トムラウシの件でいろいろ調べているうちにヒットしたんですが・・・・
「遅い人に合わせるな」 / MSAT 幻のガイドからのメッセージ
アメリカでトレッキングガイドか何かをしている方が日本の登山をいろいろdisっているのですが、その内容がちょっとアレなもんで、今回はそこにツッコミ入れてみたいと思います。
引用
もうひとつ、即座にこういう考えは改めなければならない、と思った日本の山行の悪習があった。
それは何かというと、日本の山岳関係者の間では、パーティーで行動する場合には体力の一番ない人に全体を合わせる、という悪習がいまだに信じられていることだ。
歩くのが遅い人をパーティーの1番前に出して、残りの全体を後ろに従わせてペースを落とす、というやり方は一見全体行動の模範と言うか、美しい助け合いの精神と見られるかもしれない。
しかしこう言う考えは、とても原始的で非効率的、危険な行為なのだ。
今回の事故のニュースを読んでいて、地元の山岳会の重鎮が「パーティーでは、遅い人に合わせて歩かなければならない」というコメントを述べているのを知って、すごく驚いた。
同時に、いまだにこんな危険な歩き方が日本では信じられているのかと、そら恐ろしく失望した。山岳連盟の重鎮がこんな認識しか持っていないのなら、遭難しても当然じゃないか、いや、今後、日本ではますます遭難者が増えるだろうと思った。
引用おわり
いったい、何を根拠にこのような意見を述べているのかな~、と思って、読み進めますと・・・・
引用
10人くらいのパーティーでは、遅れる人が出るのは当たり前だ。この場合、本当はどうすればいいかというと、まずそれぞれに自分のペースを守って歩いてもらうことが大切だ。
歩く速度も給水のタイミングも、遅い人に合わせるのではなく個人個人のペースを守らなければならない。でないと、かえって体力を失う。
引用おわり
歩くペースが速い人がゆっくり歩くと、体力を消耗する、ということのようですね。
そりゃまあ、ツアー登山を引率していて、あまりにも時間が掛かるもんだから精神的に疲労したことはあります。が、体力を消耗するなんてのは、ちょっとヘンですよ。
引用
人のペースに合わせて歩くことほど、疲労がたまることはない。休みを入れるタイミングも、水を飲む頻度も個人個人違って当たり前なのだから、早い人にはどんどん早く歩いてもらって、遅い人はどんどん列の後ろへ回ってもらう。
遅い人に全体のペースを合わせて歩くと、早く歩ける元気な人がかえって疲れてしまい、最悪の場合は全員が共倒れになる。
引用おわり
ここでは「最悪の場合は全員が共倒れになる」と主張していますけど、果たしてそんな実例があるんですかねえ。私は極端に遅い登山者と一緒に行動したことが数え切れないほどありますけど、遅い登山者が元気なのにこっちが疲労でぶっ倒れそうになった、なんて経験はしたことがありません。
もしこれが本当なら、北アルプスの案内人なんか、全員死んでしまいますよ。なぜなら、彼らは皆、ツアー登山のガイドでゆっくり歩くお客さんに合わせて行動しているのですから・・・・・・・・・
それこそ、お客さんの3~4倍のスピードで歩ける人がゆっくりと歩くわけです。
引用
遅い人を列の後ろに回すと、当然、隊列は数百メートルに伸びるが、共倒れになるよりはましだ。アメリカでは、そのためにパーティーには必ず一番後ろを「Sweeper(掃除屋)」と呼ばれる人が歩く。
日本でも「殿(しんがり)」と呼ばれているが、こちらとでは役目がまるで違う。
Sweeperは、体力と技量が一番高い人が務めるポジションなのだ。Sweeperは、遅れる人を置き去りにせず、必ず遅い人に付き添って歩く。決して急かさない。 強いSweeperがいれば、リーダーは安心して隊全体をどんどん引っ張っていける。
引用おわり
Sweeperなんて横文字が出てきていますけど、ちょっと待てよ、と思いますね。
先ほどの話では「遅い人に全体のペースを合わせて歩くと、早く歩ける元気な人がかえって疲れてしまい、最悪の場合は全員が共倒れになる」と書いてありますけど、それが正しいのなら、早いペースで歩けるSweeperがゆっくり歩く登山者のペースに合わせたら疲労で危険なことになるのではないですかね?
そもそも、日本におけるツアー登山では最後尾に添乗員がつきます。
で、「隊列は数百メートルに伸びるが、共倒れになるよりはましだ」とのことですけど、私から見るとこれが一番怖いわけですよ。なんでか、と言えば、前後の間隔が空きすぎてしまうと、万が一のトラブル発生に誰も気づかなくなる可能性が高くなるわけです。これが一番怖い。
例えば、パーティの真ん中あたりを歩いている参加者がいて、樹林帯の登山道を歩行中に前後100mほど間隔が空いてしまったとします。そんな時、登山道からうっかり転落してしまったとか、へんなけもの道に入り込んでしまうと、誰も気づかないままパーティが進行してしまうわけですね。で、遭難事故発生に気づくのが遅れる上に、どこで行方不明になったのかすら、わからないわけです。
そもそも、山岳ガイドの業務には、「危険箇所の指摘と安全な通過方法の指導」ってのが含まれるわけです。しかし、いくら優秀なガイドであっても、数百m先にいるお客さんに対して指導なんかできやしません。だから、集団としてまとまっている必要があるわけです。
さて、最後の部分を引用してみましょう。
引用
しかし、遅い人にペースを合わせず後ろへ回ってもらうこと、参加者個人個人の技量とスピードに合わせた歩き方、Sweeper(アシスタント)による強制的な連れ戻し、勇気ある中止・撤退の即時決定といった、これまでの日本のパーティー行の通例とは違った考えを導入しないと、遭難や事故がもっと増えるかもしれない。
引用おわり
強制的な連れ戻しとかツアーの中断なんて、日本の山でも普通に行われているんです。
ごく普通のツアー会社のほうが、入山前にセレクションをやるので連れ戻しが発生しにくくなります。この方、日本の悪習とかdisっていますけど、実は日本の登山をぜんぜん知らないのではないでしょうか。
引用
これまでのセミナーでは、リーダーが体力のない人に辞退勧告して、途中から僕ちんがトレイルヘッドへ連れて帰ったことが数回ある。
引用おわり
私が思うに、途中で辞退勧告をしている時点でアレなんですよね。参加するまえに辞退勧告するのが当たり前です。
「アンタには無理」ってのは、本来、参加する前の段階で言うべきであり、お金をとって参加させておいて、それを言うのはかなりアレだと思います。
引用
この場合、リーダーはパーティーを先に進めなければならないので、Sweeperである僕ちんは遅い人を数時間かけてトレイルヘッドまで連れて帰り、その後、1人でまた数時間かけてパーティー本隊を追っかけることがある。
引用おわり
これって、凄いムダな行為なんですよね。なぜなら、緊急時にアシスタントがいるかどうかで、全然違ってくるからです。それに、遅くて本当にダメダメな人は、参加すらさせてはいけないんです。
それにしてもねえ、こことか見ますと、このエントリーを絶賛している人が多いですね。こんな安っぽいネタを絶賛しているのを見ると、絶望しちゃいますね。
それだけ、山の遭難対策って、進んでいないんですね、と思ったのココロです。
「遅い人に合わせるな」 / MSAT 幻のガイドからのメッセージ
アメリカでトレッキングガイドか何かをしている方が日本の登山をいろいろdisっているのですが、その内容がちょっとアレなもんで、今回はそこにツッコミ入れてみたいと思います。
引用
もうひとつ、即座にこういう考えは改めなければならない、と思った日本の山行の悪習があった。
それは何かというと、日本の山岳関係者の間では、パーティーで行動する場合には体力の一番ない人に全体を合わせる、という悪習がいまだに信じられていることだ。
歩くのが遅い人をパーティーの1番前に出して、残りの全体を後ろに従わせてペースを落とす、というやり方は一見全体行動の模範と言うか、美しい助け合いの精神と見られるかもしれない。
しかしこう言う考えは、とても原始的で非効率的、危険な行為なのだ。
今回の事故のニュースを読んでいて、地元の山岳会の重鎮が「パーティーでは、遅い人に合わせて歩かなければならない」というコメントを述べているのを知って、すごく驚いた。
同時に、いまだにこんな危険な歩き方が日本では信じられているのかと、そら恐ろしく失望した。山岳連盟の重鎮がこんな認識しか持っていないのなら、遭難しても当然じゃないか、いや、今後、日本ではますます遭難者が増えるだろうと思った。
引用おわり
いったい、何を根拠にこのような意見を述べているのかな~、と思って、読み進めますと・・・・
引用
10人くらいのパーティーでは、遅れる人が出るのは当たり前だ。この場合、本当はどうすればいいかというと、まずそれぞれに自分のペースを守って歩いてもらうことが大切だ。
歩く速度も給水のタイミングも、遅い人に合わせるのではなく個人個人のペースを守らなければならない。でないと、かえって体力を失う。
引用おわり
歩くペースが速い人がゆっくり歩くと、体力を消耗する、ということのようですね。
そりゃまあ、ツアー登山を引率していて、あまりにも時間が掛かるもんだから精神的に疲労したことはあります。が、体力を消耗するなんてのは、ちょっとヘンですよ。
引用
人のペースに合わせて歩くことほど、疲労がたまることはない。休みを入れるタイミングも、水を飲む頻度も個人個人違って当たり前なのだから、早い人にはどんどん早く歩いてもらって、遅い人はどんどん列の後ろへ回ってもらう。
遅い人に全体のペースを合わせて歩くと、早く歩ける元気な人がかえって疲れてしまい、最悪の場合は全員が共倒れになる。
引用おわり
ここでは「最悪の場合は全員が共倒れになる」と主張していますけど、果たしてそんな実例があるんですかねえ。私は極端に遅い登山者と一緒に行動したことが数え切れないほどありますけど、遅い登山者が元気なのにこっちが疲労でぶっ倒れそうになった、なんて経験はしたことがありません。
もしこれが本当なら、北アルプスの案内人なんか、全員死んでしまいますよ。なぜなら、彼らは皆、ツアー登山のガイドでゆっくり歩くお客さんに合わせて行動しているのですから・・・・・・・・・
それこそ、お客さんの3~4倍のスピードで歩ける人がゆっくりと歩くわけです。
引用
遅い人を列の後ろに回すと、当然、隊列は数百メートルに伸びるが、共倒れになるよりはましだ。アメリカでは、そのためにパーティーには必ず一番後ろを「Sweeper(掃除屋)」と呼ばれる人が歩く。
日本でも「殿(しんがり)」と呼ばれているが、こちらとでは役目がまるで違う。
Sweeperは、体力と技量が一番高い人が務めるポジションなのだ。Sweeperは、遅れる人を置き去りにせず、必ず遅い人に付き添って歩く。決して急かさない。 強いSweeperがいれば、リーダーは安心して隊全体をどんどん引っ張っていける。
引用おわり
Sweeperなんて横文字が出てきていますけど、ちょっと待てよ、と思いますね。
先ほどの話では「遅い人に全体のペースを合わせて歩くと、早く歩ける元気な人がかえって疲れてしまい、最悪の場合は全員が共倒れになる」と書いてありますけど、それが正しいのなら、早いペースで歩けるSweeperがゆっくり歩く登山者のペースに合わせたら疲労で危険なことになるのではないですかね?
そもそも、日本におけるツアー登山では最後尾に添乗員がつきます。
で、「隊列は数百メートルに伸びるが、共倒れになるよりはましだ」とのことですけど、私から見るとこれが一番怖いわけですよ。なんでか、と言えば、前後の間隔が空きすぎてしまうと、万が一のトラブル発生に誰も気づかなくなる可能性が高くなるわけです。これが一番怖い。
例えば、パーティの真ん中あたりを歩いている参加者がいて、樹林帯の登山道を歩行中に前後100mほど間隔が空いてしまったとします。そんな時、登山道からうっかり転落してしまったとか、へんなけもの道に入り込んでしまうと、誰も気づかないままパーティが進行してしまうわけですね。で、遭難事故発生に気づくのが遅れる上に、どこで行方不明になったのかすら、わからないわけです。
そもそも、山岳ガイドの業務には、「危険箇所の指摘と安全な通過方法の指導」ってのが含まれるわけです。しかし、いくら優秀なガイドであっても、数百m先にいるお客さんに対して指導なんかできやしません。だから、集団としてまとまっている必要があるわけです。
さて、最後の部分を引用してみましょう。
引用
しかし、遅い人にペースを合わせず後ろへ回ってもらうこと、参加者個人個人の技量とスピードに合わせた歩き方、Sweeper(アシスタント)による強制的な連れ戻し、勇気ある中止・撤退の即時決定といった、これまでの日本のパーティー行の通例とは違った考えを導入しないと、遭難や事故がもっと増えるかもしれない。
引用おわり
強制的な連れ戻しとかツアーの中断なんて、日本の山でも普通に行われているんです。
ごく普通のツアー会社のほうが、入山前にセレクションをやるので連れ戻しが発生しにくくなります。この方、日本の悪習とかdisっていますけど、実は日本の登山をぜんぜん知らないのではないでしょうか。
引用
これまでのセミナーでは、リーダーが体力のない人に辞退勧告して、途中から僕ちんがトレイルヘッドへ連れて帰ったことが数回ある。
引用おわり
私が思うに、途中で辞退勧告をしている時点でアレなんですよね。参加するまえに辞退勧告するのが当たり前です。
「アンタには無理」ってのは、本来、参加する前の段階で言うべきであり、お金をとって参加させておいて、それを言うのはかなりアレだと思います。
引用
この場合、リーダーはパーティーを先に進めなければならないので、Sweeperである僕ちんは遅い人を数時間かけてトレイルヘッドまで連れて帰り、その後、1人でまた数時間かけてパーティー本隊を追っかけることがある。
引用おわり
これって、凄いムダな行為なんですよね。なぜなら、緊急時にアシスタントがいるかどうかで、全然違ってくるからです。それに、遅くて本当にダメダメな人は、参加すらさせてはいけないんです。
それにしてもねえ、こことか見ますと、このエントリーを絶賛している人が多いですね。こんな安っぽいネタを絶賛しているのを見ると、絶望しちゃいますね。
それだけ、山の遭難対策って、進んでいないんですね、と思ったのココロです。
まあこんだけ偉そうに書いてるんだったら、当然日本でもガイドしてみりゃいーじゃん、と思いますが(笑)
いつも興味深く読ませていただいております。
この隊列が長くなってもかまわない…という論って、各人がガイドがいなくたって登れる所にしか登らないというのが前提かもしれませんが、それならどうして遅い人を連れ戻す要員が必要なのか?とか、細かく読んでいくと矛盾がいっぱいありますね。
私は6年生から3歳児まで3人の子どもの母ちゃんなので、たかが3人でも子どもたちを連れて歩くときに一番重要なのって、3人がまとまっていてくれるということなんです。
行動力が全然違うので隊?がばらけがちなんですが、たとえ大きい子であっても目が届かなくなる事が本能的に一番怖いです。
子どもの例と比べるのは極端かもしれませんが、山の上のグループだって同じなんじゃないかと思うのですけれど。
1マイルの隊列っていろいろな意味で勇気要りますね…。
なお、うちの6年生の長男は1人突っ走って山を登っては何回も戻ってくるという無駄な行動をとりがちなので(近くの公園化している里山ですが、ばかにできません。)、ここのHPを読ませて、「ほら~単独で行っちゃう小学生って危ないんだよ~」と脅してから、離れなくなりました。
ありがとうございます。
あの説が正しければ嬉しいんだけどなー
私が思うに、あの記事の「早い人」と「遅い人」というのは 実は紙一重の体力差しかなく、
遅い人に合わせていたら本当にバテ出してしまうような客なのかもしれません。
ツッコミが入っているように、実は日本のツアー以上に体力不相応な客がたくさんいて、
本人の好きに歩かせてやらないと保たないんだと思います。
「ヒマラヤ…」とあるように 体調が悪ければ気軽に仲間に気兼ねなく下山したり 救助を呼んだりできる 責任観の違いも根本にあるのかもしれません。
日本人ならヒマラヤ経験あるような人だと 多少なら歯を食いしばって下山するでしょうね
かばきち様
ons様
おそらくは、日本の登山事情についてほとんど知らないのでしょうね。少なくとも、ツアー登山に関する知識は無さそうです。ただ、だからと言って、日本式の集団登山をいきなり悪習と断言されては、困ってしまいます。
日本で山を覚えた自分としては「?????」の連続でしたが^^;、北米のハイキングトレイルがあれだけ整備されて歩きやすく(デイハイクなら特に)迷いようの無い道がほとんど、日も長く天気の急変もほぼ皆無・・・ですからそんなんでもいいんでしょうけど。。。
知らないということは恐ろしいことだなと思いますね・・・これは多くの(一般の)日本人が山のことを知らないという現実も含めてですが。。。
迷わないルート、落ちないルート、落石を食らわないルートなら通用するんでしょうけど、北アルプスなどの稜線じゃ無理でしょ。
この人、実際に真ん中にいるはずの人がいなくなったら真っ青になるでしょうね。
それでもこんな持論を展開するのでしょうか・・・。
「10人以上のパーティーで山行することは滅多にない。」ってあるところを見ると、経験無くて憶測なんじゃないかとも思えるのですがね・・・。
国立公園のトレイルを引率して案内するには許可が要るはずなんですけどね。
>たしか、某カナダの「ACMG」という団体でもそんな教育をしていたように記憶しています。
そうだったんですか・・・・・・・・とすると、北米大陸ではごく普通のコトなんですかねえ。
HOKUTEN様
>迷わないルート、落ちないルート、落石を食らわないルートなら通用するんでしょうけど
向こうだとトレッキングコースが整備されているとは言いますけど、個人的には道迷いってどんなに整備されていても起きると思っているんです。あのようなガイディングをしていて、お客さんがどっかいってしまったーーって例は無いのですかねえ。
亮介様
ていうか、イタリアだとどうなんですか??ヨーロッパって、あまり団体登山しているイメージが無いんですけど・・・・・
TTR様
>国立公園のトレイルを引率して案内するには許可が要るはずなんですけどね。
アメリカの山岳ガイド制度ってまったく知らないんですけど、政府による許認可が必要なんですね。参考になりました。