白夜の炎

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国際金融経済会合でのスティグリッツ教授のパワポ資料

2016-03-24 20:55:40 | 国際
 以下は国際金融経済会合第一階でスティグリッツ教授が提出したパワポ資料のないよう全て。訳は政府によるもので「仮訳」とされている。
最後に付されている数字はパワポの頁番号です。

「「大低迷と金融の安定を超え、 健全で持続的な成長に向けて」   ジョセフ・E・スティグリッツ 東京
                                            2016年3月  仮訳

I.


我々は今どこにいるか
• 緩慢な成長-大低迷(Great Malaise)、新たな凡庸(New Mediocre)
• 今のところまだ危機ではない。
• しかし、G7の多くの国々では(覆い隠されたケースも含め)恒常的に多く
の失業が発生している。若年層や社会の主流から取り残された層では更に
高率の失業が発生。
• この緩慢な成長の果実は一部のトップ層に偏って分配されている-格差は 拡大し、賃金の上昇は停滞。
• 「公式には」失業率が低いとされている国でさえ、雇用の質や覆い隠された失 業には疑問符。
• 世界経済危機前にも関わらず、2007年の世界経済は実際には弱かった。
• バブルによって支えられていただけだった。
• 経済危機前の2007年の世界を取り戻すということは、かつて我々が保持してい たものと同じ、弱い経済に戻ってしまうことを意味する。
• 入り交じる見通し-堅調な成長に戻る可能性は小さく、景気後退や 停滞の可能性は高い。
• 資産価格バブルの収縮への、もっともな懸念。
• 国家や企業が多額の債務を抱える中、新興国は巨額の資本流出に直面。
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伸び悩む米国経済
• 仮に1980年から1998年までの経済成長が継続していたとし たら、今の米国のGDPは、現実のGDPよりも15%ほど高いも のとなっていたはずである。
• 女性の労働参加が急速に進んだ1980年代初頭と比較しても、 現在の生産年齢人口の就業率は低い。
• 中位の(家計)所得は、1989年と比較して1%の上昇すら達 成していない。
• 最下層の実質賃金は60年前よりも低い。
• 若年層のアフリカ系アメリカ人の失業率は未だに23.7%。
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実質GDP
米国GDPのトレンド分析
●米国GDP(IMF 世界経済見通し) -1980-1998ベースのトレンド指数年(兆ドル、2009年米国ドルベース)
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欧州はもっと悪い
• 失業率は更に高い。
• 特に若年層の失業が深刻。
• 経済成長も更に低い水準。
• ユーロ危機は終わっていない。一時的な「小康状態 (remission)」にあるだけ。
• 統一通貨が機能するために必要な制度が創設されていない。 そして、その制度が創設される見込みも当面ない。
• 欧州の現状と、仮に欧州が経済成長していたとしたら実 現していただろう姿との間にはギャップが存在。
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危機以来、欧州のパフォーマンスは悲惨なもの
実質GDP
ユーロ圏のGDPのトレンド分析
●ユーロ圏GDP(IMF 世界経済見通し) -1980-1998年ベースのトレンド指数(兆ユーロ、2010年ユーロベース)
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中国
• 世界金融危機以来、中国が世界経済の牽引役だった。 • 先進国は直接的、間接的に影響を受ける。
• 深刻な経済減速となる見込み。
• 欧州と米国では、中国経済の減速を埋め合わせることは できそうもない。
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大不況(the Great Recession)に
関する誤った診断
ただの金融危機ではない。
• 銀行のバランスシートは概ね再構築された。
• 規制改革もいくらか行われた(ドッド・フランク法)。 • しかし、経済は未だに健全な状態に戻っていない。
• クレジット・チャネルの改善に十分な注意が払われていな い。
• このことは、金融緩和が期待されたほどの効果を得られて いない理由の一つ。
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大不況(the Great Recession)に 関する誤った診断
ただのバランスシート不況ではない。
• 大企業のバランスシートは概ね再構築された。
• 企業が投資に積極的にならないのは、バランスシートや 資金調達の問題ではない。
• 需要が足りないことが問題なのだ。
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更なる懸念
• 永続的な世界の不均衡
• ユーロ圏が問題を悪化させている。
• 非対称な調整
• 所得の低下に直面する国家(企業、家計)は消費を減少させざ
るを得ない。
• 所得が増加した国家(企業、家計)はその分の支出を増加させ ていない。
• 原油価格の変動への対応では以下の点が特徴。
• 原油価格の下落は需要を増加させると期待されていたが、「敗 者」(losers)への悪影響がそれらの便益を上回っている。
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中心的課題の診断
• 世界的な総需要の不足。
• それと相まって、各国において、非貿易セクターへの支
援は不十分。
• 債務・金融化への過度の依存。
• さらに広くみれば、約30年前に市場経済のルールの転換 (税制の再設計、ずさんな自由化)のプロセスが多くの 先進国で始まった。これらは、当初の目論見に反して、 更なる経済成長率の低下、不安定化、不平等化を招いた。
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大低迷(Great malaise)は、驚くほどに進展を 見せない、より深刻な問題を覆い隠している
• 気候変動
• 格差、多数の貧困層
• 富の不平等、健康の不平等(医療を民間の提供に依存する国においては)、 裁判へのアクセスの不平等、と多岐に渡る。
• 先進国では中間層が縮小。途上国においても中間層が縮小。
• これらの問題は、社会の主流から取り残された層や(しばしば)若年層では
特に深刻。
• 持続的成長を実現するためには、徹底的な「構造変革」(structural
• 市場経済に根付く問題が、生産性の停滞をもたらしている。
• 民間部門・公的部門の両部門における短期的志向。
• 基礎研究への投資の不足。そして、多くの国ではインフラへの投資の不足。
• 過度の金融化。過度の金融化は以下の過程の一部でもあり、原因の一部でも ある。
• 富と資本の間のギャップの広がり。
• 多くの国で産出に対する富の割合が高まる一方、産出に対する資本の比率が低下。
• 教育システムの適合の失敗。
transformations)が求められる。
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II. これらの状況への対応
当然の手段に関する対立する見解:金融政策
• 金融政策は、概ねその役割を全うした。
• 深刻な停滞時において、金融政策が極めて有効だったことはこれま
でにない。唯一の効果的な手段は財政政策。
• 本当の問題は、ゼロ金利制約ではない。金利を少し下げること(例
えマイナスの領域に入ったとしても)は機能しない。
• マイナス金利の試みは、景気を大きくは刺激せず、悪い副作用をもたら す可能性も。
• 量的緩和政策は不平等を拡大した。しかし、(もしあったとして も)投資の大幅な増加にはつながらず、金融市場の不完全性あるい は不合理性により、リスクのミスプライシングやその他の金融市場 の歪みをもたらした可能性。
• 主な便益の一つは、競争的な通貨の切り下げである。しかし、それは、 ゼロ・サム・ゲーム。
• 適切な財政政策なしでは、「唯一の選択肢」問題は更に悪化する一途。
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当然の手段に関する対立する見解: 財政政策
• 財政政策が債務増大のリスクを高める懸念。
• 2008~2009年に実施した景気刺激策は効果がなかったという見方
は全くの間違い。
• 対策がなければ更に悪化していたであろう失業率の低下をもたら すことができ、更なる景気後退、不況に陥るのを防いだ。
• 危機時においては、支出を最適化する時間はなかった。-たとえ、 不完全な歳出であっても、大量の資源を活用せずにいることや不 況に比べれば望ましい。
• 債務への懸念は、バランスシート・アプローチへの問題のすり替 え。そこでは、政府は生産的な投資に対して支出することが前提 とされている。
• グローバリゼーションにより政策効果は損なわれている。-便益 は他国に流出し、費用は自国に発生。
• しかし、「優位」な解決策を提示するには、世界の協調関係は弱 すぎる。
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繁栄を取り戻すためには機能しない もの、不十分なもの
1. 金融政策
• 根本的な問題は、ゼロ金利制約ではない。
• 低金利は資本集約型テクノロジーを生み出し、「雇用なき」経 済回復につながる可能性。
2. 貿易協定
• 関税は既にかなりの低水準。
• G7諸国による、資本集約財を輸出する一方で労働集約財を輸入 するという「バランスの取れた」貿易取引の増加は、雇用を減
少させる。
3. 見当違いの供給サイドの施策
• 法人所得課税。
4. 更なる緊縮財政 これらの対策のなかには、逆効果となるものも存在。
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対処法: 緊急の問題-世界の総需要を取り戻す
1. (パリ協定を受け)炭素に高価格を設定することは、気候 変動に対応する世界経済への改革に向けた投資を促す。
2. 経常黒字の一部の再活用(例えば開発銀行の資本再構成、 新たな開発銀行の創設)は、インフラを含めた投資の必要 性を満たすもの。
• 民間部門は、仲介機能において非効率であることを自ら示し ている。
• 長期的な投資家と長期的な投資をつなぐものが、短期取引中 心の金融市場である。
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効果的な施策
3. 政府支出の増加。部分的に税で賄われたものでも経済を刺激する。
• 均衡予算乗数に関する原則:適切に設計された税と支出によって、乗数は
極めて高いものとなる。
• 国のバランスシートにおいては、負債のみではなく、資産・負債両面を見 ることが適切な会計フレームワーク。
• 教育、若者の健康への支出は投資であり、バランスシートの資産サイドを改善。
• インフラとテクノロジーへの投資も同様。
• 環境税や土地税は、持続可能な成長を実現する経済再構築に役立つ。
• 構造変革を推進し、平等性を高める政府支出も同様。
4. 平等性を高めるその他の施策は世界の総需要を増加させる。 • 経済ルールの大転換:市場で得る所得をもっと平等に。
• 所得移転と税制の改善。
• 賃金上昇と労働者保護を高める施策。
• いくつかの国では、組合や交渉を取り巻く法的枠組みを改善。
5. グローバルな基軸通貨制度を構築することで、需要を縮小させる外貨 準備の積み立ての必要性を減らすことができる。
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世界的な総需要の先に
• 特に世界的にサービス経済への移行が進む中、非貿易セ クターはますます重要に。
• 国内需要の低迷は供給を減らす。
• 国内需要は民間消費より大きい。
• 環境や人間、(知識ギャップを埋める)テクノロジー、イ ンフラ、住みよい街にするための投資も含まれる。
• これらの国内需要の大半は公的ファイナンスで調達され るべきもの。
• 健康や教育はその中でも重要なサービス部門。
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A. 緊縮財政をやめる
• 米国ですら、緩やかな形で緊縮になっている。
• 通常の景気拡大局面では200万人の公的セクターの雇用が生 まれるが、現在は逆に50万人減少している。
• 景気拡張的な財政緊縮や、債務が一定の閾値を超えると 経済成長が低下する、といった考えの正しさは否定され ている。
• もしそれらの考えが正しかったとしても、今のGDPと将 来のGDP、いずれも増加させるように税収と投資を歩調
を合わせて増加させていくということが均衡予算乗数の
教え。
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バランスの取れたアプローチが必要- 債務 対 税
• 債務や税収の水準、成長率の見通しにより、各国ごとに最適な 債務と税のバランスは異なる。
• 常にバランスシート視点を持つことが求められる。
• すべての国において、炭素税を含めた環境税(渋滞課金を含む 「課金」)の引き上げで、相当な歳入が得られ、経済のパ フォーマンスも改善するだろう。
• 金融取引税についても同様。
• ほとんどすべての国において、土地や(「弾力的に供給を増加 させることができない」)他の天然資源に対する税を引き上げ ることで、相当な歳入を増やし、成長率を上昇させるだろう (貯蓄の非生産的な用途への流入を減らすことができる)。
(次ページに続く)
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バランスの取れたアプローチが必要- 債務 対 税(続き)
• 法人税減税は投資拡大には寄与しない。なぜなら、大抵の投資 は借入が原資であり、支払利子は所得控除となるからだ(減税 はネットの資本コストを上昇させ、投資意欲を減退させる!)
• むしろ、国内での投資や雇用創出に積極的でない企業に対し て、法人税を引き上げる方が、投資拡大を促す。
• (炭素税・相続税など)いくつかの税金は、実際に現時点での 支出を促す効果がある。
• 均衡予算乗数は、増税と歩調を合わせた支出拡大が経済を刺激 することを示唆している。
適切に設計された税制は、格差・不安定・環境悪化といった主要 な問題に取り組む手段となる。
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緊縮策を超えて
予算ルール・フレームワークの再考
• 資本予算(Capital Budgeting)
• 資金調達コストが低く、投資リターンが高い時には、バラ
ンスシートの観点が特に重要である。
• 投資促進のための開発銀行(development banks)の活用
• 税と支出が適切に選択されれば、乗数の効果は極めて高い。
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B. 効果的に支出する:重要な長期の問題に 焦点を当てる-生産性の観点の欠落
テクノロジーやインフラに対する投資は、民間投資を補完する効
果を有するものであるが、最適な水準と比べると低く留まってい
る。
• 基礎研究に対する政府支援額(対GDP比)は、半世紀前より も低くなっている。
• 生産性向上につながる新たなイノベーションを推進するアイデ アの源が干上がっている。
必要なことは、インフラとテクノロジーへのより積極的な投資であ
る。
• インフラ・テクノロジーへの公共投資は民間投資と補完的であり、民間投 資を刺激する事につながる。
• 投資はインフラ銀行(infrastructure bank)からファイナンスすることがで きる。
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C. 効果的に支出する:重要な長期の問題に焦点を当てる- 構造変革(Structural Transformation)
• 世界的に、製造業の雇用が減少している。
• グローバリゼーションとともに、先進国では雇用に占める製造
業のシェアが低下していく。
• サービス産業にシフトする必要がある。
• いくつかの国では、サービス産業の生産性が向上している。
• そのような大規模な構造変革(structural transformation)が求
められているが、市場はそれ自体では必要とされている構造変
革を達成することが上手くできない。
• かつて行われた農業から製造業への移行がそれを証明している。
• サービス産業の中では、教育・健康に改善の余地がある。
• これらの部門では、政府が正当に重要な役割を担うものである。
• ただし、緊縮財政は、政府がその役割を果たすことを抑制してし まう。
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構造変革(Structural Transformation) に伴って発生する課題
• その新しい経済構造は、かつてほど資本集約的(capital-intensive)で はなくなるだろう。
• 従って、想定されるGDP成長率を達成するために必要となる投資は、より 小さなものだろう。
• 特に熟年労働者は、新しい経済構造に対して準備不足であろう。
• ベビーブーム世代の高齢化と合わせて、労働者のかなりの部分が高齢化し
ている。
• その世代の再活躍を促さないことによる社会的なコスト-つまり、その世 代の人的資本の陳腐化を単に受け入れること-は増大している。
• 今存在する取り決めが、高齢者と若者に関わる問題を生み出してい る。
• 国債を通じて手堅く運用している高齢者がわずかな所得しか得られないと いうことを、ゼロ金利の環境は意味する。
• 若者は家を買う余裕は無く、職を得るまで長期間待つ必要が多々あり、職 を得ても自らのスキル・才能を生かせず、そして多くの国では若者は多大 な債務を背負い込まされている。
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構造変革(Structural Transformation) 促進に向けた政策
• 農業から製造業への移行において、多くの国で政府が中 心的な役割を果たした。
• より積極的な労働市場政策を含め、政府は再び積極的な 役割を担うことが求められている。
• しかしながら、これらの政策は、再職業教育を受けた労 働者のための仕事が存在する場合に限って効果がある。
• 完全雇用を取り戻すための包括的なフレームワークが求め られる。
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D. 格差と戦う
• 単なる再分配の話ではない。
• 事前分配: 市場で得ることのできる所得のより公正な分 配を確実なものとするための経済ルールの大転換。
• 市場は真空の中に存在するものではない:市場の構築方法 により、市場の機能・効果・分配が決まる。
• 家賃の上昇は、所得に対する生産的な資本の比率が減少し ているにも関わらず、所得に対する富の比率が上昇してい るという異常さを物語っている。
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格差と戦う
• これらの理論は、労働生産性と実質賃金における著しい不均衡を 示している。
• この不均衡は、スキル偏重型の技術進歩や貯蓄率の差異といった標準 的な理論では説明できない。
• 格差縮小は、短期的にも、長期的にも、経済パフォーマンスを改 善する。
ジョセフ・E・スティグリッツ(桐谷知未訳)『スティグリッツ教授 のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』(徳間書店、2016 年)(原著:Stiglitz, J. E., N. Abernathy, A. Hersh, S. Holmberg, and M. Konczal (2015). Rewriting the Rules of the American Economy, New York: W.W. Norton, 2015.)を参照。
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III. 構造改革(Structural Reforms) 基本的な原則
• 適切な需要なしには、サプライサイドの改革は、失業を増 加させるだけで、経済成長には寄与しない。
• 低生産性部門からゼロ生産性、つまり、人々を失業に追いや るものである。
• 供給は、それ自体の需要を作り出さない。
• 実際に、サプライサイドの改革は需要を弱め、GDPを低下させ
得る。
• しかし、適切に設計された需要刺激策は、供給/生産性を増加 させ、現在および潜在的なGDP成長率を引き上げることができ る。
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機能するサプライサイドの施策
「需要」と一体となってこそ、機能することが多い。 • テクノロジーへの投資拡大
• 革新的経済(innovation economy)と学習社会(learning society)を作り出 す上で、とりわけ重要。
• 人間への投資の拡大-より健康でより生産性の高い労働力を創出する。 • 経済を再構築し、古い産業から新しい産業への移行に役立つ産業政策
• 市場だけでは、これらの変革は作り出せない。
• 競争政策-経済的な権力が合従することを防ぐ
• 独占は産出を阻害する。
• 金融市場改革
• 金融機関が他に害を及ぼすことを防ぐだけでは不十分。
• とりわけ中小企業のために期待される役割を果たし、金融を仲介し、民間 資金を提供するように金融機関に促すことが求められる。
• 債務よりも資本性の資金を促すことが求められる。
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機能するサプライサイドの施策
• 労働参加を促進する施策 • 有効な公共交通システム • 育児休暇、有給病気休暇 • 子育て支援
• 被差別層・社会の主流から取り残された層の包摂 • 女性
• 少数派・マイノリティー • 移民
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機能するサプライサイドの施策
• 効果的でない(または逆効果な)サプライサイドの施策が 多く存在する。
• 法人所得税率の引下げ。
• 例外として、投資をして雇用を創出させる企業には減税し、投資
や雇用創出に消極的な企業には増税する施策。 • 金融市場の規制緩和。
• 投資の減少、投機の拡大、市場の不安定化につながる。
• 貿易政策においてサプライサイドの効果は期待されてこなかっ
た。
• 効果は常に過大評価される。
• 米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される。
• TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、 米国議会で批准されないであろう
• 特に投資条項が好ましくない-新しい差別をもたらし、より強い成長や 環境保護等のための経済規制手段を制限する
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他の逆効果なサプライサイド施策
• 後ろ向きなサプライサイド改革も機能しない。
• 米国における住宅の過剰供給(ネバダ砂漠の空き家)の削減
は、米国経済の回復に寄与していない。
• 韓国の経済危機(1998年)における半導体チップの過剰生産 能力の破壊は、同国経済の回復を遅らせた。
• オプションを持つことの価値は無視される。
• 競争相手を減らすことを望む向きがよく持ち出す議論。
• 「国の代表的企業」(“national champions”) という言葉は、 実のところは寡占事業者を意味するもの。
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サプライサイド施策の失敗
• 1980年代初頭の米国(および他国)におけるサプライサ イド施策の失敗。
• 税収増加の約束は果たされなかった-実際には減収。
• 成長率を高める約束は果たされなかった-実際には低下。
• 貯蓄率低下。
• より最近の2000年代初頭における減税でも同じ結果がみられた。
• 労働参加率低下。
• サプライサイド施策の正当化よりも、サプライサイド施策 による格差への影響の懸念は最高潮に達している。
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IV. 金融セクターと金融混乱
• 金融の混乱は、金融市場の不透明感を反映。
• 金融の混乱は、金融市場の近視眼的な性質を反映-金融市場は常 にとても気まぐれ。
• 金融の混乱は、世界経済の先行きに関する深刻な不確実性を反映。
• 金融の混乱は、いくつかの国における金融政策調整の失敗に関連 しており、結果として為替レートの不確実性や不安定な資本フ ローの大きな動きが生じている。
• 資本市場、金融市場の自由化がこれらを促進。
• 金融の混乱の多くは、金融セクターにおける根本的な問題への取
組の失敗を反映したもの。
• このような金融の混乱が実体経済に波及する可能性が高いことが 問題である。
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金融セクターを改革する
• 金融セクターからの害を防ぎ、以下も阻止する。 • 過度なリスクテイク
• 市場操作、略奪的貸付など
• 市場における支配的地位の乱用
• 金融セクターが低い取引コストで社会的役割を担えるようにする。 • 中小企業金融や住宅金融の供給
• 年金口座の管理や決済システムの運用を低い取引コストで実施
今までのところ、両方のタスクに失敗。 より広くより深い改革と、与信を提供する公的手段の拡大が必要。
• 学資ローン
• 住宅ローンに関する公的オプション • 年金勘定に関する公的オプション
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V. 世界規模の改革
• 新しい世界基軸通貨制度の必要性
• 現在のシステムは過去の遺物。
• 経常黒字を追求するバイアスにつながっている。
• 準備通貨国の脆弱性。
• ケインズや最近の国連委員会が提唱しているように、世界 基軸通貨制度はより強固な世界の安定につながるもの。
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世界規模の改革
• 世界の不均衡を縮小させる世界的な協調が求められている。
• 中国の経常黒字は減少過程にある。
• しかし、ユーロ圏の経常黒字は増加している、 • ユーロ圏において大きな改革が必要となる。
• 世界的なマクロ経済(金融および財政)政策協調が求められてい る。
• 世界金融危機後に起きうることが期待された。
• しかし、未だに実現していない-むしろ、政策の不調和は拡大して
いる。
• 経常黒字を活用するより良い手段が求められている。
• 新しい開発銀行は正しい方向。
• ただし、ガバナンス改革と開発銀行間の資本再構成の必要性が存在。
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開発に向けて資金を提供する
開発に向けた資金の提供は、経常黒字の活用、世界需要の増加、開
発の促進というメリットを同時に実現するものであるが、3つの障
害がある。
• 債務の市場:債務再構成に関する国際的なフレームワークがない。
• 国連における重要な発議があり、大多数の国が支持。
• しかし、米国と幾つかのヨーロッパ諸国が「法の支配」(rule of law)に反対。
• 海外直接投資:投資協定が協定国の規制能力を損なう。
• 多国籍企業への課税:国際的な税体系が税収の拡大を困難にして
いる。
• 「底辺への競争」(Race to the bottom)
• G20におけるBEPS(税制浸食と利益移転)合意では、重要課題 への取組が不十分。
• 国際的な税体系のより抜本的な改革が求められる。
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気候変動へのアクション
• 気候変動への対策として行う投資は、世界経済にとって必要な刺 激策となるだろう。
• 環境と経済成長は補完的な関係にある。
• とりわけ経済成長を正確に捉えた場合に。
• 炭素に価格を設定することにより、投資が喚起される。
• 国連気候変動パリ会議は、この気運を醸成するという観点から重 要だった。経済界は、どのような形になるにせよ、やがては炭素 に価格が設定されることを理解したはずである。
• 鍵となる投資(インフラ、住宅、建築、発電所)は長期的な投資。
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VI. 世界的な意思決定プロセスの改革
• 世界的な経済統合は、世界的な政治統合よりも速く進んできた。
• 国を越えた波及効果がある場合にはいつも、外部性には集団的な対処 が求められる。
• しかし、世界的な対応を行うに当たっての優れた枠組みは現時点では 存在しない。
• 世界的な経済政策は、あまりに頻繁に権力や特定の利害に左右される。 • 世界規模の協力や調和が求められる分野に必ずしも焦点が当てられていない。
• 知的所有権ルールの過剰な調和。
• 国内で説明責任を十分に果たさないような特定の利害を反映したルールの調和は、
世界的に民主的なプロセスから生まれる調和とは異なるものである。
• 各国政府が民主的なやり方で必要な規制を実施しようとした際に、新たな貿易取 り決めがその能力を損なうことが特に懸念される。
• 焦点を当てられるべきは、下方への調和であり、最も恵まれない立場にある 者との共通の基盤への調和である。
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世界的な意思決定プロセスの改革
• どのように代表性を高めるか。
• 小国、貧困国の代表性は低い。
• 世界経済に占めるウェイトは小さいとしても、それらの国々は重 要な存在である。
• どのように正当性を増すか。
• 国連は、世界的な正当性を有する国際的な機関である。
• IMFもその権限内において、同様に、更に大きな正当性を有する。
• 「特定の会員」(”club”)が全員のための意思決定を行う危険。 • 他の組織の信頼性を損なう。
• 代替策: 世界経済調整委員会(Global Economic Coordinating Council)の創設
• 国連、IMFの下で運営
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世界的な意思決定を再考する
• 可変形状(Variable Geometry)
• 多くの問題で、全会一致に近づくことは困難であると認識するこ
と。
• 「有志連合」(“Coalition of willing”)-例えば、気候変動
• 国境を越えた課税により、他国の協力を促す。
• 新しい世界基軸通貨制度は、恐らく全ての国の合意を得ることは
難しい。
• この場合も有志連合が有効。-参加による利益が存在するため、 他の国もやがて参加する。
• 外部性が最も有効な場面を注意深く検討する。
• 共同でリスク分散を行う仕組みが存在しない限り、高水準の貯蓄
を行う国が生まれ、世界的な総需要を縮小させる。
• 資本集積に有利に働く世界的なルールは、格差を拡大させ、世界 的な総需要の拡大には逆効果。
• 世界的な不安定性は格差を生み出し、高水準の貯蓄につながるも の。そして、それらは、世界的な総需要の欠乏の要因となる。
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VII. 遠近法で今の世界を見る
• 30年ほど前、多くの先進国では、税率の引き下げや規制緩和といっ
た実験を始めた。
• 変化する経済環境に対応し、経済の枠組みを調整する必要があった。
• しかし、誤った調整がなされてきた。
• 結果として、経済成長は鈍化し、格差が拡大。
• 今となって漸く、それらの結果が全て目に見えるものとなったが、 過去からずっと進行してきた結果なのである。
• 現在の方向性が維持されると、状況は更に悪化するだろう。
• 未だ語られていない政治的な帰結もある。そのうちの幾つかは分かり始め
ている。
• これらの実験は、大きな失敗であったと今や言うことができる。大 きな失敗であったと言うべきである。
• 新たな方向性が求められる。
• 現在の取り決めの微調整では上手くいかないだろう。
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この失敗した実験の断片
• 金融政策への新たなアプローチ
• 経済成長、雇用、経済安定化といったバランスのある視点
よりも、インフレの安定化に焦点。 • 財政政策への新たなアプローチ
• 欧州では、財政赤字に対して厳重な制約。 • 民営化の新たな流れ
• 社会保障分野にまで民営化の流れが及ぶ国も存在。 これらの政策は、期待するほどの成果を上げていない。
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世界の制度設計に関する実験も 失敗している
• 40年前から、資本移動の自由化が試みられてきた。
• それにより、経済が安定化した時代が訪れると期待されて
いた。
• 政府よりも市場メカニズムの方が効果的とされていた。
• こうした実験の結果、逆に、世界的な不安定化の時代に 突入した。
• 特に、短期的な資本移動に関連して不安定性が発生。
• 現在では、IMFでさえ資本移動の制限(資本勘定の管 理)が必要と主張。
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この道しかない
• 政府と市場のバランスを取り戻す。
• 政府・民間とは異なる「第三のセクター」(“third sector”)や、新た
な制度枠組みの重要性を認識する。
• 緊縮財政をやめる。
• 世界的な基本的ニーズ、世界的な公共財、世界的な外部性に対して、 世界的に対処する。
• 気候変動を超えて、世界的な科学基盤を含めるべきである。
• 底辺への競争を行うのではなく、世界的に生産性向上に務めるべきである。
• 世界中・全ての人間の生活水準を引き上げる施策に全てを捧げる。
• 進歩に関する指標の世界的な再評価を行う。
• 評価基準が行動にも影響する。
• 「経済パフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会」(※)におけ
るメインメッセージ。
• その検討はOECDにおいて継続されている。
(※)スティグリッツ教授が中心となって、フランスのサルコジ大統領の イニシアティブの下で、社会の幸福度を測定しようとした取組。
47


世界経済:この道を進もう
• 「新たな凡庸」(The New Mediocre)、 「大低迷」(the Great Malaise)、「長期停滞」(Secular Stagnation)は避けられないも のではない。
• これらは、政策の失敗による帰結。
• 統合が進展する中、前進するための最善の方法は、バランスを取
り戻し、総需要を増加させるために国際的な協調を行うことだ。
• 例えば、世界公共財の供給-研究、地球温暖化対策-に向けた国 際協調。
• この国際協調はとりわけ困難である。
• G7において、日本がリーダーシップを発揮することが、前に進む
ための一歩となるだろう。
• しかし、そういった国際協力が不十分な状況下にあってさえ、需 要の強化や生産性の向上のために各国が単独で行うことのできる ことは多く存在する。
• それは、大きな好影響を他の国に対しても与えるのだ。
48」

スティグリッツ教授の提言

2016-03-24 18:17:32 | 国際
 先の国際金融経済分析会合におけるスティグリッツ教授の報告は、ただ消費税に否定的な部分のみが取り上げられ報道されていたが、その内容はより広範な世界経済全体の分析に基づいており、アベノミクスそのものにも批判的である。

 次を参照していただきたい。政府のHPに乗せられた教授提出のパワポ資料の翻訳である。

 ⇒ https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusaikinyu/dai1/siryou2.pdf

 ちなみに先進国経済の問題点の指摘は以下の通り。

「大低迷(Great malaise)は、驚くほどに進展を 見せない、より深刻な問題を覆い隠している
• 気候変動
• 格差、多数の貧困層
• 富の不平等、健康の不平等(医療を民間の提供に依存する国においては)、 裁判へのアクセスの不平等、と多岐に渡る。
• 先進国では中間層が縮小。途上国においても中間層が縮小。
• これらの問題は、社会の主流から取り残された層や(しばしば)若年層では
特に深刻。
• 持続的成長を実現するためには、徹底的な「構造変革」(structural
• 市場経済に根付く問題が、生産性の停滞をもたらしている。
• 民間部門・公的部門の両部門における短期的志向。
• 基礎研究への投資の不足。そして、多くの国ではインフラへの投資の不足。
• 過度の金融化。過度の金融化は以下の過程の一部でもあり、原因の一部でも ある。
• 富と資本の間のギャップの広がり。
• 多くの国で産出に対する富の割合が高まる一方、産出に対する資本の比率が低下。
• 教育システムの適合の失敗。」

 また実施すべき政策の一部としてサプライサイドについて以下のように述べている。80-90年代のサプライサイド計画は失敗だとしている。

「機能するサプライサイドの施策
「需要」と一体となってこそ、機能することが多い。 • テクノロジーへの投資拡大
• 革新的経済(innovation economy)と学習社会(learning society)を作り出 す上で、とりわけ重要。
• 人間への投資の拡大-より健康でより生産性の高い労働力を創出する。 • 経済を再構築し、古い産業から新しい産業への移行に役立つ産業政策
• 市場だけでは、これらの変革は作り出せない。
• 競争政策-経済的な権力が合従することを防ぐ
• 独占は産出を阻害する。
• 金融市場改革
• 金融機関が他に害を及ぼすことを防ぐだけでは不十分。
• とりわけ中小企業のために期待される役割を果たし、金融を仲介し、民間 資金を提供するように金融機関に促すことが求められる。
• 債務よりも資本性の資金を促すことが求められる。

機能するサプライサイドの施策
• 労働参加を促進する施策 • 有効な公共交通システム • 育児休暇、有給病気休暇 • 子育て支援
• 被差別層・社会の主流から取り残された層の包摂 • 女性
• 少数派・マイノリティー • 移民


機能するサプライサイドの施策
• 効果的でない(または逆効果な)サプライサイドの施策が 多く存在する。
• 法人所得税率の引下げ。
• 例外として、投資をして雇用を創出させる企業には減税し、投資
や雇用創出に消極的な企業には増税する施策。 • 金融市場の規制緩和。
• 投資の減少、投機の拡大、市場の不安定化につながる。
• 貿易政策においてサプライサイドの効果は期待されてこなかっ
た。
• 効果は常に過大評価される。
• 米国にとってTPPの効果はほぼゼロと推計される。
• TPPは悪い貿易協定であるというコンセンサスが広がりつつあり、 米国議会で批准されないであろう
• 特に投資条項が好ましくない-新しい差別をもたらし、より強い成長や 環境保護等のための経済規制手段を制限する


他の逆効果なサプライサイド施策
• 後ろ向きなサプライサイド改革も機能しない。
• 米国における住宅の過剰供給(ネバダ砂漠の空き家)の削減
は、米国経済の回復に寄与していない。
• 韓国の経済危機(1998年)における半導体チップの過剰生産 能力の破壊は、同国経済の回復を遅らせた。
• オプションを持つことの価値は無視される。
• 競争相手を減らすことを望む向きがよく持ち出す議論。
• 「国の代表的企業」(“national champions”) という言葉は、 実のところは寡占事業者を意味するもの。


サプライサイド施策の失敗
• 1980年代初頭の米国(および他国)におけるサプライサ イド施策の失敗。
• 税収増加の約束は果たされなかった-実際には減収。
• 成長率を高める約束は果たされなかった-実際には低下。
• 貯蓄率低下。
• より最近の2000年代初頭における減税でも同じ結果がみられた。
• 労働参加率低下。
• サプライサイド施策の正当化よりも、サプライサイド施策 による格差への影響の懸念は最高潮に達している。」

日本學者:中共與日軍共謀對抗國軍/BBCより

2016-03-24 17:22:24 | アジア
「今年抗日戰爭結束七十週年之際,中台雙方圍繞國共兩黨當時誰才真正抗日發生爭論。

雖然在中國9月3日「紀念抗戰勝利七十週年」大閱兵時,日本各大傳媒均指出,在抗戰勝利時,中華人民共和國還沒誕生,當時中國的中央政府是國民黨領導的中華民國政府,抗戰的主流不是中共,但日媒也沒有提出證據來說明共軍在抗戰中的表現。

今年11月,日本筑波大學名譽教授遠藤譽撰寫的《毛澤東 與日軍共謀的男人》一書在日本出版。作者遠藤根據她收集的中國、台灣、日本三方面資料,來論證中國國民黨軍隊抗日時,前中共領導人毛澤東率領的中共與日本駐上海的特務機關-岩井公館合作打擊國民黨的史實。

遠藤的這本書在出版後立即引起不少日本國民的關注,一個月內印了5次。
日本《每日新聞》、《富士晚報》等媒體也就此書發表了書評,富士電視台、朝日電視台等更邀請遠藤介紹其這本歷史書。
遠藤譽的書《毛澤東 與日軍共謀的男人》正以一個月印5次的速度在日本暢銷。

遠藤對BBC中文網記者說,她是讀了《潘漢年傳》等中國書籍後,開始懷疑中共的解釋,然後著手凖備寫書的。她希望通過日本方面的資料來解開有關疑問,而結果則令她自己也震驚了。

中共特務與日本特務
《毛澤東 與日軍共謀的男人》敘述說,「1937年日中全面戰爭開始後不久,毛澤東就向上海和香港派遣中共特務,與日本外務省旗下的特務機構『岩井公館』的岩井英一、設置日本陸軍參謀部特務機構『梅機關』的影佐禎昭等接觸」。

遠藤收集的中方資料對此解釋說,這一切的目的都是為了取得抗戰勝利,收集日本秘密情報,為八路軍和新四軍勇敢地與日軍作戰發揮了作用。
但遠藤收集的岩井回憶錄《回想的上海》中則明確說,「事實完全相反,是中共特務把通過國共合作得到的蔣介石為首的國民黨軍隊的情報提供給日方,目的存在弱化國民黨的意圖」。

遠藤的書詳細記述了1932年作為日本駐上海領事館情報部副領事的岩井赴任後,因漢語流暢,負責接待記者中日雙方20多名記者,包括後來被稱作「五重間諜」的新聲通訊社中國記者袁殊(袁學易)。當時中共報章上不時有岩井和影佐的名字,在延安的毛澤東也獲悉。岩井還建議在上海加強收集情報工作、並獲准設置了「公使館情報部」。

1935年6月岩井解救了被國民黨逮捕的袁殊,更添了兩人交情。岩井雖知袁殊多重間諜身份,但不介意並援助袁殊再次留學日本,直至西安事變後才回到中國。岩井本人也在1937年回國,1938年2月重返上海,目的是「早期結束軍方挑起的戰爭」。

共產黨人與岩井公館
2002年旅美中國學者謝幼田的《中共壯大之謎》也根據中文資料敘述中共向岩井出賣國民黨情報得以壯大的史實。

岩井在上海領事館設置了特別調查班,搜集蔣介石政府內部情報,尋求「講和」的機會。岩井全權委托袁殊組織新黨,並說:「為了達成全面和平的共存共榮日中新關係理念,不光是黨名,還要以真正理解這一理念的民眾、知識分子為對象,前身是藍衣社、中統團、以及其它黨派相關者,共產黨員都不要緊」。

結果袁殊招募了大批中共地下黨員,而所有經費由岩井取得公使館情報部長河相達夫同意,由日方支付。不過最終新黨運動演變成「興亞建國運動」,並在袁殊建議下,興亞建國運動總部起名「岩井公館」。

這個時期,袁殊還把匿名為胡越明,直接在毛澤東指揮下從事特務活動的前中共特工頭子潘漢年介紹給岩井,袁殊形容潘漢年地位相當於周恩來(中國前總理)。

岩井在《回想的上海》中描寫首次見潘漢年的印象是「非常穩重的知識人,卻又是瀟灑的都市人而令人好感」。並回憶說,此後每次都是潘漢年求見、提供國民黨政府和國軍情報,且以岩井公館作據點,擴大中共在香港的間諜活動。

日本情報費資助中共
岩井委托日本駐香港領事館的小泉清一每月向潘漢年支付2000港元作為收購情報費,加上由潘漢年籌辦多種定期出版的刊物費等,每次另支付潘漢年1萬港元。

當時,2000港元相當於一名香港華人警員5年的薪水,而日本每年向潘漢年支付的費用相當於一名香港華人警員60年薪水,而且尚不包括刊物費,最終這筆可觀的收入落入中共手中。

遠藤在書中指出「這就是謝幼田(美國斯坦福大學胡佛研究中心前客座研究員)著書《中共壯大之謎》的中共壯大理由」,而日本支付的費用大部分源自外務省機密費,岩井回憶說,支付的總額達30多億日元(超過2500萬美元)。

1937年,面對入侵的日軍,中共八路軍和新四軍希望抗戰,但毛澤東則堅持只拿出10%兵力用於抗戰。岩井《回想的上海》還披露,潘漢年通過袁殊向岩井提議,商談共軍與日軍在華北戰場上「停戰」的事宜,岩井因不懂軍事,把該建議轉手影佐,潘漢年從此開始直接與日軍接觸。
曾著書談在華經歷

遠藤1941年出生在中國長春,父親在長春經營自己研製的戒毒藥品「吉福祿」的製藥廠,父母都是日本人,本來還有哥哥和弟弟。但在1948年八路軍圍困長春之戰中,遠藤的哥哥和弟弟都餓死,而她也幾近餓死並遭遇流彈受傷,導致兩臂殘疾。
1953年,12歲的遠藤回到日本,又受到日本本地人的欺凌。她取得物理學博士以後,從1983年起從事指導中國留學生的工作至今,並從那時起還兼任中國社科院社會研究所客座研究員、教授,上海交大客座教授。
1983年遠藤在日本出版《不合理的彼方》,自述其當年在長春的生活經歷,獲得《讀賣新聞》女性人類記錄優秀獎。
後來,遠藤應《讀賣新聞》邀請,在1984年再著書《卡子-沒有出口的大地》,描述她在中國12年的苦難經歷。90年代,她希望此書譯成中文版,可是中國出版社一直以「過於敏感」的理由拒絕和拖延此事,去年她覺得年事已高,不能再等下去,於是選擇在台灣出版中譯本。
「只想追求歷史真相」
遠藤對BBC中文網記者說,「我對中國愛恨交集,但到了這個年齡,我只想追求歷史真相」。
遠藤說,《毛澤東 與日軍共謀的男人》「最大的難題是找日本有關岩井的記載,我去了外務省和防衛省研究所都找不到,後來在網絡上偶然看到岩井出版過回憶錄《回想的上海》,於是開始找,並終於在網絡上買到,我如獲至寶!現在覺得我小時候沒餓死、活到現在,就是為了找到這本書」。
當記者問到,日本是否也刻意抹去當年岩井與中共合作的記錄,遠藤則說「不是,岩井對中國來說重要,但日本當時對他重視不夠」。
對於台海兩岸官方有關誰是真正抗日力量的爭論,遠藤表示「日本不知道也不關心,我在防衛研究所裏看戰史資料,厚厚的一本防衛研究所編寫的戰史資料,居然是引用中共黨史來編寫,簡直令人大失所望,所以我才要挖掘真相,來填補真實的歷史空白」。
(責編:李文)」

http://www.bbc.com/zhongwen/trad/world/2015/12/151225_japan_professor_book

公開状「習近平は下野せよ」嫌疑で拘束か?/遠藤誉

2016-03-24 17:19:54 | アジア
「3月4日に党系列メディアに公開状「習近平は辞職せよ」が現れハッカーの仕業とされたが、内部に犯人がいることが判明。コラムニストの賈葭(かか)氏が拘束された。筆者は彼が元いたメディアから取材を受けたばかりだ。

◆なぜ賈葭氏は拘束されたのか?
3月15日付の本コラムで筆者は<新華社が「中国最後の指導者習近平」と報道――ハッカーにやられたか?>を書いた。その中で新疆ウィグル自治区の党委員会が創設者の一つになっている「無界新聞」に、3月4日、「習近平は辞職せよ」という趣旨の公開状が現れたことをご紹介した。それはハッカーによるものとされていたが、その後、ハッカーの仕業ではなく、内部に犯人がいて操作したという痕跡が見つかったという。

それも海外を含めた外部と内部とのタイアップによることが分かり、無界新聞関係者がつぎつぎに調査を受ける羽目になっていた。
コラムニストでジャーナリストでもある賈葭(かか)氏(35歳)は、3月4日に無界新聞に公開状がアップされる前、実はアメリカにいた。帰国後、微信(ウェイシン)を通してネットにアクセスしたときに「習近平は辞職せよ」という公開状が無界新聞のニュースサイトにアップされているのを発見。急いで、無界新聞のCEOである欧陽洪亮氏に連絡した。欧陽洪亮氏は、賈葭氏の昔の同僚だ。

当局の調べに対して欧陽洪亮氏は「このようなおぞましい公開状は、賈葭氏からの連絡で初めて知った。彼はしばらくアメリカにいた」と述べている。まるで責任転嫁だ。そこで賈葭氏は「もしかしたら、自分に嫌疑がかかってくるのではないか」とそれとなく予感していたという。
3月15日、賈葭氏は香港に行くために北京空港にいた。

「今から香港行きの飛行機に搭乗する」という知らせを妻が受けたあと、連絡はすべて途絶えた。
搭乗寸前に、北京の飛行場で公安に拘束されたのである。

◆賈葭氏は、かつて、「新華社」傘下の報道機関にいた
実は賈葭氏はかつて、中国政府の通信社である「新華社」傘下にある週刊誌『大家』のコラムで主編(編集長)をしていた。中国語で「大家」というのは「民衆」とか「皆さん」といった意味である。肝心なのは、彼は新華社系列で仕事をしていた経験があるということだ。
3月15日付のコラム<新華社が「中国最後の指導者習近平」と報道――ハッカーにやられたか?>では、新華社のウェブサイトに載った「中国最後の指導者・習近平」は「中国最高の指導者・習近平」の誤記であったと新華社が言っているということを、「追記」で書いた。最初はハッカーとされたが、新華社の場合は「誤記」だったことにして、全人代を乗り切った形だ。

しかし、たとえば北京の有線テレビとかホテルのテレビなどで、日本のテレビの「中国政府に不利な有害情報」が出た瞬間に、テレビの画面がブラック・アウトするくらいのハイレベルの技術を中宣部は持っている。その時間は1秒よりも短い。テレビもネットも、すべて中宣部の管轄下にある。ましてや中国政府の通信社「新華社」のウェブサイトに、このような誤字が出てくることは、非常に考えにくい。
賈葭氏が今般の公開状に関わっていたのか否かは別として、第二、第三の賈葭氏に相当したような人物が、新華社内部にもいたという可能性は否定できない。

◆賈葭氏は、かつて、香港の報道機関にもいた
賈葭氏は実は、香港の『陽光時務週刊』の副編集長をしていた時期があり、また香港のリベラルなメディアである『端傳媒』(傳媒はメディアの意味)の評論部門の編集長をしていた時期もある。

筆者は1月末、まさにこの『端傳媒』の総編集長である張潔平氏から取材を受けたばかりだ。
彼女はイギリスのBBC中文網が筆者の書いた『毛沢東 日本軍と共謀した男』に関して報道している( http://www.bbc.com/zhongwen/trad/world/2015/12/151225_japan_professor_book )のを見て、どうしても筆者を取材したいと言ってきた。

「香港は一国二制度とはいっても、中国の管轄下にあるから、こんなものを載せても大丈夫なの?」と筆者が聞くと、「大丈夫よ。私たちはいつでもリベラルな報道をしているわ。多少は大陸の当局から睨まれてはいるけど、でも平気!」と張潔平氏はそのとき笑っていたのだが、なぜか、連絡が途絶えた。
やはり、まずいのだろうなぁと思っていたところ、賈葭氏の拘束を知ったのである。
香港メディアによると、張潔平氏はつい最近、香港の大学で講演し、「最近は大陸の当局の監視が非常に厳しくなっている」と述べたとのことだ。
賈葭氏も実は3月17日に香港で「香港は誰のものか?」というスピーチをすることになっていたという。
◆共通しているのは、国と党を思う「真の愛」と「良心」
2月29日付けのコラム「中国著名企業家アカウント強制閉鎖――彼は中国共産党員!」で、中国共産党員の任志強氏が「自分こそは忠誠なる共産党員だ」として習近平政権あるいは現在の共産党政権を批判する発信を盛んにしていたことを書いた。彼のアカウントは強制的に閉鎖されてしまったのだが、「習近平よ、辞職せよ」という趣旨の公開状にも、冒頭に「私たちは忠誠なる共産党員として習近平に忠告する」という旨のことが書いてある。
つまり、中国共産党員自身が、「中国共産党政権というのは、これでいいのか?」という疑問を、命をかけて発信しているのである。このシグナルをつぎつぎに強権的に摘み取っていく現実こそが、「中国共産党政権というのは、これでいいのか?」と疑問を発したくなる原因を作っているのではないのだろうか?
アカウントを閉鎖された中国の著名な企業である任志強氏のコメントも、公開状に書かれている文言も、いずれも説得力のあるものだ。
そこには国を思う「真の愛」があり、中国共産党員としての「良心」があるように筆者には映る。
中国共産党が、もともとは日本軍と共謀しながら発展してきたものであったとはいえ、毛沢東は少なくとも中国という国を建国した。そして中国人民はみな、(それが虚偽のスローガンであったとしても)かつては中国共産党を信じて生きてきた。その心が限界に来たとき、人民は爆発する。そして中国共産党による一党支配政権は崩れていくのだ。
「愛」は何よりも強いものである。「愛」以上に強い「怒り」はない。


遠藤誉
東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦(国共内戦)を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『毛沢東 日本軍と共謀した男』『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。」

http://bylines.news.yahoo.co.jp/endohomare/20160322-00055689/

内田樹氏の論考に寄せて

2016-03-24 16:47:53 | 文化
内田樹氏の論考を勝手にこのブログに転載した。昨日の次の記事である。→ 「日本はこれからどこへ行くのか」( http://blog.goo.ne.jp/baileng/e/3ee4ac9c21fdd9774c830d532960373a )

 この中で内田氏は現在では金はこんピユーターが1/1000分の一秒単位で稼いでいる。そしてとてつもなく金を稼ぐそのスピードと蓄積は、人間の肉体的限界を超えていると指摘している。それはアメリカの証券市場などを考えれば明らかだ。半分以上、おそらく七割程度がコンピュータによるプログラム売買によって処理されるそれは、光ファイバーで情報がやり取りされるその距離さえも問題にするほど高速化しているのであり、さらにその処理に当たるプログラム自身が自己成長することが認められている可能性が高く-AI化しているということ-その実態は私たちにはほとんどみえなくなっている。

 このように金の稼ぎ方も人間には追いつけなくなっているが、その結果を享受し様にも、そちらもほとんど無意味になっている。食事にせよ、服にせよ、何百億あるいはそれ以上の富があって、すきなだけすきなものを手に入れられるからと言って、それはもう喜びにはならない。かつてヨーロッパの貴族は1日に何回も服を変えたりしていたが、現代人には苦痛だろう。

 現代の経済は金融に支配されている。メディアは経済情報の伝達と市場経済擁護の宣伝機関だ。そして金融がAI化しているとすれば、人間はAIに既に支配され、彼らが要求する経済的成果を上げるために働いていることになりはしないだろうか。かつてSFではそのような設定がたくさんあったが、私たちが築かないうちに、もう事態はそのようになっているのかもしれない。

 30年前と比較しても労働生産性は格段に上がったはずだ。あらゆるものの製造コストもさがったはずだ。なのに貧困がなくならず、先進国ではむしろ新たな貧困の広がりが見られるのか。あらゆる生産性の伸びは金銭に換算されて金融分野に吸い上げられ、私たちのもとには還元されない。

 AIに酷使され、その中で破綻する人間たち。私たちはAIとともにある金融権力の奴隷になっているのではないだろうか。