たそかれの散策

都会から田舎に移って4年経ち、周りの農地、寺、古代の雰囲気に興味を持つようになり、ランダムに書いてみようかと思う。

国有地もいろいろ <山梨の国有地 放置のち「たたき売り」 算定、財務省次第>などを読みながら

2018-01-08 | 行政(国・地方)

180108 国有地もいろいろ <山梨の国有地 放置のち「たたき売り」 算定、財務省次第>などを読みながら

 

日本航空学園といえば、最近甲子園にも出場するので、名前くらいは覚えているくらいですが、突然、毎日朝刊の一面に取り上げられ驚きました。

 

財務省山梨の国有地 格安販売 評価額の8分の1で>との見出し記事では、<山梨県内の国有地を地元の学校法人が約50年無断で使い続け、管理する財務省関東財務局が把握しながら放置した末、2016年5月に評価額の8分の1で売却していたことが明らかになった。>

 

またまた森友学園との土地売却みたいな財務省の胡散臭い国有地売却かと思いつつ、記事を読み進めてみますと、おおむね毎日記事の指摘は理解できるものの、実態はかなり違う印象を抱きました。

 

たしかに土地評価と売却価格の差はバナナのたたき売りに近いですので、毎日記者の激怒するような気持ちもわからないわけではありません。

 

でも問題の土地を見ると、なるほど面積合計は<同県甲斐市の計約6566平方メートル>ですから、相当なものです。といっても田舎ではこのくらいでは農業を含め事業用地とするには十分ともいえないでしょう。それでもたいした面積であることは確かです。

 

しかし、その配置・形状・元の土地利用を考えると、独立の交換価値を見いだすのは難しいでしょうね。

 

もう一つの記事<山梨の国有地放置のち「たたき売り」 算定、財務省次第>には当該土地の部分を特定する地図が掲載されています。

 

これによると、釜無川に沿って滑走路などキャンパスがありますが、その中に<農道や水路の形状のまま枝分かれして存在して>いた?ようです。現在の土地利用については触れていませんが、農道も水路も必要ないはずで、キャンパス敷地として埋められたりして残っていないのではないかと思います。いずれにしても網目状に延びる農道・水路では、第三者が取得しても使いようがないでしょうね。

 

その意味では、財務省が一定の減額評価をするのは、その減額に合理性がある限り問題とはならないように思います。

 

では財務省の減額処理はどうだったのでしょう。

<滑走路などキャンパス内の国有地の評価額(相続税評価額)は計約7180万円。>この金額は農道・水路以外にも国有地があったと言うことでしょうか、そうではなく、単純に現在の利用状況を踏まえてキャンパス敷地の評価を算出したと言うことなのでしょうね。これ自体がはなはだ疑問ですが、それほど大きな問題ではないでしょう。

 

その上で、<農道や水路の形状のまま枝分かれして存在しており、財務局は他に需要がない場合に減額できる「需給修正率」(50%)を用いたほか、この土地に学園の「借地権」があったとみなして「借地権割合の控除」(50%)も適用。さらに教育施設への減額措置(50%)なども使って最終的に875万円まで価格を下げた。>

 

すごい計算ですね。単純に本来の評価額に50%、50%、50%と3回乗じると秀吉がやったネズミ算式の逆で大幅減額が可能なのですね。

 

減額するのはいいとしても、この減額根拠と比率はとても合理性があるとは思えません。

 

ま、需給修正率という理由自体はごもっともで、その割合はもっと低くても良いかもしれませんが、一体、その比率をどのような基準で定めたか疑問です。

 

次に借地権割合の控除は、前提として借地権がないのですから、これ自体減額根拠となりませんね。なお、時効取得の主張については論外ですし、それを理由に借地権を認めることは矛盾しますから、論理が混乱しているともいえるでしょう。

 

毎日記事や掲載された論者の意見では、時効取得の解説まで掲載しながら、どうも適切でないものになっているように思えます。ま、司法試験の基礎的問題で、私のような高齢者にはもう記憶のどこかに飛んでいったようなものですが、少しは思い出しながら触れておきます。

 

毎日記事にもあるように「時効取得」は< 民法162条で規定され、他人の不動産などを20年間占有した者は、所有権を取得するなどとされている。「所有の意思をもって、平穏かつ公然と」>が要件とされます。簡単な問題のように思えますが、実際は「所有の意思」をめぐる紛争は結構ありますし、最高裁でなんども判決が下されているくらいですから、微妙な事案も少なくないと思います。

 

とはいえ、基本は所有の意思が必要(自主占有)ですので、借りたりしていればその意思を認められません。占有が20年を超えて50年以上であっても所有関係に影響を与えることはありません。とはいえ所有の意思はその人の内心の意思ではなく、占有を取得したときの契約を含む法律原因や外形的な利用形態によって客観的に判断されますので、その主張立証ができるかがポイントになります。

 

で、記事では<日本航空学園は「国有地という認識はあったが、国から(使用料などの)請求はなく利用していた」と説明。>とか、一時、国と売却の協議をして値段の点で折り合わなかったというのですから、他人のものの占有として、他主占有となり、時効取得はアウトですね。

 

とはいえ、農道・水路ですし、国がまったく管理していなかったようですから、その合計面積からいっても評価額が特段おかしいとまでいえるかはもう少し検討を要すると思います。財務省の減額算定の手法に疑問はありますが、算定結果の減額額はそれほどバナナのたたき売りとまでいえるかは即断できないと思います。

 

強いて言えば、もう少し適切な評価マニュアルを作り、ガラス張りにして交渉内容を明らかにしていれば、それほど問題にされなかったかもしれません。

 

とここまでが前置きです。いつもながら前置きが長くなり恐縮しています。

 

なぜこの問題をとりあげたかは、問題の土地が農道・水路だったからです。おそらく日本航空学園は、田畑の所有者との間では売買契約を締結して、きちんと所有権移転登記を適切に済ましたのだと思われます。

 

なぜ農道・水路が残ったのか、ここははっきりしませんが、学園が田畑を取得した60年代であればこれらを分筆して登記していなかった可能性もあります。青線・赤線として無番地の公図表記だけだったのかもしれません。むろんそれでも国有地であることは間違いないのですから、払い下げなど適切な法的処置を講じるのが本来だったのでしょう。

 

で、この国有地であることを問題にしたいと思っているのです。なぜ国有地なのか、私もよくわかっていません。戦前から戦後にかけて多くの農道・水路(当時の建設省が開設するのは別ですが)は、元々周辺の農家が所有している農地を無償提供して、関係農家の便益のために利用されてきたのだと思います。その田畑が学園敷地に売却されたとき、その農道・水路は用途がなくなったのですから、本来の農家に戻してもおかしくないのではと思うのです。

 

すべての農道・水路をそのように取り扱うのはどうかと思いますが、地域の事情に応じてそのような取り扱いも合理性があるのではと思うのです。そうなると国有地などといって、元々開設にもタッチせず、維持管理にも関与していなかった国が権利を云々するのはどうかと思うのです。

 

むろんこういった農道・水路で費用支援があったりするので、すべてを個々の農民にというのもどうかと思いますが、関係者の協議で配分を決めるというのもあるかもしれません。

 

現在、こういった財務省管理の農道・水路の多くは、自治体に移管され、いわゆる普通河川的な取り扱いを準用しているのではと思われます。農道については、ここでは赤道を想定していますが、保留しておきます。

 

もう一つ釜無川といえば、信玄堤・霞堤で有名ですね。このキャンパス地となったところも氾濫原でしょうね。釜無川が暴れても、肥沃な土壌を運んでくることで農産物がたくさんとれたのでしょうか。そんなことを思い出さしてくれる写真記事でした。

 

今日はこの辺でおしまい。また明日

 

 

 


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