財部剣人の館『マーメイド クロニクルズ』「第一部」幻冬舎より出版中!「第二部」朝日出版社より刊行!

(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第一部 第4章−9 チョイス・イズ・トラジック

2019-10-11 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

   ナオミは、何ごとか考えている様子で言った。

「おもしろい?」

「はぁ?」夏海は間の抜けた声を出した。

「何をしたらいいか決めるのって、おもしろいかって聞いてるの」

「チョイス・イズ・トラジックってわかる?」

 夏海は思わず微笑んだ。

「チョイス・イズ・チョラジック?」

「選択はいつも悲劇的と言うことよ」

「難し過ぎる。わかんない」

「ひとつのことを選べば別のことは選べなくなるという意味よ。ケーキをお昼のデザートに食べてしまえば三時のおやつにそのケーキは食べられないでしょう」

「トラジディーだ」

「トラジディーね。人は生きる限り決定を迫られる。そんな時、はっきりした答えを出すのは難しいわ。せいぜい出来るのは、やってみるメリットと失われるデメリットを比べてみること。天秤の使い方はもう習ったでしょう。ディベートを知っているのは心の天秤があるようなものよ」

  夏海は淋しそうに笑った。

  あの時、悩みに対する答えを夏海は決めたのだろうと振り返って思う。ホノルルを訪れた時に、夏海が出演したパフォーマンスを見たニューヨークのある劇団からずっと誘いを受けていたのだった。

「どうしたの?」

 気がつくと、夏海は涙を流していた。

「ごめんなさい。ナオミ、あなたにはまだわからないかも知れないけど何も決断をしなければ無難で葛藤のない人生を送れるわ。でも、波風を立てたり他人を傷つけたりしてもわたしは夢にチャレンジしたい」

  夏海はナオミを抱きしめた。

「あなたはいつまでもわたしの娘よ」

 ナオミは、なぜ夏海が当たり前のことを言うのかと思った。

   だが、同時に何かしら不安を感じた。

 

 

ランキング参加中です。はげみになりますので、以下のバナーのクリックよろしくお願いします!

    にほんブログ村 小説ブログ SF小説へ
にほんブログ村
人気ブログランキングへ


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。