春、きらめく木漏れ陽の中で
きみのくちびるに小さな笑みが咲いたとき
何かが変わりはじめたのです
ぼくの中で
夏、草原をわたる風に野花が香り
うっとりと目蓋をとじたきみを見たとき
ぼくは秘かに感じたのです
世界がほのかに彩づきはじめたことを
あの頃のきみは
ぼくが瞬きしている束の間に
つばさを広げようとしていたのですね
朝陽の中で羽化する蝶のように
それでもきみの中には
少女の面影が消えずに残っていたっけ
秋、波にあらわれた貝殻を耳にあて
もの思いに沈むきみの横顔を目にして
戸惑いをおぼえたこともありました
そのあまりのあどけなさに
冬、一日のおわりに小さく手をふって
さようなら
と 小頸をかしげる愛らしい仕草に
いつもなんだかいたたまれない心持がしたものです
そしてあの日
ラヂオから流れくる古びた曲に
きみが思わず涙したとき
ぼくはようやく気づいたのです
ぼくは そう
たしかにきみに・・・・・
きみへの想いはそんなふうに
ぼくの心の片隅に
ある日とつぜん小さく芽ばえ
みるみる胸を満たしていったのです
ふと気がつけばきみのことばかり
いまにも溢れてしまいそうなんだ
★絵:ホセ・ローヨ★ ↓ポチッっとね