「おやおや、深海魚ならめずらしくないが。神界魚(ルビ)のご訪問とはね」
「おばあ様・・・・・・」
「こんな近くにまで来られるほど大きくなったんだね。でもマーメイドはやたらに涙を流すもんじゃないよ。別れはつらいかもしれないけれど新しい出会いのためさ。それに夏海とお前たちの運命はちゃんとつながってる。しばらくしたら、どこかでちゃんと絡み合うことになってる。さあ、ケネスが心配するよ。ゆっくりお上がり」
そうか、また夏海とはどこかで会えるのか。
安心したナオミはゆっくり上を目指して行った。
その時、トーミは夏海をこの先待ち受けているのがやっかいごとであり、ナオミがそのトラブルに引き寄せられていくために再会出来るとは伝えなかった。
その代わり独り言の思念を発した。
ナオミや、お前は困っているみんなを助けてやるんだろ。儂には何もできないが、がんばるんだよ。
あくる日、学校でぼうっとしていたナオミは誰かが近寄ってきたのに気づかなかった。「ナオミ・アプリオールね?」
どこかで見た気がするごつい体つきの女性が続けた。
「ダイアナ・ガンプ。オーエンの母よ。今度、わたしたちは本土に移ることになったの。その前に、ご挨拶にうかがわなくてはと思って・・・・・・ごめんなさいね」子どものケンカに親が出てきたのかと身構えるナオミに、彼女は言った。
「はあっ?」
ナオミは間の抜けた声を出した。
「先週、学校から帰ってきてからあの子部屋に引きこもってしまって。やっとマークとジムからあなたをいじめていたと聞いて。あなたの指を悪魔の印だとわたしが言ったとかウソまでついて。差別やいじめは絶対いけないって教えてきたつもりなんだけど」
「そうだったんですか」
ケネスと夏海を「悪魔の親」とからかわれたことが怒りの一因だったことを思い出した。
次の一言はナオミの意表をついた。
「あの子、部屋にあなたの写真をかざっていたのよ。ゆるしてやってね」
それだけ言うとダイアナは行ってしまった。
え・・・・・・
好意の裏返しからオーエンが自分をいじめていたと知って、ナオミはとまどいを感じた。だが、同時にウンチ野郎だと思っていた相手にちゃんと血がかよっていたとわかってなんだか晴れ晴れした気分になった。
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