猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

孤狼の血 LEVEL2

2021-08-30 22:51:39 | 日記
2021年の日本映画「孤狼の血 LEVEL2」を観に行った。

平成3年、呉原市を拠点とする暴力団・尾谷組と県内最大の広域暴力団・
広島仁正会が繰り広げた壮絶な抗争劇から3年が過ぎ、広島の暴力団情勢
は小康状態にあった。県警呉原東署の刑事・日岡秀一(松坂桃李)は、マル
暴の刑事・大上章吾(役所広司)に代わり、広島の裏社会を治めており、警
察組織と暴力団の双方から一目置かれる存在になっていた。自分を慕うチ
ンピラ・近田幸太(村上虹郎)をスパイとして広島仁正会へ送り込んでいた
が、服役していた上林組組長の上林成浩(鈴木亮平)が出所したことをきっ
かけに、保たれていた秩序が乱れ始める。上林の存在と暴力団の抗争や警
察組織の闇、更にはマスコミのリークによって、日岡は追い詰められてい
く。

白石和彌監督による2018年の映画「孤狼の血」の続編。主役だった役所
広司が出演していないので物足りないのでは?と思ったが、充分おもしろ
かった。伝説のマル暴刑事・大上に代わり、大上とコンビを組んでいた新
米刑事・日岡が主役である。3年前の日岡は広島大学出身のエリートで、
大上に振り回されてばかりいたが、成長していた。髪を短く切って無精ひ
げを生やし、前は標準語で話していたが今回はバリバリの広島弁。大上の
"血"を受け継いだ形で、松坂桃李がなかなか様になっている。日岡の暗躍
によって危うくも秩序が保たれていた広島の裏社会だが、上林が刑務所か
ら戻ってきたことにより、それは崩れていく。
上林役の鈴木亮平の演技がすごく怖い。上林は極悪非道でモンスターのよ
うな男だが、それを見事に体現している。刑務官が言った「一体どうすり
ゃ、あがいな人間が生まれるんか」という言葉が印象的だ。そのくらい人
間離れした残忍ぶりなのだ。上林の生育環境は悲惨そのもので、ああいう
育ち方をすればモンスターが出来上がっても不思議はないのかもしれない、
と思った。上林が子供とぶつかってハッとして、自分の子供時代を思い出
すシーンも印象的だった。
上林は自分が服役している間に暴力団の雰囲気が変わり、金儲けに勤しん
でいるのが気に入らない。広島仁正会の傘下にあった五十子会の死んだ会
長に忠義を尽くしている上林は、自ら上林組を立ち上げる。そして日岡に
頼まれてスパイとして上林組の組員になっている近田は、上林の残虐さを
目の当たりにして驚く。また、警察のことはよくわからないが、色々と闇
が深いんだなあと思った。様々な人に様々な思惑があり、日岡のような不
良刑事でも騙される。日岡は自分の情報が上林組に流れていることに気づ
き、自分に付きまとっている新聞記者を疑う。
前作とどちらがおもしろかったかと言われれば、前作の方かなという感じ。
バイオレンスシーンやグロテスクシーンはかなり増しているものの、物語
としては前作の方が好きである。続編はちょっとバイオレンスに頼ってし
まったような感じがする。上林もヤクザというよりサイコパスの猟奇殺人
犯みたい。斎藤工や早乙女太一や毎熊克哉も頑張っていたが、ちょっと存
在感が薄かったと思う。でもラストシーンは良かった。あのシーンが意味
するところを思うと、また次作を期待する。


良かったらこちらもどうぞ。白石和彌監督作品です。
凶悪
サニー/32
孤狼の血


やっと梅雨みたいな長雨が終わったと思ったら、また猛暑。もうイヤ、早
く夏終わって欲しいなあ



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ガンズ・アキンボ

2021-08-25 22:55:15 | 日記
2019年のイギリス・ドイツ・ニュージーランド合作映画「ガンズ・アキ
ンボ」。

ゲーム会社でプログラマーとして働くマイルズ(ダニエル・ラドクリフ)は、
ネットの掲示板やコメント欄に過激な書き込みをして憂さ晴らしをしてい
た。ある日、マイルズは本物の殺し合いを生配信する闇サイト「スキズム
」に攻撃的な書き込みを繰り返し、サイトを運営する闇組織のボスを怒ら
せてしまう。組織に襲撃され気を失ったマイルズが目を覚ますと、両手に
ボルトで拳銃が固定されていた。更に元恋人も人質にとられたマイルズは、
「スキズム」で最強の女殺し屋ニックス(サマラ・ウィービング)に24時
間以内に勝てば解放すると言い渡されてしまう。

両手に拳銃が固定された状態でデスゲームに参加させられた男の戦いを描
いたバイオレンス・アクション・コメディ。ゲーム・プログラマーをして
いる冴えないオタク青年・マイルズは、ネットの掲示板や動画のコメント
欄に過激なコメントを書き込むのを趣味にしていた。ある日の夜、マイル
ズはスキズムという違法なデスゲームをネット上で観戦しつつ、いつもの
ように攻撃的なコメントを書き込んでいた。スキズムを主催するボスはそ
のコメントに激怒し、マイルズの身元を特定した後、部下に命じて彼を拉
致させた。雑な手術で両手に拳銃を固定されてしまったマイルズは、戦闘
狂の女性・ニックスとのデスマッチに放り込まれた。24時間以内にニッ
クスを倒せば解放されると言われ右往左往していたマイルズだが、元カノ
が人質に取られたことを知って戦う決意をする。
まるで漫画みたいなぶっ飛んだ物語だが、なかなかおもしろかった。ダニ
エル・ラドクリフは変わった役ばかりしているが、今度は両手に拳銃を固
定されてしまう役である。こんな男は世界に1人もいないだろう。マイル
ズはつまらない毎日を送っているオタクだが、いい人である。でもネット
で違法なデスゲームを観戦していたのはどうかなーと思う。批判のコメン
トを書き込んではいたが、他のギャラリーと一緒じゃないのかな。最強の
殺し屋ニックスと戦わなければならなくなったが、マイルズは殺人などし
たくない。まず警察に連絡しようと思ったが、両手がふさがっているので
電話もかけられない。
最初の方はマイルズの奮闘がコミカルで、手が使えないというのはこんな
にも不便なものなのだと思った。ドアのノブも満足に回せない。やっと外
に出て警察官の姿を見つけて、「助けて!」と言うが、部屋着(ガウン)に
下着、靴下、トラ模様のスリッパ姿の青年が両手に拳銃を持っていたら不
審者としか思われず、撃たれそうになる。慌てて逃げるマイルズだが、今
度はニックスに命を狙われる。最強の殺し屋のはずのニックスに攻撃され
てもマイルズがなかなか死なないのが笑える。悪運の強い男だ。そうこう
しているうちにスキズムのボスに元カノが拉致され、マイルズはニックス
と本気で戦うことを余儀なくされる。
ニックスがどうして戦闘狂になったのかという理由も出てくるが、彼女は
彼女でトラウマを抱えており、それは悲惨なものだった。紆余曲折を経て
やっと警察に理解してもらえたマイルズだが、何としてでも元カノを助け
出さなければならない(実は彼女に未練タラタラである)。そして一計を案
じる。とにかく人が死にまくる映画なので、マイルドにするためにコメデ
ィ要素を強くしたのだろうなと思った。こんな冗談みたいな物語をおもし
ろく観られたのは、映画のテンポの良さもあると思うがダニエル・ラドク
リフの演技力のお陰だと思う。すっかり実力派俳優に成長したダニエル。
ラストも「え、それでいいの?」という感じで、正にノンストップ・アク
ション・コメディだった。


どうしてノエルは何でもカジカジするのだろう。子猫の時だけかと思って
いたが未だにいろんな物を噛む







ノエル、ぺろり。













11日から続いた長雨もやっと終わりそう。今、梅雨でしたっけ…?
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サバイバル・イン・ザ・ルーム

2021-08-20 22:41:41 | 日記
2009年のアメリカ映画「サバイバル・イン・ザ・ルーム」。

夜道で車を走らせていたジャニーン(サニー・ラ・ローズ)は、うっかり
脱輪させてしまう。車がほとんど通らない田舎道のため、ジャニーンは
レッカー車を呼ぶことにする。しばらくしてレッカー車がやって来るが、
ジャニーンは運転手(ロバート・プラルゴ)に話しかけるも、彼は舌がな
く喋ることができなかった。運転手は作業服の胸の「アール」という名
札を見せ、ジャニーンの車をレッカー車につなぐとジャニーンを助手席
に乗せて走り出す。やがてジャニーンは車内で免許証を見つけるが、ア
ールの写真が別人だったため逃げ出そうとする。しかし運転手はジャニ
ーンに襲いかかり、彼女は男の家の納屋に閉じ込められ、電流の流れる
首輪を取り付けられてしまう。

監禁もののスプラッター・ホラー。よくある変態男が女性を監禁する話
かと思っていたが、ラストにどんでん返しがあって結構おもしろかった。
ジャニーンは納屋の地下室で数人の女性の遺体を見つけ怯える。男は紙
に「お前は30日だ」と書いてジャニーンに見せる。男が口が利けない
のが余計に不気味。逆らうと首輪に電流を流されてしまうので、ジャニ
ーンは男に従うしかない。そして殺される30日以内に何とか逃げ出す
方法を必死で考えていた。
ジャニーンは監禁されている間にも他の女性が拉致されてくるのを目撃
する。そしてその女性はその場で拷問を受け、殺害されてしまう。かと
思えばジャニーンは数日後に男の自宅に食事に呼ばれるのだが、そこに
は別の若い女性が監禁されていた。男は女性をすぐに殺したり、納屋に
監禁したり、自宅に監禁したりと方法がバラバラである。何が基準で分
けているのかわからないが、とにかく男にとって犠牲者たちはオモチャ
のようなものなのだろう。気まぐれにやっているのだと思われる。
しかし男は女性たちに性的な行為を要求してこないのが不思議だと思っ
た。ただ監禁して逆らえば暴力を振るうだけである。何が目的なのだろ
う。最終的に殺すことだけが楽しいのだろうか。ジャニーンの方も時々
彼女の見る悪夢のような妄想のようなシーンが挟まれるのだが、これが
何を意味しているのかよくわからなかった。悪夢にはいつも彼女の妹?
のような女性が登場するが、彼女たちの会話の意味がわからない。ゾン
ビのような父親も登場するが、これはわかった。直接的なシーンはない
がジャニーンはこの父親のせいでトラウマを抱えており、それがラスト
への伏線になっている。
ジャニーンは途中で手錠を外されるが、何故か逃げようとしない。首輪
は付いているもののある程度自由になったのに逃げないのは、男に反撃
しようと思っているのだなと思った。やっぱりアメリカの女性は強い。
ラストのどんでん返しはおもしろい。あーそういうことだったのね、と
納得する。ある意味とても怖いラストかも。痛いシーンが多いのでそう
いうのが苦手な人は観る時注意が必要な映画である。




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太陽の子

2021-08-16 22:29:33 | 日記
2021年の日本・アメリカ合作映画「太陽の子」を観に行った。

「この研究が成功すれば、戦争は終わる」―そう信じて実験に没頭する若き
科学者・石村修(しゅう/柳楽優弥)。太平洋戦争終盤、軍から密命を受けた
京都帝国大学物理学研究室では、荒勝教授(國村隼)の指導のもと研究員たち
が原子核爆弾の開発を急いでいた。そんな中、建物疎開で家を失った修の幼
なじみの朝倉世津(有村架純)が、修と母(田中裕子)の家で暮らすことになる。
1945年の初夏、修の弟・裕之(三浦春馬)も戦地から一時帰宅し、3人は久し
ぶりの再会を喜ぶが、修と世津は裕之が戦地で負った深い心の傷を目の当た
りにする。修もまた、核分裂エネルギーの底知れぬ破壊力と葛藤していたが、
世津だけは、戦争が終わった後の世界で力強く生きていくことを決意してい
た。やがて裕之は再会を誓って戦地へと戻り、修は実験を続けるが、運命の
8月6日、広島に新型爆弾が投下されてしまう。

昨年の8月15日にNHKでテレビドラマとしてパイロット版が放送された、そ
の映画版である。恥ずかしながら私は、日本も原子核爆弾を開発する研究を
していたことを知らなかった。「もし成功すれば、歴史に刻まれる」という
思いを胸に、京都大学の学生たちが開発を急いでいたのだった。それは、皆
が尊敬するアインシュタインの理論を具現化することだったが、一方で世界
を滅ぼしかねない研究でもあった。それでもアメリカやソビエトに負けじと
日本も研究に没頭していた。
研究員の修は子供の頃から科学者になりたいと思っており、死んだ父親から
軍人になれと言われても科学者の道を選び、弟の裕之は軍に所属していた。
修と母親が暮らす家に幼なじみの世津とその祖父を住まわせることになり、
やがて裕之も一時帰宅をする。実は修も裕之も世津に想いを寄せており、世
津は彼らを兄のように慕っていた。帰宅しても戦地での出来事を一言も話そ
うとしない裕之の様子に、修も母も世津も裕之の心の傷を慮った。
修は修で、科学者が人を殺傷する兵器を製造することに苦悩していた。修だ
けではなく学生たちは同じ思いを抱えていたが、戦争を終わらせるためには
開発するしかなかった。研究員の心の葛藤が繊細に描かれていて、その苦し
みが伝わってくる気がした。この映画には戦闘シーンは全くないのだが、戦
争がいかに残酷で、いかに虚しいものかがよくわかる。修は科学オタクのよ
うなところがあるが、計算は苦手というキャラクターだ。それでも放ってお
けば徹夜でも実験をしかねない修を、皆は頼りにしている。
科学者の狂気のようなものを体現している柳楽優弥の演技力はさすがだった。
彼に限らずキャストは皆素晴らしかった。あの顔ぶれを選んだ黒崎博監督の
目の付け所はすごいと思った。終盤広島と長崎に原子核爆弾が投下され、日
本が降伏する辺りは本当に悲しい。実際の写真も出てきて痛ましかった。日
本より先に新型爆弾の製造に成功したアメリカだが、爆弾を投下しなければ
戦争は終わらなかったのだろうか。ラスト近くで修がアインシュタインと英
語で語り合うシーンはとても良かった。若い人たちに観て欲しい映画だと思
う。劇中の裕之と三浦春馬くんの姿が重なって見えて、泣けてきた。




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スケアクロウ

2021-08-11 22:43:52 | 日記
1973年のアメリカ映画「スケアクロウ」。

暴行障害の罪で6年間服役し、出所したばかりのマックス(ジーン・ハック
マン)と5年間の船乗り生活を終えたライオン(アル・パチーノ)は、南カリ
フォルニアの人里離れた路上で出会う。マックスは洗車屋を始めるために
ピッツバーグへ、ライオンは1度も会ったことのない我が子に会うためデ
トロイトを目指して、それぞれヒッチハイクの途中だった。短気で神経質
なマックスと陽気で人懐こいライオン。正反対の2人がふとしたきっかけ
で意気投合し、道中を共にしていくことになる。

第26回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞したロードムービー。
正反対の性格の2人の男が次第に友情を深めていく過程を描いている。あ
んなに何もない路上で彼らが出会ったのは、恐らく偶然ではなく必然だっ
たのだと思う。ヒッチハイクってそんなにうまくいくのかな。当時は多か
ったのだろうか。ライオンの本名はフランシスだが、マックスは「フラン
シスという名前は女みたいだ」と言って、彼のミドルネームであるライオ
ネルから取ってライオンと呼ぶことにする。マックスは「一緒に洗車屋を
やらないか」と持ち掛け、ライオンはあっさりと「いいよ」と答えた。2
人はまずデトロイトへ行ってライオンの目的を果たし、それからピッツバ
ーグへ向かうことにする。
南カリフォルニアからデトロイト、ピッツバーグというのはそれぞれ遠い
のだろうか。地理がさっぱりわからないが。ライオンは結婚したものの家
を飛び出し船乗りになってしまったいわば勝手な男だ。それでも毎月妻に
送金していたようだ。マックスは「奥さんはもう再婚しているかもしれな
いぞ」と言うが、ライオンは「それでもいい、子供にはひと目会いたい」
と言い、まだ見ぬ子供へのプレゼントの箱をいつも大切そうに抱えている。
2人はバーで飲んでいる時、マックスがケンカで大騒ぎを始め、再び更生
施設送りになる。そこでライオンはある男に暴行を受けるが、マックスが
仕返しにその男を叩きのめす。
マックスはとにかくケンカっ早いのだが、この辺りでマックスにとってラ
イオンが大切な存在となってきているのがわかる。どちらかと言えばひね
くれたタイプのマックスだが、ライオンを信頼しているのだ。アル・パチ
ーノがとても若い。こんなに若いアル・パチーノを見たのは私は初めてか
もしれない。大柄なジーン・ハックマンと一緒だとアル・パチーノの背の
低さが目立つが、それでも充分かっこいい。美青年だ。
更生施設を出所した2人はやがてライオンの妻の家の近くに着き、ライオ
ンは妻に電話をかける。その後のライオンの様子や行動、特に公園の噴水
の側でライオンがおかしくなっていくシーンは悲しい。マックスの「お前
がいないと俺はどうすればいいんだ」とライオンに言うセリフは泣けてく
る。こんなにもライオンはマックスにとって大きな存在であり、孤独なマ
ックスの居場所になっていたのだ。終盤はあまりの悲しさに画面から目が
離せない。そしてとても切ないラストシーン。本当に良かった。ああいう
シーンをどうやって思いつくんだろう。ジーン・ハックマンとアル・パチ
ーノの演技はさすがだった。




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