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The Westerners' Chronicle 〜西部瓦版〜 No. 56
マイケル・カーティス『カンサス騎兵隊』(1940年、ワーナー・ブラザーズ)
1854年、ウェストポイント。のちのリー将軍が校長を務める士官学校にジェブ・スチュアート(エロール・フリン)、ジョージ・アームストロング・カスター(ロナルド・リーガン)、フィリップ・シェリダンが集う。
同窓の過激な奴隷廃止論者レイダー(ヴァン・ヘフリン)は奴隷所有者のジェブと対立している。レイダーはジョン・ブラウン(レイモンド・マッセイ)のスパイであることが発覚して放校処分になる。騎兵隊員となったジェブは、パトロールのさいちゅうに武器を輸送中のジョン・ブラウンの隊と出くわす。一隊にはレイダーも加わっていた。
レイダーはジョン・ブラウンがスパイの報酬を支払わなかったことに腹を立て、かれの動向をジェブにリークする。一隊による武器庫襲撃は失敗に終わり、ジョン・ブラウンは絞首刑になる。南北戦争を予言するスピーチをぶつジョン・ブラウンのアップが開通成ったサンタフェ鉄道を行く汽車のショットに繋げられて幕。
南北戦争開戦前夜、奴隷州と自由州の代理戦争の舞台となっていた Bleeding Kansas に取材。ワーナーお得意の史実にフィクションをおりまぜた西部劇。ジェブ・スチュアート、カスター、シェリダンが同時にウェストポイントに在籍していたというのは史実に反する。
レイダーは金目当てで、捕虜となりハビランドに看取られるジョン・ブラウンの末っ子は、脅されて、それぞれジョン・ブラウンに加担したという設定になっており、おもてむきジョン・ブラウンは狂信者として扱われているが(アングルやライティングに注目)、ラストのスピーチでは花を持たせているようにもとれる。
レイモンド・マッセイは、同年の『エイブ・リンカーン』(ジョン・クロムウェル監督、1940年)のタイトルロールで名高い。ジョン・ブラウンが同じ奴隷解放論リンカーンのネガとして描かれているのだ。
マッセイは『七匹の無法者』(チャールズ・マークィス・ウォーレン監督、1955年)でふたたびジョン・ブラウンを演じているが、こちらはジョン・ブラウンをもっと好意的に描いた作品であるようだ。
ジェブとカスターは、鉄道会社の社長の娘「キット・カースン」(オリヴィア・デ・ハビランド)をめぐって恋敵となる。かのじょは先住民の老女のもとにふたりをつれていき、運勢を占わせる。老女は、同窓のかれらがやがて敵味方に別れて戦うだろうと予言する。ジョン・ブラウンを知る迷信家の床屋は、ジョン・ブラウンには首に赤い筋が通っているゆえ縛り首になるだろうと予言する。
本作の直後に撮影されたウォルシュの『壮烈!第七騎兵隊』では、フリンとハビランドがカスター夫妻を演じる。
ヴァン・ヘフリンがフリンとマッセイにぞれぞれパンチを食らうシーンがあるが、倒れるまでの滞空時間が見事に長い。
キャストはほかにアラン・ヘイル、ワード・ボンドほか。