べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

なにをいまさらなんだけど

2007年09月07日 21時37分37秒 | 掌のものがたり

とても愛しているけれど 一緒には暮らせないよ
と、あの人は言った
あの人に妻子のあることは百も承知の上だったので
いまさらそんなこと
あらたまって言われてもねぇ・・・って感じで
そのときはとくべつ驚きはしなかったけれど
また別の日 なにかの折に
きみも年頃なんだから
いい人ができたらぼくのことなど気にしなくていいよ
と、言われたときはさすが
わたしはわたしなりに少なからず傷ついた

あの人はわたしのことを
心底愛してくれている(と、思いたい)けど
常にどこか冷静で
感情のおもむくままに流される
と、いうことのない人だから
そこがわたしにはもの足りなかったり
また、たのもしく思えるところであったりもする

けれども たとえばもしあの人が
一緒に死んでくれないか
なんて、やさしい言葉を
かけてくれるようなことがあったりしたら
わたしはよろこんで
その望みをかなえてあげたいと思う

とかなんとか言いながら
わたしだって心のどこかに
いたって冷静な部分を隠し持っているわけで
実際のところどうなるかは
そのときになってみないとわからない
・・・・・・・
ような気がする

けれど でも 
できることならやっぱりわたしは
あの人の胸に秘められた蔭の部分に
どこまでもそっと付き添ってあげたいと思う
あの人の背負っている寂しさや哀しみと
わたしの抱えているそれらとは
おそらく異質のものなんだろうけど
それでも
わたしはわたしなりにあの人のことを
心の底から愛しているのだから

なにをいまさらなんだけど
とにかくそういうことなんです







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