Negative Space

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鹿島パラダイス・ロスト:『反逆のメロディー』

2012-08-08 | その他
 澤田幸広の『反逆のメロディー』(1970年、日活)。

 故・原田芳雄の出世作で代表作のひとつとして知られる。舞台出身の新米・原田を、梶芽衣子、藤竜也ら日活ニューアクションのスターが脇で固めるという魅力的なフォーメーション。

 闇夜をあかあかと照らす焚き火に黙々と看板を投げ込む男たち。暴力団の解散式の場面から映画ははじまる。

 その後は長髪、ジーンズ、サングラスという出で立ちで一匹狼を貫く若きやくざ(原田)。警察とグルになって高度成長期で勢いづくゼネコンに身を売り、仲間を裏切って恥じないかつての組長に刃を向ける。

 厚い雲が晴れることのない鹿島臨海工業地帯は、『マッドマックス』で描かれた核戦争後の世界をおもわせる。いわばそれまでのいっさいの価値が破壊されつくした世界だ。

 「砂丘にトルコ風呂のネオンが誘蛾灯のように点滅している」(澤田監督が『キネ旬』原田追悼特集に寄せた一文より)。

 パーティー会場に殴り込みをかける原田。藤竜也の命を張った助太刀を得て、なすべきことをなしとげる。

 場面かわって、日本刀を手に、おぼつかない足どりで砂丘をのぼっていく男をとらえたロングショット。ソフトフォーカスもあいまって幽霊然とした標的を銃撃する警官。砂まみれになって転げ落ちていく原田。エンドマーク。

 若き原田芳雄と藤竜也のアップから滲み出す濃厚な色気。原田と地井武男の友情のうつくしさ。佐藤蛾次郎の弾丸のような身のこなし。