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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第一部 第6章−3 極右団体

2019-12-09 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 

 

「極右組織?」

「現体制をひっくり返す気もないくせに既得権益が侵されることには苛立ち、見当違いの八つ当たりをする卑怯者のクズどものことです」

「どうもあまりお友達にはなりたくない連中のようね」

「その分、良心の仮借なしに利用できるのではないですか」ジェフはニヤリと笑った。

 良心の仮借? 情け容赦なくの間違いじゃない、とマクミラは思った。

「この国には、古くから白人優越主義の伝統があります。KKK団と呼ばれるクー・クラックス・クラン、国民同盟、見えざる帝国、ホワイト・アーリアン・レジスタンス等、数え切れないほどの極右団体が存在します。ただし、極左団体と極右団体は過激な思想を持つ団体という点では共通していますが、大きな違いがあります」

「それは?」

「極右団体には、エスタブリッシュメント、つまり上流階級に属する体制派も参加しています。知識も教養もある社会の指導者層が都合のよい教義や世界観をでっち上げる場合も多いのです。さらに、失業や居住環境の悪化をマイノリティに責任転嫁する労働者階級や若者も重要な構成員です。特定の民族や人種をターゲットにしている極右団体の場合、テロが目的化している場合もあります。たとえば、KKK団の起源は、わずか六人の南軍兵士が一八六六年にテネシー州で暇つぶしに友愛会的組織を発足させたものですが、南部の迷信深い黒人を脅かす組織に変容しリンチや放火をして回るようになります。その後、政治色を帯びたKKK団員は六〇年代後期に南部全体で五十五万人を越えたと言われます。しかし、急速な拡大によって中央からの統率が失われます。そして、反ユダヤ人や反黄色人種など主義主張を変化させながら衰退と隆盛を繰り返して現在にいたっています」

「最後の変容を繰り返すという部分は極左団体にも似ているわね」

「変化を繰り返す点ではそうです。しかし、白人優越主義団体は自警団や民兵のように表だった行動もしており、テロ組織のような世界規模の連帯がない点では違います。極右団体はコンタクトしやすいし、目的を助けてやればある程度コントロールも効くでしょう。稀にフリーメーソンのように世界的ネットワークを持つ秘密結社もありますが、表だって過激な主張はしていません。元々がヨーロッパのギルドが母胎ですから、現体制を崩すつもりはありません」

「極右団体を、どのように利用できると?」

「アポロノミカンの名を使えば、話に乗ってくるでしょう。カルト団体と紙一重の組織も多いですし、その存在を信じるものはかなりいます」

 またしても、アポロノミカンか・・・・・・

 だが、マクミラには、具体的なゲームプランが描けそうな気がした。

 マクミラは、元々が人間だった父から受け継いだヴァンパイアの力は使えたが、母から受け継いだサラマンダーの力はまだ封印されていた。神官時代の予知能力も失われていたが、マクミラは羅針盤のない人生もおもしろいものだと思った。

 人生には常に複数の選択肢があり、それぞれが異なる結果をもたらす。幸福と不幸は背中合わせであり、短期的には幸福と思われる時でもすぐ近くに致命的落とし穴があり、一見絶望的に思われる状況も落ち着いて考えれば活路はあった。

 人生はすべての希望が失われてしまったと当事者が判断した時に初めて絶望的になる。もっともそんなこともわからないほど人間たちがおろかであり、しばしば感情に流されてしまうことにマクミラは閉口したが。

 

 

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