現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

森忠明「22口径」少年時代の画集所収

2017-09-27 08:11:46 | 作品論
 森少年は、まだ小学六年生なのに、人生のどん底にいました。
 なにもかもいやになって、学校をほっぽって、病院の精神病棟に入院しています。
 両親は別居していて、離婚しそうです。
 春休みに切れ痔で大出血した時には、その公衆便所の外では、ストリップ劇場の宣伝カーが「きんぱつ、がいじん、ヌードショー」と繰り返していました。
 脳波をとりにいった都内の慶応病院では、偶然出会った人気喜劇俳優に憎たらしい顔をされます
 お祭りの出店では、香具師たちにからかわれます。
 そんな時、森少年は、ポケットの中の22口径の弾(米軍基地の番兵にもらいました)を握りしめて、大人になったら拳銃を手に入れてこの弾を込めて、そいつらを打ち殺すことを夢見ています。
 しかし、拳銃で22口径の弾を富士山目がけて発射する夢を見てから、そうした大人たちにもそれぞれの事情があったのかもしれないと思うようになり、取りあえず自分もなんとか生き延びてみようと思います。
「きみはサヨナラ族か」や「花をくわえてどこへいく」などの初期の長編のモチーフが、ここではより生な形で描かれています。
 森作品の通奏低音である「人生への諦念」と、それに反してなんとか生き延びようとする主人公像は、こうしたところから生み出されているのでしょう。

少年時代の画集 (児童文学創作シリーズ)
クリエーター情報なし
講談社


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