Negative Space

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黒澤の徴の下に:『独立愚連隊』

2012-07-30 | 岡本喜八
 岡本喜八『独立愚連隊』(東宝、1959年)

 所謂大東亜戦争末期、北支戦線、山岳地帯。

 新聞記者を名のるナイスガイが、さいはての部隊に送り込まれ、下士官の謎の死亡事件の真相を探るうち、軍の汚職をかぎあてる。

 コミックスをおもわせるけれん味たっぷりの構図とトリッキーな編集。ナンセンスなヒーロー像。マカロニ西部劇誕生以前のマカロニ西部劇にしかみえないとしても、黒澤明の徴の下に撮られた映画であればそれもあるいみ当然か?

 佐藤勝が軽快なスコアをつけ、狂気の三船が目を剥いて吠えまくり、上原美佐が『隠し砦』の記憶もあざやかな凛々しい姿を見せる。

 もちまえの小気味よくスピーディーなスタイルを監督はこの作品で開花させた。同年に発表された『勝手にしやがれ』のジャンプカットも顔負けのスピードでひたすらおしまくる。

 そういや、処刑されそうになる馬賊の女スパイ(上原美佐)は、ちょっと『カラビニエ』で処刑されるブロンドのレジスタンスみたいだったな。

 ところがもともと物語も登場人物も紋切り型のきわみであるだけに、スタイルだけが突出していればいるだけ、一抹の虚しさが浮き彫りになるのも事実。公開当時はそこが不評だったようだ。

 山根貞男さんが、これを戦中派の監督ならではのニヒリズムと解釈している。なるほどね!

 同じく山根さんによれば、『独立愚連隊』シリーズは、同じ監督の『暗黒街』シリーズと同様、安保世代の若者にばか受けしたとのこと。彼らは独立愚連隊に自分たちの身の上を重ねみたのだと。むかしの若者もばかだったんですね。