猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ディセント2

2022-08-30 22:13:28 | 日記
2009年のイギリス映画「ディセント2」。

アパラチア山脈の洞窟から命からがら逃げ出してきたサラ(シャウナ・マク
ドナルド)が森で血まみれの状態で発見される。ヴィエンズ保安官(ギャヴァ
ン・オハーリー)が残りの仲間たちの安否を尋ねるが、サラは最後の2日間
の記憶を失くしていた。残りの5人を救出するため、保安官や保安官補佐の
リオス(クリステン・カミングス)ら救助隊はやむなくサラを連れて洞窟に向
かう。

2005年の映画「ディセント」の続編。低予算ながらヒットしたらしく、続
編が作られた。確かにサスペンスでありホラーでありサバイバルであり女の
友情もありと、なかなかおもしろかった。洞窟探検に向かった女性6人のう
ち、サラだけが助かる。たまたま通りがかった洞窟の所有者のおじさんの車
の窓にサラが血まみれでベタッと張り付くシーンはホラー映画らしくてびっ
くりした。サラは病院で保護されるが、記憶が曖昧な状態だった。他の5人
は死んだと思う、と言うので、捜索隊は彼女たちの捜索というか遺体回収の
ために洞窟に向かう。サラに事情を聞かなければならないため、サラは恐怖
の洞窟にまたも入る羽目になる。
保安官のヴィエンズはサラが仲間を殺したのではないかと怪しんでいた。こ
の保安官が嫌な奴で、強引な性格で人の意見を聞かない。まず1人目の遺体
が見つかるが、何者かに襲われた痕跡があり、皆「猛獣でもいるのか?」と
話す。更に動物の骨が多数見つかる。洞窟を進んでいくうち、サラの記憶は
戻っていき、「皆怪物に殺された」と言うが、捜索隊のメンバーは信じられ
ない。人食いの地底人がいるということは前作でわかっているので、スリリ
ングさは少し欠けるが、どっきり、びっくりするシーンは前作に負けてはい
ない。
やがて捜索隊のメンバーは次々と怪物に襲われ、食べられてしまう。保安官
補佐のリオスはサラに「信じなくてごめんなさい」と謝る。サラは怪物は目
が見えず音に反応していると教え、2人で出口へ向かっていく。ところが途
中でとても意外なシーンがあり、びっくりする。こう来たか、という感じ。
これは前作から観ている人には嬉しいシーンだろう。地底人の造形の気持ち
悪さや凶暴さは相変わらずで、一体彼らは何者なんだろう。何らかの理由で
洞窟に住み着き、変貌を遂げたのだろうか。それについては明らかにされて
いない。
続編は女の友情に加えて母性愛についてのエピソードもある。サラは1年前
に交通事故で夫と幼い娘を亡くしており、リオスにもまた幼い娘がいた。と
ても意外なラストなのだが、最初にサラを助けた洞窟の所有者のおじさんは
何者なのだろう。え、どういうこと?どうしてそうなるの?前作に劣らず怖
いラストだった。


新聞がなくなるとすぐワゴンの下に入るのは、子猫の時から変わっていない
ノエル

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蛇男

2022-08-26 22:22:22 | 日記
2006年のフランス映画「蛇男」。

写真家のヴァンサン(イヴァン・アタル)は資産家の娘と結婚しているが、離婚
協議中だった。ある日、撮影予定のモデルの代わりに別のモデルがやって来る。
後日、ヴァンサンは彼女からレイプ未遂で訴えられ逮捕されるが、訴えは取り
下げられる。後に彼女は再びヴァンサンの前に現れ、ヴァンサンは彼女を問い
詰めるが、彼女はヴァンサンの目の前で転落死してしまう。疑いをかけられる
のを避けるためにヴァンサンは車で逃げるが、途中で後続の車にぶつけられる。
車を運転していたのはヴァンサンの旧友ジョゼフ(クローヴィス・コルニヤッ
ク)だった。ジョゼフは再会を喜ぶが、ヴァンサンが自分の車のトランクを開
けるとモデルの死体が入っていた。そこへ警官が声をかけてくるが、ジョゼフ
は機転を利かせてヴァンサンを助ける。翌朝ヴァンサン宅から車と死体が消え
ており、ジョゼフから自分が死体を処理したという電話が入る。それからジョ
ゼフは度々ヴァンサンの家を訪れるようになり、ヴァンサンの妻とも親しくな
る。ところがジョゼフはヴァンサンに大金を要求してくるようになる。

ホラー映画のようなタイトルだが、サスペンス・ミステリーである。写真家の
ヴァンサンは子供の親権を巡って妻と離婚協議中だった。ある日の撮影で、予
定していたモデルとは別のモデルがやって来る。モデルはヴァンサンを誘惑し、
ヴァンサンが応じようとすると、彼の首に爪で傷をつけた。後日モデルはヴァ
ンサンをレイプ未遂で訴え、彼は逮捕されてしまう。しかしその後モデルは訴
えを取り下げる。このヴァンサンという男、最初からあまりいい印象がない。
離婚協議中にモデルに誘惑されてその気になるって(レイプ未遂はしていない
が)、かなり尻軽ではないのか。絶対離婚に不利になるのに。
その後モデルは再び現れ、ヴァンサンが問い詰めていると、彼はめまいや幻覚
を起こして意識を失い、その間にモデルとのスキャンダラスな写真を撮られて
しまう。意識を取り戻したヴァンサンがモデルを追うと、彼女は階段を踏み外
して転落死してしまう。そして車で逃げているとトランクに彼女の死体が入っ
ていて驚いたりと、踏んだり蹴ったりである。それを救ったのは、後ろから車
をぶつけてきた中学の同級生・ジョゼフだった。ヴァンサンは最初わからなか
ったが、ジョゼフに「ヴァンサンじゃないか!」と声をかけられて思い出す。
車をぶつけたことを謝り、翌朝ヴァンサンの車は消えていた。ジョゼフは電話
で「死体は自分が処理した。車は修理に出した」と言った。
ジョゼフはその後ヴァンサンの家に遊びに来るようになり、妻も交えて中学時
代の思い出話に花を咲かせるが、ジョゼフもかなりうさんくさい。中学なんて
もう20数年も前のことをそんなに話したいものだろうか。私なら昔の同級生
に会ってもあいさつして終わりである。面倒くさい。しかしジョゼフはやがて、
ヴァンサンに大金を要求するようになる。ヴァンサンとモデルのスキャンダル
写真を見せ、警察にモデルの死体を発見させ、ヴァンサンを殺人犯に仕立て上
げる。だがヴァンサンはジョゼフに脅迫を受け続けるうちに、それが本当は金
目当てではないことに気づく。ジョゼフの目的は復讐だった。
そこへ来て「蛇男」というタイトルの意味がわかってくる。蛇のようにしつこ
く、じわじわとヴァンサンを締め付けるジョゼフ。ジョゼフの恨みは一言で言
うと「いじめ」だった。いじめというものはした方は忘れても、された方はず
っと覚えているものだ。それがちょっとした冗談のようなものであったとして
も。ジョゼフも20数年に亘る恨みだった。ヴァンサンは警察でそのことを話
していたが、本当に反省しているのだろうか、と思った。そしてヴァンサンは
警察でも何でもない普通の人だがアクションシーンがすごい。活躍しすぎとい
うか。特に畳み掛けるような終盤は目が離せなくておもしろかった。ただ、主
人公であるヴァンサンにあまり同情できなかったのが残念だった。




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ディセント

2022-08-22 22:11:39 | 日記
2005年のイギリス映画「ディセント」。

サラ(シャウナ・マクドナルド)が交通事故で夫と幼い娘を失ってから1年。
立ち直りきれずにいるサラを少しでも元気づけようと、友人たちが企画し
た女だけで行く冒険旅行の誘いを受けることにしたサラは、皆が集まる山
小屋にやって来た。参加したのはサラの昔からの友達のジュノ(ナタリー
・メンドーサ)ら6人。スリリングな洞窟探検を楽しんでいた一行だったが、
突然の落盤によって出口がふさがれ、迷宮のような洞窟に閉じ込められて
しまう。不安と疲労のためにトラブルを起こしながら出口を求めて暗闇の
中をさまようサラたちだったが、何者かが襲いかかってくる。

サスペンス・ホラーで、サバイバルの要素もあり、なかなかおもしろかっ
た。舞台はほぼ洞窟の中で登場人物も少ないし、いかにも低予算のB級映
画っぽい感じだが、意外によくできていたと思う。それにしても夫と子供
を亡くして立ち直れない友達のために洞窟探検を思いつくとは、欧米の女
性はやっぱり違うというか、逞しいなと思った。普通そういう発想をする
だろうか。私だったら悲しんでいる時にそんなアクティブなことはする気
になれない。
サラたち6人の女性グループはアパラチア山脈奥地の巨大洞窟を訪れる。
不安と期待の入り混じった気持ちで探検をするが、突然の落盤で出口をふ
さがれてしまう。更に1人が穴に落ち、大ケガをしてしまう。助けようと
しながらも言い争いをしてしまう彼女たち。そんな時サラは何者かの人影
を見るのだが、自分たちの他には誰も来ていないはず、と言って皆はサラ
の言うことを信じようとしない。明かりはヘッドランプと懐中電灯だけの
薄暗い中、暗闇からサラの見た何者かが襲いかかってくる。人間のような
姿をしているが人間ではないそれは、穴に落ちた女性を食べ始めた。
この何者かの姿、造形がとても気持ち悪い。人を食う地底人というところ
だろうか、周囲には動物の骨がゴロゴロしている。サラたちはたちまちパ
ニックになり、1人また1人と怪物の犠牲になってしまう。そのうちサラ
は怪物の目が見えていないことに気づく。長い間の地底暮らしに順応し、
目が見えなくなり音に反応するようになっているのだ。サラやジュノは何
とか音を立てずに出口を探そうとする。
欧米の女性は逞しいと書いたが、仲間が食べられていてるのを目の当たり
にしても、だんだん強くなっていくのがすごい。サラやジュノは怪物と戦
い、倒していくのだ。その間にも、女性同士ならではのトラブルが生じた
りして、ただのホラーではないところがおもしろい。あ~そうだったんだ、
それは怒るよね、といった感じ。舞台が洞窟なので薄暗くてちょっと見え
づらいのは仕方ないが、息が詰まってくるような感じで、この映画は閉所
恐怖症の人は観られないだろうなあと思った。




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L.A.コールドケース

2022-08-18 22:17:27 | 日記
2018年のアメリカ・イギリス合作映画「L.A.コールドケース」を観に行った。

1996年から1997年にかけて、ヒップホップ界の大スター「2パック」と「ノトー
リアス・B.I.G.」が何者かに射殺されるという事件が起き、全米に衝撃を与える。
その担当刑事だった元ロサンゼルス市警察のラッセル・プール(ジョニー・デップ)
は、18年経った今も謎に包まれたこの事件の真相を追い続けていた。ある日、同事
件を独自に調査する記者ジャック(フォレスト・ウィテカー)がラッセルを訪ね、彼
がこの事件に執着する理由や、捜査が進展しない原因を突き止めようとする。一方、
警察内部の人物による関与を疑うラッセルは、ジャックと手を組み複雑に絡み合う
未解決事件の真相を追う。

実際の事件に基づいたクライム・サスペンス。1996年9月に人気ラッパーの2パッ
クが、そして1997年3月に同じく人気ラッパーのノトーリアス・B.I.G.が射殺され
るという事件が起きる。わずか半年の間にヒップホップ界の大スターが続けて殺害
されてしまい、全米そして音楽業界に大きな衝撃を与える。私はヒップホップにつ
いても全く知識がないし、2パックとノトーリアス・B.I.G.という人たちももちろ
ん知らないのだが、短期間に大スターが2人も殺されるなんてさぞかしスキャンダ
ラスに報道されたことと思う。当時ロサンゼルス市警察のラッセル・プール刑事が
事件を担当していたが、彼は恐らく真相に迫りすぎたために、仕事や地位や家族な
ど全てを失ってしまうが、それでも執拗に正義を追い求めた。
おもしろかったのだが、少し(いやかなり?)わかり辛かった。まず私はこの事件を
知らないし、エピソードが多すぎるのだ。途中で「今何の捜査をしているのだろう
?」という状態になってしまう。私の理解力の問題かもしれないが。2人のラッパ
ーが射殺された事件に加えて、彼らが所属していたレコード・レーベル同士の対立、
白人警官が非番の黒人警官を射殺してしまった事件、白人警官が黒人を暴行、黒人
によるデモ、70人もの悪徳警官が暴かれた汚職事件など、色々な事件が絡み合っ
ていてとても複雑だった。そして登場人物がすごく多いので、混乱してしまう。ラ
ッセルはいくつも捜査を担当しているんだっけ?となってしまう。
1991年頃から白人警官が黒人を暴行などという事件は起きていたのだなあ。本当
にアメリカの黒人差別問題は根深い。この映画はもしかしてアメリカ人じゃないと
よくわからないのでは?と思った。それくらいややこしい。物語は18年前と2015
年のラッセルとジャックの共同調査のシーンが前後するが、その点はわかりにくく
はない。ラッセルはラッパー殺人事件に警察が関与しているのではとにらみ、あま
りに熱心に捜査しすぎたせいで警察を追い出された形だ。それからは私立探偵事務
所を経営しながら、事件のことを追い続けた。ラッセルを演じたジョニー・デップ
が素晴らしかった。ジャック役のフォレスト・ウィテカーも同様である。実力派俳
優2人の演技合戦という感じでとても見応えがあった。
ただこれは未解決事件なので、どうしても映画製作者側の推測になってしまうのが
残念である。確かにスッキリはしない。わかりにくかったところも含めて、いつか
もう1度観てみたいと思った。ラッセル・プールは2015年にロサンゼルス郡保安
局で心臓発作で倒れ、58歳で急死している。新聞では「忘れられた英雄」と報じ
られたそうだ。


いつもの野良ちゃん、久しぶりに見ました。ずっと見ていなかったので気になって
いました。あまりに暑いから普段はどこかに避難しているのかな

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百日告別

2022-08-14 21:58:12 | 日記
2015年の台湾映画「百日告別」。

多重衝突事故で婚約者を失ったシンミン(カリーナ・ラム)と、同じ事故で妊娠中
の妻を亡くし、自らも重傷を負ったユーウェイ(シー・チンハン)。それぞれ最愛
の人を失い、その事実を受け入れることができない2人。しかし現実は無常にも
流れていく。初七日から七七日と節目ごとに、合同葬儀で山の上の寺を訪れるシ
ンミンとユーウェイは、読経を通じてお互いの存在に気づいていく。

トム・リン(林書宇)監督による人間ドラマ。数台の車による大きな玉突き事故に
巻き込まれ、シンミンは結婚間近の婚約者を、ユーウェイは妊娠中の妻を失った。
シンミンは結婚式の招待状も出来上がっていて、式の後は沖縄に新婚旅行へ行き、
婚約者と共にレストランを開く予定だった。ユーウェイの妻はキリスト教徒だっ
たが、親戚は皆仏教徒なので、キリスト教式と仏式のどちらで葬儀をするか話し
合い、結局仏式になる。山の上の寺で合同葬儀が行われることになり、シンミン
とユーウェイはそこで大勢の人たちと並んで読経するうちに知り合う。
静かだがいい映画だった。シンミンとユーウェイの2人が主役で、それぞれのエ
ピソードが交互に描写され、彼らの最愛の人が生きていた頃のエピソードも挟ま
れる。シンミンは結婚式の招待状を処分することができずにいる。幸せな将来が
待っていたはずなのに、自分だけが生き残ってしまい、悲しみに暮れる。ユーウ
ェイも同じように、生まれてくる子供のことを楽しみにしていた。自宅でピアノ
教師をしていた妻を思い、ピアノを見る度に深い悲しみに包まれる。自分が彼ら
の立場だったらどうするだろう、と思わずにいられない。どうやって立ち直れば
いいのだろう。
シンミンは彼と一緒に行くはずだった沖縄へ1人で旅に出る。沖縄の風景が美し
く、時折聞こえてくる日本語が何となく嬉しい。彼はグルメノートというものを
作っていて、シンミンはそのノートの通りに料理を食べていき、ノートに印をつ
ける。シンミンの1人旅の様子は悲しい。彼と行くはずだった沖縄、彼と食べる
はずだった沖縄料理。どんな気持ちで旅していたのだろうか。
ユーウェイは妻のピアノの教え子の家を訪ね歩く。前払いでもらっている月謝を
返すためだ。そのシーンは悲しい。皆「先生が好きだった」と言ってくれる。あ
る少女がピアノを弾いていて、ユーウェイは何の曲かと尋ねる。少女はショパン
だと答える。「私も先生もショパンが好きでした」と言う、その時のユーウェイ
の何とも言えない表情が切なくていい。この映画は「喪失と再生の物語」とは言
えないのかもしれない。最後の最後までシンミンとユーウェイはこれからの生き
る道を見出せないままだからだ。それでも、ラストのバスの中のシーンはとても
いい。トム・リン監督の映画を観るのはまだ3作目だが、しみじみと心に残る。


良かったらこちらもどうぞ。トム・リン監督作品です。
九月に降る風
夕霧花園



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