Negative Space

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それでも夜は明ける:「THE WIRE / ザ・ワイヤー」シーズン4

2015-07-12 | ドラマ


 「THE WIRE / ザ・ワイヤー」シーズン4(HBO、2006年)

 子供をメインキャラクターに据えてもあいかわらずクールな本シリーズ。

 そしてあいかわらずペシミスティックな世界観。『仁義なき戦い』シリーズみたいに一作ごとに若い命が散って行く。今回はシーズン1からおなじみのボディーが最後に犬死にする。

 プレッツはデューキーを救えず、カーヴァー(『アリスのままで』に一瞬出てた)はランディを救えず、カッティーはマイケルを救えず、マクノルティ(本シーズンでは脇)はボディーを救えず、バブルズはシェロッドを救えない。教師に転身したコルヴィンが引き取る天使的なネイモンドにわずかな希望が託される。レックスもケヴィンも死体が発見されるが(ホークのチョンボが発見に結びつくというアイロニー)、捜査に政治的な横槍が入って浮かばれるどころではない。とはいえ、骨抜きにされた防犯課のキャップにレスターが抜擢され、最終シーズンへの期待は高まる(「ボルチモアの夜明けだ。目を醒してコーヒーの香りをかげ」とダニエルズ)。

 シーズン3におけると同様、コルヴィンのプロジェクトが失政ゆえに潰されるという反復強迫的なヴィジョン。権力側の描写はあいかわらず戯画に堕す。というか、それがぎゃくにアリズムなのか? あいかわらずワルどもから甘い汁を吸い上げてるオマール(オバマのフェイヴァリット・キャラ)。ホモの愛人との熱い夜(?)が明け、ブルーのナイトガウンすがたでハチミツ味のシリアル買いにいく。

 ミソジニーもあいかわらずで、女性キャラの大半は男勝りのキャリアウーマンかヤク中の母親かそれに類した役どころ。そんななかでマルロの殺し屋スヌープの存在感が光る(シーズン3ではちょい役ではあったがすでに気になる存在だった)。あっけにとられるホームセンターの店員をよそに商売道具のネイル・ガンについて蘊蓄をかたむけるかのじょの饒舌でシーズンは幕を開ける。演じるフェリシア・ピアソンはじっさいにああいう環境で生き抜いてきたらしい。むろんレズのキーマも健在である(殺人課に転属)。

 主役の四人組が『ミスティック・リバー』の少年たちをおもわせるとしたら、デニス・レイハンが脚本に参加しているせいもあるかもしれない。四人組の演技コーチについたのはプロップ・ジョー役のロバート・チュー。脚本にはほかにジョージ・ペレケーノス、リチャード・プライスが参加、演出には前シーズンにつづいてアーネスト・ディッカーソン、アグニェシカ・ホランドが名を連ねる。主題歌は DoMaJe なる地元のティーンズ・グループ。わるくない。カッティーが病室のベッドで見ているのはもちろんHBO(『デッドウッド』)。