Negative Space

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あまりにイタリア的な:『ヘラクレス』(1957年)

2012-08-28 | その他
 <ビバ!ペプロム> 其の参

『ヘラクレス』(ピエトロ・フランチーシ監督、1957年)

 ギトギト度☆☆☆☆☆
 むきむき度☆☆☆☆☆
 牧歌度☆☆☆☆☆
 ベルカント度☆☆☆☆
 アマゾネス度☆☆
 名作度☆☆☆☆


 華々しく幕を開けた<ビバ!ペプロム>。のっけからマンキウィツ作品2本立てとはハイブラウすぎるチョイスだったかも。古代史劇映画のダイゴ味は、むしろ今回とりあげるような作品にこそあるのです。

 欧米ではヘラクレスものの代表作として立派に認知されており、わが国でも公開はされたものの、いまや語る人さえいない。当然DVD化などはされておらず、わたしはアメリカ盤を取り寄せて見た。

 主役はこのジャンルの立役者の一人、スティーブ・リーブス。元「ミスター・ワールド」とやらのボディビルダー。人のよさそうな顔してる。シルヴァ・コシナが恋人(ペリアスの娘?)役。アマゾネスの首領にジアンナ・マリーア・カナーレ(“con”付きの特別出演扱い)。この人も美人コンテスト出身らしく、大監督リッカルド・フレダ作品で知られる。

 エピソードの豊富なヘラクレス神話だが、ここではゴールデン・フリースを求めてのアルゴー行きがメインの筋で、ライオン狩りとか牛の生け捕りの難行がなんとなく絡めてある感じ。神殿を腕力で倒すとかの『サムソンとデライラ』あたりから借りてきたらしいエピソードもちゃっかり混じる。本国イタリアでは記録的なヒットを飛ばしたらしい。

 Luxカラーといっただろうか、旧式テクニカラー系によくあるギトギトしたカラーが目を刺激する。このギトギト感、いかにもイタリアン・オペラふう。さらにキャメラがマリオ・バーヴァと知ってなんとなく納得。のちのバロック的ホラーのヴィジュアルを予告していると言えるかも。ちなみにバーヴァは『ヘラクレス対ヴァンパイア』なんていうキワモノ古代史劇も監督している。

 古代史劇の魅力であるチープ感はじゅうぶんすぎるほど漂っているが、いっぽうでけっこう金がかかっていることもわかる。ゴールデン・フリースのかけてある木の根元に眠るゴジラみたいな怪獣にしても、よくあるはりぼて感がない。わたしが見たのは英語版のせいか、音楽はむちゃくちゃだったが(なげやりな混声コーラス、閨房と祝宴場面でのムード音楽)。

 本作には『ヘラクレスの逆襲』という続編があるが(日本にも輸入された)、似たタイトルの映画を古代史劇映画のカリスマ的巨匠ヴィットーリオ・コッタファヴィも撮っている。こちらは十年以上前に京橋のフィルム・センターであったイタリア映画特集(アドリアーノ・アプラらの監修になるとてつもなく高密度な企画であった)でかかったことがあって、ほぼ無人状態の大ホールでかぶりつくように見入ったのを覚えている。

 ちなみにものの本によると、最初のヘラクレス映画はエミール・コールによるアニメだそう。