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女神たちと黒い水・・「キリストと黒いマリアの謎」清川理一郎氏(2)

2017-12-26 | 古代キリスト教



クリスマスです。

去年の今頃は、古代のサンタクロースについて調べていたのでした。

今年は、古代の「聖母マリア」について考えてみたいと思います。

引き続き、「キリストと黒いマリアの謎」清川理一郎氏著のご紹介を続けさせていただきます。
リンクは張っておりませんが、アマゾンなどでご購入になれます。

           *****

         (引用ここから)

「初期キリスト教」関係の古文献として知られる「死海文書」が発見されたのは、1947年、太平洋戦争が終結してまもなくのことである。

死海の西岸を流れるクムラン川の流域を「クムラン」と呼ぶ。

「死海文書」とは、このクムランにある11の洞窟群とその周辺から出土した870巻もの古文書と、数万点にもおよぶ文書類の断片を総称する。

「死海文書」は、キリスト教のルーツと思われるユダヤ教の一派と密接な関係がある。

「死海文書」の構成を述べると、まず「旧約聖書」の写本が全体の3分の1を占める。

自分たちを「ヤハド共同体」と呼ぶ、謎の共同体の、教義や預言が3分の1。

残りの3分の1を、ユダヤ関係の文書や、出所不明の文書などが占める。


ちなみに「死海文書」の発見によって、古来、聖書学者が頭を悩ませてきた「イサク伝承」の謎が解けた。

「イサク伝承」とは、神ヤハヴェが、アブラハムに、一人子のイサクを神に捧げるため、焚き木に火をつけるよう説いた。

そして、火をつけたその瞬間にストップをかけた。

神ヤハヴェは、アブラハムが、一人子イサクを犠牲にしてもよいほど、ヤハヴェに対して絶対的信仰を持つかどうかを試したのだ。


この話について、古来なぜそのような恐ろしい試練を課したのかが、謎とされてきた。

発見された「死海文書」によると、神ヤハヴェが悪魔から挑まれて、アブラハムの信仰の強さを試さざるを得なかった、と書かれていた。

つまりそれは、神ヤハヴェに対する悪魔の挑戦が原因だった。

この時代の悪魔は、神と同じ位の勢力を持っていたのである。


さて、「死海文書」の3分の1を占める「ヤハド共同体」の記述に、「義の教師」「偽りの人」「悪の祭司」と呼ばれる、3人の、共同体の有力者が登場する。

この3人を誰に比定するか、いくつかの説が試みられている。

その中には、イエスが「義の教師」であり、ヨハネが「偽りの人」であり、2人は2つの派に分かれ、ヨハネは追放された、とする説もある。

以下は、その仮説を追うものである。



共同体「ヤハド」を追放され、荒野の修行者となった洗礼のヨハネは、「ヨハネ教」を携え、アナトリアのエフェソスに辿り着いた。

そしてその地の人たちに「ヨハネ教によるバプテスマ」を施した。

ヨハネの後にやって来たのは、キリスト教を宣教するためのパウロだ。

この時パウロが、この地で見たことは、「新約聖書」の「使徒行伝」に記されている。

したがって、エフェソスには、パウロが到来した西暦50年代まで、ヨハネが洗礼を施す「バプテスマ教会」が存在したことは間違いない。


当時のエフェソスは、アルテミス信仰=女神信仰が、大変盛んだった。

このような女神信仰が強いエフェソスの宗教風土の下で、「ヨハネ教」はどうなったのか?

「ヨハネ教」は、エフェソスで女神信仰との習合を余儀なくされ、かつての律法中心の「ユダヤ教」を捨て、女神色が濃い「ヨハネ教」に変貌したと考える。

その後、変貌した「ヨハネ教団」は、西暦50年頃にはエフェソスから脱出し、「原・マンダ教」の地、メソポタミアに向かったのだ。



「原・マンダ教」とは、わたしの造語であり、バビロニアに既に存在した「マンダ教」の前身を指す。

「マンダ教」は、メソポタミアの、「バプテスマ」を中心儀礼とする古代宗教であり、今でもメソポタミアのチグリス・ユーフラテス川流域、イラン南部の湿地帯に分布している。

ヨルダン川で行われた、「ヨハネ教」のヨハネによる「バプテスマ」は、エフェソスのアルテミスの女神信仰や、「原・マンダ教」のバビロニアの地母神信仰の影響を大きく受け、女神色の濃い宗教に変貌した。

                (引用ここまで)

写真(下)は、イアン・ベック著「黒い聖母崇拝の博物誌」より。エフェソスのアルテミス女神像。

                  *****


ここで、洗礼のヨハネおよびパウロが滞在した、古代の小アジアの商業都市「エフェソスの都」で盛んであったという「アルテミス信仰」について、「wikipedia」の説明を見てみます。

            ・・・

Wikipedia「アルテミス」より・抜粋


古くは山野の女神で、野獣(特に熊)と関わりの深い神であった。

アテーナイには、アルテミスのために、少女たちが黄色の衣を着て、熊を真似て踊る祭があった。

また女神に従っていた少女カリストーは、男性(実はアルテミスの父ゼウス)との交わりによって処女性を失ったことでアルテミスの怒りを買い、そのため牝熊に変えられた。

地母神であったと考えられ、子供の守護神ともされた。

また、人身御供を要求する神でもあった。

その痕跡はギリシアの各地に残されていた。


〇エペソスのアルテミス崇拝


小アジアの古代の商業都市エペソスは、アルテミス女神崇拝の一大中心地。

この地にあったアルテミス神殿は、その壮麗さで古代においては著名であった。

神殿は、現在遺跡が残るのみであるが、近くの市庁舎に祀られていた女神の神像は現存している。

エペソスの女神像は、胸部に多数の卵形の装飾を付けた外衣をまとっており、あたかも「多数の乳房を持つ」ように見え、「豊穣の神」とされる。

しかし異説として、女神への生け贄とされた「牡牛」の睾丸をつけられている、ともされる。

小アジアにおける「キュベレー」などの大地母神信仰と混交して、独特なアルテミス崇拝が存在していたと想定されている。


キリスト教の使徒・パウロは、『エペソス人への書簡』を通して、エペソスの人々にキリスト教徒のあり方を語っているが、パウロはアルテミス信仰に正面から戦いを挑んでいたとも考えられる。

『使徒行伝』は、エペソスにおける女神信仰の様を、「偶像崇拝」と記している。

女神の壮麗な神殿は、キリスト教の地中海世界への伝播とともに信仰の場ではなくなり、やがてゴート族の侵攻で灰燼に帰した。

              ・・・

エフェソスのアルテミス。。


エフェソスは、「新約聖書」に登場するヨハネが洗礼をほどこし、パウロが宣教をした町でもあるということです。

女神アルテミスは、大変古い時代の女神であり、当時の人々も、その女神を熱烈に崇拝していたということです。


キリスト教のことを考える時には、古代の女神については、あまり考えないですが、歴史の中では、あれもこれも混在し、人々は、毎日を、各々の思いの中で過ごしてきたのでしょう。

日本に仏教が伝来した時に、神道や道教や民間信仰があったのと同じことで、簡単に頭で割り切ることができない事実があるのだと思います。

著者の述べている「ヨハネ教」の変節については、一概に賛成もできませんが、ヨハネにしてもパウロにしてもタジタジとなるような、圧倒的な女神信仰が実在したのは確かなのだと思います。

「マンダ教」がこの世のものを生み出すとする「黒い水」を、太古の女神と結び付けるのは、世界史の説明としては、理解できます。

引き続き、太古の女神たちについて、見てゆきたいと思います。
          

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