

新田たつお氏の漫画を実写化した任侠アクション・コメディ。突っ
込みどころは多いものの(まあコメディ要素もあるからだろう)おも
しろかった。関東最大の暴力団・新鮮組の一人息子として育った近
藤静也。その生まれに反してヤクザを嫌い、堅気として生きたいと
願う彼はデザイン会社に就職し、今時の草食系男子として日々を過
ごしていた。しかし、新鮮組の総長が何者かに射殺されたことで、
静也は次期総長の候補となってしまう。当初はその頼みを断った静
也だったが、新鮮組の跡目を巡る争いが激化し、ヤクザの横暴が一
般市民に及んでいる様子を見て見ぬふりはできなくなる。
静也は昼間はサラリーマンとして働いているが、1人暮らしをして
いるのかと思ったら普通にヤクザの家に帰るのがおもしろい。そし
てサラリーマンとしてもポンコツで、上司に叱られてばかりいる。
静也がヤクザを嫌うのは、子供の頃から学校で白い目で見られてい
たことや、すぐにケンカを吹っ掛けられたことや、いつも護衛がつ
いていることなどが理由だった。とにかく普通の人として生きたか
ったのだ。
父が殺された後、母の妙(筒井真理子)に3代目を継ぐように言われ
るが、静也は断る。もちろん組員たちもおとなしい静也に継がせる
ことに「あの人は堅気じゃないですか!」と言って反対する。しか
し結局静也が3代目を継ぐことになり、静也はこれからの新鮮組は
「街の清掃をする。悪徳業者を捕まえる」といったことを目標に掲
げると言い、新鮮組はクリーンな極道を目指すと発表する。組員た
ちが「なんじゃそらー!!」と叫ぶのが笑えた。
一方、関西最大の暴力団・鬼州組は、新鮮組がフヌケになっている
ところを攻撃し、日本一の暴力団になろうと企んでいた。静也は会
社の先輩・秋野明美に憧れており、成り行きでヤクザの格好をして
一緒に食事をしたことがあり、その様子を鬼州組に写真に撮られて
いたため、秋野が拉致されてしまう。秋野を人質にとられた静也は
激怒する。静也は普段は温厚で優しいが、1度キレたら手がつけら
れない。母の妙も父も静也の体の中に流れるヤクザの血を知ってい
た。
静也が秋野と食事をした時、秋野が「あなたは会社の後輩に似てい
る」と言っていたが、同一人物だと気づかないものだろうかと思っ
た。いくら黒いサングラスをかけていても顔は同じなのに(笑)。鬼
州組組長がノロノロ運転の車にはねられてあっさり死ぬところも笑
えた。あんなに簡単に死ぬだろうか。すぐ病院へ運べば助かったの
では、と思った。
漫画は未読でコミックスの表紙くらいしか知らないが、漫画の静也
は身長が低くて小太りだ。どうして似ても似つかぬ伊藤健太郎を静
也役にしたのだろうと思ったが、若手の俳優で背が低くて小太りな
んて人いないだろうな。そこは大人の事情だろう。伊藤健太郎は白
いスーツだけでなく着物も似合っていた。そして静也を支える幹部
の猪首役の本宮泰風がかっこよかった。



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VORTEX ヴォルテックス

2024-01-10 21:29:57 | 日記
2021年のフランス映画「VORTEX ヴォルテックス」を観に行った。

映画評論家である夫(ダリオ・アルジェント)と元精神科医で認知症
を患う妻(フランソワーズ・ルブラン)はパリのアパルトマンで仲む
つまじく暮らしていた。離れて暮らす息子・ステファン(アレック
ス・ルッツ)は2人を心配しながらも、家を訪れ金を無心する。心
臓に持病を抱える夫は、日に日に悪化する妻の認知症に悩まされ、
やがて日常生活に支障をきたすようになる。そして、夫婦に人生最
期の時が近づいていた。

ギャスパー・ノエ監督が「病」と「死」をテーマに冷徹なまなざし
で映し出した人間ドラマ。「ホラーの帝王」と呼ばれるイタリアの
ダリオ・アルジェント監督が、80歳にして映画初出演をしている。
ギャスパー・ノエ監督にダリオ・アルジェントが映画初出演(主演)
となれば、観ないわけにはいかない。アルジェントの映画は好きな
作品がたくさんある。新年1作目にしてはとても重たい映画だった
が、見応えがありおもしろかった。
映画評論家の夫と元精神科医の妻は仲むつまじく暮らしていたが、
妻が認知症を患ってからは意志の疎通がうまくいかなくなってきて
いた。夫の仕事中に妻はふらりと家を出ていき、街の商店などを徘
徊する。夫は「妻を見なかったかい」と尋ね歩き、やっと見つけて
家に帰る。心臓病を患う夫にとっては負担となっていた。家庭を持
っている息子・ステファンが時々様子を見に来るが、母の認知症の
進み具合に驚く。(ステファンと彼の幼い息子は名前が出てくるが、
夫婦の名前は登場しない)
映画の演出がとても変わっていて、常に画面が2分割になっている。
片方の画面で夫の行動を映し、もう片方の画面で妻の行動を映して
いる。夫婦が一緒にいる時も分割されている。常に映像を2つ観て
いるという感じである。そこにステファンが加わってもやはり分割
されている。万人受けする映画ではないことは確かだろう。
ステファンの妻は入退院を繰り返しているようで、金に困っている
様子が描かれる。父とステファンは母のことで話し合う。ステファ
ンは「夫婦で入居できるホームがあって、もうすぐ空きが出るよ」
というが、父はホームになど入りたくない、長く住んでいるこの家
にいたい、と言う。ステファンは「でも父さんだけで母さんを見る
のはもう無理だよ」と言う。そして結局話し合いは終わらず、ステ
ファンは父に金をもらって帰る。
妻の認知症はどんどんひどくなり、ガスをつけっぱなしにしたり、
夫の書いた原稿を破ってトイレに流したりするようになる。よくト
イレが詰まらなかったものだと思うが。夫は「大惨事だ!」と叫び、
いい加減にしてくれと怒る。認知症の人と暮らすのは本当に大変だ
なと思った。夫が救急搬送された時も、妻はステファンに「あの人
は大丈夫?」と聞くが、「あんたがもっと早く救急車を呼んでいた
ら大丈夫だったんじゃないの」と、イラッとする。
メインのキャスト3人の演技が素晴らしい。アルジェントってあん
なに演技がうまい人だったのか。夫婦が死んだ後、部屋の中がスピ
ーディーに片付けられていき、空き部屋になっていく様子は胸が締
めつけられるような気持ちになる。映画の最初に「心臓の前に脳が
壊れるすべての人へ」という字幕が出るのだが、それがとても心に
残った。なんとも重たく、残酷で、冷徹な物語だった。私はギャス
パー・ノエの映画は「ルクス・エテルナ 永遠の光」しか観ていな
いのだが、もっと観たいと思った。



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