「儂の力を試してみるかね?」
「不思議な波動ね。やさしさや憐れみを持たないくせに悪意や傲慢さもない。そのくせ、とてつもない凶暴さを秘めている。上陸寸前の台風、爆発寸前の活火山、あるいはメルトダウンが始まりかけた原子力発電所とでも言えばよいかしら」
「マクミラよ、気をつけて口を利くがよい。今の儂は脳髄のパワーが全開になっておる。かつて冥界の神官だったかどうか知らぬが最高の英知を獲得した儂に対して気安い物言いではないか」
「気をつけるのはどちらの方? 人間の英知などたかが知れているのではないかしら」
そう言いながら、マクミラが背中から真っ赤な二条の鞭を取り出した。
彼女とマッドは一触即発だった。
ジュニベロスの三首の口からもゆっくりと、だが着実に瘴気(しょうき)がはきだされて周りに漂い始める。
「ドクトール無礼ではないか、初対面のレディに対して。これ以上の失礼があるならわたしとケルベロスの息子たちが相手をするぞ」
「久しぶりに表に出たところにケンカ腰でカッとなっただけじゃ。お転婆娘が鉾を収めるなら、儂にも大人げない態度をとる理由はない」
マッドが言う。
「いいでしょう。わたしは本性を隠して様子を見ようとする態度が気に入らなかっただけ。納得出来るプランを提示するなら、ヌーヴェルヴァーグ財団は望むとおりの支援をしましょう。お互い駆け引き無しといこうじゃないの」
ジェフはやれやれという心境だった。大切なマクミラにこんなところでケガでもされては冥主プルートゥに会わせる顔がない。
「よかろう。話してやろうではないか。フランケンシュタイン計画。ふざけた名前がつけられたものだが。あれは今から十一年前のことだった」
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