猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

仮面の男

2022-04-29 22:20:43 | 日記
1998年のアメリカ映画「仮面の男」。

1662年、フランスのパリ。若き暴君ルイ14世(レオナルド・ディカプリオ)の
圧政下、民衆は飢えに苦しんでいた。しかしルイには隠された秘密があった。
彼は地下牢に双子の弟フィリップ(レオナルド・ディカプリオ/2役)を幽閉して
いたのだ。かつてルイ13世に仕えていたアラミス(ジェレミー・アイアンズ)、
アトス(ジョン・マルコヴィッチ)、ポルトス(ジェラール・ドパルデュー)の三
銃士と、彼らと友情を交わしたダルタニアン(ガブリエル・バーン)はその事実
を知る。彼らは鉄仮面をつけられたフィリップを救出し、王を入れ替える計画
を企てる。

アレクサンドル・デュマの小説「鉄仮面」をベースにした歴史活劇。若き王・
ルイ14世は暴虐の限りを尽くし、民衆は飢えや苦しみを強いられていた。ル
イは双子の弟フィリップに鉄仮面をつけ、地下牢に幽閉していた。アラミス、
アトス、ポルトスの三銃士はかつてルイ13世に仕えていたが現在は引退して
おり、彼らと友情を誓い合ったダルタニアンは銃士隊長としてルイ14世に仕
えていた。しかし三銃士たちとダルタニアンはフィリップの存在を知ってしま
う。暴君であるルイと双子でありながら、フィリップは心優しく穏やかな性格
で、どちらが善王になるかはわかりきっていた。三銃士たちとダルタニアンは
仮面舞踏会の日にルイとフィリップを入れ替えようと画策する。
原作はフランスの小説で舞台もフランスだが、セリフは英語なのでちょっとし
っくり来ない気もするが、そういう映画は多いのでそんなに気にする程ではな
いのだろう(私がこだわるタイプなので)。キャストはアメリカ人、イギリス人、
フランス人と国際色豊かである。テンポが良くとてもおもしろかった。20代
前半のレオナルド・ディカプリオが美しい。王のきらびやかな衣装や長い髪が
よく似合っている。そして演技もとてもいい。ルイとフィリップの違いを見事
に演じ分けている。目を見ればルイかフィリップかわかるのだ。
歴史ものの映画は暗い物語が多いが、本作はそういうことはなく、いわゆる勧
善懲悪で安心して観られる映画である。悪のルイと善のフィリップ、どこまで
がノンフィクションなのかわからないが観ていてワクワクする展開である。三
銃士たちとダルタニアンは1度はルイとフィリップの入れ替えに成功するが、
その後失敗してしまう。彼らの本当の戦いはそれから始まるのだ。4人が剣の
先を地面の上で合わせ、固い絆を確認し合うシーンはとてもいい。そして意外
なダルタニアンの秘密が明かされるシーンも感動的だった。歴史ものの映画が
好きな私にはとても見応えがあって満足だったが、若い頃のレオナルドを見る
と、今もこの頃くらいやせていたらいいのになー、と思う。




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人妻

2022-04-25 21:57:06 | 日記
1998年のイタリア映画「人妻」。

美しい人妻・シルヴィア(モニカ・グェリトーレ)は夫と娘と共に、裕福で
幸せな生活を送っていた。しかし、1人の若い男との出会いが彼女を変え
る。彼の誘惑に身も心ものめり込み、シルヴィアは情事を重ねる。

タイトルから想像がつくように人妻の不倫の映画である。随分直接的なタ
イトルだなあ。夫と小学生の娘と暮らすシルヴィアは、ある日カフェでぶ
つかってきた若い男に自分のコーヒーをこぼされる。男は謝り、シルヴィ
アはその時男に何かを感じる。シルヴィアは翌日もそのカフェへ行き、男
と会えるのを期待して待つ。再び男は現れ、2人は恋に落ちる。それから
2人の情事の日々が始まる。
シルヴィアの夫は一見優しくて、彼女を愛しているように見えるが(愛し
てはいるのだと思うが)、何不自由ない生活の中でシルヴィアは満たされ
ないものを感じていた。シルヴィアが電話をしている最中に話しかけると
いう無神経さ、私だったらこれでもう夫を嫌になる。夫は神経質で口うる
さく、高圧的だ。シルヴィアは自分が夫を愛していないことを自覚してい
た。そんな時に優しくて素敵な男性と出会ったら、恋してしまっても仕方
ないかも、と思う。男の方も美しいシルヴィアに夢中になってしまい、2
人はお互いを激しく求めあうようになる。
画面の色合いが時々変わり、何だろう?と思うのだが、終盤でその秘密は
わかる。シルヴィアの娘は小学校1年生くらいに見えて幼いのだが、その
割にシルヴィアは老けて見える。美人だが幸せとは言い切れない生活のせ
いで老けてしまったのだろうか。そしてよくあるように男は次第に大胆な
行動を取るようになっていく。夫が出張中にシルヴィアの自宅を訪れたり
して、シルヴィアは困惑する。こうなったらダメだなーと思う。不倫にも
ルールはあるものだ。
愛し合っていたシルヴィアと男だったが、思わぬ展開になる。どんでん返
しというか、「えっ、そうだったの!?」という感じだ。予想外の出来事
にびっくりさせられる。意外でおもしろいのだが、ちょっとあっけなかっ
た気がする。その後シルヴィアがどうなるのか描かれていないのだ。あの
あっけなさはフランス映画みたいだな、と思った。突然終わるというラス
トは結構好きなのだが、何と言うかこの映画は消化不良みたいな感じが残
ってしまった。おもしろかったことはおもしろかったのだが、まあとにか
く隠しごとは良くないということで。




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ファーストラヴ

2022-04-21 22:53:44 | 日記
2021年の日本映画「ファーストラヴ」。

父親を殺害した容疑で女子大生・聖山環奈(芳根京子)が逮捕された。彼女の
「動機はそちらで見つけてください」という挑発的な言葉が世間を騒がせる
中、事件を取材する公認心理師・真壁由紀(北川景子)は、夫・我聞(窪塚洋
介)の義理の弟で弁護士の庵野迦葉(かしょう/中村倫也)と共に彼女の本当の
動機を探るため、面会を重ねるが、二転三転する環奈の供述に翻弄されてい
た。真実が歪められる中、由紀はどこか過去の自分と似た何かを感じ始めて
いた。由紀の過去を知る迦葉の存在、そして環奈の過去に触れたことをきっ
かけに、由紀は心の奥に隠したはずの「ある記憶」と向き合うことになる。

島本理生氏の小説を堤幸彦監督によって映画化したサスペンスであり人間ド
ラマでもある。アナウンサー試験の面接後に父親を刺殺した聖山環奈は、動
機はそちらで見つけてくださいという挑発的な言葉を発し、「美しすぎる殺
人犯」としてセンセーショナルに報道される。公認心理師として知名度のあ
る真壁由紀は、環奈の国選弁護人である庵野迦葉に会いにいく。迦葉は由紀
の夫・我聞の義弟だった。迦葉は「あの子は曲者だよ。本当のことを言わな
い」という。やがて環奈の母親が弁護側ではなく検察側の証人として出廷す
ることがわかり、由紀と迦葉は共闘することにする。
由紀と迦葉はそれぞれ何度も環奈との面会に足を運ぶが、環奈は事件と関係
のない話をしたりと、ちっとも真実を話そうとしない。由紀は迦葉の兄と結
婚しているのにどうして名字が違うのかとかに興味を示し、由紀は迦葉の言
った「あの子は曲者」という言葉に納得する。しかし由紀は環奈は何かにと
ても傷ついているのではないかと思った。それは由紀もであり、由紀は環奈
に対して自分と同じような匂いを感じ取っていたのだ。そして環奈の母親が
検察側の証人として出廷し、「悪いのは娘」と言ったことで、由紀も迦葉も
母親の娘に対する冷たさ、愛情の薄さを感じる。
この映画は女性が観たら少し辛くなるのではないかと思う。由紀も環奈も父
親からのセクシャル・ハラスメントを過去に経験していたのだった。それは
大人になっても彼女たちの心に傷として残っていた。どちらも吐き気がする
ような内容だ。迦葉は由紀に「自分と似たところがあると思って、あの子に
肩入れしすぎていないか」と言う。実は由紀と迦葉は同じ大学の同学年で、
当時交際したことがあり、由紀は夫にそのことを話していなかった。2人の
間にも因縁があったのだった。由紀と迦葉は調査を続けるが、環奈の言うこ
とと周囲の人々の言うことが食い違っており、なかなか事件の真相には近づ
かない。
この物語は言ってみれば主人公である由紀のトラウマからの解放を描いてい
る。環奈の事件が明らかになるにつれて、由紀は救われていくのだ。そして
それは環奈の方も同じだった。地獄のようだった環奈の少女時代。女性はど
うしてそんな辱めを受けなければならないのだろうかと思うと、胸が苦しく
なってしまう。そして迦葉もまたトラウマを胸に抱えているのだ。それはセ
クハラではないけれども。3者3様の心の傷は重たい。悲しく辛い物語だっ
たが、ラストでは希望の光が見えているのが良かった。あと中村倫也がかっ
こよかったし、迦葉という名前も何となく気に入った。


いただきものの魚のオモチャです。鯖かと思ったら鮭だそうです。私はお魚
の全身をあまり見たことがなく、スーパーで売っている切り身しかほぼ知ら
ないので(^^;)









私の腕にもたれかかって寝るノエル













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セブン

2022-04-16 22:34:06 | 日記
1995年のアメリカ映画「セブン」。

退職まであと1週間と迫ったベテラン刑事ウィリアム・サマセット(モーガン・
フリーマン)と若手刑事デヴィッド・ミルズ(ブラッド・ピット)は連続猟奇殺
人事件の捜査にあたる。犯人はキリスト教における「7つの大罪」に基づいて
殺人を繰り返していることが明らかになる。やがてサマセットとミルズは犯人
を割り出すが、その人物に逃げられ、更にミルズの素性が知られていたことも
発覚する。そして更なる殺人事件が続いた後、犯人は血まみれになった服を着
て自首してくる。

言わずと知れたデヴィッド・フィンチャー監督の傑作サスペンス・スリラー。
私はこの映画が好きで何度も観ている。最初は映画館で観たのだが、その後も
テレビ放送される度についつい観てしまう。「羊たちの沈黙」などと同様、こ
んなに良くできたサスペンス映画はそうないと思う。独特のダークな映像も印
象的。
最初の被害者は驚く程肥満の男で、死因は食べ物の大量摂取とその状態で腹部
を殴打されたことによる内臓破裂だった。現場には「大食」と書かれていた。
次の被害者は強欲な弁護士で、彼はオフィスの自室で血まみれになって殺され
ていた。状況から犯人は被害者に自分で自分の贅肉を切らせていたのだと推定
された。そして現場には血で「強欲」という文字が書かれていた。サマセット
はキリスト教の7つの大罪に基づいて殺人を行っていると判断し、あと5人殺
されると言う。
7つの大罪とは「大食、強欲、怠惰、肉欲、高慢、嫉妬、憤怒」である。その
言葉にそって殺人を犯すという犯人のサイコっぷりがすごい。この映画はミス
テリー的にもおもしろいが更に怖いのだ。物語は最初から土砂降りで、残忍な
殺人事件が続き、とても暗い。けれどもそれに惹きつけられる。そしてブラッ
ド・ピットとモーガン・フリーマンの演技がとてもいい。定年退職間近の刑事
とその後任でやって来た若手刑事が経験する恐怖の7日間が陰惨に描かれてい
るが、2人とも役にとても合っていると思う。サマセットとミルズ役には他の
俳優も考えられたらしいのだが、結果としてこの2人で成功した感じ。
サスペンス映画やミステリー映画でキリスト教がモチーフとして使われること
って割とあると思うが、どうしてこんなに合うのだろう、と思う。信仰と犯罪
の組み合わせが異常性が強く感じられるからだろうか。この映画の犯人の目的
は何だったのか、それを考えると怖い。まだ7人殺害する前に何故か犯人は自
首してくるが、その目的は何なのか。ここまで綿密に計算した犯人の思考の異
常さ。絶望的なラストもとても強烈である。


良かったらこちらもどうぞ。デヴィッド・フィンチャー監督作品です。
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刑事

2022-04-12 22:32:30 | 日記
1959年のイタリア映画「刑事」。

ある日、ローマのアパートで殺人事件が起きた。被害者はバンドゥッチ家夫人
のリリアナ(エレオノラ・ロッシ=ドラゴ)。事件の捜査に当たるイングラヴァ
ーロ警部(ピエトロ・ジェルミ)は、彼女の夫(クラウディオ・ゴーラ)や彼女の
いとこで医師のヴァルダレーナ(フランコ・ファブリッツィ)を有力な容疑者と
してにらむが、何も決めてはない。やがて、イングラヴァーロ警部がリリアナ
の夫やヴァルダレーナ、バンドゥッチ家の女中アスンティナ(クラウディア・
カルディナーレ)らと接するうちに、彼らの様々な人間模様が浮かび上がって
くる。

鉄道員」などで有名なピエトロ・ジェルミ監督・主演の刑事ドラマ。刑事も
のだが人間ドラマの要素もあっておもしろかった。主人公のイングラヴァーロ
警部の目を通して見たローマ市民の群像劇のようになっている。自宅で殺害さ
れていた37歳のリリアナは資産家で、警察は夫のバンドゥッチとリリアナの
いとこで医師のヴァルダレーナに目を付ける。リリアナは長い間不妊に悩んで
いて、ヴァルダレーナに個人的に相談しており、お金を渡していた。リリアナ
の遺体の第1発見者もヴァルダレーナだった。イングラヴァーロ警部は女中の
アスンティナに話を聞くが、彼女はリリアナを慕っており、とてもショックを
受けていた。
観ていてもなかなか犯人はわからない。バンドゥッチもヴァルダレーナもどち
らも怪しく見えるし、どちらも違うようにも見える。かといって他に怪しそう
な人は見当たらない。捜査を続けるうち、リリアナもバンドゥッチもヴァルダ
レーナもアスンティナもそれぞれ事情を抱えていることがわかってくる。バカ
のひとつ覚えのように「ヴァルダレーナが犯人だ」と繰り返すハゲで小太りの
刑事がおもしろい。刑事ものってこういう人が大体登場すると思う。
ピエトロ・ジェルミがかっこいい。「鉄道員」はこの映画の3年前に作られた
映画なのだが、「鉄道員」ではすごく老けていた。同じ人とは思えない。老け
メイクとかしていたんだろうな。昔のヨーロッパの刑事ってやっぱりスーツに
帽子(冬場ならトレンチコートも)だよねえ、と思う。ほんとに渋くてかっこい
い。アスンティナ役のクラウディア・カルディナーレはセクシー女優として絶
大な人気を誇った人だが、私から見るととてもかわいい(胸は大きいけど)。イ
タリア映画ってよくこういう迫力あるグラマー美女が登場するな。
後半、リリアナの遺言書が公開され、数人の人や教会などに遺産を譲ると書い
てあり、夫のバンドゥッチには全く残されていないことがわかり、物語は大き
く動く。夫は遺言の無効を申し立てようとする。やっぱりお金が絡んでいたの
か。でも真犯人は意外な人物だった。全く想像していなかったので、びっくり
した。全編モノクロームだがおもしろかった。主題歌の「死ぬほど愛して」は
世界中で大ヒットしたので、映画を観ていない人でも聞いたことがあるのでは
ないかと思う。




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