猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ターコイズの空の下で

2021-05-31 22:49:02 | 日記
2020年の日本・モンゴル・フランス合作映画「ターコイズの空の下で」を
観に行った。

裕福な家庭で甘やかされて育ち、道楽生活を送る青年タケシ(柳楽優弥)は、実
業家の祖父三郎(麿赤兒)によりモンゴルの草原へと送り込まれ、終戦後にモン
ゴル人女性との間に生まれて以来、再会することが叶わない三郎の娘を捜すこ
とになる。モンゴル人の馬泥棒・アムラ(アムラ・バルジンヤム)をガイドに、
現実離れした大自然へと旅立つ。運転手つきの観光気分で来たタケシだったが、
日本の生活とはかけ離れたアムラのポンコツバンに揺られながら、想像もしな
かった生命力溢れる世界に入っていく。そんな中アムラが逮捕されてしまい、
タケシは着の身着のままひと気のない荒野に1人取り残される。

第68回マンハイム・ハイデルベルク国際映画祭で国際映画批評家連盟賞と才
能賞を受賞した、KENTARO監督によるロードムービー。大企業の経営者・三
郎を祖父に持つ青年タケシは贅沢三昧の自堕落な生活を送っていた。ある日、
三郎の所有する競走馬を盗んだ罪で、モンゴル人のアムラが逮捕される。三郎
は第2次世界大戦終了時にモンゴルで捕虜生活を送っており、現地の女性との
間に娘がいた。アムラとの出会いをきっかけに、三郎は生き別れた娘を捜すた
め、タケシをモンゴルへ送り込む。言葉も通じず価値観も異なるアムラとの旅
にタケシは戸惑うことばかりだった。
タケシは真面目に働かず、パーティー好きでいつも女性と遊んでいるような青
年だ。祖父の三郎はタケシが小さい頃に父親を亡くしたことでつい甘やかして
育ててしまったことを後悔していた。自分の跡継ぎはタケシしかいないのだが、
今のままではダメだと悩んでいた。そんな時あるモンゴル人と出会う。終戦後
シベリアに日本兵が捕虜として抑留され、過酷な労働を強いられていたのは知
っているが、モンゴルでも同じことがあったことは知らなかった。三郎はその
時現地の女性と恋愛関係になり子供が生まれていたのだが、生き別れになり、
ずっとそのことが気がかりだったのだ。
モンゴルを訪れたタケシは大きなカルチャーショックを経験する。日本語も英
語も通じない国で不便さを感じながらも、写真を撮ったりしてはしゃぐ。だが
途中でアムラが馬泥棒で指名手配されていたため逮捕されてしまう(この男、
馬を盗むのが好きなようだ)。途方に暮れるタケシだったが、その後路上で寝
ているところを遊牧民の女性に助けられる。出された食事をタケシがまずいの
かどうかわからないが必死に食べている姿がおもしろい。「馬乳酒」というも
のを振る舞われ、これは体にいいのよと女性に言われるが、見た目は牛乳みた
いだが馬乳酒って字からしてまずそうな気がする。そしてその後タケシは忘れ
られない経験をする。
道楽者でチャラいがどこか憎めないタケシを柳楽優弥が好演している。ラスト
はとても感動的だった。タケシにとってモンゴルで過ごした日々はきっと一生
の宝物になることだろう。柳楽優弥にとっては初めての外国との合作映画だが、
せっかくカンヌ国際映画祭で最年少で主演男優賞を受賞した経歴があるのだか
ら、英語を習得して海外でも活躍して欲しいと思う。いい映画だった。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ファナティック ハリウッドの狂愛者

2021-05-26 22:29:19 | 日記
2019年のアメリカ映画「ファナティック ハリウッドの狂愛者」。

ハリウッド大通りでストリートパフォーマーをしながら、冴えない毎日を送って
いる映画オタクのムース(ジョン・トラヴォルタ)。そんな彼の夢は、熱狂的なフ
ァンである人気俳優ハンター・ダンバー(デヴォン・サワ)からサインをもらうこ
とだった。ようやく念願かなって参加したサイン会でダンバーに冷たく扱われた
ことから、ムースの愛情は歪み始める。ダンバーの豪邸を突き止めたムースは何
度も彼に接触を試みるが、ムースを気味悪がるダンバーから激しく拒絶されてし
まう。そしてムースのダンバーへの行動は次第に暴走していく。

ストーカーもののサスペンス映画。ジョン・トラヴォルタが怪演とも言える熱演
を披露している。ストリートパフォーマーってどれくらいの収入になるのだろう。
ムースを見る限り儲かってはいないようだし、彼は映画オタクで映画グッズなど
を集めるのにお金を惜しまないので、貧乏そうだ。大体ムースは何歳くらいの設
定なのだろう。随分幼稚な感じがする。そして髪型が変。色々と気になるところ
はあるが、ともかくムースはハリウッドのスター、ハンター・ダンバーの熱狂的
なファンで、彼のサインをもらうことを夢見ている。ところがやっとサイン会に
参加できた時、ダンバーの都合でムースは軽く扱われてしまい、ショックを受け
る。
ロバート・デ・ニーロ主演の「ザ・ファン」という映画を思い出すが、あの映画
の主人公は本物の異常者で怖い人だったが、ムースは怖いという感じではない。
異常と言えば異常なのだが、優しい気持ちも持っている。ストーカー魂に火がつ
いてしまったムースは女友達から有名人の自宅がわかるというスマホのアプリを
教えてもらい(そんなアプリ本当にあるのだろうか)、ダンバーの自宅を訪れる。
しかし自宅を知っているムースをダンバーは気持ち悪く思い、冷たく追い払う。
それでも何度もダンバーの家に行くのでダンバーからストーカーだと言われ、今
度来たら通報すると言われてしまう。
ストーカーという人種はストーカーの自覚がないようで、ムースも「僕はストー
カーじゃない」と主張する。ダンバーが何故あんなに怒り、拒絶するのかがわか
らないのだ。そしてとうとうダンバーの留守中にやってきたムースは、ダンバー
宅の物を色々触ったりしてくつろぐ。これも変だと思うのだが、ハリウッド・ス
ターなら家は防犯システムが厳重だと思うのだが何故あっさりとムースは入れて
しまうのだろう。他にも色々とおかしな点がある映画だ。それにしても憧れのス
ターがあんな人だとわかって、ムースもショックだっただろうな。ダンバーはか
なり嫌な人なのだ。映画ではかっこよくても性格もそうだとは限らない。
ダンバー宅に侵入したムースはその後大変なことになってしまう。そしてそれは
ダンバーの方も同じで、彼の俳優生命は多分もう終わりだろう。ムースは確かに
ストーカーだが、「ザ・ファン」の主人公のような怖い人ではなく、少し頭が弱
い人という印象を受ける。彼は「どうして僕をいじめるの」「僕に乱暴しないで
」といったことを何度も言う。いい大人の発言とは思えない。この映画、おもし
ろかったかと聞かれるとちょっと困るが、とにかくジョン・トラヴォルタの演技
はすごかった。いい俳優になったものだ。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

グッドナイト・マミー

2021-05-22 22:27:26 | 日記
2014年のオーストリア映画「グッドナイト・マミー」。

森ととうもろこし畑に囲まれた田舎の一軒家で母親の帰りを待つ9歳の双子の
兄弟エリアス(エリアス・シュヴァルツ)とルーカス(ルーカス・シュヴァルツ)。
ところが、帰ってきた母親(スザンネ・ヴェスト)は顔の整形手術を受けており、
頭部が包帯でぐるぐる巻きになっていた。更に性格まで別人のように冷たくな
ってしまい、兄弟は本当に自分たちのママなのか疑いを抱くようになる。そし
て正体を暴くべく彼女を試し始めるが、その行為は次第にエスカレートしてい
く。

少年たちの残酷さを描いたホラー。双子のエリアスとルーカスは、入院してい
る母親の帰りを待っていた。母親の帰宅に喜ぶが、母親は整形手術を受けてお
り、顔中包帯でぐるぐる巻きの状態だった。人相がわからない上に彼女は以前
より態度が冷たくなっており、双子は本当のママなのだろうか、誰かが成りす
ましているのではないだろうかという疑いを持つ。包帯女の正体を暴こうと双
子は彼女を試す行為に出るが、徐々にエスカレートしていく。
映画全編に不穏な空気が漂っている。オチというか、肝心な部分は割と早くに
わかってしまうのだが、これからどう物語が展開していくのだろうと思うとと
ても興味深かった。兄弟の母親はテレビの司会者らしく、テレビに出ている人
が整形なんかしてバレないのかな?と初めは思うが、「何故母親が整形手術を
受けたのか」ということがわかると、全てがつながってくるのだ。母親は退院
したけど安静にするように医者から言われているので協力してね、と子供たち
に頼む。しかし双子は勝手な行動ばかりして、母親はヒステリックになる。あ
んなママじゃなかったのに…と双子は思う。
そして双子は本物のママかどうか調べるために、彼女が寝ている間に手足をベ
ッドに縛りつけてしまうのだ。それからの彼らの行為は拷問に近く、ゾッとす
る。子供って残酷だなあと思わせられた。この映画にはゴキブリが度々登場し、
気持ちが悪い。男の子ってゴキブリでも平気で飼ったりするものなのだろうか。
彼らが拾ってきた猫が何故死んだのかも気になった。まさか殺した訳ではない
のだろうが。拾ってきた時から弱っていたので、恐らく病気かケガで死んだの
だと思うが、猫をかわいがっていた割にはその死体の扱いがひどいと思った。
とにかく気持ちの悪い映画なのだ。
登場人物は母親と双子のほぼ3人だけで、物語は主に家の中で繰り広げられる。
低予算な感じだがおもしろくできていると思った。途中で赤十字の人たちが寄
付を募りに訪れるが、普通チャイムを押しても反応がなかったらそのまま帰る
ものではないだろうか。ヨーロッパでは勝手にドアノブを回して家の中に入る
のかな、と思った。母親は必死に助けを呼ぼうとするが、口を塞がれているの
で気の毒なことにその声は届かない。双子の狂気が際立つ映画だったが、ラス
トは彼らにとってはあれで良かったのかもしれない。


当県は先週の15日(土)に梅雨入りしました。観測史上2番目の早さだとか…こ
れってつまり梅雨が長いってことですよね?早く終わったりしないんですよね
?嫌だなあ。夏が長いのも嫌だけど。明日の予想最高気温は28℃とか言って
いるし、ほんと嫌

日向ぼっこノエル(だいぶ前の写真です)。

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天国でまた会おう

2021-05-18 22:28:19 | 日記
2017年のフランス映画「天国でまた会おう」。

1918年、第1次世界大戦の終結目前。仏軍のプラデル中尉(ローラン・ラフィット)
からの理不尽な攻撃命令に従ったエドゥアール(ナウエル・ぺレス・ビスカヤ―ル)
は、プラデルに殺されそうになったアルベール(アルベール・デュポンテル)を助け
るが、その際に顔の下半分を失う大怪我を負ってしまう。良家の御曹司でアーティ
ストでもあるエドゥアールは家族にも会いたくないと戦死を偽装。そんな彼をアル
ベールは手伝う。戦後、パリに戻った2人は貧しい共同生活をスタートさせる。そ
んな折、かつて彼らの上官だったプラデルが財を築いていたことを知った2人は、
ある壮大な詐欺計画を企てる。

ピエール・ルメートルの小説を映画化した人間ドラマ。アルベール・デュポンテル
が監督・脚本・主演を務め、ピエール・ルメートルも脚本に参加している。とても
いい映画だった。物語は1920年のモロッコから始まる。詐欺容疑で逮捕されたア
ルベールは憲兵からの尋問を受け、戦友で共犯者のエドゥアールとのこれまでの経
緯を語り始める。戦争終結の直前、エドゥアールはアルベールを助けようとした時
に爆風に吹き飛ばされ、顔の下半分を失う。病院で意識を取り戻したエドゥアール
はショックを受け、実家に帰ることを拒む。アルベールは命の恩人であるエドゥア
ールに協力して彼の戦死の偽装工作を行う。そして2人はパリで一緒に貧乏暮らし
を始める。
エドゥアールは自分でマスクをいくつも作り、そのマスクを着けている。そして顎
がないので彼のしゃべっていることはアルベールにはよく聞き取れない。ある日彼
らは孤児の少女と知り合うが、少女は何故かエドゥアールの言っていることがわか
り、アルベールに通訳をするようになる。この少女、まるでエドゥアールの心が読
めるかのようでおもしろい。やがて戦没者のための追悼記念碑が建立されることを
アルベールたちは知るが、自分たちのような戦傷者に対しては無関心な社会に不満
を抱き、エドゥアールの絵の才能を使った記念碑建立詐欺を計画する。この詐欺に
ついて私はよくわからなかったのだが、これは私の理解力のせいだろう。原作を読
めばもっとわかるのかもしれないが。
アルベールは初め「捕まったら処刑台行きだ」と反対していたが、結局エドゥアー
ルの説得に腹をくくる。計画は成功し、2人は大金を手に入れる。そして少女と3
人でモロッコに逃亡する準備を進める。だが思わぬところからプラデルによって犯
行が暴かれそうになる。このプラデルは本当に卑怯な男で、戦争中も彼の企みによ
って多くの兵士が死んでいるのだ。プラデルの結末はすっきりするほど。物語はち
ょっとコミカルなところもあるが、全体的にとても切ない。エドゥアールは父親と
不仲だったが、結局は父親に認めてもらいたかっただけなのだ。エドゥアールと父
親のエピソードは辛かった。
映画はアルベールの回想(憲兵への語り)によって進行し、ラスト近くでアルベール
は話し終えるのだが、その後がとても悲しくて尚且つ感動的だった。アルベールと
憲兵のやり取りというか、憲兵のセリフに涙が出そうになった。セリフのひとつひ
とつが忘れられない。「これでいいの?」と思う人もいると思うが、私はフランス
映画らしくてとてもいいと思った。この映画、映画館で観たかったなあ。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

世界で一番醜い女

2021-05-15 22:24:59 | 日記
1999年のスペイン映画「世界で一番醜い女」。

大晦日の夜、マドリッド。老人ホームでの老女惨殺の報を受け現場に向かった
アリバス刑事(ロベルト・アルヴァレス)。監視カメラが捉えた犯人は、尼僧の
恰好をして老女をメッタ刺しにしていた。捜査を続けるアリバスはやがて、学
会から追放された整形外科医ウェルナー(エクトル・アルテリオ)に犯人との接
点を見出す。そして、ウェルナーの革命的な整形手術により絶世の美女へと変
身した1人の女性が浮かび上がる。ウェルナーによると彼女は、伝説の美女と
同じ名を持つ”世界で一番醜い女”ローラ・オテロ(エリア・ガレラ)。その醜さ
は、母親でさえ生んだ直後にショック死してしまったほどだった。

何というのか、サスペンス・コメディ?整形美女が連続殺人を犯すというスト
ーリーである。大晦日の夜、ある老人ホームで年越しのパーティーが行われて
いた。ヨーロッパはあんなふうに(クリスマスみたいに)年末年始を祝うんだな、
と思った。1人の老女が疲れたからと言って自室へ戻るが、その後殺害されて
いるのが発見される。警察が到着し、防犯カメラに尼僧の姿の何者かによって
刺殺されたのだとわかる。捜査責任者のアリバス刑事はやがて学会を追放され
た高名な整形外科医・ウェルナーに行き当たる。
色々と突っ込みどころの多い映画で、おもしろいのかおもしろくないのかよく
わからない感じだった。ウェルナー医師はかつてローラという女性に違法な手
術を施したことで学会を追放されていた。ローラはこの世のものとは思えない
顔で生まれてきて、生んだ母親でさえショック死してしまい、孤児院で育った
という経緯があった。当然孤児院でもひどいいじめに遭った。ローラのことを
かわいいと言ってくれるのは盲目のシスターだけだった。でもシスターもロー
ラの顔を触れば普通の顔ではないことはわかったと思う。
ローラは醜いというより何らかの病気だったのではないだろうか。ウェルナー
医師は美容整形をする前に病気の治療を考えるべきだったと思うのだが。ロー
ラは老女以前にも殺人を犯しており、更に犯行は続く。今度の標的はミス・ス
ペインのコンテスト参加者だということを警察は突き止める。警察はローラの
目的を復讐だと言うが、ただの逆恨みに見えて共感できないのだが。彼女の気
の毒な生い立ちを考えても、そんなことして何になるの?と思う。そもそも彼
女のような人がいくら手術で美しくなったからといって、モデルなんかやるだ
ろうか。しかも同じ名前で。ひっそりと生きていくものだと思うのだが。
アリバス刑事はローラに「重要なのは内面だ」と言って説得しようとするが、
その言葉はローラには空しく響く。「今まで私の内面を見てくれた人はいない
わ」と。最後の方のCGがすごかった。すごいというか笑えるというか。結局
ローラにとってあれはハッピーエンドということでいいのだろうか。ローラは
彼女なりの安らぎを見つけたのかもしれない。何だか変わった映画だった。




映画評論・レビューランキング

人気ブログランキング



コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする