「孤独死」から「孤立死」へ 新局面に入った貧困問題
(田中龍作)より
貧困が底なし沼化しつつある。つい数年前まで「実家に帰れば何とか暮らしていける」と言われてきた。
家賃は要らない、食事は親と共に食べればよいからだ。
ところが親の年金は少なくなり、いい年をした子まで食わせていくことができなってきた。
親と子が共に餓死あるいは衰弱死する「孤立死」が、「孤独死」にとって代わった。
貧困問題は新局面に入ったのである。
働こうにも職はない。職はあっても家賃を払って食って行けるだけの収入はない。
有期雇用の労働者のうち年収200万円以下が57・3%(厚労省主催・有期労働契約研究会=2009年)。
給与所得者の23%が年収200万円未満(国税庁=2010年)。
非正規労働者の半分以上が年収200万円以下、労働者の5人に1人が年収200万円未満なのである。
これでは貯金のしようもない。
雇用契約の更新がなくなり次の仕事がみつからなければ、たちまち生活できなくなる。
病気になっても同様だ。
生活保護は最後のセーフティーネットであるのに、役所の支給審査は俄然厳しくなってきた。
お笑いタレントの不正受給問題は、役所にとって格好の締め付け材料だ。
生活保護申請に行くと役人は「あなた河本さんの例を知ってるでしょ」と言って支給すまいとする。
やむにやまれず生活困窮者となった人たちに死ねというのだろうか。
「反貧困世直し大集会2012」が都内できょう開かれた。
(主催:反貧困ネットワーク)
「同一労働、同一賃金の制度確立を」と書いたプラカードを持って参加しているのは新宿の僧侶だ。
年間80件の自殺や孤立死に立ち合い、お経をあげている。
月5~6件のペースである。
「自殺も孤立死も背後にあるのは貧困だ。
根っこを絶たない限り問題の解決とはならない」。
僧侶は口元を引き締めるようにして話した。
都内から参加した非正規労働者(30代・男性)の月収は10万円台だ。
「結婚なんて考えられない。我々は失業率のうちにカウントさえされていない」。
男性は悔しさをぶつけるように語った。
1%の富裕層のために99%は貧しい生活に沈められたままとなる。
「働けば報われる」という至極当然の摂理を失った国は、一体何主義と呼ぶのだろうか。
未来なきシステムであることは間違いなさそうだ。
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