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自分の前世のミイラと出会う・・「第三の眼・秘境チベットに生まれて」(3)ロブサン・ランパ著

2018-08-26 | メディテーション
チベットと聞いて連想される独特の不思議さに満ちた叙述が続きます。

少年ラマ僧である著者が手伝わされる、洞窟の中のミイラ作り。

彼らは、なにをしているのでしょうか?



             *****

           (引用ここから)


「〝化身″の広間」

今や、絹の覆いは皮をむくように一枚一枚取りだされ、最後には体だけが残った。

保存は完全だった。

外見は生きている時とそっくりで、もう一度、漆がはだかの遺体に塗られ、それから金細工師に引き継がれた。

彼らは熟練工であった。

金箔を一枚一枚と重ね、ゆっくりと仕事をした。


チベット以外だったら、一財産の値打ちがある金も、ここでは神聖な金属としてのみ価値あるものだった。

不朽でありそれゆえ人間終局の霊魂の世界を象徴する金属として。

金細工の技術僧は細かい隅々にも気をくばり、綿密な注意を払った。


メッキで重くなった遺体は、いよいよ他のものと同様"化身の広間″へと運ばれ、金の台座の上に乗せられた。

この広間には大昔からの数々の像があり、ずらりとならんで厳しい裁判官のように半眼に開いた目で現代の罪ととがをにらみつけていた。

みんなは、ここではあたかも、"生きている死者“を煩わさないかのようにひそひそ声で話し、忍び足で歩いた。


一つの遺体に、私は妙に心引かれた。

なにか不可思議な力が、その前で私の心をとらえた。

それはわたしを、なにもかも分かっているといった微笑でみているように見えた。


まさにその時、なにかがわたしの腕に軽く触れたので、わたしは飛び上がるほどびっくりした。



「それがお前だったのだ、ロブサン。お前の前世の"化身“なのだ。お前もそう思うだろう?」


師は、次の黄金像のところへ私を連れて行った。

「そしてこれが私だったのだ、ロブサン。」

言葉もなく、ともに深く心打たれて、二人は広場からでると扉は後ろで封印された。


ずっとあとになって私は、この広間に入り、黄金に包まれたこれらの像を研究することを許された。

ときには私はたった一人で行き、これらの前に座って瞑想にふけった。

そのいずれにもそれぞれの伝記が記されてあり、これを読むのはとても興味深いことだった。


ここには現在の我が師・ラマ・ミンギャール・ドンタップの伝記があり、彼が過去において何をおこなったかが語られ、彼の人となりとその天賦の才が概説されていた。

尊敬と栄誉が、その死去にたいする礼儀として彼の上に当たられていた。

ここにはわたし自身の過去の物語もあり、それを私は非常に熱中して読んだ。

岩陰に刻まれ、扉は固く封印されたこの隠れた部屋の中には98体の黄金像が座していた。

チベットの歴史はわたしの前にあった。

そうわたしは思ったのだが、もっとも古い歴史は、後になってわたしに示されることになっていた。



「最後の奥義 小さな死の儀式」

ある日、わたしは僧院長に「聖王直々のご命令で君は大僧正に任命されることになっている」と言われた。

かくて、認可された「化身」として、わたしは約600年前にこの世を去った時の資格を再び得たわけだ。

輪回の車が、ちょうど一回転したのだ。

それからすこしのち、ひとりの年老いたラマが私の部屋に来て、「今や「小さな死の儀式」を経験すべき時だ」と語った。

「なぜならば我が息子よ、おまえが死の門をくぐり、そこからまた戻ってくるまでは、「死はない」ということをほんとうには理解できないからだ。


空中旅行によってお前はひろく知識を学んだ。

だが今度は現世の枠を超え、我々の国の太古に時代についても、もっと多くのことを学ぶだろう」。

準備訓練はつらく、また長かった。

三か月間、私は厳格な監督下の生活を送った。

ついに三か月後、占星師が「前兆は吉であり、いよいよその時がきた」と告げた。

お寺のたいこのようにおなかが空っぽになるまで、24時間断食した。

それから秘密の階段と通路を通ってポタラのはるか下へと導かれた。

みんな手にたいまつを持ってどんどん下っていったが、私だけはなにも持たなかった。

前に私が渡ったことがある廊下を通り抜けた。


ついに通路のどんづまりに達した。

頑丈な岩が、その行く手には立ちふさがっていた。


しかし近づくと、岩はそっくり横に動いて、別の通路が現れた。


よどんだ空気と、さまざまな香料のにおいに満ちた、暗い狭い通路だった。

さらに数メートル進んで、おもおもしい黄金張りの扉のところで、私たちはちょっと止まった。


扉はギーと音を立てて徐々に開き、そのこだまが広い場所をとおるかのように、あちこちから返ってきた。

ここでたいまつは消され、バターランプがともされた。

私たちは、隠され、寺の中に進んだが、それは遠い昔、火山活動によってできた固い岩に彫り込まれ
たものだった。

これらのろうかも通路も、かつては噴火口から流れる溶岩が通じていたのだった。

それをいまはちっぽけな人間どもが、その道を踏みしめて自分らが神であるとおもうのだ。

だが今はそんなことより、手さぐりに懸命にならねばならなかった。

ここは「神秘な知性の寺院」なのだった。


三人の大僧正がわたしを導き入れた。

ほかの僧院の隋員たちは、かききえる夢の記憶のように闇の中に吸い込まれていった。


三人の大僧正はそれぞれ、右手にバターランプを持ち、左手には煙る細い線香を持っていた。

ここはものすごく寒く、この地上のものとは思われないような異様な冷気だった。

底知れぬ静けさであった。

かすかな物音さえ、その静寂を際立たせるにすぎなかった。

フェルトの長靴は足音がしなかったから、私たちは音もなくさまよう幽霊のように見えたにちがいな
い。


大僧正達のサフラン色の錦の僧衣の包囲から、さらさらとかすかなきぬずれの音が聞こえてきた。

ぞっとしたことには、わたしはわたしの全身に、痺れるような痛みと衝撃を感じた。

ものすごく乾燥した空気と法衣の摩擦が、静電気の充電を起こしたのだ。

一つまた一つと、バターランプは見えない手によってともされ、炎の命となってきらめいた。

ゆらめく黄色い火が増した時に、わたしは黄金におおわれ、まだ磨かれていない宝石の中に、なかば埋もれた巨大な像=仏陀を見た。

それは暗がりの中から、ぼんやりあらわれたが、あんまり大きすぎて、光はその腰のあたりまでしかとどかなかった。

その中にもかすかに見えるものがあった。

悪魔たちの像で、欲望の象徴であり、人間がその自我を達成するまで経なけらばならない試練の姿であった。

一方の壁に近寄ってみると、そこには輪回の15段階が描かれてあった。

明減する光の中で、それは回転しているように見え、それにつれて私たちもいっしょに回るような気
がした。


こんどこそ間違いなく岩にぶつかったと思ったところまで進んだ。

とたんに先頭の大僧正が消えた。

わたしが黒い影だとばかり思っていたのは、実はうまく隠された扉だったのだ。

ここに下へ下へと通ずる通路の入り口があった。

狭い、こもった、くねくねまがった通路で、そこでは大僧正たちの持つバターランプのかすかな明かりすら、かえって闇をきわだたせるとしか思えなかった。

一同はよろめき、躓き、また時にはすべった。

空気は息詰まるような重苦しさで、まるで地上の全重量がわたしたちの上にのしかかっているよう
な、あるいは地球の心臓部に突き進んでいるようなかんじだった。

曲がりくねった通路の最期の曲がり角に、一つの洞穴が穴をあけており、岩は金でピカピカ光ってい
た。

金の鉱脈と、金の塊だった。

岩の層、金の層、岩の層と言う具合に重なっていた。

非常に高いところで金は闇夜の星のように輝き、その鋭いつぶつぶはランプの発するかすかな光をとらえてはキラキラ反射していた。

           (引用ここまで)

             *****

>曲がりくねった通路の最期の曲がり角に、一つの「洞穴」が穴をあけており、岩は金でピカピカ光っていた。
>金の鉱脈と、金の塊だった。
>岩の層、金の層、岩の層と言う具合に重なっていた。
>非常に高いところで金は闇夜の星のように輝き、その鋭いつぶつぶはランプの発するかすかな光をとらえてはキラキラ反射していた。

この「洞穴」と呼ばれる空間について、著者ロブサン・ランパは、もう一冊の本で細かく書いています。

なにか、空間があるようです。

それについては、あらためてべつにご紹介したいと思います。


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