現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」国立新美術館

2020-01-09 18:19:58 | 展覧会
ウィーンモダン展図録 クリムト シーレ 世紀末への道 国立新美術館
ノーブランド品
ノーブランド品


 19世紀末から20世紀初頭におけるウィーンの芸術(絵画だけでなく、建築、工芸、デザイン、ファッション、家具、日用品なども)が、伝統的な様式からモダーンな様式に変わっていく様子が、年代を追いながら要領よくまとめられています。
 ウィーン・ミュージアムが改装中とのことで、これだけのまとまった展示がウィーンへ行かなくても見られるのは、非常にラッキーです。
 副題には、日本でも人気のあるクリムトやシーレが掲げられていますが、この展示会(あるいはこの時期の芸術運動全体)において、もっとも重要な人物は、建築家のオットー・ヴァーグナーでしょう。
 展示を順番にじっくりと見ていくと、彼の出現の前後で様式が伝統からモダーンに変わっていったことがよくわかります。
 彼が伝統的な建築だけでなく絵画にも、建築の手法を取り込んだことにより、ウィーンの芸術は、いわゆる職人技から、創作理論を持った芸術運動に変貌しています。
 これは、ル・コルビュジエ(その記事を参照してください)の場合とまったく同様です。
 児童文学の世界でも、かつての「現代児童文学」(定義などは他の記事を参照してください)は、良し悪しは別として創作理論がありました。
 実作と理論(評論)が両輪として存在していたわけです。
 しかし、現在の児童文学の世界では、「本になる、ならない」「売れる、売れない」だけが唯一の価値基準で、実作をリードするような創作理論は存在しません。
 つまり、今の児童文学は、芸術活動というよりは経済活動の一部として存在していると言えます。
 
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「ハプスブルグ展」国立西洋美術館

2020-01-09 18:15:37 | 展覧会
 数百年に渡って中欧(現在の国名で言えば、オーストリアを中心にハンガリーやチェコ、最盛期にはオランダやスペイン、北部イタリアや東欧の一部も)に君臨したハプスブルグ家のコレクションです。
 絵画だけでなく、宝飾品や甲冑など、展示は多岐にわたっています。
 絵画は大半が肖像画や宗教画で、ベラスケスを除くとそれほど面白いものはないのですが、展示がハプスブルグ家の栄枯盛衰に沿って行われているので、歴史的観点では面白かったです。
 前に見たウィーンモダン(その記事を参照してください)と合わせて考えてみると、第一次
世界大戦の端緒になり、その終戦時に崩壊したハプスブルグ家の近代における役割は興味深いです。
 さらに、その後の混乱の中で、ドイツではヒットラー(オーストリア出身)のナチスが台頭し、イタリアでは統一イタリアができたのをきっかけにした愛国主義(児童文学の古典であるクオーレにも影響しています)の高揚からムッソリーニが出現した、いわゆるファシズムの時代と関連付けて考えるとより面白いです。
 苦手(前にシュトットガッルトの美術館で非常に大量の宗教画を見て気分が悪くなったことが、トラウマになっています)の宗教画をたくさん見たので、口直しに常設展示の松方コレクションの印象派やコルビジュやピカソの絵を駆け足で見ました。
 好みの絵をいつでもサッと(こちらはすごくすいているので)見られるのは、コルビジェ設計の建物本体と共に、この美術館の最大の利点です。


ハプスブルグ展図録
読売新聞東京本社
読売新聞東京本社


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