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飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

セール修理の荒業紹介 その2

2020-10-09 17:02:51 | ハング(hangglider)
只今、ハンググライダーのリーディングエッジ(前縁)パネルの交換という、セール修理の荒業を紹介させていただいています。

今回はその続き!


前回までで、古くなったセールのリーディングエッジパネルの切り取りの作業まで紹介させていただきました。

その後なのですが…。

切り取ったセールを型にして、新しいセールクロスをその型通りに切り取ります。



この時注意するのが、型にする古いセールは、前部分が縫い代を残したために短くなっていることです。

そのため、新しくこのパネルを切り出すときは、その縫い代の部分を考えて切断する必要があります。

そこで、両面テープを張り付けて、その縫い代の部分を追加してやります。



この切り取られたセールパネルは、本体に残された縫い代部と、新しいセールパネルの縫い代部が合わせられて縫

製されるわけです。




キレイに切り出されました。寸法は1ミリの誤差もありません。

この新しく切りだされたセールパネルを本体に縫製すると…。



出来ました!

このようにきれいにリーディングエッジパネルの交換ができるわけです。

ここで、ちょっと私の工夫をご紹介!



これは、セールの中に挿入するルミラーです。

ルミラーはプラスチックシートの一種で、これが挿入されることにより、翼にとって一番大事なリーディングエッジの形状がきれいに成型されるの

です。

軽量飛行機やグライダー、模型飛行機などではプランクと呼ばれているものに相当します。

私はこのルミラーに、いつも以下のようなひと工夫をしています。

上の写真のように、翼端の方の下面側に相当する部分を、一部カットし、柔らかさが出るようにしています。

これだけでも少し、ロールのコントロールが軽くなります。


さて、出来上がったセールにフレームを突っ込み、グライダーをセットアップしてみます。



思い通りにきれいに仕上がりました!

後は実際にグライダーを飛ばしてチューニングですね!


今回のこの作業、基本的には業務では請け負ってはいません。

理由は、現在のハンググライダーではセールの作り方が複雑になり、一筋縄ではできない作業だからです。

また、取り換える新しいセールクロスも、日本ではかなり入手が困難であることもあります。

今回は、私自身のセール修理の技術を上げるための挑戦として行いました!




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セール修理の荒業紹介!

2020-09-29 20:35:43 | ハング(hangglider)
5年以上乗っていなかった私のグライダー。

これから乗ってやろうと考えたのですが、問題なのはセールの縮み…。

ハンググライダーのセールは生き物ですから、長く放置していたものは当然変質しています。

恐る恐る久し振りにこのグライダーを組み立ててみると…。


あれ?セールのテンションが変わっていない!これは使えるかも!!

バテンや翼端のテンションが昔のままです。

しかし…。

リーディングエッジ(前縁)のセールだけが、すでに劣化してしまい、このままでは安全な飛行に支障が出そうです…。


だったら、リーディングエッジのセールパネルだけ交換しちまえ!

ということで、今回、リーディングエッジパネルの全交換という、かなり大掛かりなセール修理を行うことになりました!


今回ご紹介するこのセール修理の荒業。

ハンググライダーを知る人ならば、「そんなことできるの?」と思うでしょう。

実は出来るのです。

この荒業、実は私が20年以上前に、カリフォルニアのハンググライダーメーカー「ウイルスウイング」で一か月ほど研修を受けた時に、こっそりと

メキシコ人のセール修理の達人から、その方法を教えてもらっていたのです!

写真が残っていました!この方ですね。



その後、数回だけウイルスウイング社のグライダーに限り、日本でもこの「リーディングエッジのパネル交換」はやったのですが…。

近年、そのようなセール修理の需要がなかったため、この荒業も「お蔵入り」になっていたんです…。

今回久々にやるこの荒業…。

しかも、別のメーカーのグライダーでキングポストレス機…。

かなりセールの作り方が異なるはずです。

果たして、うまくできるでしょうか?





ウチは一応ハンググライダーの修理はお手の物…。

設備は整っています。

しかし、今回の「リーディングエッジのパネル交換」は、そんなハンググライダー修理の専門業者にとっても難しい仕事です。

そもそも…。

ハンググライダーのセールは、長く飛んでいればその寸法は変わります。

つまり、新品のセールパネルを入れようとしても寸法が合わないんです…。

そのため、機体ごとに変わってしまった寸法のパネルを、まずは型どりし、それを新しく縫製するしかないんで

す。


では、どうやってその修理を進めていくのか…。

順を追ってご説明いたします。



まずは、リーディングエッジが縫製できるように、アンダーセールを全スパンにわたってはがします。



次に、作業台の上に、リーディングエッジに出来るだけしわが出ないようにセールをピンでとめていきますが…。

リーディングエッジのパネルの後ろ側は、まずどんなハンググライダーでも直線になっています。

この直線がずれないようにピンでとめていく必要があります。



この作業が終わると、今度はリーディングエッジの前側に、両面テープを全スパンにわたり張り付けていきます。



この部分が、新しく張り替えるセールのための縫い代になるんです。


リーディングエッジのパネル交換では、決して古いリーディングエッジ全部ははずしません。

こうやって、リーディングエッジの前側だけは縫製をそのまま残し、(つまり、メインセールは一切手を付けず

、あくまで上のリーディングエッジパネルのみを交換する)作業を進めていくんです。


新しいリーディングエッジパネルは、上の縫い代として残したセール部分に重ねて縫製するわけです。


この方法ならば、手間も随分と省け、正確に新しいリーディングエッジのセールパネルが縫い付けられるわけです。

その後は、両面テープで張った縫い代部分を残して、古いセールを切り取っていきます。



この切り取られた古いリーディングエッジを、新しいリーディングエッジの「型」として使用します。

この後の作業については、次回にご紹介いたします。
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何故、ハンググライダーに垂直尾翼がないのか?

2020-05-22 09:37:52 | ハング(hangglider)
ハンググライダーには垂直尾翼がありません。

これはなぜか…。

答えを先に言ったしまうと、「必要ないから」です。(笑)

しかし、厳密にいうと、まったく必要がないとも言い切れないものがあります。

今回はそんなお話をしてみましょう。


仮に、ハンググライダーに大きな垂直尾翼を付けたらどうなるか…。

実は、旋回に入りにくくなります。

バンクしてから曲がりたい方にターンを始めるまで時間がかかってしまうのです。

この現象が起こるため、多くのハンググライダーは垂直尾翼を持たなくなりました。

しかし、厳密にいうと、ハンググライダーには垂直尾翼がなくとも、同じ効果をもたらしているものがあります。

その一つは「後退角」です。



これは、もし、ハンググライダーに正面からではなく斜め方向から風が当たったとすると、そちらの翼の空気力が大きくなるため、風見鶏のように

機首の向きを変える…。というものです。

もう一つ、垂直尾翼と同じ効果をもたらしているものに、「ビロー」があります。

ビローとはセールのハラミのことですが、これもある程度垂直尾翼としての効果があります。



これら二つは、「垂直尾翼としての効果がある」という程度の効き目しかありませんが、それでも、低速で飛んでいる分には、その効果で十分飛べる

ものがあります。

逆に、垂直尾翼を付けて十分すぎる安定性を持たせてしまうと、旋回がもたついてしまって仕方がありません。

特に、サーマリングの際に、低速で瞬間的に機体の向きを変えたい時など、思ったようにそちらに向きを変えてくれなくなり、乗りにくくて仕方がな

くなってしまいます。

が…。

が…。

が…。

場合によってはヨ―の安定が不足するため、垂直尾翼が欲しくなる時があります。

それは、VGを引き締め高速で飛んだ時です。

VGとは可変翼機構のことで、ハンググライダーの上級機にはだいたいこの機構が取り付けられており、この機構を飛行中に使用することで、ビロ

ー、つまり、セールのタワミを少なくして性能を上げるもののことです。

このVG機構をフルに使って高速滑空しているとき、正直、ヨーの安定が不足し、ハンググライダーは直進しにくくなってしまいます。

多くの場合はパイロットの腕でフォローし、なんとかまっすぐ飛ぶように頑張っています。

一つの案として、VGに連動して垂直尾翼が立ち上がるような機構があってもよいとは思います。



しかし、構造が複雑になり、コストも上がりるため、今のところこのようなものが現れたことがありません。

要は、本当は高速滑空の時は垂直尾翼が必要なのですが、ウデで何とかしているのですね!

とても上手なパイロットであれば、確かに何とかこの垂直尾翼がないための安定不足を補うとこが出来ます。

(コツはベースバーを引きながらも、ベースバーセンターから体がズレないように最小限の力を入れること。上記のように後退角、ビローによる自立

安定性があるのだから、それを邪魔しないようにすれば機体の揺れはおさまるはず。必要以上にあて舵を打つから揺れてしまう。)

また、翼面積に対し、重い体重で乗った時なども、この安定不足を少なからず解消することもできます。

そんなこんなで、ハンググライダーに垂直尾翼がなくても何とかなっているため、未だに積極的には垂直尾翼を付けないのでしょう。



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バカに出来ない!セールの折りじわ…。

2020-01-21 20:37:59 | ハング(hangglider)
ハンググライダーを長年乗っていると、どうしても避けられないのが、たたむときに生じるセールの折じわ…。

一見、何でもないようなこのセールの折じわですが、場所によっては、思いのほかグライダーの性能を下げてしまうものなのです!

今回は、この意外にバカに出来ないセールの折じわについてお話いたします!


翼の表面って、いろいろと奇跡が重なって、揚力を生むようにできています。

そう。奇跡が重ならないと、あれだけ効率よく揚力は生まれないのです!

そんな中でも、特に翼の上面の、最前部から一番盛り上がりの高い場所の形が重要!!

ここに、凸凹があると、著しく翼の効率を下げてしまうのです!

たとえば…。



上図のような場所にしわがあった場合…。

これって思いのほか、空気抵抗を生んでしまうんです!

しわの大きさはわずかなもの…。

しかし…。

このしわの存在が、まずは「空気の乱流」を生みます。

その結果、著しい揚力の減少を生みます。

その揚力の減少の結果、迎角を増やさざるを得なくなり、その迎角の増加が抵抗を生み出してしまうのです!

更に…。



上図の場所に深い折じわがあった場合…。

これはもう最悪です!

性能を下げるばかりか、グライダーのコントロールもおかしくなってしまうこともあるのです!

上図で示した場所の、滑らかさってとても重要なものなのです!

特に気を付けてあげたいのが下図…。



翼の中のルミラーが、癖がついてしまって内側に折れまがってしまった例…。

これの場合、とんでもないことになってしまいかねないのです!

特に、シングルサーフェイスの某機体の場合、結構このようなことになることが多いので、十分気を付けていないといけません!

心当たりのある方は、いま一度チェックしてあげてくださいね!









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ピッチアジャスターは何のため?

2019-10-21 21:23:20 | ハング(hangglider)
ハンググライダーハーネスの多くに備わっているピッチアジャスター。

飛行中、パイロットの迎角を変更するための装備なのですが…。

実は、多くのパイロットが、その使用目的や使い方を正確に把握していないのです!

そこで今回は、このピッチアジャスターについてお話いたしましょう。



上記の話を進めていくうえで、まずはハングハーネスの構造についてのお話から始めたいと思います。

まず、パイロットの重量の多くを吊り下げているメインラインなのですが、その取り付け位置は、パイロットの重

心位置より、少し後ろになります。




このままでは頭が下がってしまいますので、フロントラインにて前を吊り上げ、そのようなことにならないようにしています。



これが、ハングハーネスのピッチ安定をつかさどる基本形になります。

そして、このメインラインとパイロットの重心位置の関係は、飛行中のピッチ安定と密接な関係があります。

重心位置よりも、メインラインが後ろに位置するおかげで、ピッチの安定が生まれるのです。

ピッチが安定すると、空中での様々な状況の中で、パイロットのフラツキが防止されるため、安定してグライダーをコントロールすることが出来ます。

具体的には、メインラインが後ろにあるほどピッチの安定が良くなって、グライダーをコントロールしやすくしてくれます。



フロントラインにかかる荷重、メインラインにかかる荷重は、重心位置からフロントラインの距離をa,重心位置からメインラインの距離をb

とすると、それぞれは…。

フロントライン荷重  吊り下げ全重量×b/(a+b)
メインライン荷重   吊り下げ全重量×a/(a+b)

※吊り下げ全重量とは、パイロット重量+ハーネス重量

になり、メインライン位置が後ろになるほどに、フロントラインへの荷重が大きくなり、ピッチ安定も向上することになります。

しかし…。

どんなにピッチの安定が良いハーネスにしても、スピードを出すためにベースバーを引き込むと、必ず頭が上がってし

まいます。


これは、ベースバーを出したり引いたりする動作は、スイングラインの付け根を中心に、円運動をするためであり、この頭上がり

はどんなハーネスも避けることはできません。



そして、この「頭上がり」は以下の2つの短所を生み出してしまいます。

その2つとは…。

空気抵抗が大きくなる。

引き込みがきかなくなり、スピードが出せなくなる。

です。

この2つの欠点を無くすために、ピッチアジャスターはあるのです。

ピッチアジャスターにより、頭をあらかじめ下げておけば…。

当然空気抵抗も小さくなり、そして、上半身の位置が低いために、ベースバーの引き込みもより効くようになってスピードが上げられるので

す。


このために、ピッチアジャスターはあるのです。

空気抵抗の軽減については、より高度な競技寄りの飛びをする場合のみ問題なのですが、ベースバーの引き込みがより効かせらることについては、

例えば風の強い海岸リッジのエリアなどで、前に出なくなった場合にピッチアジャスターを操作して、頭を下げてやればスピードがもっと出せるように

なる…。または、アクロバティックな飛びをする場合など、「もっとスピードを出したい!」そんなシーンにピッチアジャスターを使って引き込みを効

かせるんですね!

ただし…。

ピッチアジャスターを操作して頭下げを実現するには、二つの条件があります。

一つは…。

ベースバーを引き込む前に、頭下げの操作をしておく。

もう一つは…。

頭下げの状態にしても、ベースバーに頭が当たらないように、スイングラインの高さを上げておく。

以上が必要です。

もっとも、ベースバーを引き込む前に頭下げにしておく…。については、熟練したパイロットならば、ベースバーを引き込みながら同時に頭下げに出来

る場合もありますが、基本的な順番としては、先に頭を下げておくことになります。

このことを間違えてしまい、ピッチアジャスターを操作せず、頭下げの状態を作り出さないでベースバーを引き込み

、「頭が上がる…。」と不満を漏らすパイロットが実に多いのです。


ですから、ベースバーを引き込んだ状態で頭が下げっている姿勢を好まれるのであれば、必ずピッチアジャスターを操

作して、まずは頭が下がった状態にしてください。





ただし、例外として、メインライン一本だけで吊り上げているハーネス(WVテナックスのスタンダードなど)もあります。

この種のハーネスは、メインラインとパイロットの重心位置がほぼ同じ場所にあり、そのままではピッチが不安定になってしまいます。

しかし、それを補うようにメインラインがロープをスライドする構造にして、そのロープの摩擦力にて、メインライン位置と重

心位置が同じでも、ピッチの安定を保つようにしています。

つまり、この種のハーネスのピッチ安定を良くしたい場合は、ロープの摩擦力を大きくすれば良いわけであり、通常はロープを緩めてその摩擦力を大き

くすることにより、ピッチが安定するようにしたりしています。

そして…。

このハーネスでベースバーを引き込んで頭下げの姿勢にしたい場合は、ベースバーを引き込みながら、

頭が下がる方向に、手前側にもベースバーを引く力を加えることが必要です。


一見、普通のハーネスの場合よりも面倒そうに思えるのですが、慣れればこれはこれで操作がやりやすく、なんと言ってもその構造が極めてシンプルな

ので、故障の心配もなく、この種のハーネスを好まれる方もいます。


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