猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

天国でまた会おう

2021-05-18 22:28:19 | 日記
2017年のフランス映画「天国でまた会おう」。

1918年、第1次世界大戦の終結目前。仏軍のプラデル中尉(ローラン・ラフィット)
からの理不尽な攻撃命令に従ったエドゥアール(ナウエル・ぺレス・ビスカヤ―ル)
は、プラデルに殺されそうになったアルベール(アルベール・デュポンテル)を助け
るが、その際に顔の下半分を失う大怪我を負ってしまう。良家の御曹司でアーティ
ストでもあるエドゥアールは家族にも会いたくないと戦死を偽装。そんな彼をアル
ベールは手伝う。戦後、パリに戻った2人は貧しい共同生活をスタートさせる。そ
んな折、かつて彼らの上官だったプラデルが財を築いていたことを知った2人は、
ある壮大な詐欺計画を企てる。

ピエール・ルメートルの小説を映画化した人間ドラマ。アルベール・デュポンテル
が監督・脚本・主演を務め、ピエール・ルメートルも脚本に参加している。とても
いい映画だった。物語は1920年のモロッコから始まる。詐欺容疑で逮捕されたア
ルベールは憲兵からの尋問を受け、戦友で共犯者のエドゥアールとのこれまでの経
緯を語り始める。戦争終結の直前、エドゥアールはアルベールを助けようとした時
に爆風に吹き飛ばされ、顔の下半分を失う。病院で意識を取り戻したエドゥアール
はショックを受け、実家に帰ることを拒む。アルベールは命の恩人であるエドゥア
ールに協力して彼の戦死の偽装工作を行う。そして2人はパリで一緒に貧乏暮らし
を始める。
エドゥアールは自分でマスクをいくつも作り、そのマスクを着けている。そして顎
がないので彼のしゃべっていることはアルベールにはよく聞き取れない。ある日彼
らは孤児の少女と知り合うが、少女は何故かエドゥアールの言っていることがわか
り、アルベールに通訳をするようになる。この少女、まるでエドゥアールの心が読
めるかのようでおもしろい。やがて戦没者のための追悼記念碑が建立されることを
アルベールたちは知るが、自分たちのような戦傷者に対しては無関心な社会に不満
を抱き、エドゥアールの絵の才能を使った記念碑建立詐欺を計画する。この詐欺に
ついて私はよくわからなかったのだが、これは私の理解力のせいだろう。原作を読
めばもっとわかるのかもしれないが。
アルベールは初め「捕まったら処刑台行きだ」と反対していたが、結局エドゥアー
ルの説得に腹をくくる。計画は成功し、2人は大金を手に入れる。そして少女と3
人でモロッコに逃亡する準備を進める。だが思わぬところからプラデルによって犯
行が暴かれそうになる。このプラデルは本当に卑怯な男で、戦争中も彼の企みによ
って多くの兵士が死んでいるのだ。プラデルの結末はすっきりするほど。物語はち
ょっとコミカルなところもあるが、全体的にとても切ない。エドゥアールは父親と
不仲だったが、結局は父親に認めてもらいたかっただけなのだ。エドゥアールと父
親のエピソードは辛かった。
映画はアルベールの回想(憲兵への語り)によって進行し、ラスト近くでアルベール
は話し終えるのだが、その後がとても悲しくて尚且つ感動的だった。アルベールと
憲兵のやり取りというか、憲兵のセリフに涙が出そうになった。セリフのひとつひ
とつが忘れられない。「これでいいの?」と思う人もいると思うが、私はフランス
映画らしくてとてもいいと思った。この映画、映画館で観たかったなあ。




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2 コメント

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友情ストリーなんでしょうかね。 (ウラジーミル・アスポン)
2021-05-19 22:30:17
これって男同士の友情ストーリーですね。
エドゥアールは、友人のアルベールを助ける為に
酷い顔になりましたね。

↑このことに感謝したアルベールは、
ちゃんと戦死の偽装を手伝いますね。

又、貧しいながらも共同生活を送るのがこころあたたまります。

さらに自己で滑舌も悪くおしゃべりうまくできないエドゥアールの
言葉を訳してくれる少女まで現れて、
まるで、2人の子供みたいに思えてきますね。
別にゲイカップルではないですが・・・・。

尚、アルベール役の俳優は、役名と同じ
アルベールなんですね。それも面白いです。
監督・脚本・主演なのも凄いですね。
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Unknown (杏子)
2021-05-20 02:45:32
>ウラジーミル・アスポンさん
コメントありがとうございます。そうですね~、友情だったり親子の情愛だったり恋愛だったり、
戦争の爪痕だったり、いろんな要素が織り込まれていますね。
顔を半分失ったエドゥアールが自分で仮面を作って、それがとても芸術的な仮面なのがユーモラスです。
原作があるので、たまたま主人公の名前と俳優の名前が同じだったのでしょうね。
とにかく終わり方が良かったです。この映画、DVDを買いたいです。
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