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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第一部 第2章−4 歴史の正体

2019-07-15 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

(それは、いったい・・・・・・)ペルセリアスが顔を上げて思念を送った。
(暗黒星団の襲来には人間たちが「歴史」と呼ぶものが働いておる。「歴史」は神々の誕生よりもずっと昔からこの宇宙の理(ことわり)を作り続けてきた。「歴史」のエネルギーとは恐ろしいものじゃ。一度、動き出した歯車を変えることは最高神が束になったとしても出来はしない)
(それはいったい?)シリウスがうめくような思念を発した。
(「歴史」とはあまりに大きすぎて誰も見たことがないが、黄金数0.618の形状を持つ巨大円錐の無限回転が正体じゃ。今回、我が犠牲となって暗黒星団との闘いを避けたとしても同じ運命の修復を「歴史」は試みる。我の予測では、次は暗黒面のパワーは人間たちの心の内に直接に働きかけることでこの惑星の壊滅を図るはず)
(人間たちが暗黒面のパワーにとらわれた時、神々は何が出来るのですか?)シリウスが思念を送った。
(そうなれば、我らに出来ることは何もない。すべての人間が暗黒面のパワーにとらわれれば、この世の地獄が地上に出現するであろう。だが、人間たちの心はあまりに弱すぎる。そこで我は万が一に備えて一つの波乱要因を残しておいた)
(波乱要因ですか?)アンタレスが不思議がった。
(アポロノミカンこそ、人間たちにとって最初にして最後の希望となるはず。同時に、神々にとっても諸刃の刃。なぜならアポロノミカンを解読した人間は神にも等しい能力を手に入れる。その能力を善用するならば人間の歴史はコスモスを目指す方向へ一変する。逆に、その能力を悪用すれば人間どころか地球の歴史は瞬く間にカオスへ向かい終焉を迎える。アポロノミカンが一度書かれてしまえば、持ち主によってどう使われるかはもう神々にも手出しは出来ぬ)
(アポロニミカンとは、アスクレピオス様が命をけずってまでしたためているものですね?)押し黙っていたコーネリアスが思念を伝えた。
(お主に隠し事は出来ぬのう。アスクレピオスは医術を極めたが、技を使って死すべきものを救い過ぎてプルートゥ様の不興を買った。もはや神界にアスクレピオスの居場所はない。神導書アポロノミカンの執筆はアスクレピオスの最後の仕事。アポロノミカンが明かす秘密はすべてをゲームに変えてしまう。神々と人のすべてがかかったゲームにな)
(アポロン様、お名残惜しゅうございます)
(悲しむでない。老いさらばえた姿で最高神の地位に就くより美しいまま燃えさかる太陽と合体してこそアポロンの美学にかなうというもの。皆のもの、集え、「旅するもの」の下へ。星へ困難な道を(Ad astra per aspera.))
 それがアポロンの遺言だった。

     

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