猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

Mr.ブルックス ~完璧なる殺人鬼~

2022-06-07 22:19:41 | 日記
2007年のアメリカ映画「Mr.ブルックス ~完璧なる殺人鬼~」。

オレゴン州ポートランドで、2年間沈黙していた連続殺人が再び発生した。
世間を震撼させたこの事件の犯人は、実業家として名高いアール・ブルック
ス(ケヴィン・コスナー)。彼はもう1人の人格であるマーシャル(ウィリアム
・ハート)の誘惑に負け、殺人を続けていた。しかし、犯行時にカーテンが
開いていたことからその一部始終が向かいのアパートに住む青年スミス(デ
イン・クック)に撮影されてしまっていた。更に刑事トレイシー・アトウッ
ド(デミ・ムーア)の捜査の手もブルックスに迫っていた。

ケヴィン・コスナー主演のサイコ・サスペンス。紳士的なイメージのケヴィ
ン・コスナーだが、殺人鬼役も似合うとはさすが俳優。有名な実業家のブル
ックスにはもう1つの人格があり、殺人の衝動を抑えられず、2年ぶりに2人
の男女を殺害した。しかしその犯行は向かいのアパートに住む青年スミスに
よって撮影されており、ブルックスのオフィスに写真が送られてくる。スミ
スは殺人に憧れを抱いており、写真をネタにブルックスに近づき、次の犯行
に同行したいと言う。
ブルックスは殺人を中毒だと捉えており、克服したいと考えていた。薬物依
存症だと偽って、依存症の会に参加したりしていた。そして女性刑事アトウ
ッドは聞き込み捜査によりスミスに疑惑を持つ。ブルックスには娘がいるが、
その娘は大学を退学して帰ってくる。そして妻子ある男性の子供を妊娠した
と両親に打ち明ける。娘は中絶すると言うが、ブルックスは中絶は許さない
と言う。他にもまだ隠していることがあると推察したブルックスはバカ娘に
呆れる。そしてアトウッド刑事が娘のところにある事件の聞き込みにやって
くる。
とてもおもしろかったのだが、デミ・ムーア演じるアトウッド刑事が離婚の
調停中で、夫ともめているエピソードはいらなかったのではないかと思った。
彼女は夫から200万ドルくらいの慰謝料だか和解金だかを要求されているの
だが、夫の浮気が原因の離婚なのに何故彼女が払わなければならないのか、
よくわからなかった。冷静なブルックスと感情的になりやすいアトウッドの
対比が良かった。ブルックスの殺人衝動は依存症といえば依存症なのかもし
れない。そして殺人に同行するという約束を何度も延期されたスミスは苛立
っていた。
後半は意外な展開になる。ブルックスが本当にそんなことを考えているのだ
ろうか、と思った。ブルックスの計画にマーシャルは反対し、2人は対立す
る。1人の人間の中で2つの人格が対立するのは興味深い。ブルックスは若
い頃からこんなふうだったのだろうか。何故彼がそうなったかについては描
かれていないのでわからないのだが。とにかくケヴィン・コスナーが魅力的。
スマートで紳士然とした様子で平然と人を殺害する。ラストは「そう来るか
!」と思わせておいて違っていた。あのままでもそれはそれで怖くて、良か
ったのにな、と思った。でもやっぱりあのラストの方がいいのかもしれない。


久しぶりの星乃珈琲のフワフワパンケーキ

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記憶の夜

2022-06-01 22:06:45 | 日記
2017年の韓国映画「記憶の夜」。

1997年、21歳の浪人生ジンソク(カン・ハヌル)は兄ユソク(キム・ムヨル)や
両親と共に新居に引っ越してくる。その日の夜、雨の中を兄弟は散歩に出るが、
ジンソクの目の前でユソクが謎の暴漢たちに車で連れ去られてしまう。一家は
すぐに警察に連絡するが、行方がわからないまま19日が過ぎてしまう。とこ
ろがユソクは1人で帰ってくる。そしてユソクは19日間の記憶を失っていた。
ユソクが無事に帰ってきて喜ぶ家族だったが、ジンソクは兄の様子が以前と違
うことに気づく。本物の兄ではないのではないかと思ったジンソクはその謎を
追う。

初めはホラーかと思ったのだが、ミステリー・サスペンスだった。とてもおも
しろかった。大学浪人のジンソクにとって、兄のユソクは成績優秀でスポーツ
万能、一流大学を卒業した自慢の兄だ。一家はある日新居に引っ越してくるが、
ジンソクはその家に見覚えがあるような違和感を抱いた。そして2階の1室に
は前の住人の荷物が残っており、近々取りに来ることになっているため、その
部屋には入らないよう両親に言われ、それまで兄弟は同じ部屋を使うことにな
る。夜なかなか眠れないジンソクに、ユソクは散歩に行こうと誘う。雨が降っ
ていると言うジンソクに、ユソクは傘を差せばいいと言って連れ出す。ところ
がユソクは謎の男たちに車で拉致されてしまい、ジンソクは慌てて車のナンバ
ーを覚える。
ジンソクは家に帰り、両親は警察を呼ぶが、家族にはユソクが拉致されるよう
な覚えはなく、ジンソクが覚えていた車のナンバーも、そんなナンバーは存在
しないと刑事に言われてしまう。ユソクの行方は掴めないままだったが、ユソ
クは19日後に帰宅する。そしてこの19日間の記憶を無くしていた。医者は強
いショックを受けた時自分で記憶を封印してしまうことがあると言った。ユソ
クは前と変わらず明るい青年だったが、ジンソクはユソクに違和感を覚えた。
ユソクは過去の事故の後遺症で左足を引きずっていたのだが、ある時右足を引
きずっていたのだ。ジンソクがそれを指摘するとユソクは「そんなことはない
」と言う。実はジンソクは神経症で、薬が手放せない状況だった。ユソクは薬
を飲み忘れたのではないかと言い、ジンソクは釈然としない思いを抱く。
他にもジンソクはユソクの様子に以前の兄とは違うという気持ちを持つことが
多くなり、本当の兄ではないのではないだろうか、と思うようになる。物語は
ジンソクが神経症を患っているというところがポイントになっている。彼が多
少兄に違和感を持っても、家族に神経症のせいではと言われれば、ジンソクは
何も反論できなくなる。家に対して感じた見覚えのある雰囲気も同様だ。大体
前の住人の荷物が残っているからといって、部屋に入るなと言うのはおかしい
のではないか。私は初めオカルト系?と思ったのだが、映画はとんでもない方
向へ進んでいく。やがてジンソクは兄が本当の兄でない証拠を掴むが、両親に
それを言っても両親の様子も変なのだ。ジンソクは混乱してしまう。
この映画は絶対騙されると思う。からくりが複雑で綿密なのだ。びっくりする
シーンがいくつもある。引っ越してきた時、引っ越し業者がジンソクにユソク
のことを「あれはお兄さん?」と聞くシーンがあって、ジンソクは「ええ。似
てないでしょう」と答えるが、業者は「本当に?」と聞くのだ。私は何故そん
なに聞くのだろうと不思議に思ったのだが、そのことも伏線になっていて、終
盤でしっかり回収される。このようにいくつものセリフやちょっとしたシーン
が伏線となっており、見事に練られた脚本に感心させられる。韓国のサスペン
ス映画独特の不穏な空気が全編に漂っているのもいい。
そして韓国映画によくあるように、庶民の生活の苦しさについても描かれてい
て興味を惹く。お金のために他人を殺す者、身内を殺す者。不幸がついて回る。
真相にはあっと驚かされる。あの人はあの人だったのか、と。私は全く予測し
ていなかった。どこにも救いがない物語で陰惨だが、とてもおもしろかった。
絶対に見破れない1級品のミステリーだと思う。




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