白夜の炎

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「核の冬」再び

2015-08-10 17:05:12 | 軍事
日経サイエンスより

「 米国とソ連の間で核戦争が起こると「核の冬」が生じうることを25年前,複数の国際科学チームが示した。都市と工業地域に落とされた爆弾で大火災が生じ,その煙が地球を包み込んで日光を吸収,地表は温度が下がり暗く乾燥して,世界中の植物が枯れ,食物供給が絶たれるだろう。地表の温度は夏場でも冬の値に下がる。この予測は2つの超大国の指導者に米ソの軍拡競争が当事国だけでなく全人類を脅かす可能性を突き付け,核軍拡競争を終わらせる重要な要因となった。

 冷戦が終わったいま,なぜこの話題を取り上げるのか? 他の国々が依然として核兵器を保有・取得しようとするなか,より小規模な局地核戦争でも同様の世界的破局が起こりうるからだ。新たな解析の結果,例えばインドとパキスタンの衝突によって100発の核爆弾(世界に2万5000発以上ある核弾頭のわずか0.4%)が都市と工業地域に落とされると,世界の農業を麻痺させるに十分な煙が生じることがわかった。局地核戦争は当事国から遠く離れた国々にまで犠牲者を生む恐れがある。

 私たち著者2人は共同研究者とともに,最新のコンピューターと気候モデルを用いて,1980年代の「核の冬」の考え方が正しいだけでなく,核の冬の影響はそれまで考えられていたよりもずっと長く,少なくとも10年間は続くことを示した。そして数十年間にわたる影響を評価する計算を行い(現在の高速コンピューターで初めて可能になった),また海洋と大気全体を計算に含めて(これも初めて可能になった),局地核戦争であっても,その煙は太陽光によって暖められて上昇し,高層大気中に何年も浮遊して日光を遮断し,地球を冷やし続けることを見いだした。

 核拡散と政治的不安定,都市部への人口集中が組み合わさり,社会は人類史上かつてない大きな危険にさらされる恐れがある。悪夢が現実になるのを防ぐには,核兵器を廃絶するしかない。米ロの保有核兵器を他の核保有国と同水準(数百発)にただちに削減すれば,抑止力を維持しつつ,核の冬の可能性を減らし,核廃絶という最終目標に向けて他の国々を後押しできるはずだ。
著者
Alan Robock / Owen Brian Toon
ロボックはラトガーズ大学教授(気候学)で同大学の環境予測センター副所長。気候変動のさまざまな側面を研究している。米国気象学会フェローのほか,IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のメンバーでもある。トゥーンはコロラド大学ボールダー校の大気・海洋科学科の学科長で,同校の大気・宇宙物理学研究所フェロー。米国気象学会および米国地球物理学会のフェローでもある。

原題名
Local Nuclear War, Global Suffering(SCIENTIFIC AMERICAN January 2010)」

http://www.nikkei-science.com/page/magazine/1004/201004_078.html


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