現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

竹下文子「ひらけ!なんきんまめ」

2017-09-17 11:16:28 | 作品論
 児童文学研究者の宮川健郎は「声をもとめて」という論文(その記事を参照してください)の中で、「声が聞こえてくる」幼年文学のひとつとして、この作品をあげています。
 たしかに、この作品は主人公の「ぼく」の軽快な語り口でテンポよく進みますし、「ひらけ!ごま」のパロディである「ひらけ!なんきんまめ」の呪文も響きます。
 冒頭でけんかしたあすかちゃんと仲直りするラストシーンも読み味を良くしています。
 でも、不思議の国の冒険が、あまりにあっさりしすぎていませんか?
 故安藤美紀夫が、三十年も前に「日本語と「幼年童話」」という論文(その記事を参照してください)でなげいた「文字数が少なくてストーリー展開のない幼年童話」のステレオタイプが今でも健在(いやむしろそればかりになっているかもしれません)なようです。
 この作品の不思議の国の魅力は、ほとんど田中六大のちょっとレトロな感じの挿絵に依存しています。
 そう、幼年童話というよりは絵本に近い感じです。
 宮川の言う「声」による聴覚よりも、挿絵による視覚イメージに頼った作品です。
 もしこの本の印税が10パーセント(8パーセントかもしれません)ならば、3対7か2対8で、田中にたくさんあげたいと思いました。

ひらけ!なんきんまめ (おはなしだいすき)
クリエーター情報なし
小峰書店
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする