北アルプスの天狗の頭から唐松岳までは常駐隊時代にさんざん歩いたエリアですので、あれこれ推測してみたいと思います。
北アルプスで遭難 49歳男性 8日ぶりに救助 首痛めるなど大けが
NHK 2023年9月21日 20時54分
不帰にいた登山者が助けを求める声を聞いて警察に通報したということで、まるで不帰で事故が起きたみたいな報道になっちゃっています。が、NHKの記事に出てくる救出地点の画像などを見る限り、遭難した人が登山道から逸脱したのは、天狗の大下りが始まる地点のあたりと見て間違い無いでしょう。
NHKの記事より引用
この画像をもとに、グーグルマップでもう少し引いた画像を出してみました。画像では白っぽく見えている涸れた沢の形を参照しながら位置を検討したので、たぶん合っているはずです。
不帰キレットのあたりから発見場所までは急な岩場や斜面があるのはもちろん、ハイマツやダケカンバが密生していますので、移動するのは無理でしょう。よって天狗の大下りの最上部付近から涸れた沢に入り込んだと考えるのが自然です。
もっとも、報道によっては尾根から登山道を逸脱してしまったと書かれているのがありますので、天狗の大下りから別方向に延びている尾根に入り込んだ可能性もあります。
赤いラインが正しい登山道、水色のラインは天狗の大下り最上部から発する涸れた沢です。
さて、この天狗の大下りには、過去にも登山者が道迷いを起こしてしまった地点があります。今回の遭難もそこなのかはわかりませんが、可能性が高いのではと思っています。
このあたりをパトロールしていたのは10年以上前ですので、今とは状況が変わっているかもしれません。が、参考程度に読んでいただければと思います。
天狗の頭から不帰・唐松岳方面に向かう場合、最初はなだらかな稜線が続きます。が、天狗の大下りで一気に300~400mほど下ります。この天狗の大下りの最上部には鎖場があるのですが、ここを通過した地点が問題です。
鎖を通過すると登山道に降り立ちますが、この時に登山道をスルーして、そのまま涸れた沢を下ってしまうことがあるのです。
黄色いラインが正しい登山道で、茶色のラインが鎖だと思ってください。画像を撮影したときは邪魔だったので引っ張り上げています。また赤の矢印がグリーンロープの位置を示しています。
過去の遭難では、画像右のほうへ降りていってしまったと考えられます。
鎖にたよって岩場を下降するのですが、この鎖が登山道よりも少し下まで垂れ下がっています。そのため、鎖を最後まで掴んだ状態で降りていくと、ロープを潜っていることに気づかないまま、登山道下の沢へ入り込んでしまうのです。
ペンキマークがベタベタ塗られていますし、鎖場の下部は難しくないので、普通は問題なく正しいルートへ行くでしょう。
が、中には手元しか見えてない登山者がいます。そうなると、鎖を通過しきった地点で正しい登山道が見えず、目の前に広がる涸れた沢を登山道だと誤認するかもしれないのです。
もちろん、あくまでも推定なのですが、現場で登山者の行動をずっと観察した感じでは、これが原因なのではと思っています。
涸れた沢の様子を少し拡大したものです。浮いた石が大量に溜まっています。
ここを登山道だと誤認して下ってしまったわけですが、登山道の区別がしっかりできている人であれば、間違いにすぐ気づくでしょう。秒で正しい登山道に復帰できるはずです。
ここに入り込んだ場合、途中までは行けるかもしれません。しかし登り返しはアリ地獄みたいなもので、経験無い場合、足下が不安定過ぎてまともに登れない可能性があります。
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ガチで考える山岳遭難の防止
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北アルプスで遭難 49歳男性 8日ぶりに救助 首痛めるなど大けが
NHK 2023年9月21日 20時54分
不帰にいた登山者が助けを求める声を聞いて警察に通報したということで、まるで不帰で事故が起きたみたいな報道になっちゃっています。が、NHKの記事に出てくる救出地点の画像などを見る限り、遭難した人が登山道から逸脱したのは、天狗の大下りが始まる地点のあたりと見て間違い無いでしょう。
NHKの記事より引用
この画像をもとに、グーグルマップでもう少し引いた画像を出してみました。画像では白っぽく見えている涸れた沢の形を参照しながら位置を検討したので、たぶん合っているはずです。
不帰キレットのあたりから発見場所までは急な岩場や斜面があるのはもちろん、ハイマツやダケカンバが密生していますので、移動するのは無理でしょう。よって天狗の大下りの最上部付近から涸れた沢に入り込んだと考えるのが自然です。
もっとも、報道によっては尾根から登山道を逸脱してしまったと書かれているのがありますので、天狗の大下りから別方向に延びている尾根に入り込んだ可能性もあります。
赤いラインが正しい登山道、水色のラインは天狗の大下り最上部から発する涸れた沢です。
さて、この天狗の大下りには、過去にも登山者が道迷いを起こしてしまった地点があります。今回の遭難もそこなのかはわかりませんが、可能性が高いのではと思っています。
このあたりをパトロールしていたのは10年以上前ですので、今とは状況が変わっているかもしれません。が、参考程度に読んでいただければと思います。
天狗の頭から不帰・唐松岳方面に向かう場合、最初はなだらかな稜線が続きます。が、天狗の大下りで一気に300~400mほど下ります。この天狗の大下りの最上部には鎖場があるのですが、ここを通過した地点が問題です。
鎖を通過すると登山道に降り立ちますが、この時に登山道をスルーして、そのまま涸れた沢を下ってしまうことがあるのです。
黄色いラインが正しい登山道で、茶色のラインが鎖だと思ってください。画像を撮影したときは邪魔だったので引っ張り上げています。また赤の矢印がグリーンロープの位置を示しています。
過去の遭難では、画像右のほうへ降りていってしまったと考えられます。
鎖にたよって岩場を下降するのですが、この鎖が登山道よりも少し下まで垂れ下がっています。そのため、鎖を最後まで掴んだ状態で降りていくと、ロープを潜っていることに気づかないまま、登山道下の沢へ入り込んでしまうのです。
ペンキマークがベタベタ塗られていますし、鎖場の下部は難しくないので、普通は問題なく正しいルートへ行くでしょう。
が、中には手元しか見えてない登山者がいます。そうなると、鎖を通過しきった地点で正しい登山道が見えず、目の前に広がる涸れた沢を登山道だと誤認するかもしれないのです。
もちろん、あくまでも推定なのですが、現場で登山者の行動をずっと観察した感じでは、これが原因なのではと思っています。
涸れた沢の様子を少し拡大したものです。浮いた石が大量に溜まっています。
ここを登山道だと誤認して下ってしまったわけですが、登山道の区別がしっかりできている人であれば、間違いにすぐ気づくでしょう。秒で正しい登山道に復帰できるはずです。
ここに入り込んだ場合、途中までは行けるかもしれません。しかし登り返しはアリ地獄みたいなもので、経験無い場合、足下が不安定過ぎてまともに登れない可能性があります。
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