現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

金原瑞人「訳者あとがき」このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年所収

2019-11-07 16:26:19 | 参考文献
 2018年に出た新訳のサリンジャーの本の訳者による「あとがき」です。
 サリンジャーが2010年に亡くなって注目を浴びてから、このような新訳本が出るようになったのは、サリンジャーを研究するためにはありがたいことです。
 構成としては、サリンジャーの代表作の「キャッチャー・イン・ザ・ライ」(その記事を参照してください)の主人公であるホールデン・コールフィールドやその兄弟や妹の原型と思われる登場人物が出てくる六篇と、デビュー作の「若者たち」、それに訳者が当時の若者たちを鮮やかに描いていると評した「ロイス・タゲットのロングデビュー」、それに一般的には失敗作とされている最後の作品の「ハプワース16、1924年」を選んでいます。
 評者は児童文学にも造詣が深いので、アリエスの「<子ども>の誕生」の発想を受けて、戦後アメリカで高度経済成長とベビーブームにより「若者」が誕生し、彼らに向けた音楽や映画と並んで文学を生まれ、サリンジャーはその先駆けとしている指摘は、非常に優れています。
 また、サリンジャーの戦争体験をもとにした作品群も、それらをサリンジャーのようには言語化できなかった当時の若者たちが、老齢に達して当時を振り返った時に評価されているとの指摘も重要です。
 さらに、サリンジャーの評伝本に関しても、要点をまとめて紹介されているので参考になります。
 ただ、「ハプワース16、1924年」に関する訳者自身の評価はあいまいな印象を受けました。

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