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べそかきアルルカンの詩的日常“手のひらの物語”

過ぎゆく日々の中で、ふと心に浮かんだよしなしごとを、
詩や小さな物語にかえて残したいと思います。

空は下界の出来事など気にかけちゃいない

2014年04月05日 20時19分21秒 | 慰め種
まゆちゃんは
朝から熱があるといって辛そうだった

あゆみちゃんは
可愛がっていた猫が家出してしまったといって
とても悲しそうにしていた

ともやくんは
何もかもうまくいかないといって
意気消沈していた
何もかもって
どんなことがどのくらいあるのか
そこのところはあやふやでよくわからないけれど
ともかく
やることなすことすべて
裏目裏目に出てしまうらしい

ツタ子さんは
長年連れ添ったお爺さんに先立たれ
自分はあと何回
ユキヤナギの花を見ることができるだろうかなどと
寂しいことをつぶやいてはしょんぼりしていたし
みちおくんは
何か取り返しのつかない
たいへんなことをやらかしてしまったらしく
悔やんでも悔やみきれないと
これでもかってくらい絶望的に落ち込んでいた

みえちゃんは
最初で最後かもしれない
たいせつなロマンスを失くしてしまったと
泣きべそをかいていたし
ますみくんは
あまりの運のなさをすこぶる憂えていた

そして わたしはというと・・・

わたしにだってわたしなりに
いろいろと思い悩むことはたくさんある
しかも かなり深刻に

なのに
いったいどうしたことでしょう
この空の青さといったらまったく
ただただ
青過ぎるくらいに青いばかりなんだから


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翼は歌を運ぶためにあるということを

2013年02月02日 12時03分27秒 | 慰め種

小鳥たちは歌います
羽ばたくことの喜びについて

小鳥たちは歌います
高く舞いあがることのときめきについて

小鳥たちは歌います
空の果てしなさについて

小鳥たちは歌います
地平線と水平線は
どちらも緩やかに丸みをおびている
ということについて

小鳥たちは歌います
遠く旅立つことへの憧れについて

小鳥たちは歌います
朝焼けと夕焼けの違いについて
あるいはまた共通点について

小鳥たちは歌います
季節の移ろいゆくさまについて

小鳥たちは歌います
朝露のきらめきについて

小鳥たちは歌います
木洩れ日の描きだす模様の
揺らめきとやさしさについて

小鳥たちは歌います
陽だまりのやわらかさについて

小鳥たちは歌います
雨の雫の冷たさについて

小鳥たちは歌います
雨あがりの清々しさについて

小鳥たちは歌います
虹の儚さについて

小鳥たちは歌います
せせらぎの心地好い音色について

小鳥たちは歌います
水面(みなも)のきらめきの透明感について

小鳥たちは歌います
降り積む雪の静けさについて

小鳥たちは歌います
草木の芽吹くたまらなさについて

小鳥たちは歌います
花の香りの魅惑について

小鳥たちは歌います
果実の瑞々しさについて

小鳥たちは歌います
おしみない大地の御恵(みめぐみ)について

小鳥たちは歌います
巣作りの楽しさについて

小鳥たちは歌います
産み落とされた卵の
色つやと愛おしさについて

小鳥たちは歌います
簡素でつつましい寝床について

小鳥たちは歌います
夜のしなやかさについて

小鳥たちは歌います
こらえきれない睡魔について

小鳥たちは歌います
闇のしじまの深さについて

小鳥たちは歌います
夢のとりとめなさと曖昧さについて

小鳥たちは歌います
時の流れのやすらかさと残酷さについて

小鳥たちは歌います
鳥かごの存在の哀しさと愚かさについて

小鳥たちは歌います
運命をうけいれることの寂しさについて

小鳥たちは歌います
いまこうして在ることの不確かさについて

小鳥たちは歌います
風の生まれて消え去るそのさまについて

小鳥たちは歌います
意味ありげなことの無意味さについて

小鳥たちは歌います
無意味に思えることのその意味について

小鳥たちは歌います
なにはともあれ それでもなお
この世界は美しいということについて

小鳥たちは歌います
生かされて在ることの不可思議について

小鳥たちは歌います
慈しみ深い御業(みわざ)について

小鳥たちは歌います
いつも許されているということを

小鳥たちは歌います
いつも愛されているということを

小鳥たちは歌います
翼は歌を運ぶためにあるということを

小鳥たちは歌います
悲しみに満ちたこの空の下で



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羊飼いの少女

2011年07月03日 14時32分00秒 | 慰め種

東の空が薄ぼんやりと青みをますころ
少女は羊たちをつれて荒れ野へむかいます
荒れ野では日なが一日
草を食む羊の群れを眺めて過ごすのです

草原を吹きわたる風に髪を遊ばせながら
ときおり羊の数をかぞえては
穏やかに流れ去る綿雲のゆくえを目で追ってみたり
小川のせせらぎに素足をひたしてみたり
ときには
シロツメクサで子羊の首飾りを編んでみたり
幼いころ聴きおぼえた
古くから伝わる歌を口ずさんでみたりするのです

やがて西の空がやわらかな茜色に染まるころ
少女は羊たちをあつめて家路につきます
遠く鳴り響く晩鐘に
きょう一日の無事を感謝しながら

羊たちを寝かしつけ
ロウソクの小さな灯のもとで
つつましい食事を終えると
あとは粗末な寝床で
静かにそっとまぶたを閉じるだけ

昨日と変らぬきょうが終わり
明日もまた
きょうと変らぬ一日が訪れるでしょう
つぎの日も
そしてそのまたつぎの日も
なにか新しい出来事が待っているわけではありません
けれど少女の寝顔はおだやかです

たいせつなことはみんな
神さまが行なってくださるのですから



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愛から遠くはなれて眺めてみると

2010年03月28日 16時57分58秒 | 慰め種

空の青さは無口です
そこに愛はありません
どこまでも深い空の静けさが
そこに在るだけ

野に咲く花は優しげです
けれどそこに愛はありません
寄る辺ない花の命の儚さが
ただそこに在るだけ

捨てられた仔犬は健気です
けれどそこに愛はありません
千切れんばかりに尾をふる仔犬の哀れさが
ただそこに在るだけ

なのに小鳥たちは飽きもせず
きょうも歓びの歌を鳴きかわします
満ちたりた惑いのなさで
まるでただそこに在ることが
愛そのものであるかのように



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SCARECROW

2009年04月25日 12時25分19秒 | 慰め種

朽ちたボロを身にまとい
雨が降ればずぶ濡れて
日照りが続けば干からびて
それでもなお
傾ぎながらも立っている
おまえは並はずれた忍耐の持ち主か
それとも愚かなだけなのか
カラスに馬鹿にされようが
大いなる呆け者は
黙して風に吹かれてる




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チムチムチルルと小鳥は歌う

2009年04月05日 13時11分34秒 | 慰め種

チムチムチルル・・・
ぼくらは
蒔くことも刈ることもしないのに
大地は命の糧を恵んでくれる

チムチムチムリ・・・
わたしたちは
縫うことも紡ぐことも知らぬのに
色とりどりの綺麗な羽が
か細いこの身を包んでくれる

チムチムチュリル・・・
ぼくらは無一物であるにもかかわらず
森は穏やかな暮らしをあたえてくれる
樹々の小枝でからだを休め
葉っぱの蔭で風雨をしのぎ
木漏れ陽の中でくつろいで
夜には静かな安らぎの場となる

チムチムチュチュリ・・・
わたしたちは
自らなにも望まないのに
野は折々に花を咲かせ
甘い蜜の香りに満たされる
お陽さまの光は温もりを
川や泉は清らな潤いをもたらしてくれる

チムチムチチュル・・・
ぼくらは
とるにたりないことを悩むより
歓びを歌にする心をさずかった

チムチムチュリリ・・・
世界はこんな小さなわたしたちをも
わけへだてなく慈しんでくれる

チムチムチュチル・・・
ぼくらがどこへも自由に飛んでいけるのは
背中に翼をくだされたから
空がどこまでも広く
そこにあるから






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Bon Voyage

2009年03月02日 21時58分04秒 | 慰め種

小鳥を閉じこめてはなりません
それは空高く舞うことで
なにかを語り掛けているのですから

花を摘みとってはなりません
それは密やかに散りゆくことで
なにかを語り掛けているのですから

雲のゆくえを按じてはなりません
それは漂い流されることで
なにかを語り掛けているのですから

風をさえぎってはなりません
それは吹き抜けることで
なにかを語り掛けているのですから

雨をしのいではなりません
それは慈しむことで
なにかを語り掛けているのですから

雪を憂いてはなりません
それは静寂をもって
なにかを語り掛けているのですから

海はたゆたい 川はきらめき
山は実りをもたらすことで
星は揺らめき 月は潤し
太陽は抱擁することで
光は戯れ 闇は潜むことで
それぞれに
なにかを語り掛けているのです

時の移ろいを嘆いてはなりません
それは過ぎ去ることで
なにかを語り掛けているのですから

孤独を遠ざけてはなりません
ひとはもがき苦しみ戸惑いながら
人生の意味を求め続けるものなのですから







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Tomorrow is another day

2009年02月21日 21時17分51秒 | 慰め種

やっとのことで一日が終わり
なにげないふりを装いながら
鏡にむかって静かに微笑みかけてみたけれど
涙の表面張力は
すでに限界ぎりぎりにまで達していて
そろそろ泣く準備をしてみようか
と思ったとたん
わっと涙が溢れ出た

しょっぱい雫は堰を切ったように
あとからあとから頬をつたい落ちるけれど
それでもわたしはいつの頃からか
涙を止めるすべを知っていた
泣けばいいの
声を押し殺して
涙枯れ果てるまでただひたすら
泣きつづければいいのです

そうして あす
・・・・・
もう一日





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どんなときにも

2008年12月22日 22時05分40秒 | 慰め種

きみが思い悩んでいるときも
小鳥たちは葉蔭に憩い
幸せいっぱぁい と歌ってる

きみが悲しみに暮れて
頬を濡らしているときも
陽だまりの猫は寝返りうって
幸せいっぱぁい と欠伸している

きみがどんなに寂しいときも
野の花は風に吹かれて
幸せいっぱぁい とスウィングしてる

理解しようとしなければ
人生はもっと
簡潔で美しいものかもしれないよ

ぼくらはただ
惜しみなく降りそそがれている優しさに
気づくことができないだけかもしれないね





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あなたが望めば

2008年11月15日 16時35分52秒 | 慰め種

もしもあなたが
なにかをあきらめそうになったとき
その胸にとどめておいてほしいのです
あの日
あなたのなにげないまなざしに
ぼくの荒んだ心が
ふっとやわらいだということを

もしもあなたが
なにもかもなげだしたくなったとき
おぼえておいてほしいのです
あの日
あなたの小さな微笑が
ぼくのとざされた胸の中にまで
静かに沁みたということを

もしもあなたの瞳が
悲しいうるおいに満たされたとき
忘れないでいてください
あの日
ぼくの心のすき間を
そっと埋めてくれたのは
あなただったということを

もしもあなたが
生きてくことの寂しさに
ふと気づいてしまったとき
どうか どうか 
思い出してほしいのです
あなたが望めばぼくはいつでも 
夜空をよぎる星になるから





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だからほら いまもこうして

2008年10月19日 12時52分02秒 | 慰め種

空を見上げて目をとじる
と、お陽さまの温もりが
まぶたに透けて感じられます

やわらかな風が髪をと梳かし
かすかに大気が香ります
虫の羽音や小鳥のさえずり
葉ずれの音がそっと耳をくすぐります

ゆるやかに時が流れて意識がうすれ
心がほどけていくようです

けれどふたたび
そっとまぶたをひらいてみると
そこにはやっぱり
ひとりぼっちのわたしがいる

だけどもう
わたしは頬づえなんかついたりしない
世界は思いのほか愛しみ深く
さりげないやさしさにあふれていると
なんとはなしに気づいてしまったから

だからほら
わたしのくちびるが小さな笑みを
いまもこうして
ほのかに浮かべていられるのです







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とるにたりないことだけど

2008年08月16日 11時36分08秒 | 慰め種

たいせつなものをいっぱい失くして
そのかわり といってはなんですが
かけがえのない想い出を
たくさん たくさん
手に入れることができました
時はこちらの都合なんておかまいなしに
さっさと過ぎ去ってしまうもの
なんてことは
ミツバチの赤ちゃんだって知っている

自由に空を舞うために生まれてきた
愛らしい小鳥たちが
たとえ狭い籠にとじこめられても
美しく歌うことを忘れないのは
どうしてかってことを
考えてみたことあるかしら

モグラは人生の大半を
暗い地面の下で暮らしているけど
けっして
お陽さまの温もりがきらいなわけじゃなくて
ただそんなふうに
生まれついてしまっただけなんだってことにも
少しは思いを巡らせてみなくちゃね

芽吹いたばかりの木の葉の子供があくびして
空に浮かんだ雲の中では
生まれたての雨粒が泣きべそかいてる
けれどちょっとみたところ
そんなことにはまったく無関心を装って
星たちはきょうも
飽きることなく同じ軌道を描いてるの

きょうはきのうと変わらない
でもなにかが少し違ってる
たわいもないテントウムシの世迷言に
寝ぼけまなこのタンポポが
てんで気の抜けた相槌をうったりしてるけど
あしたはもう少し
なにかが変わっているかもしれないわ

だからこそ
たとえ
途方に暮れてしまうようなことがあったとしても
そよ風が吹けばやさしい気持ちになれるし
夕焼け雲を目にすれば
つい涙ぐんでしまうことだってあるのかもしれない
でもね
そんなことはよちよち歩きのカルガモの
小っちゃな女の子だって知っていること





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もしもぼくが・・・

2008年03月02日 18時46分40秒 | 慰め種

もしもぼくが
おだやかな陽射しであったなら
やさしい光で包んであげたい
凍えてふるえるきみの躰を
そっと温めてあげられるから

もしもぼくが
清らかな泉であったなら
その小さな手のひらにすくわれてみたい
傷つき渇いたきみの心を
静かにうるおしてあげられるから

もしもぼくが
荒れ野の木立であったなら
いつもたくさんの葉を茂らせていたい
冷たい通り雨から
きみを守ってあげられるから

もしもぼくが
やわらかな風であったなら
頬をつたうその涙をぬぐってあげたい
きみの気持ちが
いつも安らかでいられるように

もしもぼくが
ひときわきらめく夜空の星であったなら
きみといっしょに祈ってあげたい
そのささやかな願いが
いつの日かきっと叶えられますようにと

もしもぼくが
闇を照らす灯火であったなら
その胸に小さなあかりを灯してあげたい
いつかきみが
ぼくにしてくれたように









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魔法のポタージュの作り方

2008年01月20日 12時12分50秒 | 慰め種

早春の陽だまりと二十日鼠のひそひそ話
そして 
真っ青な空にぽっかり浮かんだ
純白の綿雲の切れ端を少々
手風琴のやわらかな調べと
湖水のきらめきを大さじ1杯
忘れられた記念日に
気まぐれ猫の生あくび
それから それから
最果ての地ラップランドの白夜の吐息と
満月のオアシスでひと瘤ラクダが見る夢を
それぞれ大さじ2分の1程度
そうしてなにより忘れてならないのが
憂いをおびた微笑み 小さじ3杯と
ひとりでに零れ落ちてしまった
涙の粒をひとつまみ
木洩れ陽の揺らめきに
薔薇の香りとハチミツのまどろみをほんの少し
ほかにも たとえば そう
タンポポの綿毛の軽やかさや
初めてかわした唇づけの優しさなどなど
お好みによって
身のまわりにひそんでいる小さな魔法をかき集め
深めのお鍋にどんどん放り込んでみてください
分量はどれも
おおよその見当でかまわないのですから
あとはもう薪ストーブの火にかけて
コトコト煮込んで待つばかり
するとほら あらあら不思議
凍てついた気持ちが“ぽぉわん”ととろけてしまう
あったかまろやかポタージュの出来上がり
あなたもほら
心がふるえるそんな夜は 
試しにどうぞ召しあがれ







★絵:エドワード・ハミルトン・ベル★ ↓ポチッっとね
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