goo blog サービス終了のお知らせ 

みずけん戦記

せめてもう少しだけ、走らせてくれ。

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記10「ツールは終わらない」

2009-08-23 23:59:40 | 自転車
ツール・ド・フランス2009、第21ステージが最終ステージとなる。

ただ、このステージはパリへ向かう道中、その後の凱旋門の前を通る周回コースを含め全てド平坦。
順位の差がほぼつかない(余程でない限り集団スプリントとなる)性質上、前日のモンヴァントゥで総合トップをキープしたコンタドールのマイヨジョーヌは動かず、山岳・ポイント・新人の各賞も今回はほぼ確定済の状況でのスタートとなった。

ということで、最初は本当にパレード走行という感じ、チームに関係なく色んな選手が色んな選手と自転車の上で談笑したり(それこそコンタドールとアンディ・シュレックも仲良うしゃべったりしてた)、時折デジカメでカメラマンを逆撮影したり、何か色々やりつつも和やかに集団はパリへと向かう田舎道を走り抜けていった。

印象的だったのは、3年のブランクを経て復活、見事総合3位となったランス・アームストロング。

実はツール開催中、彼が来年自らがチームを立ち上げるという話が発表になった。

そんな事情を知り、ランスはポイント賞を勝ち取ったトル・フースホフトと談笑しているのを見ると、何かフースホフトがスカウトされているような気が…?


一方、我らが新城・別府の両日本人選手もこれまでの厳しい20ステージをくぐりぬけ、日本人として初となるツール・ド・フランス完走に向けて歴史的なランを続けていた。

時折、国際映像で二人のツーショットが映し出され、何となくホクホクしてしまう。

だが、彼らの活躍はこれで終わった訳ではなかったのだ。


さて、ランスがいろんな選手に「来年俺も雇ってくれよ」と話しかけられたり!?しているうちに、いよいよ大集団はパリの周回コースに突入。

シャンゼリゼ大通の周回コース、まずは王者の貫禄を見せつつ、アスタナの集団が先頭で走る。

しかし、程なくしてポツラポツラとアタック合戦がスタート。

ここで、一人…スキルシマノのジャージをまとった男が飛び出した。

彼こそが誰あろう別府史之。


誰もがまさかと思ったろう。しかし、彼はやってくれた!
別府選手はじめ7人の選手が、集団から飛び出し、逃げ集団が形成。
とりあえず無難に完走したいアスタナ、あくまで最後にスプリントに持ち込みたいため焦って追いかけたくないコロンビア・ハイロードなど集団先頭チームの思惑も絡み、まずは逃げ容認という形となった。

この周回コース、実はポイント賞地点が2箇所(2回といった方がいいのか)設けられている。
で、このうち一つ目のポイント賞、逃げ集団の中で別府は踏ん張り、見事2位通過…


ただでさえ、初の日本人完走という快挙を成し遂げつつある中、そこで更にここまでやってくれるとは…別府選手の話はエピローグがてら次回書こうと思っている。


凱旋門を背に、ド真っ直ぐのシャンゼリゼ周回コース、怒涛の大集団を背に果敢に走る7人の男達。もちろんその中には別府選手も。
こんな素晴らしい光景を、最後に観られるとは思わなかった。


結局、別府たちは最後には集団に吸収されたが、このステージで別府選手は敢闘賞が授与された。

毎ステージ、敢闘賞をもらった選手は表彰されるものなのだが、最終ステージだけは全体通しての敢闘賞のみ表彰されるらしく、別府選手は表彰台に上ることは叶わなかった。

だが、いつか彼はきっとツールの表彰台に立つ日が来るだろう。表彰台はその時までお預けということにしとこう。


最後の周回、今度は新城選手が集団の先頭に食い込み、いよいよ今年のツール最後のゴール前!

あ…ここで最終列車が発車

何と何と、最終コーナーで対抗するガーミン・スリップストリームの選手を前で抑え、マーク・カヴェンディッシュが圧倒的なスプリント力でゴール…

当観戦記でも何度も取上げたカヴ、最終的に今ツール6勝という物凄い結果を残した。
新城選手は惜しくもこのステージ20位、しかし彼もまた最後までツールで勝負する心意気を見せてくれた。もう「出ただけ」などとは誰一人思わせない二人のサムライの活躍に、心から拍手を送りたい。


そして。

数々のドラマの末、ツール・ド・フランス個人総合優勝、アルベルト・コンタドール。

彼が今後、どんな活躍を続けていくかは分からない。
だが、今回王者の貫禄みたいなものも見せ付けた彼は、これからのロードレース界を引っ張っていく人物の一人となるのは間違いないと思う。
また、他の選手達もこれからこの経験を基に、様々なレースで活躍を続けていくのだろう。


ロードレースの歴史という大局としての「ツール」は、まだまだ続いていくのだ。


最後に。
俺は、今回初めてツール・ド・フランスというものをテレビごしながら3週間にわたり毎日チェックしてきた。
何だか、彼らの長かった旅に付き合い、自分もちょっとした旅をしてきたような感覚を覚えた。カロリーはそれ程消費してないけど…

この観戦記で、類稀なスポーツ競技、ツール・ド・フランスのことを誰かに少しでも伝えることが出来たのであったらよいな。そんなことを思いつつ、ヤパーリ1ヶ月引っ張ってしまった当シリーズにひとまず幕を下ろそう。


次回は一応ツール絡みながら、別の角度のお話をするつもり。

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記9「ツールの黄昏、モンヴァントゥの頂」

2009-08-16 23:16:37 | 自転車
180人の総勢でスタートしたツールも、リタイヤによりその数を減らし、残り156人。
考えたら2回の休息日がある他は、ここまで18日ぶっ通しで毎日200km近い距離を自転車で走るというのは、もはや旅というより冒険そのものだ。

その冒険のクライマックスに、「魔の山」もしくは「死の山」と呼ばれる山、MONT VENTOUX「モンヴァントゥ」は聳えていた。

標高は1,912m、頂上付近は厳しい気候のためほとんど草木も生えず、岩がむき出しになった風景も由来となっているんかも知れない。

だがここが「魔の山」と呼ばれるようになったゆえんの一つは、1967年のツール。

当時の名選手だった、トム・シンプソンという人が山頂付近で意識を失い転倒。そのまま帰らぬ人となるという悲劇が起こった。
(余談だが、資料(サイスポ7月号付録)によると、彼の最後の言葉は「Put me back on my bike」だったらしい…)

他にも何度か選手のトラブルがあったそうで、まさに「魔の山」と呼ぶべきモンヴァントゥ。
しかし、ここを上りきらねばシャンゼリゼへの道は開けない。

ここまで見事走り抜いてきた新城、別府両選手ももちろん、トップ選手達の挑戦を、この日俺はまずHUB横浜西口店で観戦。

このHUBという店、言ってみればスポーツバー的な場所で、自転車の主要レースのテレビ中継を店内で放送し、ツール・ド・フランスについてはコラボカクテルなども出したりしていてなかなか熱を入れている。
近い所では、8月末からブエルタ・ア・エスパーニャというのがまた長丁場なので行って見ると面白いと思う。

この日俺は自転車だったため、ノンアルコールカクテルを飲みつつ最初のほうだけ観戦。あとは実家にて観戦とした。


レースは、序盤から十数人の逃げ集団が形成され、集団は来るべきモンヴァントゥに向けて力を温存するためか、一時10分以上の時間差を容認。

総合優勝争いという面では事実上の最終ステージであり、総合上位の選手達は当然本気を出してくる。そういうことを考えれば正直勝ち目の薄い逃げではあるが、それでも彼らは逃げ続けた。


最大勾配10.6%、平均勾配7.6%。

この数字を見るだけでキビチイ、モンヴァントゥの上りが始まり、いつの間にか先頭は3人。
ラボバンクのファン・マヌエル・ガラーテ、コロンビア・ハイロードのトニー・マルティン、AG2R(アージェードゥゼル)のクリストフ・リブロン
しかし、この3人も協力体勢というよりは、お互い仕掛けあいながら半ばバラバラに行くような塩梅ではあった。


一方、その3,4分程度後ろを走るメイン集団は、やはり総合優勝争いの上位は全て面子に入っており、いつ誰が仕掛けるかという状態。

まずはサクソバンクのシュレック兄弟の兄、フランク・シュレックがアタック。
だが、この時点で総合3位のアームストロングや他の主要メンバーはこれにシッカリついてくる。

続いて、総合2位のアンディが先行。これにはコンタドールが(元々彼を重点マークしていたんだろう)後ろにつける。

その後、さらにアンディがアタック、兄ちゃんを含め他の選手を引き離すが、コンタドールは振り切ることができない…

そんな中、残り10km、8km、5kmと過ぎ、いつの間にか時速20km台という強烈な向かい風を受けつつ、いつの間にか兄ちゃん達のグループも再び二人に合流、総合上位達の熱い戦いが続く。


が、忘れてはいけない。
その先に前述した逃げ選手がまだ先行して走っているのだ。
リブロンは既に脱落し、ガラーテとマルティンの二人が、1分半程度先を頑張っている。
このモンヴァントゥで、まさかの逃げが決まるのか…?

先頭の二人、後ろの二人の戦いが、同時進行で繰り広げられる魔の山。

さらに、山岳賞ジャージのペッリツォッティが一人、先頭に追いつこうというペースでその中間地点を走るという、マルチな展開。


残り4km、3km、2km。

頂上が近づき、マイヨジョーヌに差をつけたいアンディは、さらにアタックを繰り返すが、黄色いジャージのコンタドールをどーしても引き離せない。

俺も自宅のPCで、沿道で応援する観客のコスプレ全力疾走大会(笑)を眺めつつ(本当、「人はなぜコスプレをするのか?」って論文を一遍書いてみたいくらいだ…俺もやるけど)、ステージ優勝、そして総合の行方をドキドキしつつ見守っていた。


最後の最後、先頭ではガラーテが、後ろではアンディがアタック。

ガラーテは、ゴール間際の急坂でマルティンを突き放し、何とこのステージを逃げ切り勝利。

一方アンディは最後までコンタドールを引き離せず、アンディ、コンタドール、そして粘りの走りでランス・アームストロングとフランク・シュレック。

終わってみれば、まず追いつかれると思っていた逃げ集団の面子が勝利したり、総合上位の人らは仲良く近いタイムでゴールという、逆に想像だにしない結果となったのである。


また、日本人選手2人も時間内に無事ゴールし、いよいよ残るは第21ステージ。

…は来週まで引っ張る結果になりそうな悪寒だが、21ステージもまた大事なのでちゃんと書かせてくれい。

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記8「19ステージ…七番目の男」

2009-08-15 13:35:08 | 自転車
第19ステージ。

最初にいくつか、最後に2級の山を上って下る他は平坦なコース。
次の日が大上りゴール(これは後述)、最終ステージはまっ平ら過ぎてゴールスプリント必至であるだけに、下馬評では今ツール最後の逃げチャンスステージだと。

いう話を覚えて頂きつつ、実際の展開は。



やはり序盤から逃げ集団が形成されるが、これはまだ残り30km以上のところで吸収されてしまう。

一度集団走行となるが、残り25kmあたりで、更にブイグテレコムのローラン・ルフェーブルが飛び出した。
さらにさらに、昨年の世界選手権の勝者であり、その証である「アルカンシェル」(虹の意、某バンドと同じだね)のジャージをまとうアレッサンドロ・バッランも集団から抜け出し、二人で果敢にも最後の山に挑む。

頂上の時点で、しかし集団とのタイム差は10秒チョイ。下りに入り、逃げる二人を追うようにさらに、第8ステージの勝者であり、下りが得意なルイス・レオン・サンチェスも集団から飛び出した。

もう集団がカメラの視界に入るくらいの状態で、空気抵抗を抑えるためにフレームに体を密着させるポジションでガンガン下る彼らを見るには、何となくユーロビートがBGMにしっくり来そうな…(笑)


だがサンチェスは坂の途中で追跡をあきらめ集団に飲まれ、ルフェーブルも吸収され、残りはバッラン。

あきらめず最後まで意地の走りを続けるバッランの背後には、いつの間にか、あのコロンビア超特急が… 


しかーし!!


話の途中だが、このステージの本当の目玉はそのコロンビア3人の後方。

なんと。

我らが別府史之選手がいい位置につけている…

もう様々な要素が入り混じり過ぎのゴール前、ついにバッランが特急に追い抜かれ、ラスト数百mはゴールスプリント!

先頭は、やはり圧倒的な強さを誇るコロンビア・ハイロードのカヴェンディッシュ、その真後ろにフースホフト、だが。

別府選手も必至の形相で、並み居る強豪スプリンター達を相手に一歩も引かない全力疾走を見せ、結果、7位!





最後の山を克服してのカヴの5勝目は確かに驚愕。バッランの最後まであきらめない果敢な逃げも素晴らしかった。

だが、それを差し置いてもなお別府選手の7位ってのは凄すぎる。
彼は第3ステージでも8位に入ったが、こう言っては何だが正直完走できるかどうかレベルの話が出てくるようなスタンスで、これまでの18ステージを立派に走り抜いてなお、ここで結果が出せるというのは並大抵のことではない。
ただ、ちょっとネタバレ?だが彼のツールでの活躍はこれが終わりではないのである。それは後の章でkwsk書くとしよう。


図らずも、非常にエキサイテングな勝負を見ることが出来た19ステージ。
その結果、20ステージは次の記事とさせて頂くことに

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記7「覇者の条件~公道最速伝説?」

2009-08-09 23:45:34 | 自転車
 ツール・ド・フランス、第17ステージ。

 ここも九十九折の山々が待ちうけるコースであり、最後は1級山岳を上ったあとしばらく下ってゴール。

 しかし、山と言っても実は途中の平地にスプリント地点があり、例のスプリント賞「マイヨ・ヴェール」のトップを走るトル・フースホフトが一人逃げを決めポインツゲッチュ。いよいよ緑のジャージを磐石なものとしてきた。

 面白いのは、スプリンターだけあってゴッツイ?漢フースホフト、2つ目のスプリントポイントを超え、サポートカーに勝利の美酒ならぬ缶コーラをもらったのだが。
 最初にいつも車上でやってるのか?プルタブを歯で空けようとし、ダメだったらしく手で空けようとしたが、コーナーに差し掛かり投げ捨てた。

 歯でプルタブを折って空けられなくなったから捨てたのかもしれんけど、なんか図らずも彼のゴーカイな一面が垣間見えた訳だが…何から何まで良い子のみんなは真似するな


 やがてフースホフトは後ろを走っていた先頭集団に吸収され、ラス前の山であるロム峠の上り。

 さらにメイン集団がその先頭集団を吸収し、そして、飛び出したのがアンディ・シュレック。
 マイヨジョーヌのアルベルト・コンタドールは、もう誰が見ても一目で分かるくらいビッタシアンディの真後ろにつけ、一歩も譲ろうとしない。

 相変わらず1級の山岳を平地のサイクリングの如くチャッチャと上りつつ、ロム峠はアンディと兄のフランク・シュレック、そしてコンタドールおよび彼と同じアスタナのアンドレアス・クレーデンの4人が先頭で頂上を通過した。

 そのまま、勝負は最後の1級山岳、コロンビエール峠に突入。

 兄がより上位かつ新人賞のかかる弟を引き、兄弟が颯爽と上り坂を往き、そのすぐ後をコンタドールとクレーデンが追う。

 そう、現時点で約2分半の差をアンディにつけているコンタドール、ここは追い抜かなくとも遅れさえしなければ、ボクシングで言うところの「タイトル防衛」なのである。
 それは当然前を行く兄弟船は百も承知、だがその王者になかなか差をつけることができない。

 頂上まで残り2kmを切ったあたり、アタックを仕掛けたのは…コンタドール!

 差をつけるどころか逆に置いて行かれそうになったが、二人のシュレックは息を合わせ何とか追いつくことに成功。一方コンタドールのチームメイト・クレーデンが遅れてしまい、コンタドールはそれを勘案してか脚を緩めた。

 結果、シュレック兄弟+コンタドールが仲良く?3人で頂上を上り、さらに下りでは3人による協議が行われ、3人で下り切りつつステージ優勝はフランク・シュレック、2位コンタドール、3位アンディという結果になった。

 まあしかし、レースの終盤で当事者自身、それもステージ優勝がかかった選手達による会話なんつうものが成り立つスポーツは自転車をおいて他にはないだろうなあ…

 とにかく、コンタドールは王者の余裕というか、恐らくは余力を残してシュレック兄弟に花を持たせたとでも言うべきか…
 ちなみに、ここでランス・アームストロングは終盤果敢な走りを見せつつ3人からは2分以上遅れ、一旦総合順位を4位に落とす形になった。


 そして、翌日第18ステージは、何と個人タイムトライアル。
 コースも、湖のほとりを走る爽やかな平坦コース…と思いきや終盤に3級の山があるという、ここまでずーっと走ってきたお疲れモードの選手には厳しそうな40.5km。

 ここでまずは、初日の個人TTで勝ったTTスペシャリスト、ファビアン・カンチェラーラが平均時速約50km/hというとてつもない速さで暫定トップ。ゴールタイムは48分33秒


 このステージは総合順位の低い方からスタートすることになっており、終盤になってTT最速王争いは激化。

 実は前日も健闘したガーミン・スリップストリームというかっちょええ?名のチームに属する、TTを得意とするブラッドリー・ウィギンス
 同じく前日も途中までトップに食いついていたクレーデン、言わずと知れたアームストロングなどの猛者が続々と最速を目指し走る。

 が、どうしてもカンチェラーラのタイムに誰も追いつくことができない。(ちなみにウィギンスは6位に終わった。クレーデンは9位)

 シュレック兄弟は、TTが不得意のようでタイムを落とし、結局フランクが結局アームストロングに総合順位3位を譲ることになる。


 そのままカンチェラーラがトップの中、最終走者、黄色の衣をまとったコンタドールが発進。


 かつてランス・アームストロングが7連覇を果たしたことはもう何度か書いているが、彼はオールラウンダー属性ながらTTも結構得意で、個人差がつきやすいTTで逆に総合上位に差をつけてマイヨ・ジョーヌを磐石にするというパターンも多かった。


 そして今、コンタドール。

 第1チェックポイントをトップで通過、山のてっぺんにある第2チェックポイントも華麗なダンシングで上り、やはりトップタイムで通過。

 しかし、カンチェラーラは最後の下りで伸びを見せており、勝負はゲタを履くまで分からない。

 アームストロング15位、アンディ・シュレックがそれに15秒遅れての20位でゴールする中、コンタドールはもうアンディのすぐ後ろ。
 黄色い弾丸が沿道に溢れる観客に見守られながら、ゴール前のストレートを最後の力を振り絞って突っ走る。


 注目のタイムは…

 48分30秒

 遂に、マイヨジョーヌのコンタドールがTT最速伝説までもその手に収めることになったのである。正に、ツールの覇者となるにふさわしい走りではないか。


 余談だが、この18ステージの日は小生丁度夜2時半まで会社でセコセコ仕事をしていた身だった。
 当然の如く周りに誰もいなかったため、仕事をしつつサイクリングタイムのテキストライブで一人盛り上がっていた。
 まあそんな爽やかな?思い出も個人的に残しつつ、コンタドールの勝利が目前に迫りつつも予断を許さぬ20ステージ、「魔の山」が勇者達を待ち受けるのであった。


(8/10追記)人知れず?コンタドールのTTタイム書き直した。
まさか俺としたことがこんな超ミスを1日放置プレイするとは…

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記6「覇者への道~コンタドールvs.シュレックブラザーズ」

2009-08-02 23:43:29 | 自転車
 ぶっちゃけ既に終了し、アノ選手がチームを立ち上げる話題とかアノ選手がドーピング検査で引っかかったとかその後の話も色々ある、ツール・ド・フランス。

 まあ折角ここまで書いてきたので、最後までこのペースでいってみよう。
 多くの人は知ってると思うけど、サムライ達の初ツールの結末もね。

------------

 第15ステージ、ここからいよいよツールは佳境に入ってくる。
 アルプス山脈の険しい山がラストに待ち受ける本ステージ、まずはやはり逃げ集団をメイン集団が追う形。

 で、その逃げ集団の中には総合優勝以外の賞の一つ、「山岳賞」であるマイヨ・ブラン・ア・ポア・ルージュ(要するに白地に赤い水玉)のジャージを狙うリクイガスのフランコ・ペッリツォッティ(読みづらいな…)が中間の山岳ポイントを稼ぎつつ進む。

 そんな中、メイン集団の先頭ではアスタナとサクソバンクがしのぎを削る状態。
 そう、アスタナにはアームストロングとコンタドール、サクソバンクにはアンディとフランクのシュレック兄弟とそれぞれ総合優勝狙いの選手がいる。

 その内二人のシュレックは、まあ兄弟だし協力しての走り前提となる訳だが、アスタナの二人は一体どういう動きを見せるのか?

 色々思惑が絡みつつ、本ステージの最後の上りであるヴェルビエへの高度差約600mの坂に突入。つうか普通の人ならこの坂を上るだけでもお腹イパーイだと思うが…

 それまで190km以上を走ってきたとは思えない走りで逃げた選手を追う、アスタナとサクソバンクの面々。

 これまで必死に走ってきた逃げの選手達を、まるで津波のごとく容赦なく飲み込み、さらにアタックの様子を伺う、シュレックやアームストロング達。


 そして残り5.6km。

 実は今回も新人賞の表彰対象だったりする、若干24歳の若きクライマー、アンディ・シュレック。
 この時先頭を引いていた彼の脇から猛然と飛び出したのは、やはり。

 アルベルト・コンタドール…!


 加速だけ見ていたらとても勾配7、8%の坂でのそれとは到底思えない走りに、アームストロングや他の選手達は追おうと動くことすらできない。

 ただ一人、アンディを除いて。


 ツールに限らず、急な上り勾配でしかも終盤付近ではよくある光景なのだが、道路狭しと観客がひしめき合い、もう選手には触ろうとするし、訳の分んないコスプレで追っかけてきたりというわやくちゃ状態の中を、駆け抜けるコンタドール、後方で追いすがるアンディ。

 この時アームストロングは、既に1分以上コンタドールから離され、チームメイトのアンドレアス・クレーデン(この選手も地味ながら?総合上位につけていた)と共に上り続ける。
 まあ、去年までのブランク、37歳という年を考えたら十分過ぎる位の走りではあったのだが…

 26歳のまだまだ若いコンタドールは、決してその走りを緩めることなく。

 アンディ・シュレックの追走を突き放し40秒以上の差をつけ、トップで走り切ったのである。


 そして、ここまで8ステージにわたりマイヨジョーヌを守る健闘を見せたノチェンティーニが後退し、遂にコンタドールがその黄色いジャージに袖を通すことになったのだ。


 続く第16ステージ、スイス、イタリア、フランスと三ヶ国をまたぐこのステージは、「ツイン・ピークス」というか、二つの2000m級の山を上って下るというところ。

 まず最初の山はペッリツォッティ(入力さえしづらい名だ…)が颯爽と駆け抜け、続いて集団。
 頂上ゴールでない限り、上ったら当然下りがある。

 という訳で、見てるだけなら爽やかそうな九十九折の坂を、「げえっ…な、なんてえスピードだ」と言いたくなるような超スピードですっ飛んでいく選手達。

 やがてペッリツォッティは先頭を行く集団に吸収され、せめぎあいの中もう一つのピークに突入。
 後ろのメイン集団でサクソバンクがペースを上げる一方、先頭ではブイグテレコムが先頭を引き続ける。

 だが、もちろんこのままスンナリとレースが過ぎる訳もなく。

 先頭では再び(!)ペッリツォッティとベルギーのチーム、サイレンス・ロットのヴァンデンブロックが飛び出す一方、後ろの集団からはアンディ・シュレックが猛アタック!
 再びついてこれず?のアームストロングに対し、コンタドールおよびフランク・シュレックら数名の選手がこれにつく。

 兄弟の絆で、コンタドールを引き離す走りを見せられるか、シュレックブラザーズ?

 と思ったら、あっ兄ちゃんが離れた   

 さらに、遅れたと思ったアームストロングがまさかの!?猛追、気がつけばコンタドール達に追いつき、サクソバンク勢とアスタナ勢の立場が逆転。

 またも車道に観客がひしめき、猛ダッシュで選手を追いかけようとするヴァカ者達の攻撃?にあいつつ、頂上。

 先頭ではまたもペッリツォッティがトップ通過、集団は気がつけば十数人の大所帯になりつつ、下り最速伝説スタート!

 途中、落車する選手もいてガクブルしながら見ていたが、ヘアピンカーブを見事なライン取りで抜け、あの細いタイヤでよくも…と思うようなとんでもないスピードで下りを走りぬけ。

 残り2km、先頭を走っていた4人のうちスペインのチーム、エウスカルテルのミケル・アスタルロサがカメラも見逃すような絶妙の位置で飛び出し、そのままゴール。

 一方、下りで先頭とかなり差を詰めていたシュレック兄弟(兄はいつの間にか追いついてた)、コンタドールとそしてアームストロング達の集団も程なくしてゴール。
 結局、4人はタイム差なしという第16ステージの結果であった。


 アタックに次ぐアタック、激しさを増すトップ選手たちの戦いはまだまだ続くが、17ステージからまた次回となるなあ…

別府選手すげーーーー!!

2009-07-26 23:51:16 | 自転車
ちょっとフライングだが…
今夜ツール最終ステージ、何と別府選手が他6人と逃げを決め、最初のスプリントポイントで2位獲得!

もうすげーとしか書きようがねえ…

こないだも某ステージ7位に入るし、完走できるかどうかどころではない活躍には驚きだぜ。
ちょっと今夜は眠れないかぁ?ゴール集団スプリントだったら新城選手に期待だ

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記5「逃亡者(のがれもの)たちのツール」

2009-07-26 22:40:59 | 自転車
 さてさて。

 無事?ツールバブルが弾け、アクセス数が通常に戻った(IP数で5,60/日という感じ…)当ブログだが、週一ペースは変わらず、つうか最近はこれをキープするので精一杯ではあるが…昨日も仕事してきたし…


 泣き言はさておき。


 ツール・ド・フランスに限らず、ロードレース(とりわけ平地ステージ)で選手が勝つ方法は大きく分けて二つ。
 一つは集団でのゴール前スプリント勝負を競り勝つこと。
 もう一つは、集団からひたすら逃げて逃げて誰よりも先にゴールすること。

 書いてしまえば簡単なのだが、やっぱり逃げて勝つというのもまた一筋縄ではいかない。
 やっとの思いで集団を抜け出しても、前回書いたように基本的にはロードレースは数が多いほうが走行の面では有利なので、最後に追いつかれてしまう場合も多々ある。


 しかし、それでも選手たちは逃げ続ける。


 第12ステージ、集団に3分以上先行して7人の逃げ集団が、森を一文字に切るような一本道や、本当に普段はなんでもないような小さい街を、しかしその美しい風景を見るでもなくひたすらに逃げる。


 逃げ集団も「集団」なので、「勝つ」ためにはその中でさらに先頭にならなければならない。
 そのため、残り数キロを切ってくると彼らの中でもアタック合戦が始まる…訳だが。

 12ステージは、残り20km以上あるところで突如動いた。

 サクソバンクのニキ・セレンセンがマターリしていた他の6人に不意打ちを食らわすように勢いよくすっ飛んで行き、反応できたのはアグリチュベルのシルヴァン・カルザッティのみ。

 だが、残りはまだ20km。
 Jsportsの解説者も、この距離を二人で逃げるとあっては、後ろの5人の方が形勢有利と見る。

 それでもセレンセンは走る、走る。
 しかも、残り5km前にしてさらにカルザッティも置いてけぼりにし、集団との差はむしろ広がっていく。

 そのまま最後まで根性の走りを見せたセレンセン、見事な逃げ勝ちを収めた。個人的には彼がゴールしたときの目を見開いた表情が忘れられんなあ…


 ちなみに、第12ステージのゴールにして、第13ステージのスタート地点はヴィッテルというところ。
 そう、言わずと知れたアノミネラルウォーターの産地である。

 だからという訳ではなかったんだろうが。


 第13ステージはなんと雨。

 見るからに寒そうな山の中を、今度はサーヴェロテストチームのハインリッヒ・ハウッスラーが逃げた。
 途中までクイックステップのシルヴァン・シャヴァネルと一緒だったが、残り50kmあたりの下り坂で彼も置き去りにし(下るのもただ乗ってるだけじゃなくて技術があるんだろうね)、降りしきる雨の中を一人走った。

 しかし、こうしてテレビで見ている我々と違い、一人で逃げている選手は後ろの様子が見える訳ではないし、心境としては孤独と不安が入り混じったものがあるんだろう。まあ無線なんかもあるし、情報入手の手段がまったくない訳ではないんだけどね。

 それにしても、このステージはひたすら雨。気温も10度台と相当寒かったらしいが、そんな苦境の中を一人ハウッスラーはひた走り、涙のゴールを迎えたのである。


 ここまで2レース逃げの選手が勝って、ところでメイン集団はなんで追いつかない?と訝しがる向きもあるかと思う。

 しかし、全21ステージの長丁場であるツール、アスタナのようにひたすら総合優勝を目指すチームなどは、ひたすら力を温存して来るべき終盤のクライマックスに備えるという思惑もあり、無闇に追いかけようとはしない。
 さらに、当然だが逃げ集団に選手を送り込んでいるチームだったら、むしろメイン集団に追いついてもらいたくはない(勝つために逃げているのだからね)というわけで、あまりスピードが上がらない要素もあるにはあるのだ。


 ところが第14ステージ。

 やはり逃げを決めたそこそこ多人数の14人の集団の中に、コロンビアハイロードのジョージ・ヒンカピーという選手が入っていた。

 彼はかつてあのランス・アームストロングと同チームで名アシストとして知られた身、即ちベテランなのだが。
 この時総合タイムで、マイヨジョーヌの選手と5分25秒遅れ。

 普通に考えたら差は大きいと考えるところだが、今回はちと状況が違う。
 何しろ、メインと逃げ集団のタイム差は悠々6分を超えているため、このまま行けばヒンカピーがマイヨジョーヌを奪取することになる訳だ。

 この時マイヨジョーヌを着ていたのはリナルド・ノチェンティーニ。彼が所属するチーム「AG2R」(フランス語で「アージェードゥゼル」と読む)は気が気ではなく、先頭を引くアスタナの後ろで様子を伺う。

 逃げ集団は順当に6分以上の差をつけつつ進み、やがて集団内でのアタック合戦が始まる。
 それは次第にヒートアップし、そう簡単に逃がしてたまるかいという追っかけ、さらにはカウンター(追いつきつつそのまま逃げる)が連発。
 しばらくそんな状態が続き、青春漫画で言うところの「お前強いな…」「なにお前こそ…」とケンカが終わって川原に寝転ぶガキ大将達のような構図に(笑)。

 4車線以上あろうかというコース全体に、選手達がバラけて飽和状態になったその時。
 テレビ画面ですら右端の枠ギリギリ位の隙から、一人スルッと抜け出した。

 もう「逃げってのはこうやるんだ」とイワンばかりの見事なスルーっぷりを見せたのは、そう、ロシアのチーム「カチューシャ」のエース級、セルゲイ・イワノフ

 あまりの見事っぷりにガキ大将…じゃねえ(まだ引っ張るか)他の選手達はお見合い状態、追いかけるのをためらい(全員が誰かが行くんじゃないかと思うと、瞬間の判断が遅れるんだろうね)結局一人しかイワノフについて行けなかった。
 例のヒンカピーですら、そのまま集団に残る羽目に…

 このまま、イワノフは14ステージを制することになった訳だが、問題はヒンカピー。

 後ろの集団は、やはりアージェードゥゼルが先頭につき、ガンガン引っ張りヒンカピーにマイヨを奪われまいと必死に走る。

 5分25秒という、目に見えない「タイム差」を巡り、二つの地点で意地と意地のぶつかり合いを見せ、結果。

 何と、ヒンカピーとメイン集団との差は5分20秒

 結局マイヨジョーヌはこのステージもノチェンティーニが守り抜き、ヒンカピーのマイヨジョーヌのラストチャンスは雲散霧消という結末に終わったのであった。


 しかし、3ステージ見事に逃げが決まったが、逃げというのは辛い上に確実に勝つ手段というには程遠い走りではある。

 それでも、セレンセンのような実況ブースの玄人予想すらひっくり返す大逃げを見せられると、今某ミニバンのCMでジョージ・ウィリアムズが言ってる「できっこないよ、やらなくちゃ!!」という言葉がピッタリくるなあと…

 そんな一発逆転ごはんですよ状態の?3ステージが終わり、第15ステージ。


 いよいよあの男が動き出す。


ツール・ド・フランス(俺的)観戦記4「水野晴郎も真っ青?コロムビア超特急1~4」

2009-07-20 22:14:12 | 自転車
 速いヤツが勝つとは限らない。駆け引きも重要な要素となるゴール前のスプリント勝負。

 これは競輪など他のスプリント競技でも言えることだと思う。


 しかし。

 物事には例外がつきものである。


 前回もチロっと書いたが、ツール・ド・フランスでは総合優勝争いの他、他の賞を巡る争いもなかなかどうして面白い。

 前回からスプリントスプリントと言っているが、そのスプリントで最強の選手に与えられる賞というのがツール(というか、この手のロードレースにはつきものだが)にはある。

 ツールではこれは「マイヨ・ヴェール」と呼ばれ、マイヨジョーヌが黄色なのに対しこれは緑色である。

 当然のことながら、ステージの最後を先頭で、即ち勝利した者にはとりわけ多いポイントが与えられると(一方これだけでは勝てないという仕組みもあるのだが…これは後述)。


 現在マイヨヴェールを巡る激しい戦いを繰り広げているのは、以前にも書いたチームコロンビアのエース、イギリス本島の近くに浮かぶマン島出身、マーク・カヴェンディッシュ(通称カヴ)と、サーヴェロテストチームのトル・フースホフト。


 既に同賞争いでは3位以下の選手を引き離している両選手、メインの勝負はやはりゴール前。

 まずは第10ステージ。
 前回までとは打って変わり、必死に逃げていた先頭の小集団は敢え無くメイン集団に吸収(要するに追いつかれること)されてしまう。

 そう、逃げを打つということは、カヴのような生粋のスプリンターに対抗する有効にして(多くの選手にとっては)唯一の手段であるが、カヴのチーム・コロンビアでなくとも早々簡単に逃げた選手に勝ちを取らせる訳にはいかない。
 まして、「多勢に無勢」と言うが、少人数で先頭交代をめまぐるしくやるよりも、大きな集団の方が多くの選手が空気抵抗を抑える分、基本的には終盤のスタミナが温存されているため有利なのである。


 そんな訳で、逃げを吸収した集団は、注文どおり先頭に抜き出たコロンビアハイロードの集団がジャンジャン引いて他の追随を許そうとしない。

 この時点で、緑のマイヨヴェールを身にまとっていたのは、ライバルのフースホフト。

 必死に列車の後ろに食いつき、やはり、仕掛けの時を伺う。

 だが…!

 コロンビア超特急はその加速を止めようとしない…!


 1kmを切り、先頭の選手、二人目と、それこそNASAのスペースシャトルがロケットを切り離すように、キッチリ仕事を終えて抜けていく。

 そして、後ろにピッタリついたフースホフトには見向きもせず、最終ロケット噴射!!

 そのまま、カヴェンディッシュが強烈なスプリントでゴール。

 これでカヴは今年のツール3勝目。正直こういう集団スプリントで彼に叶う男はいないんじゃないかと思う位の圧倒的速さであった。


 もちろん、フースホフトや他の選手もこのままではいない。

 続く第11ステージ、同様に逃げ選手が吸収され、残り1kmというところで今回はいよいよチェックが激しくなってくる。

 選手の体の接触もあり、いよいよレースというよりは自転車に乗ったケンカ祭り(笑)っぽくなってきたゴール前。もちろん選手にとっては笑い事ではないが…
 他の選手が残り2両となったコロンビア超特急に食い下がる中、今度は。

 後ろからでは二の舞だと踏んだか、フースホフトが最終ロケット発射前にアタック!
 そして、出ようとするカヴの進路に体当たりも厭わず迫るが。

 しかーし、カヴェンディッシュは通常運行でそのまま前進!!

 もう他の選手の動向などお構いなし、予定通りの発射スケジュールでこのステージも結局勝利、ついに4勝目をもぎ取ったのである…


 俺としては、もちろんゴール前でのシビアな駆け引きも面白いと思うが、カヴェンディッシュのようなどこまでも超特急一本槍ってのは結構好きだったりする…

 横綱相撲というか、漫画「YAWARA!」の主人公柔のごとく、相手が分かっていても一本背負いで勝つというのに匹敵する清清しさを感じるね(笑)。


 さて、冒頭で書いたマイヨヴェール争いの話だが…

 この11ステージでフースホフトからマイヨヴェールをもぎ取ったカヴェンディッシュ、しかしその後再びフースホフトに取り返されることになる。

 というのも、マイヨヴェールに関わるポイントというのは、もちろん先頭でゴールすれば高得点なのだが、そうでなくてもそこそこの順位でも幾らかもらえる。

 スプリントは最強でも、山では後塵を拝してしまうカヴに対し、フースホフトは後の山岳コースでもメイン集団に食い込み、しっかりポイントを地道に?稼ぐことも出来る選手なのである。

 なもんで、今後も山岳ステージが多数控える中、カヴの方は緑のジャージへの道はちょっと遠い印象は拭えないのであるが…まあ華があるからいいだろ(笑)

 結局、先週のステージも半端なところで終わってしまったが、今週の平日を何とか乗り切れたら来週末、頑張って書くとしよう。
 まあ来週土曜はツール生放送に首ったけな予感満点だけどね…

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記3「連続テレビドラマ?ツール・ド・フランス」

2009-07-19 22:43:24 | 自転車
 一週間ぶりの更新の前にまず。

 この時期にツールの話題を書くと、何かアクセスが結構上がるようで…
 多少のプレッシャーを感じつつ?当ブログはあくまで情報源や主義主張の場所というよりは娯楽として考えているので、ツールで検索して引っかかった方におかれましては、まあ気楽に読んで頂ければ有難いかと…

--------------

 で、話は第8ステージからだ。

 ツール・ド・フランスは、文字通り「旅」と言いたい位長いレースであり、その中で当然「マイヨジョーヌ」という誉高きジャージをめぐり、即ち総合優勝を争うというのが全体通してのメインストーリーとなる訳だが…

 一方で、もちろん一日一日のステージの勝利を求め、またポイント賞、山岳賞など各賞を巡る争いも、時に「本筋」を食ってしまうようなサブストーリーとして展開されるのである。


 実情として、第8ステージから昨日の第14ステージに至るまで、総合時間でのトップは全く入れ替わることもなく、トップ10でさえほとんど動くことが無かった。

 そんな中、第8ステージではメイン集団から抜け出した逃げ集団の中から、さらに4人の役者が揃って先頭を走っていた。

 大体こういう時、固まって逃げている選手たちは「呉越同舟」というべきか、その場の面子で先頭を交代し合いながらとりあえず協調し合うのが暗黙のルールとなっている。
 エウスカルテルのミケル・アスタルロサ、ケスデパーニュのルイス・レオン・サンチェス、フランセーズデジューのサンディ・カザールが、入れ替わり立ち代りで先頭の風を受ける役を交代していく。

 そう…

 その中で一人、AG2R(アージェードゥーゼル)のウラディミール・エフィムキンが後ろのポジションをキープすると…

 解説によると色々事情はあるらしいが、しかし何か露骨だなあ…という感じで170km強走り、残り5kmというところで、オレンジ色のジャージを身にまとったアスタルロサがアタック。


 しかし、このアタックには白基調のジャージを着たカザールが反応、後ろにつける。
 4人で逃げを打っているところで、まだ4kmもある地点で一人でも後ろにピッタリつかれてしまうと逃げの意味がなくなってしまう(それはただ後ろの選手を引っ張っているだけなので…)ため、とりあえずアスタルロサは減速。

 つうか、今までほとんど引かなかったエフィムキンが追わないし、サンチェスの後ろについてるんだが…?
 前の二人とサンチェスがしばしお見合い状態になる中…


 エフィムキンが行った!!!一瞬の隙、カザールの死角を全力で抜け出した彼に誰も反応できない!

 これには、他の3人全員こう→なったようで、なにくそとばかり3人仲良く?列を組んで追撃開始。

 しかしロードレースのドラマはこれから。


 残り3km、2km、1km。

 列の後ろでマターリと脚を温存させた結果か、はたまた泳がせる目的か?3人はエフィムキンに追いつきそうで追いつかない。
 切羽詰ってくる中、「お前行けよ」「いやお前こそ」と先頭交代というよりは譲り合いっぽくなり、こんな状態じゃエフィムキンにタナボタ取られるぞ…と見守る中。

 もう本当に何百mもねえぞって所で、個人的には馴染みの深い黒と赤のコントラストが暑そうな?ケスデパーニュのサンチェスが猛追!
 エフィムキンを捕まえるかという刹那、サンチェスの脇からさらにカザールがダッシュ力を見せ、二人の前に出る…!


 正に最後の最後で切り札をガンガン出しあう、逆転また逆転のゴール前。


 しかし、最後に笑ったのは…

 残り100か200mくらいの位置、カザールの後ろで一息ついた状態となったサンチェス、うまいことスルッとカザールの脇をすり抜け、満面の笑みで両手を挙げゴール!



 何と言うか…

 これはもう、下手なドラマなど裸足で逃げ出すような壮絶な化かしあいであるなあ…

 もちろん、個人的にはそれぞれの選手にダーティなものを感じるという事はほとんどないし、よろず人間社会でも勝負ってのはこういうもんだとは思うが…

 一口にスポーツと言っても、中々どうして人間臭さがプンプンする群像劇、これもツール・ド・フランスの一つの醍醐味なんだなあと思わされる第8ステージであった。


 その次、第9レースもまた大逃げをかました2人の選手、リクイガスのペッリツォッティと日本人選手、新城君のチームメイトでもあるブイグテレコムのフェドリゴによるゴール前勝負。

 これまた、先に仕掛ければ背後につかれるし、かといって下手に行かせると置いていかれるし…という所、二人で腹のさぐりあい。

 いつアタックをするか、例えるなら荒野のガンマンの早撃ち対決にも似たような、緊迫したゴール前。

 そして、暫く後ろについていたペッリツォッティが飛び出すも、またもゴール直前でさらにフェドリゴがブースト、ギリギリの所で勝利をもぎ取った。


 集団スプリントとはまた違った緊迫感を味わえる、少人数での仕掛け合いが続いた第8、第9の後は、再び例の超特急が発車の時を待っていたのである。

ツール・ド・フランス(俺的)観戦記2「内乱の予感、『帝王』vs.『征服者』」

2009-07-13 23:32:02 | 自転車
 ツール・ド・フランス、他のモータースポーツなどのレース同様、「優勝候補」として挙げられる選手はもちろん数々いる。

 昨年のツール覇者にして山岳のスペシャリストである、サーヴェロテストチームのカルロス・サストレ

 '07年ジロ・デ・イタリア2位、昨年のツール新人賞と若干24歳ながら注目を浴びるチーム・サクソバンクのアンディ・シュレックなど。


 しかし、そういった人達をおいてなお、より多くの人々の注目を集めてやまない存在がいる。

 彼の名はランス・アームストロング

 言わずと知れた、かつて7度のツール・ド・フランス総合優勝を果たした「帝王」である。
 ランスはしかし、7度目のツール総合優勝を期に一度は引退し、3年間ただビールを飲んでソファに座っていた(本人談)身。
 無論そのままモナコに来た訳ではなく、復帰を表明した今年はじめからレースに積極参戦、こないだのジロでも本調子とは行かないまでもまずまず(そのちょっと前に鎖骨を骨折していたことを考えれば十分驚異なのだが…)の成績を収めた。

 そんな彼が現在在籍するのは、カザフスタン(!)のチーム・アスタナ。

 ところが、このアスタナには実はもう一人、エースと呼べる選手が存在する。

 その選手とは、スペイン出身の若き英雄、アルベルト・コンタドール
 彼は、一昨年のツール覇者にして「ジロ・デ・イタリア」、「ブエルタ・ア・エスパーニャ」で優勝、これら「三大ツール」の「コンキスタドール(征服者)」なのである。


 こういう状況になっているアスタナの話が出たところでツールの第4ステージの話を再び。

 個人だけでなく、チームの総合力が問われる「チームTT」で勝利したのが、実はこのアスタナだった。
 これにより、第1ステージから総合トップ、「マイヨジョーヌ」をキープしてきたカンチェラーラに、アームストロングが「0秒差」(実際には0コンマ何秒差があったのかな?)に肉薄、コンタドールも僅かな差で3位につけるという状況に。

 そして、新城選手のチームメイトにしてエース格のトマ・ヴォクレール(ブイグテレコム)が大逃げをかまして勝った第5ステージ、大詰めチョイ坂のスプリントをサーヴェロテストチームのトル・フースホフトが制した第6ステージ。

 ステージ優勝を目指して様々な選手が飛び出す中、アスタナは地味ながら堅実にメイン集団をコントロールし、総合優勝を目指す「王者の走り」に徹していた。


 で、第7ステージ。

 俺は今まで知らなかったのだが、フランスとスペインの間にポチっと、アンドラという公国が存在する。

 フランスの山々を抜け、この国のアレカリスという標高2240mの山の頂上でゴールするという、本格的な山岳ステージ。

 ここで、序盤から逃げていた集団のうち、フランスのチーム、アグリチュベル所属のブライス・フェイユが見事なクライミングを見せ、プロ1年目ながら堂々の勝利を収めた。

 個人的に面白かったのはその後ろ。

 この日もステージ優勝というよりは、集団先頭で着実な走りに徹していたアスタナの面々。
 しかし、終盤の上り、集団前方でアタック合戦が始まり、アスタナのコンタドールが飛び出した!

 上でも書いたように元々上りを得意とするコンタドール、恐らく十分に力を溜めていた状態でもあったのだろう、アームストロングをはじめ他の選手を爽やかに置き去りにし、9位でゴール。

 結果、コンタドールが総合でアームストロングを抜き、2位に躍り出た。前日までのマイヨジョーヌ、カンチェラーラは敢え無く集団から千切れ陥落を余儀なくされた。


 よくマンガなどで「帝王は二人要らない」みたいな表現が出てくるが、アスタナ内でもそんなようなふいんき(なぜか変換ry)が出ているような気がして、個人的にはこういうのも楽しんで見ている(笑)。

 夕べの第8ステージも中々面白い終盤の駆け引きがあったり、ツール・ド・フランスはなかなかどうして人間ドラマの集合体でもあるのだ。

 さすがにこの辺で力尽きたので、第8ステージから先は来週末に持ち越しだな。



 最後になるけど、個人的には、別府選手も新城選手もまずは完走できるように応援してるよ。