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「東電OL殺害」再審 関連スクラップ

2012年06月16日 23時46分45秒 | Weblog

「東電OL殺害」再審 関連スクラップ

■クローズアップ2012:東電女性殺害、高裁決定 再審、広がる可能性 鑑定力向上、後押し

毎日新聞 2012年06月08日 東京朝刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20120608ddm003040149000c.html

97年の東京電力女性社員殺害事件の再審請求審で東京高裁は7日、無期懲役で受刑中だったゴビンダ・プラサド・マイナリ元被告(45)の再審開始と刑の執行停止を決め、検察当局は釈放手続きをせざるを得ない事態に追い込まれた。
 
高裁は釈放手続き停止を求める検察側申し立てを即日退け、元被告の「無罪」を強く意識した対応をとった。
 
背景には00年代以降のDNA型鑑定能力の飛躍的向上と弁護側への証拠開示範囲の拡大がある。かつて「針の穴からラクダを通すよりも難しい」と皮肉られた再審を巡る状況は様変わりしている。
 
【山本将克、島田信幸、山田奈緒】

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 「何が今、起きているのか分からない」。
 
高検が元被告を釈放する手続きに入ったとの一報が入った7日午後、主任弁護人を務める神山啓史弁護士は戸惑いながらも表情を緩ませた。

 一方、釈放手続きを余儀なくされた検察側は不快感を隠そうとしなかった。
 
今後、高裁の別の裁判長が担当する異議審や最高裁の特別抗告審で「再審請求棄却」に判断が覆る可能性もあるが、ある検察幹部は「異議申し立てを取り下げるつもりはないが、(釈放で)再審をやる必要性がなくなったも同然だ」と吐き捨てるように言った。
 
それほど検察側に厳しい決定内容だった。

弁護側が7年余に及ぶ再審請求審で提出した新証拠は計20点。
 
このうち決定が最も重視して「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」と位置づけたのは
 
▽被害女性の体内に残された精液のDNA型と、現場の部屋に落ちていた「第三者」の体毛1本の型が一致▽被害女性の胸部の唾液から「第三者」とみられる型を検出
 
▽コートの血痕部分からも同様の型を検出--したことだ。

 決定は詳細に評価し検討を加えた。「精液、体毛の型の一致」や胸部の唾液について「『第三者』がアパート空き室で被害女性と性的関係を持った可能性を示す」と指摘。
 
コートの血痕についても「性交後に被害女性を殴打した際、『第三者』の手の表皮がはがれ落ちて血液と混ざった可能性が考えられる」と判断し、「それぞれの鑑定結果が相互に(『第三者』が現場にいたとの)可能性を高め合っている」とした。

 そこから確定判決の認定を疑問視し「第三者」が犯人である可能性を強くにじませた。

 再審請求審で検察は何度も追加鑑定を行い、有罪主張の補強を図ったが、決定はことごとく排除した。
 
例えば、被害女性の手の付着物から元被告の可能性があるDNA型が検出されたことについても、「被害女性の手が床に触れて(現場の部屋を利用していた)元被告の細胞片が付着した可能性もある」などとして、当日の犯行との結びつきを否定した。

ある法務・検察幹部は「無罪の結論ありきで、元被告に不利な証拠も『可能性』でつぶしていった印象」と批判しつつ「97年当時、今回のレベルのDNA型鑑定が可能だったら捜査の展開は違っていたかもしれない。
 
反省点はある」と漏らした。

 ◇従来は「開かずの扉」

 「開かずの扉」と言われてきた再審。刑事訴訟法で非常救済手続きと定められ、再審開始決定には有罪判決を覆し得る新証拠が必要だ。
 
最高裁は75年、「新旧証拠を総合的に評価し、有罪に疑問が残れば再審を開始すべきだ」として比較的緩やかな基準を示した(白鳥決定)が、最高裁が把握する76年以降で死刑か無期懲役が確定した事件の開始決定は今回を含め9例(後に取り消された事件を除く)にとどまる。

 しかし、00年代以降、証拠開示の拡大と科学捜査の進展が「両輪」となって弁護側を後押しし、再審請求に影響を与えるケースが続いている。

 11年に再審無罪が確定した「布川事件」では開示された目撃証言が決め手の一つとなった。
 
また「足利事件」では再審請求審でのDNA型鑑定で真犯人の存在が浮かび、検察側は再審開始決定前に、無期懲役で受刑していた菅家利和さんを釈放した。

元東京高裁部総括判事の木谷明弁護士は「かつては判例上、証拠開示の基準が明確でなく、『火中のくり』を拾う裁判官は少なかった。
 
司法制度改革の一環で公判での証拠開示が新しくルール化された意味は大きい」とした上で「裁判所は再審請求審でも検察側にどんどん開示を促すべきだ」と提案する。

 ある検察幹部は「捜査や公判の環境は激変している。
 
事実上の『4審制』化につながるのが良いとは思わないが、検察不祥事も影響してか、刑事裁判官が捜査不信になっている。
 
再審請求が今後も増えるだろう」と語った。

==============

 ◆東京高裁決定(骨子)◆

・再審を開始する

・無期懲役刑の執行を停止する

・「第三者」の男が現場で被害者と性的関係を持ち、その後殺害して現金を奪ったとの疑いを否定できない

・新証拠(「第三者」の存在を示唆するDNA型鑑定結果)は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に当たる




■東電OL殺害 検察を敗北に導いた新証拠

(読売社説6月8日付)
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120607-OYT1T01329.htm

「第三者が女性を殺害した疑いがある」

 裁判所がこう認定した以上、裁判をやり直すのは当然と言えよう。検察の完敗である。

 東京電力女性社員殺害事件の再審請求審で、東京高裁はネパール国籍のゴビンダ・プラサド・マイナリ元被告に対し、再審開始と刑の執行停止を決定した。

 決定は、無期懲役とした確定判決について「合理的な疑いが生じている」と断じた。
 
「疑わしきは被告の利益に」という刑事裁判の鉄則に沿った判断である。

 東京都渋谷区のアパートで1997年、東電の女性社員が殺害され、現金約4万円を奪われたのが、この事件だ。
 
マイナリ元被告は一貫して犯行を否認し、1審は無罪、2審で逆転有罪となり、最高裁で2003年に確定した。

 再審請求審で争点になったのは、新たに行われた鑑定の結果だ。
 
女性の体内から採取された精液のDNA型がマイナリ元被告とは異なり、現場に落ちていた別人の体毛のDNA型と一致する、というものだった。

 殺害現場に第三者がいたことをうかがわせる新証拠だ。
 
決定は、「この鑑定結果があれば、公判での有罪認定には至らなかったと考えられる」と指摘した。

 事件当時の技術でも、DNA鑑定は可能だったとされる。
 
警察・検察は、捜査を尽くさなかったと批判されても仕方がない。

 検察が、決定に対する異議を申し立てたため、東京高裁が再び再審開始の可否を審理する。

 一方で高裁は、服役の継続を求めた検察の申し立てを退けた。
 
不法残留していたマイナリ元被告は釈放され、本国に強制送還される見通しだ。

 裁判所としては異例であり、配慮のある判断だと言える。

 有罪判決が揺らいだことを重視し、これ以上、懲役を長引かせるのは避けねばならないと考えたのだろう。
 
今後の審理は、本人不在で行われる公算が大きい。

 マイナリ元被告の逮捕からすでに15年が過ぎている。
 
審理のスピードアップが必要だ。

 検察は、今回の再審開始決定を覆すような証拠を示すことができなければ、速やかに再審開始に応じるべきであろう。

 再審開始に至るまでの、複雑で時間がかかる現行制度への批判は多い。
 
まずは再審を開始し、その法廷で詳しい証拠調べをして真相解明すべきだとの声もある。

 制度のあり方を再検討する時期に来ているのではないか。




■「東電女性社員殺害」再審―警察・検察・裁判所「マイナリ犯人シフト」の恐ろしさ

(J-CASTニュース2012/6/ 9 12:00
http://www.j-cast.com/tv/2012/06/09134999.html

東京高等裁判所は7日(2012年6月)、15年前に東京・渋谷で起こった「東電女性社員殺害事件」の再審を決定した。
 
無期懲役で服役していたネパール人のゴビンダ・プラサド・マイナリ(45)さんの刑の執行停止(釈放)も決めた。
 
決め手は現場に残された精液や体毛などのDNA鑑定で、マイナリさんとは別の第3の男が殺害した可能性が高くなったためだ。
 
警察・検察も裁判所も考えもしなかった、あるいは無視してきたことだった。
 
その衝撃は大きい。

▼強引な見込み捜査でDNA鑑定も容疑者不利のものだけ

この事件は直接証拠が少なく、警察は隣のビルに住むマイナリさんが一時この部屋のカギを預かっていたこと、トイレのコンドームから検出された精液などの血液型が一致したことからマイナリさんを逮捕・起訴した。
 
一審の東京地裁は無罪となったが、二審の逆転有罪・無期懲役が最高裁で確定した。
 
マイナリさんは一貫して無罪を主張し、支援者が証拠の新たな鑑定をもとに再審を求めていた。

決定は「無罪を言い渡すべき明らかな証拠があり、これが控訴審に出されていれば、有罪にはならなかった」と明快だった。
 
鑑定されたのは被害者の体内の精液、陰毛、衣服などについた血液などで、ここから「証拠番号376の男」が浮かび上がった。

警察は早い段階からマイナリさんに絞った見込み捜査を続けた。
 
DNA鑑定もマイナリさんにつなげるものだけが行われ、被害者の体内の精液も血液型しか調べていない。
 
精液の血液型はO型で、マイナリさんはB型だったが、被害者が直前に性交した男性がO型だったため、「それだろう」で済ませている。
 
何とも大雑把だ。

それでも当時、この捜査は状況証拠で無理なく有罪を勝ち取った適正なケースという評価だった。
 
NHK社会部の堀部敏男記者は「何が欠けていたのか、徹底検証が必要」という。
 
一審の地裁が状況証拠を不十分として無罪を言い渡したのは、コンドームは事件以前の可能性があり、複数の人間の体毛が採取され、マイナリさんの定期入れが巣鴨で見つかったが、マイナリさんは巣鴨を知らず、真犯人が捨てた疑いがあったからだ。

ところが、二審の高裁はコンドームは当日でも不自然ではない、他人の体毛は関係ない、定期入れは無罪を示すことにはならないとして、「一審は事実を誤認した」とまで言って有罪とし、無期懲役を言い渡した。
 
最高裁もこれを維持し確定した。


▼一審「無罪」の裁判長「私はきちっと証拠で判断した」

一審の裁判長だった山室恵さんは、「裁判官の多くは有罪が妥当と考えていた」という。
 
「状況証拠は圧倒的にマイナリを指していた。
 
私はきちっと証拠で判断した。
 
だから恐ろしいんですよ」。
 
では、一審と二審を分けたものは何か。
 
東京高裁判事だった木谷明さん(現・法政大学大学院教授)は、「(裁判官は)最初に被告人がちょっとおかしいなと感じると、心証でそれを引きずってしまうことがある。
 
マイナリさんの弁解が曖昧であったことは間違いない。
 
でも裁判所が簡単に弁解を排斥してしまったのは問題だった」と話す。
 
そして、「弁護側は検察が持っている証拠の全部は知らない。
 
現行制度の盲点で、知っていればもっと早く(再審決定が)できただろう」と言う。

キャスターの国谷弘子「プロが捜査してプロが裁く。
 
それが同じ流れに乗ってしまうのは怖い」

木谷教授「裁判所はもっと証拠を批判的に見る必要がある。
 
有罪を厳格に考えるべきだと思います」

マイナリさんが支援者に送った手紙は120通にもなる。
 
初めローマ字だけだったのが、いまは漢字仮名交じりで「私は再審無罪でネパールに帰ることを期待しています。
 
私は犯人ではない」と書いてあった。
 
これほど痛ましく悲しい15年があっただろうか。
 
有罪判決を出した裁判官に聞いてみたい。
 
再審決定後もなお有罪といい続ける検察にも。

ヤンヤン

*NHKクローズアップ現代(2012年6月7日放送「東電女性社員殺害事件 再審の衝撃」)

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