豊後ピートのブログ

元北アルプス槍ヶ岳の小屋番&白馬岳周辺の夏山パトロールを13シーズン。今はただのおっさん

「常に現在地を確認」とか「こまめに現在地を確認」とか、やらなくてもいい

2024年04月10日 | 道迷い遭難を防ぐシリーズ
道迷い遭難の報道記事などを読むと、その防止策として「常に現在地を確認」「こまめに現在地を確認」と専門家や関係者がコメントしているのをよく見かけます。
今回は、そのことについて徹底的に書いてみたいと思います。

◎結論から先に書くと…
「現在地の確認」ってナビゲーションが正しいか否かを確認するものであって、ナビゲーションそのものではありません。行動中にナビゲーションをしっかりやってこそ、現在地の確認に意味があるのです。

◎「常に現在地を確認」って、みんなどうしてるの?
スマホに地図アプリを入れている人がこれを言葉通りに実行しようとする場合、片手にスマホを持ち、歩きながら常に画面とにらめっこしている必要があります。入山から下山まで、常に見てないとダメです。道迷いはどこで発生するのか予測がつかないのですから。それをしない人が「常に現在地を確認」って言ってたら、ウソッコになります。

そんなことやってる登山者って、いるんですか?

地図アプリが無かった時代は紙の地図を見ながら登っていたわけですが、「常に現在地を確認」ってどうやっていたのでしょうか?
紙の地図でナビゲーションする場合、正確な現在地がいつでもわかるわけではありません。単純な地形が続き、なおかつ視界が悪い場合には、「だいたいこのへんだろ」ぐらいのことしか言えなくなるはずです。
ですから「常に現在地を確認」って言ってる人は、実際にはどうしているんだろ?と、昔は疑問に思っていました。

◎「こまめに現在地を確認」の問題点
地図アプリを定期的に起動して位置を確認するという人がいます。例えば10分おきにスマホを取りだして位置を見る、って感じです。「常に現在地を確認」は正直ワケわかりませんが、これならまあ理解できます。

ただ、これって位置がおかしい場合には戻るだけです。ルートを間違わないようにする方法ではありません。

前回の確認時の直後に正しいルートから外れてしまった場合、10分おきに見ていたとしたら元の地点に戻るためには10分かかります。登りだったら少ない時間で戻れるかもしれませんが、下りでやらかした場合には10分以上の時間と、それに体力を削られるでしょう。

それでも右へ行くところを左へ行ってしまった程度のミスであればまだいいかもしれません。間違った方向へ進んでしまったけど、整備された登山道の上にいるというのであれば…
危険なのは、登山道そのものから逸脱した場合です。この場合、必ずしも戻れるとは限りません。最近の例だとコレですね。登山道の区別ができないような人が「間違っていたら戻ればいい」という発想で山を歩くのは危険です。

ナビゲーションをしっかりやった上で、あくまでもバックアップとして10分おきに自分の位置をアプリでチェックするというのならわかりますが、「こまめに現在地を確認」しかやらないのは絶対に止めるべきだと思います。

◎「現在地を確認しろ!」という教え方は間違い

道迷い遭難を防ぐためには地図とコンパスを持参し、常に、あるいはこまめに現在地を確認しろと私も習いました。
それで地図とコンパスを持って登るわけですが、結局、歩きながら何をすればいいのかがわかってなかったのですね。
現在地を確認しろというから適当な地点で地図を広げて、購入したコンパスの付録についてた小冊子に出てるクロスベアリング法とやらを試してみるのですが、そんなんで正確な位置なぞ出せないのですよ。理由はわかりますよね?解説めんどうなので省略しますけど。
「いったい、他の登山者はどうやって現在地を確認してるのよ?」と、不思議に思いながら登っていました。
それでも冬山登山を志したり、山岳会に所属したりしたものですから、「地図もコンパスもいらないや!!」ということにはならず、モヤモヤを抱えたまま登っていたのですが、やがて理解しました。

「現在地わからんでも焦る必要はない」

現在地を知りたいと思った時にわからなかったとしても、焦ることはありません。
それよりも大切なのは、

「地図から地形のイメージを読み取って頭に入れ、目の前にある実際の地形と常に照合しながら歩く」

ことですね。

地図に描かれた等高線から読み取った地形のイメージが、入山から下山まで順番通りに目の前へ登場しているのであれば、正しく進んでいることになるはずです。

こまめに現在地を確認というとピンポイントでチェックすることになりますが、これならずっと連続でチェックし続けていることになります。はるかに安全なのではないでしょうか?

◎常に現在地を確認ではなく、常に目の前の地形を見続けろ

常にとか、こまめに現在地を確認しろとか言ってるベテラン登山者って、実際には先ほど述べた「地図から地形のイメージを読み取って頭に入れ、目の前にある実際の地形と常に照合しながら歩く」をやっているはずなんですよね。
それなのに現在地を確認しろって説明するから、初心者は何をやればいいのか理解できず、スマホで時々現在地を見ていればいいやと勘違いするのでしょう。

本来は、このように教えるべきなのです。


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