猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ミュージアム

2021-05-11 22:12:53 | 日記
2016年の日本映画「ミュージアム」。

雨の日だけに起こる猟奇殺人事件を追う刑事の沢村久志(小栗旬)。犯行現場に
残された謎のメモ、見つけられることを前提としたかのような死体、目撃証言
などから、カエルのマスクを被った犯人像が浮かび上がる。通称・カエル男と
呼ばれるようになった犯人(妻夫木聡)を追い詰めていく沢村だったが、カエル
男の仕組んだ残酷な罠にはまり、絶望的な状況に追い込まれてしまう。

大友啓史監督によるサイコ・ミステリー漫画の実写化。家庭を顧みずに仕事に
没頭し、妻子に家出されてしまった刑事・沢村。ある日残忍な殺人事件が発生
し、その事件を後輩の西野刑事(野村周平)と共に担当することになる。同様の
猟奇的な殺人事件が続けて起きるが、それは決まって雨の日だった。目撃証言
からレインコートを着てカエルのマスクを被った男が捜査線上に浮かび上がる。
やがて警察は被害者たちの関連性を見出す。
とてもグロテスクな犯罪なのだが、意外にもR指定になっていない。そういえ
ばセリフを聞いていると非常に残酷なのだが映像ではそのものは見せてはいな
いかな、と思った。いつも事件が雨の日なのは、犯行が目立ちにくいからだと
警察は考えていたが、やがて沢村はあるきっかけから、カエル男は日光アレル
ギーなのではないかと推測するに至る。そしてそこから捜査を続けるとある男
の存在に行き当たる。
刑事役の小栗旬と犯人役の妻夫木聡の熱演がすごく、なかなかおもしろかった。
ただ沢村の相棒の西野刑事は、沢村が勝手な行動を取ったために気の毒な結果
になり、ちょっと辛かった。そしてカエル男が沢村を拉致・監禁してからが少
し中だるみした感じがした。くどいというか。大体短時間であんなに手の込ん
だ罠を仕掛けられるだろうか。ちょっとリアリティがないなと思ったが、原作
がそうなのだからそれは仕方ないのだろう。
カエル男のような子供の時から異常者、サイコパスという人はきっといるのだ
ろう。生まれながらにして快楽殺人者の素質を持っているのだ。1番ゾッとし
たのは、沢村の妻の友人が警察に「私彼氏なんていません」と言ったシーンだ。
では刑事たちが会った男は犯人だったのか。凍りついたシーンである。あまり
良くなかったのは、小栗旬と尾野真千子が夫婦というのがしっくりこなかった
こと。何というか似合っていない。同じ大友啓史監督の「億男」でも佐藤健と
黒木華が夫婦役で全然似合っていないなあと思ったが、大友監督はキャスティ
ングのセンスが良くない?のだろうか。でもその他のキャストは良かったが。
この映画は原作の方が断然おもしろいのではないだろうかと思った。いつか漫
画を読んでみたい。




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プロジェクト・グーテンベルク 贋札王

2021-05-07 22:57:45 | 日記
2018年の香港・中国合作映画「プロジェクト・グーテンベルク 贋札王」。

1990年代のカナダ。画家を目指すレイ・マン(アーロン・クォック)は、大成して
恋人との安定した生活を送ることを夢見るが、なかなか才能を認めてもらえなかっ
た。生活が苦しくなる中、レイは食べるために絵画の偽造に手を出す。やがて「画
家」と名乗る男(チョウ・ユンファ)に腕を認められたレイは、彼の運営する偽札組
織で働くことに。米ドル紙幣の偽札発見テクノロジーの進化を嘲笑うかのように、
レイの偽札造りは世界を席巻していく。

香港、中国で大ヒットし、数々の賞を受賞したサスペンス・アクション。レイ・マ
ンと恋人は共に画家を目指しながらカナダで暮らしていたが、一向に生活は楽にな
らない。レイは絵画の偽造に手を染め、その腕を「画家」と名乗る謎めいた男に評
価される。そして彼の偽札組織のメンバーとなり、レイの偽札は徐々に市場に広が
っていく。だが「画家」は一見紳士風だが実は殺人もいとわない非情な男だった。
レイは殺人を目の当たりにして苦悩する。
2転3転する予測不能なストーリー展開でとてもおもしろかった。途中で真相に気
づいた人がいたらすごいと思う。私は完全に騙された。最初はレイがタイで逮捕さ
れ香港に護送されるところから始まるが、どういう展開になるのかともう冒頭から
ワクワクさせられる。そしてレイの偽札造りの技術がすごい。あんな繊細で慎重な
作業をよくできるものだと感心する。もちろん偽札造りに感心してはいけないが、
その腕に魅せられてしまう。ものすごい集中力で、アップで見ると本当におもしろ
い。
そしてチョウ・ユンファとアーロン・クォックのかっこよさが際立つ映画だ。チョ
ウ・ユンファが白いスーツ姿で(どうして白いスーツなのだろう。血が目立つと思
うのだが…というのは置いておいて)2丁拳銃で撃ちまくるアクションシーンは本当
にかっこいい。こんなチョウ・ユンファ兄貴を見たかった!という感じで満足。ア
ーロン・クォックは何故か髪型が変なのだが顔は相変わらず美形で、とても若い。
香港の俳優って皆年を取らない感じがする。どうしてあんなに若いのだろう。物語
は終盤大きく動き、そうだったのかあっ!となる。真相にびっくり。
この映画はアクションシーンが多いが、根底にあるのは夢破れた男のラブストーリ
ーだったりするので、余計におもしろい。ただの犯罪映画ではないのだ。レイの好
きな女性への一途な想いが伝わってきて切なさもある。ちょっとヤバいけど。映画
は広東語と中国語と英語が入り乱れているが、やっぱり広東語を聞くと安心する。
とてもおもしろい映画だった。


GWにランチに行きました。初めて行くパスタ屋さんです。おいしかったです。





また緊急事態宣言が出されることになりました。映画館、休館するのかなあ…5月
は観たい映画がいくつもあるのに。
早くコロナ収束して欲しいです。



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イレイザーヘッド

2021-05-03 22:16:46 | 日記
1976年のアメリカ映画「イレイザーヘッド」。

印刷工場で働くヘンリー(ジャック・ナンス)はガールフレンドのメアリー(シャー
ロット・スチュアート)に子供を出産したと告げられ、ヘンリーのアパートの部屋
で結婚生活を始めることになる。ところがメアリーが産んだ子供は手足がなく、お
ぞましい姿をしていた。奇妙な声で泣き続け、食べ物を全く食べない赤ん坊との生
活にメアリーは耐えられなくなり、実家に帰ってしまう。残されたヘンリーは1人
で赤ん坊を育てることになる。

デヴィッド・リンチの長編映画デビュー作で、リンチが監督・脚本・製作・編集・
美術・特殊効果を1人で務めている。ヘンリーはある日恋人のメアリーの家族から
夕食に招待され、彼女の家を訪問する。そこでヘンリーはメアリーから子供を産ん
だことを打ち明けられるが、その子供が人間なのかわからないと言う。赤ん坊は手
足がなく包帯のような布でぐるぐる巻きにされ、蛇のような奇怪な顔をしていた。
ヘンリーとメアリーは赤ん坊と共にヘンリーのアパートで暮らし始めるが、赤ん坊
は1日中異様な声で泣き、食べ物を全く食べなかった。ヘンリーは気にならなかっ
たが、メアリーはノイローゼになり実家へ帰ってしまう。ヘンリーは赤ん坊に興味
を持ち、育てることになる。
非常にシュールで難解で理解不能な映画。デヴィッド・リンチの原点なのだろう。
昔観た時も意味がわからなかったが、改めて観てもやっぱりわからなかった。多分
わからなくていいのだと思う。メアリーの産んだ赤ん坊は蛇のようというかエイリ
アンのようというか、とにかく人間の姿をしていない。そしてヘンリーはそれが気
にならないどころか、メアリーが出て行った後は結構育児を頑張っているのが笑え
る。大体登場人物全員が変なのだ。メアリーの父親も母親も祖母も変、いつの間に
か出産していたメアリーも変だし、主人公のヘンリーもとても個性的な容姿をして
いる。
登場人物だけでなく映像ももちろん変である。ヘンリーがメアリーの家に夕食に呼
ばれた時も、オーブンで調理された鶏肉をお皿に取り分けたら、その鶏肉は動いて
血を流す。ヘンリーはそれをじっと見ている。ヘンリーは度々奇妙な夢を見るのだ
が、それが本当に夢なのか現実なのかわからない。ほっぺたの膨らんだ女性が踊っ
ているのは何なのだろう。いや、考えてはいけないのだ。赤ん坊が病気になるとヘ
ンリーはマメに世話をする。しかしやがてヘンリーの赤ん坊に対する興味は違う方
向へ変わっていく。
ああいうグロテスクな赤ん坊の造形をリンチはどうやって思いついたのだろう。そ
してどうやって撮影したのだろう。脚本もどんなアイデアで書いたのだろう。色々
と不思議な人である。まさにリンチワールド全開の映画。意味不明だが私は好きで
ある。全編モノクロームなのがまたいい。この映画は完成するのに5年もかかった
そうだ。お金がなかったのかな。無名監督が資金を集めるのって大変なんだな、と
思った。


良かったらこちらもどうぞ。デヴィッド・リンチ監督作品です。
ブルーベルベット



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