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飛行中年

空を飛ぶことに薪ストーブ、そして、旅をこよなく愛する一人の中年のブログです。

ハンググライダーの乗りこなし術 その1

2014-02-26 21:01:54 | ハング(hangglider)

今回から少しはみなさんのお役にたてる連載をと思い、数回ではありますが、ハンググライダーの乗りこなし方を理論も交えてご説明していこうと思います。

それでは、まず最初はフレアーのタイミングについてから始めたいと思います!

まずフレアーのタイミングはグライダーが教えてくれるということ!パイロットはグライダーが教えてくれるフレアーのタイミングを聞き逃してはいけません!

これはどういうことかというと、以下の図を見てもらえばご理解いただけると思いますが、フレアーのタイミングはアップライトから伝わるバープレッシャーで知ることが出来るのです。

Photo

ランディングアプローチ最後、あなたがファイナルターンを切ってランディング場に侵入します。

この時はまだ速度が付いた状態なので、ベースバーは「引いた状態」になります。

ノーズが上がらないように注意深くベースバーを持っていた手をアップライトに持ち変えます。

その後、ウインドグラジエント (地面の影響で風が弱い領域)に侵入し、地面と平行に飛ぶ「減速区間」に入ります。

この領域に入ると、グライダーは速度をどんどん失い、今まで引いていたアップライトの力もどんどん弛めていくことになります。

そして、いずれは引いていたアップライトの力が全くなくなる、いわゆる「ニュートラル」状態

になります。

この時の速度は、通常のチューニングが施されたグライダーならば「最小沈下速度」になっています。

最小沈下速度とは、グライダーの沈下速度が最小になるという意味のものですが、これは言いかえれば揚力係数が最も大きくなる速度であり、安定して地面と平行に飛ぶことが出来る最小速度でもあります。

この速度を過ぎると、翼に失速が始まるため急激に速度を落とし、アップライトをどんどん押さないと地面と平行に飛ばなくなってしまいます。

実は、このアップライトを押し始める前の段階、グライダーが最小沈下速度で飛んでいる、アップライトを持つ手の力が全くなくなるニュートラル状態の時‥。

この時こそがフレアーのタイミングなのです!

もちろん、この方法でフレアーのタイミングを計る場合、あなたのグライダーのニュートラル速度がちゃん最小沈下速度にあっていることが大前提として必要となってきます‥。

で、その見極め方については次回ご説明いたします。

 

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私が乗ったハンググライダーの名機 10

2014-01-31 21:50:48 | ハング(hangglider)

今回は、もっともポピュラーなハンググライダーと言っていい機体をご紹介致します。

Laminar2013_id906

イタリアはイカロ社の「ラミナール」です。

この機体は登場して、もう20年近くになりますが、いまだに後継機が続々と登場している不屈の名作です。

最初、イカロ社はヨーロッパモイスとして登場し、当時本家のオーストラリアで生産していた「XS」のライセンス生産をしていましたが、自立した技術で新しい機体が作れる自信がついたため、独立してイカロ社を設立しました。

そして、最初に登場したのがこの「ラミナール」だったのです。

当時、フレームのスパーは適度なしなりがなければ良いハンググライダーは出来ない!と、思われていましたが、イカロ社は60ミリの7075アルミを使用した剛性の高いスパーを敢えて使用し、セールのつくりでたわみをもたせてハンドリングを出すという新しい発想のもとに作った機体でした。

その発想は見事に大正解で、現在のハンググライダーの作り方の基本となるものとなりました。

設計思想が正しかったため、その後細かな改良は加わったものの、大幅な改良の必要性がなかったため、そのまま現在までその名を引き継ぐものとなったのです。

最初に私がこの機体に乗った時の感想は、「ハンドリングが軽いのに、何でこんなに高速性能が高いのか!」そんな強烈な印象と感動がありました。

VGを引くと、今までにないくらいベースバーの位置が手前に移動し、加速力がグンと増します。

明らかにセールの張りが今までとは別次元の機体に仕上がっていました。

しかし、登場当時は新しい設計思想による弊害も若干発生し、セールの張り、弛みが今までの機体よりも大きかったため、ラフラインの設定が追いつかず、よくバテンの後端に弛んだラフラインが引っかかってしまうことが起こりました。(笑)

もちろん今のラミナールではそんなことは起こりませんが、時代の最先端を進んでいた機体だったため、そんなトラブルも予想は困難だったようです。

何はともあれ、このラミナールはその後キングポストレス機にも無理なく進化し、基本設計はそのままで今に至る、ハンググライダーの歴史の中で一番と言っていいほどの不屈の名作となったのです。

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私が乗ったハンググライダーの名機 9

2014-01-13 22:22:23 | ハング(hangglider)

前回エクスタシーをご紹介したので、今回はこれしかないでしょう!

Atos_id114 ドイツ、A.I.R社のATOSです。

この機体は、前回ご紹介したエクスタシーと同じ設計者により作られた機体です。

その名はフェリックス‥。

エクスタシーは、フェリックスがフライトデザイン社で開発した機体ですが、その後、フェリックスはフライトデザイン社を退社。

その動きを見逃さなかった、当時UPヨーロッパの社長バーンド氏が、「新しい固定翼機を開発しないか」と誘い、設計はフェリックス、プロデュースをバーンド氏が引き受けて開発されたのがこのATOSです。

私がこのATOSを名機と考えたのは、実はその設計のスゴサにあります。

これについてはほとんどの方は気が付いてないのではないでしょうか?

ATOSは今まで様々な発展型が作られましたが、実はこれらの機体は、わずか2種類のカーボンのモール(型)によって作られているのです!

カーボンによる固定翼機を作る場合、どうしてもリーディングエッジを構成する通称「Dボックス」を作るためには、高価なモールが必要です。

このモールをつくるためには大きな「人件費」が必要なため、おいそれとは新しいものは作れません。

そのため、最初にこのモールを作るときには、十分な将来的発展を考えて作らなければならないのですが、ATOSではそれを見事に最初のモールでやってのけているのです。

現在ATOSの発展型としては

Atosvq_id755

ATOS VQ

Vr10_id847

ATOS VRがありますが、これらの機体も、最初に製作された2種類のモールをそのまま利用し作られているのです。

そのために、開発期間やその費用が大幅に抑えられています。

力学的に考えて、ATOSの発展型のVQ,VRは、航空界では珍し「クレセント翼」(三日月翼)が採用されていますが、この種の翼は翼に大きな「ねじれ荷重」がかかるため、強固に作る必要がありますが、その辺の将来的な発展も見越して、強度的な余裕が出せるようにフェリックスは最初にモールを開発したのだと思います。

この辺の「先見の明」は、さすがはフェリックスで天才と呼ぶにふさわしいと思います。

過去航空界では、このような将来性を見越して開発し、のちに名機と言われるようになったものに、ドイツのメッサーシュミットBf109や、イギリスのスピットファイヤー、アメリカのムスタングなどがあり、日本でも飛燕などが、かなり将来性を見越して設計されたと言われた機体がありました。

おそらくフェリックスも、そのような歴史を知っていたからこそ、将来的発展性を考えて、どうにでも融通のきくモールを最初に開発したのだと思います。

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私が乗ったハンググライダーの名機 8

2013-12-14 20:06:18 | ハング(hangglider)

今回は、複合材を主に使った構造を持つ固定翼の量産機としては、初めて世に出たエクスタシーをご紹介します。

Exxtacy_id138

それまでもアルミパイプを使った固定翼機はありましたが、翼効率が悪かったためにそれほど高性能なものはありませんでした。

また、「スイフト」のように全FRP製の高性能機もありましたが、離着陸に難があり、フレキシブルのハングと同じように飛ぶ‥。という訳にはいきませんでした。

それらの問題を、カーボンを主体とした複合材で軽量化し、フレキシブルハングと同じコントロールバーを使用するというアイデアで、気軽にフレキシブルハングと同じように離着陸できるようにし、性能もフレキシブルハングよりずっと上‥。という夢のような機体へと仕上げられたのが、今回のエクスタシーです。

このエクスタシーを作ったのは、フェリックスというドイツ人で、彼はそれまで仲間と「ペガサス」という固定翼機を作っていましたが、この種の機体がビジネスになると考えてフライトデザイン社に入社。

そして、ペガサスの進化型としてこのエクスタシーを作り上げました。

今回私が名機としてこの機体を取り上げたのは、この機体が初の量産固定翼機であったからでは決してありません。

このエクスタシー。実はとてもよくまとまった安全で出来の良いグライダーだったからです。

まずこのエクスタシーは、当時のフレキシブルハングよりもずっと高性能だったことはもちろんなのですが、クセがなくまとめあげられており、サーマリング中も、フラップと風圧中心位置が良い関係にあったため、フラップの動作角に応じた、適切な滑空速度に自らが飛ぼうとする、パイロットにとって負担の少ない理想的なものを持っていました。

加えて、失速特性もとてもよく、速度を落として行ってもノーズダイブには入らずに、安全なパラシュート降下に入ってくれました。

更に、機体の構造も強度が十分あったことはもちろんですが、カーボンの表面に薄いグラスファイバーを張り付け、衝撃が加わっても白いひび割れが起こって、破壊を容易に見つけることが出来るという工夫がこらされていました。

このエクスタシーは商業的には成功し、世界中に近代固定翼機を広めるきっかけとなったのです。

その後、この機体を開発したフェリックスは、フライトデザイン社と別れてあの「ATOS」を作ることとなったのですが、その辺のいきさつについては後日少しご紹介する予定です。

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私が乗ったハンググライダーの名機 7

2013-11-16 20:51:04 | ハング(hangglider)

今回は、現在どこのエリアでも必ず1機はいるこのグライダーです!

Sport2_id488

ウイルスウイングの「SPORT2」です。

このグライダー。名前は以前にもご紹介した「SPORT」の後を引き継いだようなネーミングですが、実際は全く違う別設計で作られた機体です。

もともとウイルスウイングは、初級、中級クラスも本気で取り組むメーカーですが、今回の「SPORT2」もかなり力を入れて開発されており、キングポストレスで培われたノウハウを惜しみなく中級クラスのこの機体に投入して作られた機体です。

この機体は、コントロールの軽さはもちろんですが、しっかりした直進安定性も持っており、加えてピッチのバープレッシャーも強くてニュートラル位置が分かりやすいので、そのスピードコントロールも容易(グライダーがベストな速度に飛びたがってくれる)なため、サーマリングも容易に行え、その結果、中級者のソアリング時間も伸ばしてしまうため、「乗りやすく浮きが良い」→「飛行時間が長くなる」→「長く飛べるのでうまくなるのも早い」の相乗効果で、乗り手を早く上達させてしまう、中級機としては誠に好ましい特性を持っています。

加えて、失速特性も申し分なく、目いっぱいベースバーを前へ押し出しても、決してノーズを落とすような失速には入らず、ゆったりと沈下速度を増してパラシュート降下的な降り方をしてしまう好ましい特性を持っています。

そして、これらの好ましい特性は、ランディング時のフレアーの時も、よりフレアータイミングを広くしてくれ、たとえそのタイミングが極端に早すぎても、ベースバーを押し出したまま頑張っていればパラシュート降下的に垂直に降りてしまうため、少々沈下速度は速いもののなんとかセーフティーにランディングできてしまいます。

このように「SPORT2」は中級機として申し分のない性能を持っているのですが、実は、その大人しい性能とは裏腹に特筆すべき「特技」を持っているのです。

それは、このSPORT2を最上級者に乗らせると、秀でた低速性能を使い切り、サーマリング中バースバーをほとんど目いっぱい押し出してハイサイド(低速のサーマリングにてグライダーが内側に食い込む動きを外側に体重移動して押さえ込む乗り方)も目いっぱいに決めると、どのグライダーもかなわないくらいの「浮き」の性能を見せてくれるのです!

もちろんこれを行うには、それなりのウデと腕力、そして、腹筋も必要です。

しかし、それが出来ればパラグライダーも舌を巻くほどの「浮き」が実現できるため、渋い気象条件の時などはとても楽しく飛ぶことが出来るのです!

SPORT2は、乗りやすくまとめられた「中級機」の位置づけではありますが、本当にこのグライダーを乗りこなすウデがあれば、その大人しイメージとは違った「高性能」を見せてくれる機体なので、なかなか上級者もこの機体に乗っていて楽しめるものがあるのです。

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