「児童文学とは、アクション(行動)とダイアローグ(会話)で描く文学だ」と明確に定義してくれたのは、今は亡き安藤美紀夫先生ですが、その後、80年代になってからは、描写に重きをおいた小説的手法の優れた作品が増えてきました。
それでも、「アクション」と「ダイアローグ」は、子ども読者のための文学としての児童文学の基本であることは変わっていません。
しかし、最近では、その「アクション」の代わりに「モノローグ」や説明文を多用した作品が増えています。
その原因としては、読者の読解力の不足と、児童文学の本の軽薄短小化があると思われます。
子どもたちの本離れ、実用文に片寄った学校教育、スマホなどのツールによる短文への慣れなどにより、子どもたちの読解力は急速に低下しています。
そうした読者に理解してもらうためには、ダイアローグ、モノローグ、説明文を多用した方がてっとりばやいなのです。
こうした傾向は、児童文学だけでなく、大人を対照とした文学、特にエンターテインメント系の作品でも増えています。
しかし、それでは、文学の本来の魅力は産み出し得ません。
現在あふれている読み捨てられている消費財としての児童文学でなく、歴史に残る恒久財としての児童文学を目指すなら、もっとアクションや描写で書いていかなければなりません。
アクションは読者に物語を追体験させるためには必須ですし、優れた美しい描写は読書体験の魅力そのものです。
その点では、現在でも、優れたコミックスやアニメはアクションにあふれていますし、一様に絵や映像も美しく磨かれています。