始まりに向かって

ホピ・インディアンの思想を中心に、宗教・心理・超心理・民俗・精神世界あれこれ探索しています。ご訪問ありがとうございます。

ニライカナイは地底にある(その1)・・他界はどこにあるのだろうか?

2010-04-11 | 日本の不思議(古代)
「琉球民俗の底流」という、吉成直樹さんという人の書いた本を読んでみました。
前書きには、本の趣旨が次のように書かれていました。


       *****


(引用ここから)

琉球列島に暮らす人々には、美しい海のはるか彼方、あるいは海の深くに、豊穣も禍ももたらす聖なる国があると信じられてきた。

この国をニライ・カナイと呼ぶ。

このような、人間の暮らす世界とは別の世界を「他界」と呼ぶ。

それが海に想定されていれば海上他界、山であれば山上他界(山中他界)、天上であれば天上他界、そして地下であれば地下他界ということになる。


ニライカナイは、海のはるか彼方、あるいは海底深くにあると考えられていることから「海上他界」と言って差し支えない。

こうした他界観は互いに相いれないものではなく、並存している場合が多い。

この章では、ニライカナイが、本来あくまでも垂直的な地下を志向する地下他界であったこと、先島諸島(宮古・八重山諸島)では、現在でも地下他界を意味すると考えざるをえない儀礼が残されていることを明らかにしようと思う。

(引用ここまで)


*****


著者は、ニライカナイは「海の水平のかなた」にあるのか、それとも「海底深く」にあるのか、ということを考えているわけです。

一読しただけでは、なにが書いてあるのか読み取りにくいのですが、著者は琉球世界の中心と周辺、琉球世界の新旧の層を見極めようとしているのだということが少しずつ明かされていきます。

また、太陽信仰と地下信仰の相克についても考えられています。

以下、本文から少し引用します。


*****

(引用ここから)

琉球列島の南部に位置する八重山諸島には、男性たちの年齢階梯的な結社によって行われる来訪神儀礼がある。

これは折口信夫の用語「まれびと」と表現される人神の訪れる儀礼である。

八重山諸島では、アカマタ、クロマタ、マユンガナシと呼ばれる。

男性が全身につる草を身にまとったり、クバの葉、蓑笠(みのかさ)などを身につけて、人神になり、村を訪れ、祝福し、村を去っていくのである。


これらの儀礼では、来訪神は地下あるいは土中から出現すると考えられている。

八重山のアカマタ、クロマタは、大地の底を意味する“ニーレスク”、手の届かぬ土の底を意味する“二―レースク”、地の底の知れざる穴を意味する“二ーロー”、から出現するとされる。

そして儀礼的には、ナビンドゥ(鏡のような凹状の洞穴の意味)から出現する、という形式を取っている。

アカマタ、クロマタの発祥の地とされる西表島・古見では、二―ラから豊作をもたらしに来る神とされているが、実際には森の中から出現し、そこにまた帰ってゆく。

山から出現しつつも「洞穴」が重要な意味を持つ事例は、他にもいくつかある。

たとえば沖縄島・安田のシヌグでは、草などを身にまとって仮装した男性たちが山から出現するが、その際、頂上にある「洞」を巡りつつ、「エーへ―ホーイ」と唱え、三回ここをつつくという。

宮古島のパーントゥと呼ばれる来訪神儀礼も、旧歴6月ごろ、産水、死水に用いる井戸、若い女性たちが若水を浴びる井戸から現れる。


ここで疑問に思うのは、神女たちが中心になるニライカナイ系祭祀はあくまでも水平的な海上他界に結びついているのに対し、男子結社が行う来訪神儀礼では、同じニライカナイ系の名称を持つ他界でも、なぜ地下を志向するのか、ということである。

端的に言えば、男子結社が行うニライカナイ系の他界と結びつく来訪神儀礼と、神女たちの儀礼では、文化史的な時期が異なるのではないかということである。

(引用ここまで)

*****

「アカマタ」、「クロマタ」という来訪神は、ウィキペディアには次のような説明がされています。


Wikipediaより

・・・・・

アカマタ・クロマタとは、沖縄県八重山列島の豊年祭に登場する来訪神である。

西表島古見を発祥とし、小浜島、石垣島宮良、上地島に伝わっている。

西表島古見ではアカマタ・クロマタ・シロマタの3柱、他の地区ではアカマタとクロマタの2柱が現れる。

来訪行事を実施するのは地区住民のなかで資格を持つ者に限られており、その他の者にはその一部しか公開されず秘祭とされている。

かつては、既に廃村になった西表島北部の他の地区や下地島でもみられた。


石垣島宮良のアカマタ・クロマタ

アカマタとクロマタの2柱の神は全体が草に覆われ、ずんぐりとしていて、だるまやフクロウのようにも見える。

背丈は180センチメートルほど、アカマタ(赤面)とクロマタ(黒面)は縦長の鼻に丸い目と細かいギザギザの歯で構成され目と歯の両端に細長いヒゲもある。

目と歯に光が当たると反射して神秘的に輝くのが印象的である。


祭りの内容

夕方に何処からか現れ、村の一軒一軒を一夜かけて回り、朝方にどこかへ消えてしまう。

まず、数十人の太鼓隊が家々の門を潜ると、縁側から向かって左右に分かれて庭の周辺に登場し、太鼓を叩きながら歌いアカマタとクロマタを呼ぶ。

その後、アカマタとクロマタは門を潜り左右に分れ庭の中央に登場する。

アカマタとクロマタは棒を両手に持ち、威勢のいい太鼓隊の歌にあわせ、棒を叩いてユーモラスに踊る。

アカマタとクロマタは「なみだ」と呼ばれる殺気(精霊が宿っている)だった者達に厳重に警護されながら移動する。


祭りの背景

この祭は7月頃に行なわれるが、通常は島民にも知らされず非公開となっており、謎と緊張感に満ちている。

写真撮影、スケッチ、模造などは禁止されている。

もしもそのような行為を村人に見つかった場合、生命の保障はされないとも云われている。

20年程前には隠れて撮影を試みた記者が村人に見つかり、撲殺されたとの噂もあるほど。


・・・

関連記事

画面右上の「検索コーナー」を、「ブログ内検索」にして
「地底」(15件)
「ニライカナイ」(3件)
「弥勒」(3件)
「悪石島」(1件)
など、関連記事があります。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大洪水が起きる前、恐竜と人... | トップ | 梅も僕も 黒豚もいる 大地... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日本の不思議(古代)」カテゴリの最新記事