2013年にお亡くなりになった児童文学研究者の鳥越先生が構想した、初学者向けの日本戦争児童文学史です(同様の鳥越先生編の各種児童文学史が何冊かあります)。
章立ては以下の通りです。
序章 戦争児童文学とは何か
第Ⅰ部 史的展開に沿って
第1章 日清戦争と児童文学
第2章 日露戦争と児童文学
第3章 大正デモクラシー化の戦争児童文学
第4章 日中戦争と児童文学
第5章 太平洋戦争とと児童文学
第6章 軍事冒険小説
第7章 戦時下の抵抗児童文学
第8章 二つの言論統制――内務省とGHQ――
第9章 第二次世界大戦後の戦争児童文学Ⅰ――一九四五―六〇年――
第10章 第二次世界大戦後の戦争児童文学Ⅱ――一九六〇―八〇年―ー
第11章 第二次世界大戦後の戦争児童文学Ⅲ――一九八〇年―現在
第12章 第二次世界大戦後の戦争児童文学Ⅳ(注:第二次世界大戦後の戦争についてとりあげた戦争児童文学についてです)
第Ⅱ部 戦争とかかわる子どもの本
第13章 子どものための科学読物と戦争
第14章 キリスト教児童文学と戦争
第15章 絵本に見る戦争――「講談社の絵本」を例に――
第16章 民話・昔話と戦争
第17章 ファンタジーに描かれた戦争――背景、仕掛け、根源そして現実を映す構図――
第18章 子どものための伝記と戦争
第19章 歴史児童文学の中の戦争
第20章 原子・水素爆弾と児童文学
第21章 戦争児童文学に描かれた空襲
第22章 戦争児童文学に描かれた疎開
第23章 戦争児童文学に登場する中国
第24章 戦争児童文学に登場するロシア(旧ソ連)
第25章 戦争児童文学に登場する欧米
第26章 戦争児童文学に登場する沖縄
第27章 戦争児童文学に登場する植民地朝鮮
以上の各章の間に、少国民世代とそれよりやや上の世代の児童文学者たちの、主に戦時中の読書体験を語ったコラムが10編挿入されています。
この本の企画はかなり前に行われたのですが、いろいろな事情で出版が遅れて、その間に鳥越先生が体調を崩されたために、現在の戦争児童文学研究の第一人者である長谷川潮さんが編集を引き継いで、ようやく2012年に出版された本です。
そのため、各章の執筆者が交代したり、執筆時期が古くて最近の作品や事象が取り上げられていなかったり、出版のタイミングに合わせた原稿の書き直しの仕方がまちまちだったりなどの、問題点がみられました。
また、各章の執筆者が20人もいるので、章ごとの書き方にばらつきがあります。
単独で論文として読めるような考察と論理展開をしている章もあれば、単に関連する作品の紹介などの羅列に終始している章や特定の作品だけに偏った章などもあります。
全体が350ページ程度なのに多くの章に細分化されているので、各章(特に第Ⅱ部)はページ数が限定されていて内容も紹介程度になっていることが多いです。
題名(「はじめて学ぶ」)にもあるように初学者向けなので、この書き方になっているのでしょう。
私はまさに戦争児童文学の初学者なので、初めて知る内容が多くおおいに勉強になりました。
各章の終わりには参考文献があげられていて、さらに深く知りたい人のための便宜が図られています。
この本の特徴として、従来の戦争児童文学の定義(例えば、日本児童文学学会編の「児童文学辞典」では、「反戦平和の願いを託した児童文学」と定義されています)を拡張して、好戦・侵略的な作品も含めた広義の戦争児童文学を取り扱っていることがあげられます。
また、対象とする戦争も「アジア太平洋戦争」だけでなく、日清、日露戦争や第二次世界大戦後の戦争も含めています(ただし、蒙古襲来や秀吉の朝鮮侵略は含まれていません)。
このように対象を広げたことは、文学史的には正しいアプローチだと思いますが、その分内容が薄まってしまったことは否めません。
「戦争児童文学」という枠組みに関しても、児童文学研究者の宮川健郎が「現代児童文学の語るもの」ですでに二十年近く前に疑義を示していますし、2012年の日本児童文学学会の研究大会(その記事を参照してください)でも、「「戦争児童文学」という枠からの脱出」を議論するラウンドテーブル(その記事を参照してください)が行われています。
児童文学自体が「児童」と「文学」という二つの中心を持つ楕円原理(石井直人「現代児童文学の条件」研究 日本の児童文学4 現代児童文学の可能性所収。詳しくはその記事を参照してください)」に、さらに、もう一つ「戦争」という中心を設けることは、長谷川も「あとがき」で述べているように複雑な構造を持つ危険性は否定できません。
「戦争児童文学」は私の直接的な研究対象ではありませんが、現代児童文学において大きな位置を占めていることも事実なので、徐々に勉強していきたいと思っています。
章立ては以下の通りです。
序章 戦争児童文学とは何か
第Ⅰ部 史的展開に沿って
第1章 日清戦争と児童文学
第2章 日露戦争と児童文学
第3章 大正デモクラシー化の戦争児童文学
第4章 日中戦争と児童文学
第5章 太平洋戦争とと児童文学
第6章 軍事冒険小説
第7章 戦時下の抵抗児童文学
第8章 二つの言論統制――内務省とGHQ――
第9章 第二次世界大戦後の戦争児童文学Ⅰ――一九四五―六〇年――
第10章 第二次世界大戦後の戦争児童文学Ⅱ――一九六〇―八〇年―ー
第11章 第二次世界大戦後の戦争児童文学Ⅲ――一九八〇年―現在
第12章 第二次世界大戦後の戦争児童文学Ⅳ(注:第二次世界大戦後の戦争についてとりあげた戦争児童文学についてです)
第Ⅱ部 戦争とかかわる子どもの本
第13章 子どものための科学読物と戦争
第14章 キリスト教児童文学と戦争
第15章 絵本に見る戦争――「講談社の絵本」を例に――
第16章 民話・昔話と戦争
第17章 ファンタジーに描かれた戦争――背景、仕掛け、根源そして現実を映す構図――
第18章 子どものための伝記と戦争
第19章 歴史児童文学の中の戦争
第20章 原子・水素爆弾と児童文学
第21章 戦争児童文学に描かれた空襲
第22章 戦争児童文学に描かれた疎開
第23章 戦争児童文学に登場する中国
第24章 戦争児童文学に登場するロシア(旧ソ連)
第25章 戦争児童文学に登場する欧米
第26章 戦争児童文学に登場する沖縄
第27章 戦争児童文学に登場する植民地朝鮮
以上の各章の間に、少国民世代とそれよりやや上の世代の児童文学者たちの、主に戦時中の読書体験を語ったコラムが10編挿入されています。
この本の企画はかなり前に行われたのですが、いろいろな事情で出版が遅れて、その間に鳥越先生が体調を崩されたために、現在の戦争児童文学研究の第一人者である長谷川潮さんが編集を引き継いで、ようやく2012年に出版された本です。
そのため、各章の執筆者が交代したり、執筆時期が古くて最近の作品や事象が取り上げられていなかったり、出版のタイミングに合わせた原稿の書き直しの仕方がまちまちだったりなどの、問題点がみられました。
また、各章の執筆者が20人もいるので、章ごとの書き方にばらつきがあります。
単独で論文として読めるような考察と論理展開をしている章もあれば、単に関連する作品の紹介などの羅列に終始している章や特定の作品だけに偏った章などもあります。
全体が350ページ程度なのに多くの章に細分化されているので、各章(特に第Ⅱ部)はページ数が限定されていて内容も紹介程度になっていることが多いです。
題名(「はじめて学ぶ」)にもあるように初学者向けなので、この書き方になっているのでしょう。
私はまさに戦争児童文学の初学者なので、初めて知る内容が多くおおいに勉強になりました。
各章の終わりには参考文献があげられていて、さらに深く知りたい人のための便宜が図られています。
この本の特徴として、従来の戦争児童文学の定義(例えば、日本児童文学学会編の「児童文学辞典」では、「反戦平和の願いを託した児童文学」と定義されています)を拡張して、好戦・侵略的な作品も含めた広義の戦争児童文学を取り扱っていることがあげられます。
また、対象とする戦争も「アジア太平洋戦争」だけでなく、日清、日露戦争や第二次世界大戦後の戦争も含めています(ただし、蒙古襲来や秀吉の朝鮮侵略は含まれていません)。
このように対象を広げたことは、文学史的には正しいアプローチだと思いますが、その分内容が薄まってしまったことは否めません。
「戦争児童文学」という枠組みに関しても、児童文学研究者の宮川健郎が「現代児童文学の語るもの」ですでに二十年近く前に疑義を示していますし、2012年の日本児童文学学会の研究大会(その記事を参照してください)でも、「「戦争児童文学」という枠からの脱出」を議論するラウンドテーブル(その記事を参照してください)が行われています。
児童文学自体が「児童」と「文学」という二つの中心を持つ楕円原理(石井直人「現代児童文学の条件」研究 日本の児童文学4 現代児童文学の可能性所収。詳しくはその記事を参照してください)」に、さらに、もう一つ「戦争」という中心を設けることは、長谷川も「あとがき」で述べているように複雑な構造を持つ危険性は否定できません。
「戦争児童文学」は私の直接的な研究対象ではありませんが、現代児童文学において大きな位置を占めていることも事実なので、徐々に勉強していきたいと思っています。
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